感染対策コミュニケーションの場
導入事例
第13回設計段階からの介入で感染対策に配慮した手洗いシステムを導入
市立川西病院
- ■住所
- 〒666-0195
兵庫県川西市東畦野5丁目21番1号
- ■病床数
- 283床
- ■全職員数
- 346人(平成24年3月現在)
- ■手術件数
- 1210件(平成23年度)
- ■病院のホームページ
- http://www.kawanishi-hospital.jp/
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兵庫県川西市に位置する市立川西病院は、昭和11年の開設以来(当時は川西町立診療所)、「安全・安心で良質な医療の提供」を理念としながら、長きに渡り地域の方々の健康を守る砦としての役割を担っておられます。また、地域の医療機関や医師会と連携を強化し、川西市の基幹病院として患者さんが安心して受診・治療ができる医療を提供されています。
導入製品
自動手指洗浄消毒器
自動手指洗浄消毒器 MHW-7000
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自動手指洗浄消毒器MHW-7000導入までの道のり
- 自動手指洗浄消毒器MHW-7000の導入を検討された背景は?
保健所による立入検査でもチェックが厳しい水回りの環境整備の必要性を以前より強く感じていました。病棟を改築し、緩和ケア病棟を新設するに際し、感染管理の観点から水はねのしない洗面台を導入したいと考えました。そのため、様々な手洗い装置メーカーにコンセプトに合う製品がないか問い合わせましたが、なかなか見つからず、最終的に自動手指洗浄消毒器MHW-7000がコンセプトに合うことから導入を検討しました。
- 手洗い装置のような工事が必要な設備の導入のためには設計段階からの介入が必要と思われますが、今回うまく導入に至った理由は?
上田幸恵副看護師長 南幸栄看護部次長
【ICTの立場から】
ICTは以前より感染対策委員会や経営者会議等で、設備に何か手を加える際は必ず声をかけてもらうよう折に触れて伝えていました。感染対策は設計段階から考える必要があると訴え、水回りだけでなくレイアウトについてもICTが積極的に介入しました。また、現場の要望にも耳を傾け、要望について検討し方向性を定め、経営層や設備担当に院内感染防止のためにも水はねのしない洗面台が必需品であると強く訴えた上で、自動手指洗浄消毒器MHW-7000導入の希望を伝えました。
【現場の立場から】
今までは、水回りや照明などの設備に関しては、現場の声がなかなか届かずにいました。今回、緩和ケア病棟の立ち上げが決まった当初から、水回りやさまざまなレイアウトについて現場からICTに協力を依頼しました。
感染対策に関わる物品や設備の選択について、現場からの一方的な要望だけではなく、現場にとって何が一番使いやすいか、重要であるかICTに相談し、アドバイスを受けながら選定することができ、感染対策に配慮した製品を導入できました。今回はICTに相談し、早い段階より意見を交え一緒に作ってきたので、知らない間に物事が進むという状況を防ぐことができ、非常に良かったと思います。
さらに、自動手指洗浄消毒器MHW-7000の導入以外にも感染対策に配慮した環境設計として、廃棄物の取り扱い場所など、清潔区域と不潔区域が区別できるようなレイアウトになるよう工夫をしました。また、床材をカーペットにすることも検討していましたが、清掃面を考慮しフローリングにしました。こういったことを各部がそれぞれで検討すると、話がなかなか進まないものですが、今回ICTと相談しながらでしたのでスムーズに決まりました。
清潔区域と不潔区域が区別できるレイアウト。(左手:自動手指洗浄消毒器MHW-7000、右手:処置室)
自動手指洗浄消毒器 MHW-7000導入後
- 自動手指洗浄消毒器MHW-7000導入後の評判はいかがですか?
