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感染対策コミュニケーションの場

導入事例

第12回  手荒れ予防への取り組み

学校法人北里研究所 北里大学東病院

■住所
〒252-0380
神奈川県相模原市南区麻溝台2丁目1番1号
■病床数
538床
■全職員数
約800名(委託職員除く)
■手術件数
1825件(平成23年度)
■病院のホームページ
http://www.ehp.kitasato-u.ac.jp/ehp/

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神奈川県相模原市に位置する北里大学東病院は、3つのセンター(消化器疾患治療センター、神経・運動器疾患治療センター、精神神経疾患治療センター)を中心に、急性期から慢性期まで幅広い診療が行われています。「患者さま中心の医療の実践、良質で高度な医療のご提供、地域社会医療への貢献」をモットーに掲げ、1986年4月に開院して以来26年間、地域に根ざした大学病院として医療に貢献されています。

プライムローション

導入製品

ハンドケアローション
プライムローション無香タイプ

プライムローション導入までの道のり

- プライムローションの導入を検討された背景は?

以前より手荒れは、細菌の温床となるだけでなく、手指衛生の遵守率を低下させる要因にもなることから感染対策上問題となりうるという認識はありましたが、プライムローションを導入する前までは、ハンドケア対策は実質職員個人にまかされていました。ハンドケア剤は、各個人で用意するか、病棟費で購入し病棟職員で共有していました。しかしながら、院内ラウンドで病棟を確認すると、手洗い場にハンドケア剤が置いてある病棟は、半分以下で適切にハンドケアが行われているとは言えない状態でした。そのような中、他施設との情報交換で、最近は多くの施設でハンドケア剤を病院で支給するようになってきていることを知りました。そこで、感染対策のためにも職員のためにも当院においてもハンドケア剤を病院で支給し、職員がいつでもハンドケアをできる環境を整える必要があると思うようになりました。
そこでまず、ICT(Infection Control Team)担当の看護科長に相談し、看護部から上層部に掛け合ってもらいました。その結果、「職員は病院感染を防ぐために手指衛生を行っているのだからそれに伴う手荒れ対策としてハンドケア剤の提供などの基本的なことは病院で担保するべきである」という方針が決定され、病院でハンドケア剤を支給することが決まりました。

深堀信子氏
(感染管理室 感染管理認定看護師)

清水賢一氏
(医療安全管理室・感染管理室 課長補佐)

- プライムローション導入の決め手は何でしたか?

ハンドケア剤を導入するにあたり、プライムローションを含む3製品の中から選別を行いました。使用感等に関しては、ある部署で3ヵ月間サンプルを使用し、どれが良いかアンケートを行いました。その結果、プライムローションはべたつきが少なく、さらっとしていて使用感が優れていました。ICTでは、べたつきがなく処置に影響を与えない、手袋の着脱が行いやすい、手袋の強度に影響を与えない、速乾性アルコール手指消毒剤の持続効果に影響を与えないという点を評価の対象としました。また、ポンプボトルのため、病棟職員で共有しても中のローションが汚染されることがありません。そして、最後にコスト面も含めて総合的に判断し、プライムローションに決定しました。

プライムローション導入後

- プライムローションはどのような場所に配置し、使用方法はどのように指導しておられますか?

プライムローションの配置場所は、病棟、外来、検査室といった院内で必要と思われる場所すべてで、病棟職員はもちろん、その他の部署の職員や委託職員など病院で勤務するすべての人が使用できるようにしています。使用方法は、手洗いや手指消毒を行った後、手の乾燥が気になったときなど頻回に使用するよう指導しています。

- プライムローションを導入してから職員に変化はありますか?

昨年10月にプライムローションを導入しましたが、冬になったころに「今年はあかぎれがなく治まっています」、「おかげで本当に助かります」と複数の職員から声をいただきました。特に、水を扱う仕事が多い看護補助さんからの声が多かったです。

- ハンドケアの重要性の周知はどのようにされていますか?

