Supplysm 2025 vol.17 no.1
Technical Report
多人数用透析液供給装置の薬液ライン逆流警報を起因とするフィルタの耐久評価
- 堀江 豊徳
- 医療法人 広瀬病院 臨床工学技士
※本記事は、「Supplysm 2025 vol.17 no.1」(2025年2月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
施設紹介
名称:医療法人 広瀬病院
所在地:福井県鯖江市旭町1-2-8
許可病床数: 一般病棟 一般病床 22床
一般病棟 地域包括ケア病床 10床
医療療養型病床 94床
介護医療院 23床
病床数 計149床 ケアミックス病院
透析室: 透析病床数 25床(2床は個室)長期療養型病床を有するため、65%前後が療養型病床入院患者
関連施設:リハビリセンター王山 併設
透析装置概要
水処理装置: TW-1800S 東レ・メディカル(以下:東レ)
粉末溶解装置: AHI-502 東亜ディーケーケー
DRY-01 日機装
多人数用透析液供給装置:DAB-30NX 日機装
多人数用患者監視装置: DCS-27(15台) 日機装
DCS-100NX(2台) 日機装
DBG-03(2台) 日機装
TR-3300M(4台) 東レ
個人用患者監視装置: DBB-27(1台) 日機装
TR-3000S(2台) 東レ
※2024年5月、DCS-27(2台)、DBB-27(1台)をDBB-200Si( 3台)日機装に更新
背景
2022年8月15日、透析開始前に多人数用透析液供給装置DAB-30NXの『薬液ライン逆流警報』が発生しました(図1)。警報の原因は次亜塩素酸系除菌洗浄剤原液の薬液ラインのフィルタから脱落したメッシュが薬液電磁弁に引っ掛かっていたことでした(図2-4)。このフィルタは2年毎のオーバーホール時に交換しており、この半年後に交換する予定でした。今までこのような事例は経験したことがありませんでした。初期対応として薬液電磁弁と薬液ラインのフィルタ一式を交換し、月1回(月末の土曜日)に原液ラインのフィルタを分解洗浄し、メッシュ部の外観変化を確認することにしました。
フィルタ外観の観察の結果
2022年8月15日の確認開始から毎月、フィルタの外観観察を続け記録を行いました(表2)。開始から7ヶ月後(2023年3月29日)のオーバーホール時までフィルタの異常は見られませんでしたが、オーバーホール後からも継続して観察をしたところ、5ヶ月後の8月26日観察時に指でフィルタを触ったときにメッシュ部の滑りを感じたため、フィルタを軽く圧迫したところ、簡単にメッシュ部が破損してしまいました(図5)。
評価対象
フィルタが破損した原因として、フィルタの経年劣化や不良品であるフィルタの混入、フィルタの材質、除菌洗浄剤に含まれる添加剤が考えられたため、下記内容でフィルタの耐久評価を実施することにしました。
[評価フィルタ]
既存フィルタの経年劣化も考えて、製造直後の新しいフィルタを注文したところ、納品されたフィルタは耐久性を考慮した改良後のフィルタと説明されたため、既存フィルタと改良フィルタの両方で比較実施することにしました。
[材質]
既存フィルタ(枠部:ポリプロピレン、メッシュ部:ポリエステル)
改良フィルタ(枠部:ポリプロピレン、メッシュ部:ポリエステル)
[除菌洗浄剤]薬液ラインに流れる塩素系除菌洗浄剤に含まれる添加剤の影響も考えられるため、下記の除菌洗浄剤で各々のフィルタの比較耐久試験を実施しました。
・現行品
・比較同等品:サラティブSH(サラヤ)
・比較コントロール:RO水(透析用水)
評価方法
下記①~④のプロセスで実施しました。既存フィルタの観察開始から2週間後に、同じ条件にて改良フィルタの観察も並行して行うこととしました(図7)。
①除菌洗浄剤の原液を入れたガラス瓶に各フィルタを入れる。
②毎日1回フィルタを原液内で混和し、目視で変化があれば記録する(図8)。
③毎週月曜日に原液を交換し、フィルタの変化があれば記録する。
④定期的にフィルタのメッシュ部分をノギスで挟み込み、ノギスの圧を開放した反動で広がった時の目盛を記録する(図9)。
評価期間
2023年9月25日~2024年7月15日
評価結果
現行品において、既存フィルタでは23週目にて弾性が低下、改良フィルタでは34週目に破損を認めました(表3、4)。比較同等品であるサラティブSHやコントロールのRO水では顕著な変化は見られませんでした。
考察
現行品の原液に入れたフィルタは、メッシュ部分が次第に弾性を失い、改良フィルタでは34週目で破損しました。既存フィルタも38週目の6月10日に異変に気付き、13日にメッシュ横が破損していることが判りました(図10)。この後も7月15日の観察時までサラティブSH及びRO水に入れた改良フィルタは、変化や破損することはありませんでした。現行品には添加物として、カルボン酸系金属キレート剤、珪酸塩化合物、苛性アルカリなどが配合されており、それらの成分のいずれかがフィルタの劣化に繋がっていると考えられます。
まとめ
・ 多人数用透析液供給装置DAB-30NXの薬液ラインにおいてフィルタの破損が発生し、メッシュ部分が電磁弁に引っ掛かったため薬液ラインの逆流警報が発生しました。
・ フィルタ交換後の外観観察では、交換後5ヶ月目に指で圧迫することで簡単にフィルタが破損しました。
・ フィルタの耐久評価を行った結果、サラティブSHやRO水では、どちらのフィルタも観察期間中に破損はしなかったが、現行品では改良フィルタが34週目に破損、既存フィルタも38週目に破損したことから、フィルタの破損原因として添加剤の影響が考えられました。
・ 今後の対策として、添加剤によるフィルタ破損のリスクを把握したうえで、フィルタの洗浄、観察、交換を定期的に行うことにしましたが、フィルタの交換サイクルが4~5ヶ月と短いことから、当院ではサラティブSHに切り替えました。
・ 現在、サラティブSHに切り替えて8ヶ月以上経過しましたが(2024年4月~11月)フィルタの破損は見られておりません。フィルタ耐久評価も継続して実施しております。

