感染対策コミュニケーションの場
導入事例
第9回 ノータッチ式ディスペンサー導入事例
埼玉県済生会栗橋病院
- ■住所
- 〒349-1105
埼玉県久喜市小右衛門714-6
- ■病床数
- 329床(一般325床 感染4床)
- ■全職員数
- 561名
- ■手術件数
- 全身麻酔 867件 カテーテル448件(平成22年度)
- ■病院のホームページ
- http://www.saikuri.org/
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埼玉県の久喜市に位置する済生会栗橋病院は、1989年の発足以来長きに渡り、地域の基幹病院として、安心・納得・温かい心のこもった医療を提供されています。また、各種学会認定(専門)医研修施設としての役割も担われており、医療の発展にも寄与されています。2011年12月12日に地域救急センターをオープンし、ICU、ER、感染症診療室が充実したことから、より一層質の高い医療を提供されています。なかでもICUは死角をできる限り少なくするなど患者の安全管理に配慮し、手指衛生のために各所に手洗い設備とノータッチ式ディスペンサーを設置するなど衛生管理を徹底した設計となっています。加えて広いスペースを確保したERや結核などの感染症にも対応できる感染症診療室を設置し、様々な状況に対応可能な地域救急センターとしての使命を果たしています。
導入製品
ノータッチ式ディスペンサー
サニショットUD-8600S
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導入製品
ノータッチ式ディスペンサー
サニショットUD-8600A
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地域救急センターの立ち上げとノータッチ式ディスペンサー導入までの道のり
- ノータッチ式ディスペンサーの導入を検討された背景は?
地域救急センターの立ち上げに際し、ICUの感染対策の観点から衛生管理について検討しました。以前はボトルタイプの手指消毒剤を使用していましたが、手でポンプを押すため交差汚染の危険性があります。しかし、ノータッチ式ディスペンサーでは手が触れることなく薬液が吐出されるため衛生的で感染リスクを最小限にすることが可能であると考えました。
また、当院では初のノータッチ式ディスペンサーの導入ということもありスタッフの関心も高く、デモ機設置段階で積極的な利用が見られ、手指衛生遵守率向上のための良い機会になると考えました。
- 導入の決め手は何でしたか?
他社品との比較には1ヶ月以上の期間を費やし十分な比較を行いました。その結果、ノータッチ式ディスペンサーサニショットUD-8600の大きさや容量が適当であること、かつ石けんと手指消毒剤の両方に対応可能であることから採用に至りました。
大きさに関しては、当院ICUのシンクに設置するのに適当な大きさ(写真1)でした。容量については使用期限内で使い切ることが可能なことや取替え頻度が低くスタッフの負担とならない600mlというのが最適でした。
また石けんと手指消毒剤のディスペンサーを統一することは外見上の見栄えがよく、白を基調とした衛生的なデザインでコーディネートのしやすさも採用に至った要因の一つです。ディスペンサーの形は同じですが、石けんは「緑」、手指消毒剤は「赤」で表示されていることから薬液の識別が容易にでき、懸念している取り違えのリスクもないと考えております。さらに旧ICUではボトルタイプの手指消毒剤をオーバーテーブルの上に置いて使用していましたが、ICUでは患者急変などが多く、処置中にオーバーテーブルから落下することがありました。そのリスク回避という意味においてノータッチ式ディスペンサーは新たな価値を持っていると思います。
- ICU、ERの設計で特にこだわられた点を教えてください。
ICUやERに搬送される患者の性質上、環境の変化による興奮や不穏、さらには易感染性であることから安全管理、衛生管理の徹底にこだわりました。
安全管理面についてICUに関しては棚などの物品は極力高さの低いものを選んでフロアー全体を見渡せるようにし、すぐに患者の異変を察知し、駆け付けることを可能にしています。オープンフロアー(12床)には、ベッドとベッドの間に隣の患者の顔が見えない程度の壁を作り、半個室的な状態を保ちました。また個室(8床)については、角の部屋の一部をガラス張りにして、オープンフロアー病床に死角を作らないように工夫しました。ERに関しては、診療がスムーズに行えるよう広いオープンスペースを確保しました。ただ、患者のプライバシー保護も重要であることからミラータイプのガラスや曇りガラスを取り入れています。
衛生管理面については必要適時、手指衛生ができるようにスタッフや患者家族の導線上にはノータッチ式ディスペンサーや手洗い設備を配置しました(イラスト)。患者ケアのための手洗い設備は3つですが、全てのベッドから最短でアクセスできるよう配置しており、オーバーフローがなく物品が置けないなど感染対策にも配慮したシンクを採用しています(写真1)。現在、この設計・設備を活かしてWHO推奨の手指衛生実施のタイミングを念頭に院内感染防止、質の高い看護の実践に取り組んでいます。
ICU内の手洗い設備とノータッチ式ディスペンサー
写真1:
シンクに設置した手指消毒剤(赤)・石けん(緑)
※衛生的なデザインでかつ識別が良好
写真2:
個室前に設置した手指消毒剤
写真3:
ICU内のトイレに設置した石けん
- 感染症診療室設置の目的を教えてください。
新型インフルエンザのアウトブレイク時に当院は率先して、発熱外来を立ち上げましたが、診察場所の確保が困難で、それ故に屋外のテントで診察を行っていました。感染症指定医療機関という性質上、きちんとした診療の提供が必要であることから、一般の出入口とは完全に別にして、他の患者との交差を防止して診察を行う感染症診療室を設置しました。また、最近、結核患者が多い傾向が見られるため、呼吸器症状があり結核疑いのある患者の待機場所にも使いたいと考えています
佐藤看護師
小美野看護師
ノータッチ式ディスペンサー導入後
- ICUスタッフの意識、手指衛生の回数などに変化はありましたか?