ハンドケアの重要性は、リンクスタッフ(コメディカルを含めた部署ごとの感染防止対策の担当職員)を通して病棟へ周知徹底させています。当院では、6~7年前から毎年、世界手洗いデー(10月15日)のある10月を手洗い強化月間としています。その1ヵ月前にまずICTがリンクスタッフ会で、なぜ手荒れがよくないのか、ハンドケアが必要なのかということの教育を企画します。そして、リンクスタッフは、手洗い強化月間のときにICTと連携して病院職員に対し、正しい手指衛生ついて教育を行います。正しい手洗い方法については、速乾性アルコール手指消毒剤による手指消毒方法と、ブラックライトと蛍光ローションを用いて手洗い後の洗い残しを確認しながらより確実な手洗いができるよう演習を通して指導しています。職員の入れ替わりがあるため、このような教育は毎年行ってます。

- 手荒れ予防対策としてハンドケア剤の使用以外に気をつけていることはありますか?

石けんと流水の手洗いを行う際、乾いた手に石けん液の原液を取ることは手肌に良くありませんので、手を水で濡らしてから石けん液をとるように指導しています。また、石けん成分のすすぎ残しも手荒れの原因となりますので、すすぎは十分に行うよう注意しています。その他に、熱いお湯の使用を避けることや手洗い後にペーパータオルで拭くときは、ゴシゴシ擦って拭くのではなく、やさしく押さえて拭くことなどを指導しています。さらに、ひび割れのようなひどい手荒れを起こしている人には、皮膚科外来を受診するよう指導しています。
今年はこれらの手荒れ予防の重要な項目をまとめたポスター作成し、手荒れ予防を啓発しています。冬場に向け、このポスターを用いて手荒れ予防対策をより周知徹底したいと思っています。

- 手荒れ対策以外に現在、力を入れて取り組まれていることをご紹介ください。

環境の清掃方法改善に力を入れています。環境から手指への微生物汚染を防ぐためには、環境を清潔に保ち微生物伝播のリスクを減らすことは重要です。今年は、ATP(Adenosine Triphosphate)測定器を用いて環境の汚染調査を行っています。現在、ベッド柵やナースコールなど患者周辺のATP測定を行い、その結果から問題と思われる場所や医療器材を抽出し、それらの清掃や再生処理方法の改善に取り組んでいます。改善方法は、こちらから指導するのではなく、リンクスタッフに提案してもらい、実践してもらっています。
さらに2ヵ月後、再度環境の汚染調査を行い、改善されたかどうかを確認する予定です。また、今回の環境汚染調査の結果から躯血帯がとても汚染されていることがわかりました。改善方法を見つけ出すトライアルとして、従来の躯血帯を毎日環境クロスで清拭する方法と、躯血帯を耐熱性のものに変更し1日1回熱水処理を行う方法のどちらが効果的か比較することを検討しています。

NEXT STEP

- 今後の課題や目標をお聞かせください。

多くの職員は、毎年手洗い強化月間に手洗い実習を行っているため、手洗い手技に関してはよくできていると思います。しかし、手指衛生の適切なタイミングは、ほとんどの職員が十分理解・実践できていません。今後は、感染対策の手順書の中に手指衛生のタイミングを盛り込み、手指衛生の遵守率の向上をはかりたいと思っています。

今回インタビューさせていただいた方

深堀 信子様
感染管理室 師長補佐
感染管理認定看護師 深堀様の経歴

1988年
北里大学東病院 入職
消化器内科・外科病棟・外来、手術室勤務などを経て
2008年
感染管理認定看護師認定
平成23年度より専従

清水 賢一様
医療安全管理室・感染管理室
課長補佐 清水様の経歴

1986年
北里大学病院 入職
医事課、職員課を経て
2010年
北里大学東病院に異動
(医療安全・感染管理室担当) 

編集後記

手指衛生に関して熱心に取り組まれているご施設で、特にハンドケアまで手指衛生の一環として考え、感染対策上の問題はもちろん、職員の負担も考慮してハンドケア剤の病院支給を実現されたことに感銘を受けました。また、リンクスタッフを中心に手指衛生の継続的な教育や環境の汚染調査を行い、その結果を基に直ぐに改善に結びつけるところなど、リンクスタッフが活躍し、感染対策に対し意欲的に取り組む姿勢がとても印象的なご施設でした。

取材日
:2012年8月30日
インタビュー
:サラヤ学術部 吉田、遠藤

電話によるお問合せ: 06-4706-3938(受付時間:平日9:00~18:00)

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