Supplysm

Supplysm 2023 vol.15 no.2

手術室の感染対策

新築移転に伴う理想の手術室CSSDへの道のり

曽根 新太
社会医療法人元生会 森山病院 手術室 中央材料室

※本記事は、「Supplysm 2023 vol.15 no.2」(2023年8月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

病院紹介

森山病院は1952年、北海道で初の整形外科を標榜する診療所として開業しました。1961年に旭川初の大型ビルディング病院として移転建設し、手術室と滅菌供給部門(CSSD:central sterile supply department)は、7階に作られました。手術室は、単一ダクト方式の一般空調3 室の中央ホール型で、CSSDは、洗浄・組立て・既滅菌エリアが混在した2パートゾーニングで運用をしていました。2020年に新築移転した手術室は、新外周廊下型で輻射熱空調2室、バイオクリーン1室の計3室で、CSSDは3パートゾーニングとなりました。2022年度の手術件数は約1,200件です。手術は、整形外科、外科、脳神経外科、形成外科、眼科、泌尿器科、内科と複数の診療科で行っており、一般急性期174床、回復期リハビリテーション58床の計232床を有する地域に根ざした民間病院です(図1、2、3)。

図1 病院外観

図2 旧病院の図面表

図3 現病院の図面表

はじめに

CSSDの必要有効面積の計算には一般に当てはまる公式はなく、必要な面積を決めるために発生する業務の分析と計算が行われる必要がある1)とされています。
2017年に年に当院の新築移転の話が出た当時のCSSDに関するガイドラインとしては、WHO2)やイギリス3)の施設基準の指針がありましたが、必要有効面積についての記載は見当たりませんでした。そのような中、当院がCSSDの面積をどのように確保し、現在運用しているかを述べさせていただきます。

新築移転までの経過

新築移転の話が院内で報告され、会議を積み重ねる中で、CSSDの広さと清浄度の確保については非常に悩みました。ガイドライン上に面積などの基準はなく、旧病院から新病院に移転する際に、病院の上層部や設計事務所の方にどのようにしてCSSDの必要面積について理解していただくかを考え、多方面から情報収集を行いました。そこで活用したのが欧州で使用されているCSSDの総面積がわかる早見表です(図4)。
病床数(Number Beds)のダイヤルを合わせると、総面積(㎡)、手術室数(Number of OP’s)、1日当たりの滅菌ユニット(StU/day:1 StU=高さ300mm×幅300mm×奥行600mm)、1日当たりの器械トレイ(IT/day:1 IT=485mm×260mm)の目安が示されます。実際に早見表で示されている面積が必要であることや、現状の面積で支障をきたしている状態を写真に撮って説明し、手術室と隣接している部門であることの重要性を伝え続けました。その結果、整形外科のLI(Loan Instrument)を多く使用する特徴がある当院にとって適切な、病床数約270床を有する病院の目安である172㎡の総面積を確保することができました。
手術室・CSSDの位置が決まり、総面積が確定したら、どのようなエリア分けができるのか、検討します。洗浄エリア、組立てエリア、既滅菌エリアをどの部分から仕切るのか、消防法では基準をクリアしているかなどを設計事務所の方と打ち合わせを行います。私が悩んだことは、図面上の決定事項から、気が付いたら様々な変更があったことです。例えば、パイプスペース(PS)2カ所が知らないうちに追加されていて、コンセントの位置がずれたことや、収納スペースとしていた部分がPSになり、点検がしやすいように物が置けなくなったことなどです。
同時に、洗浄シンク、洗浄器、滅菌器を図面に落とし込み将来の拡張性も考慮しながら機器の選定をしていきました。RMD(Reusable Medical Device)の特性から、どのメーカーの機種やオプションが必要であるか内容の濃い情報収集が必要でした。
その中で、備品の要望を病院とコンサルタント会社へ提案していくのですが、医療機器のことを理解されておらず仕様が異なる価格の安いものを選定され、コストダウンできたという実績を優先されることもありました。予算内に価格を抑えることは重要ですが、運用できない機種を選定されると、買い直しの発生や、効率的な運用ができなくなるなどの懸念があり、結果的にコストダウンとはいえないと思います。
洗浄エリアは、床材を赤とし不潔ゾーンが一目でわかるようにしました。システムシンク1 台、W D(washer disinfector)1台、減圧沸騰式洗浄器1台で運用していますが、手術件数増加に対応できるように追加でWDを購入した場合の給排水・蒸気・電気などの一次工事は終了しています。DI水製造装置の設置を強く希望しましたが、予算上削られたためWD同様に一次側の工事対応のみで終了しました(図5)。
組立てエリアは、床材を緑とし清潔ゾーンとしました。シーラー2台、漏電チェッカー1台、ボアスコープ1台、AC(高圧蒸気滅菌器)2台(うち小型AC1台)、過酸化水素ガス滅菌器1台で運用しています(図6、7)。小型ACは、故障または手術件数が増加した際に、第1種圧力容器を設置できる機種を選定しました。空調設備があり、3パートゾーンの中でも最も清浄度を高く設定しています(図8)。既滅菌エリアは、床材を青としました。空調設備を設け、滅菌コンテナや単包パックされた器械、インプラントを保管して運用しています(図9、10)。

図4 早見表

図5 洗浄エリア

図6 組立てエリア

図7 組立てエリア

図8 組立てエリアの気圧=85Pa

図9 既滅菌エリア

図10 既滅菌エリアの気圧=70Pa

まとめ

今回は、新築移転時の面積確保から設備について記載をさせていただきました。病院の特色を考えたCSSDの設計が重要になります。改善点をまとめ、運用をどのようにしていくかをイメージし、話し合いを重ねることが大切です。参考にしていただけるご施設があると幸いです。

おわりに

欧州・米国と異なり、日本では病院におけるCSSDの位置づけは低いと感じており、法令整備が進んでいないように思います。ガイドラインは法令ではないと話されることを耳にすることもあります。しかし、手術や処置で使用するRMDは、滅菌の質を担保しなくてはなりません。ガイドラインには各医療機器の保守点検、バリデーション、水質管理、洗浄評価、標準作業手順書の整備など滅菌の質の担保に必要なことが網羅されています。医療機器メーカーと病院が共通認識をもち、病院の規模に関係なく、当たり前のようにガイドラインに沿った再生処理が実施される時代になることを望みます。

引用・参考文献

1)特定非営利活動法人日本感染管理支援協会. 滅菌ハンドブック医療機器の洗浄から提供まで<第5版>P201
2)Decontamination and reprocessing of medical devices for healthcare facilities<<https://www.who.int/publications/i/item/9789241549851>>(2023年4月6日閲覧)
3)NHS Estates. HBN 13:Sterile services department. 2004.<<https://www.thenbs.com/PublicationIndex/Documents/ Details?DocId=272598>>(2023年4月6日閲覧)

sup15-2-ope.pdf