健康すまいる 2024 vol.34
キーマンコラム
感染対策ラウンドで見つけた社会福祉施設のヒヤリ・ハット事例 その3~より良い手指衛生環境を目指して~
- 四宮 聡
- 箕面市立病院 感染制御部 副部長/感染管理認定看護師
※本記事は、「健康すまいる vol.34」(2024年9月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
筆者が実際のラウンドで見つけた社会福祉施設のヒヤリ・ハット事例を紹介する企画も今回が最終回です。2回目(前回)は、施設で菌やウイルスが広がりやすい環境について紹介しました。最終回は、感染対策の王道である手指衛生をテーマに取り上げます。
手指衛生(手洗いと手指消毒)
手をキレイにした方がよいことは、子どもでも知っています。トイレに行った後は、必ず手を洗うように「しつけ」されていると思います。手を洗う目的は、菌やウイルスを体の中に入れないためです(手と感染症の関係については前回をご参照ください)。この、手をキレイにすることを手指衛生といい、手を洗うか手を消毒するかの<ruby>どちらか<rp>[</rp><rt>・・・・</rt><rp>]</rp></ruby>を行います。
手指衛生は、思っている以上に知識が必要です。それは、選択、方法、タイミングを理解しなければならないからです。手を洗うのか消毒するのかは、状況に応じて「どちらか」を選択しなければなりませんし、洗う場合と消毒する場合では注意点が異なります。また、適切なタイミングで実施するための知識が必要です。このように、たかが手指衛生ですが、世界中の病院でも大きな課題ですし、思った以上に難易度の高い感染対策でもあるのです。
手指衛生は環境整備が大切
手指衛生は、その行為を行うための環境整備が必要です。手洗いには水、シンク、石けん、ペーパータオル、ゴミ箱が、手指消毒にはアルコール手指消毒剤が必要です。また、手洗い場に必要な物以外を置いておくことは、手洗い場を菌のすみかにしてしまう恐れがあります。そのため、手洗い場の環境はシンプルイズベストです。では、図1をご覧ください。この手洗い場はどのような点を改善するとよいでしょうか。手洗いに必要な物は揃っていますが、ペーパータオル、スポンジは保管方法を見直す必要がありそうですね。ペーパータオルは濡れないようにする、スポンジは乾燥させる、そして清潔な物品と離すことも汚染の拡大防止につながります。また、シンク回りにあるコップや鉗子は水跳ねで汚れてしまいそうです。全体的な改善をした後が図2です。
同じ手洗い場ですが、印象が大きく異なると思いませんか。手洗い場は手をキレイにする場所だからこそ、環境を整えることがとても大切です。
では、図3はどうでしょうか。植物があることで、手洗い場が華やいだ雰囲気になることはよいのですが、シンクと周囲を清掃、乾燥させるのが困難になりそうです。土と水が常にある環境となることで、緑膿菌をはじめとした菌のすみかになると考えられます。施設内で検討され、改善した後が図4です。このように、手洗い場の環境をどのようにするとよいかが分かると、実際的な見直しができるようになると思います。
最後に図5の手洗い場はいかがでしょうか。物は必要最小限でペーパータオルもホルダーに収納されています。しかし、手洗い場にアルコール手指消毒剤が設置されています。手洗い場は、手を洗う場所で手指消毒は通常必要ありません。手指衛生は、どちらかを状況に合わせて行えばよい(手が肉眼的に汚れていたら手洗いを、そうでなければ手指消毒が基本です)ため、手を洗う場所にアルコール手指消毒剤を置くことで誤った方法を選択するリスクがあります。時々手洗い後に手指消毒をしている方がいますが、手荒れのリスクが高まります。また、手が濡れた状態で手指消毒すると消毒効果も落ちてしまいます。日々行う手指衛生ですが、これを機に確認してみませんか。
まとめ
施設の感染対策ラウンドで経験したヒヤリ・ハット事例を3回にわたりご紹介しました。利用者はもちろんのこと、働く皆様にとっても安全で感染症に強い施設を作るきっかけになれば幸いです。お付き合いいただきありがとうございました。