スペースにぴったりフィットする自動手指洗浄消毒器MHW-7000。周辺のタイルの色とも調和しています。
南幸栄看護部次長
ナースステーションの中に処置室があるのですが、設計段階からICTのアドバイスを受けたことで、処置前後の手指衛生を考え非常に動線の良い位置に自動手指洗浄消毒器MHW-7000を設置できました。懸念していた水はねもなく、水、石けん液、手指消毒剤のすべてがセンサー感知で自動吐出するため、手を触れることなく衛生的に手指衛生ができるので、現場スタッフにも大変好評です。中にはモデル病棟にしては?という声もあります。
自分たちの意見が反映された手洗い場ですので、スタッフそれぞれが自覚を持って手指衛生を実践するようになりました。
- 手指衛生の教育はどのようにされていますか?
何年も前からリンクナースが手指衛生の啓発活動を頑張ってくれています。具体的には、手指衛生剤の実使用量と必要使用量との比較データをとってフィードバックしたり、手指衛生セミナーを定期的に開催したりしています。
また、WHOの5つのタイミングにおける手指衛生の遵守確認を2012年4月から導入しました。チェック方法の統一、時間や人員の確保は難しいのですが、こういった新しい指標を取り入れるなど様々な工夫をしています。また、CNICによるラウンドも実施しています。
手指衛生剤の使用量調査による反応はいかがですか?
新入職時や手指衛生セミナーを開催すると使用量は増えるのですが、時間の経過とともに減ってしまいます。また、介入をすると使用量が回復する、ということの繰り返しですが、以前と比べるとベースラインは増えてきています。使用量をフィードバックしていますので、各部署の状況も分かり自部署だけの問題ではないという意識が浸透してきているのだと思います。
手指衛生のラウンドではどのようなところをチェックされていますか?
上田幸恵副看護師長
CNIC(上田様)は専従ですので、ICTラウンド(毎日の環境チェック、週1回の抗菌薬ラウンド)の他に、何かあった折々で病棟に足を運ぶようにしています。
そこで手指衛生の方法をチェックしたり、スタッフについて歩いて、手指衛生ができていないタイミングを指摘したりしています。
NEXT STEP
- 今後の課題や目標をお聞かせください。
感染対策に主眼をおいた院内設備のメンテナンスや、委託職員の教育にも力を入れていきたいです。委託業者の教育については、現在、委託会社による年間教育計画・実施確認の他、手洗いチェッカーの貸し出し等の協力を行っています。環境衛生の重要性を考えると、今後、ICTによるさらなる教育介入が必要ではないかと考えています。
また、今回の自動手指洗浄消毒器MHW-7000導入の効果を評価するためにも、従来の洗面台を使用している病棟の水回りの環境チェックをしてみたいです。ATP(アデノシン三リン酸)拭き取り検査で自動手指洗浄消毒器MHW-7000とそれ以外の水回りで汚れの状況がどのように違うのか比較検討してみることは、将来新築の話があった場合、院内感染防止のためには水回りの環境整備が必要不可欠であるということを示す良い材料になるのではないかと考えています。
今回インタビューさせていただいた方
上田 幸恵 様
副看護師長
感染管理認定看護師
上田様の経歴
- 1987年
- 入職
- 2002年
- ICT活動開始
- 2005年
- CNIC資格取得
南 幸栄 様
看護部次長
南様の経歴
- 1989年
- 入職
- 2013年
- 看護部次長
編集後記
昨年12月に完成された緩和ケア病棟は木目調の廊下と明るく開放的な談話室があり、病院であることを忘れてしまうような空間でした。
病棟改築時には、設計段階から病棟担当者とICTが連携し、現場の声を反映したより良い環境構築のため邁進され、「相談するとすぐに動いてくれるICT、CNSの存在が大きな強み」とおっしゃった言葉が印象的でした。
今回導入いただいた自動手指洗浄消毒器MHW-7000周辺は清潔に保たれており、衛生的な手指衛生を実践されていることを実感いたしました。
その他にも院内全体のICT活動として、手指衛生セミナーやリンクナースを中心とした手指衛生剤の使用量調査など各種サーベイランスを実施されているだけでなく、ATPを用いた環境管理やWHOの手指衛生観察方法など、積極的に新たな取り組みをされていることに感銘を受けました。
- 取材日
- :2013年2月15日
- インタビュー
- :サラヤ学術部 吉田、小松、引頭
電話によるお問合せ: 06-4706-3938(受付時間:平日9:00~18:00)