ノータッチ式ディスペンサーを設置したことで、自動吐出に慣れたスタッフからボトルタイプの手指消毒剤ではポンプへの接触が不可欠で、交差汚染を心配する声が上がり、手指衛生に抵抗を感じるという意見が出ていています。ポンプタイプの手指消毒剤に触れることが直接感染に関わる可能性は低いと考えますが、ノータッチ式ディスペンサー導入により確実にICUスタッフの衛生意識が向上したと思います。また手指衛生の回数も増えたように感じます。
- ICU以外のスタッフの手指衛生に対する意識に変化はありましたか?
スタッフの休憩室やトイレにもノータッチ式ディスペンサーを設置したことで、どのスタッフも使用可能となっています。そのためポンプへの接触に抵抗を感じるスタッフが多くなり、衛生意識の向上につながっていると思います。ICUでのノータッチ式ディスペンサー設置の成功を、病棟の共有スペースや大部屋、個室のトイレなどにも広げていきたいと考えています。院内ではICUに導入したノータッチ式ディスペンサーの衛生的有用性が周知されつつあるため、ICUを感染対策のモデルケースと位置づけ、病院全体への普及につなげていきたいと思っています。
さらにスタッフだけでなく、患者や家族も手指衛生を頻繁に行うようになってきました。そのため通路に置いてある手指消毒剤は減りが早いと感じています。確実に一般の方の意識も高くなっていることが実感できます。
NEXT STEP
- 今後の感染管理における検討事項などをお聞かせください。
スタッフの手指衛生指導の他に患者や患者家族にも手指衛生の重要性を理解して実践してもらうことは重要であると思っています。なぜならノロウイルスやインフルエンザウイルスの流行期に大規模なアウトブレイクを防止するためには、一般の方の協力が必要不可欠だからです。一般の方の意識も確実に高くなってきていると実感していますが、正しい知識をつけていただくため毎年5月に行われる「看護の日(看護祭り)」や、秋に行われる「健康すくえあ(病院祭り)」を通じて、一般の方の教育にも力をいれたいと考えています。
今回インタビューさせていただいた方
佐藤 伸也 様
看護部 副課長
佐藤様の経歴
- 2000年
- 済生会栗橋病院入職(ICU)
- 2007年
- ICU主任
- 2010年
- 救急センター副課長
小美野 勝 様
看護課長
小美野様の経歴
- 2003年
- 済生会栗橋病院入職(手術室)
- 2006年
- ICTとして活動開始
- 2009年
- 手術室・中央材料室課長
- 2011年
- 感染管理認定看護師資格取得
- 2012年
- 感染管理専従
編集後記
2011年12月12日オープンということで非常にきれいなER、ICUでありました。ただそれ以上に、諸先生方の経験や今まで培ってきたノウハウ、看護に対する想いが反映された設計と設備の導入で、より安全かつ衛生的な医療の提供が可能となり、感染対策を含む「患者を第一に考える」という大原則、看護の基本を肌で感じることができました。
- 取材日
- :2012年3月1日
- インタビュー
- :サラヤ学術部 吉田、鯉沼
電話によるお問合せ: 06-4706-3938(受付時間:平日9:00~18:00)