感染対策コミュニケーションの場
導入事例
第1回 ノロウイルス胃腸炎アウトブレイク対策と手指衛生
三田市民病院
- ■住所
- 〒669-1321
兵庫県三田市けやき台3丁目1番地1
- ■病床数
- 300床(一般)
- ■全職員数
- 589名(外部委託業者含)
- ■手術件数
- 2561件(平成22年度)
- ■病院のホームページ
- http://www.hospital.sanda.hyogo.jp/
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兵庫県の三田市に位置する三田市民病院は、昭和24年の発足以降長きに渡り、地域の中核病院として、安心・納得・温かい心のこもった医療を提供されています。
また、臨床研修指定病院や各種学会認定(専門)医研修施設としての役割も担われており、医療の発展にも寄与されています。
導入製品
速乾性手指消毒剤(手指消毒用速乾性アルコールローション)
ウィル・ステラV
製品情報はこちら
アウトブレイク認知から初動対策
- 今年の冬にノロウイルスのアウトブレイクを経験されたそうですが、そのときの対策についてお聞かせください。
中村 智行 先生
2011年1月18日、1つの病棟において下痢症状を呈する患者が数名確認されたことを受け、緊急の院内感染対策委員会を開きました。調査の結果、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が原因であることが判明し、アウトブレイクであるとの認識のもと対策にとりかかりました。
院内感染対策委員会の主導のもと、アウトブレイクが発生している病棟への入院・転棟規制、救急外来受診患者規制を1月18日から1月30日まで行いました。また、手指衛生の徹底と共に個人防護具の改善(ゴーグルをフェイスシールドへ、予防衣をよりバリア性の高いガウンへ変更)、全職員へ業務中サージカルマスク着用の徹底を行い、トイレや環境消毒についても再度、徹底するようにしました。
早い段階で緊急医局会や全職員研修を行い、「感染性胃腸炎がアウトブレイクしている」という情報を職員同士が共有し、対策の遵守率を上げたものと考えています。
ウィル・ステラVの導入を検討
- ウィル・ステラVの導入を検討された背景は?
ノロウイルスの伝播には汚染された手指が関わっていることが多いため、特に手指衛生に着目し、以前よりサラヤの担当者からノロウイルスに対する効果が期待できる製剤として紹介を受けていたウィル・ステラVの採用を検討しました。一連の症例がノロウイルスによるものだと判明した時点ですぐに担当者へ連絡し、1月18日の夕方には納品されるとともに使用を開始しました。
- ウィル・ステラV導入にあたり、心配だったことはありますか?
pHが酸性に傾いているということから、手肌への影響が心配でした。しかし、1月18日から2月10日くらいまでの使用において職員から手が荒れたというような報告は受けませんでした。
- 職員への周知はどうされましたか?
三田市民病院における
「手指衛生の6つのタイミング」(拡大)
当院では、WHOが推奨している「手指衛生の5つのタイミング」に、当院独自の項目「手袋を外した後」を追加した6つのタイミングで手指衛生を行うように提唱しています。
これまで当院のマニュアルでは、ノロウイルスによる汚染が考えられる場合の手指衛生は「流水と石けんによる手洗い」としていましたが、ウィル・ステラVを使った手指消毒ではノロウイルスに対する効果が期待できるということで、手指衛生の方法は、通常と同様に手に汚れがある場合は石けんと流水による手洗い、汚れがない場合はウィル・ステラVによる手指消毒を行うように案内しました。
ウィル・ステラVの導入後
- ウィル・ステラVはどこに設置されましたか?
当院ではウィル・ステラVを、ノロウイルスの流行期やアウトブレイク時に使用する製剤として位置づけています。先般のアウトブレイクの際には、症状を有する患者がいる病棟、および外来に設置し、また医局からの要望により、当直室や医局内にも設置しました。
アウトブレイクが終息した現在でも、外部からの持ち込み対策として病院出入り口には引き続き設置しています。
病院出入り口に設置されたウィル・ステラV
足踏み式ディスペンサーに設置され、ポンプに触れることなく薬液を手に受けることができます。
また、大きなパネルで使い方を分かりやすく表示されています。
-今回のアウトブレイク、手指消毒剤の変更を受け、何か変化はありましたか?
手指消毒剤の変更とともに使用方法の説明や勉強会などにより手指衛生の徹底を呼びかけたこともあり、職員の感染対策に対する意識が向上し、手指衛生を頑張って行ってくれるようになりました。手指消毒剤使用量も飛躍的に増加しました。
-アウトブレイク対策としてのウィル・ステラVの効果はどうでしたか?
アウトブレイク時は複数の対策を組み合わせて行うため、ウィル・ステラV導入の効果とは断定できませんが、今回の対応によって早期にアウトブレイク終息できたということに加え、職員へのノロウイルス伝播をかなり防げたのではないかと感じています。アウトブレイク期間中(11日間)、4名の職員に症状が確認されましたが、迅速検査では4名全員が陰性でした。職員への伝播を防げたという点が、今回のアウトブレイク対応として大きなポイントになると思います。
NEXT STEP
-今後の手指消毒剤について、どうお考えですか?
世間でのノロウイルス流行期が過ぎた後、設置しているウィル・ステラVをこれまでの手指消毒剤に戻すかどうかは現在検討中です。ただ、感染性胃腸炎は冬季に多いとはいえ、年中確認されるものですので、このまま設置しておいても良いと考えています。今後の院内感染対策委員会で検討する予定です。
-最後に、今後の課題や取り組みをお聞かせください。
職員の標準予防策や感染性胃腸炎対策の遵守率を向上させる事はもちろんですが、感染性胃腸炎流行の次期シーズンまでには、「流行段階対策」例えば、兵庫県、保健所管内や外来患者での流行状況などのデータから「感染性胃腸炎対策速報」として院内イントラネットを介して発信するなどを考案中です。
今回インタビューさせていただいた方
中村 智行 様
看護部 副課長 院内感染管理者
感染管理認定看護師
中村様の経歴
- 1995年
- 三田市民病院入職
- 1998年
- 看護部感染対策委員へ
- 2007年
- 感染管理認定看護師認定
同年よりICCとして活動
- 2010年
- 院内感染管理者
編集後記
今回取材をさせていただいた中で特に印象的だったのは、ノロウイルス患者発生の確認後すぐにウィル・ステラVの導入を検討され、その日のうちに決定して使用を開始されたという初動の早さです。迅速な対応と職員の方の手指衛生遵守が、ノロウイルスの拡大を防ぐ大きなポイントとなったのではないでしょうか。
また、病院出入り口に設置されたウィル・ステラVには、その使用方法を分かりやすく示した看護部管理室職員の方が作成されたパネルが貼付されており、職員だけではなく患者様やその家族など、すべての方へ手指衛生を啓発するという熱い思いを感じました。
- 取材日
- :2011年4月8日
- インタビュー
- :サラヤ学術部 吉田・小松・今井
電話によるお問合せ: 06-4706-3938(受付時間:平日9:00~18:00)