「第94回日本医療機器学会大会 学術集会」開催レポート
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第94回日本医療機器学会大会(大会長:臼杵尚志先生 香川大学医学部附属病院 手術部 部長・病院教授)が2019年6月13日(木)~15日(土)大阪国際会議場にて、「Beyond Future」をテーマに開催されました。会場には医療用ロボットのテーマ展示やUDI(Unique Device Identification:医療機器個体識別表示)の現状と今後の展望などの公開セミナーもあり、未来の医療を感じることができました。
- 聴講を通して
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大会特別企画として「滅菌供給業務の品質向上のために我々は何をせねばならないのか」というセッションがあり、その基調講演で東京大学医学部附属病院 手術部准教授 深柄和彦先生よりご講演がありました。その中では、再生処理部門の担当者は研究会や勉強会に参加し知識を仕入れ、安全で高品質の滅菌器材の提供ができるよう日々努力している。一方、医師や看護師、病院経営者の多くは再生処理業務の内容や知識への理解が不十分であり、「利益を生まない部署」や「現場の要望に応えればよい」というような考えを持っているかもしれない。再生処理に携わる担当者の考えとのギャップや閉塞感を打破するため、医療機器学会内に「滅菌管理業務検討委員会」を設立することとなった。この委員会では①再生処理の見える化を目的とした各施設の業務レベル評価ツールの開発、②評価ツールに基づく学会による施設認定、③全国の再生処理スタッフに重要な新規情報を迅速に伝えるシステムの構築、④学会が単位取得を認定している地方の滅菌関連研究会との連携強化、⑤スタッフ教育のツール開発、⑥医療器材などの添付文書適正化を図るための情報収集とPMDAへの報告を目標とすると掲げています。このような取り組みを学会が主となり行うことで、再生処理を行っている部門が評価されていくようになると良いと思いました。
一般演題では、ロボット支援手術機器の洗浄後の評価についての発表がありました。洗浄評価は残留物を抽出し、その確認を行う方法です。しかし、超音波を用いて抽出することで材質によっては夾雑物の影響を受け、数値にばらつきが生じることがあるとの発表でした。他には、メーカー推奨の洗浄手順を遵守することで、適切な洗浄効果を得ることができるとの発表もありました。
学会プログラムではありませんが、「滅菌業務管理に関する特別講座:見ているだけではわからない、体験してみる医療機器の洗浄について」が2日目に行われました。10名の選ばれた参加者が実際に1%SDSを使って洗浄評価を行うというセッションであり、今までにない面白い取り組みと感じました。他には「折り紙で船を作る」というセッションがあり、参加者皆でスライドの指示に従い折り紙を折ります。スライドの指示は標準作業手順書、日頃「業務マニュアル」として業務を行う際に活用するものとして考え、その内容に沿って折り紙を折っていきます。手順書には色のついている面(表)とついていない面(裏)の指示がなかったため、出来上がったものはスライドに記載があるモノとは表裏逆という結果になりました。標準作業手順書(業務マニュアル)の作成については、①文書だけで作成するのではなく、②写真をうまく活用することや、③同じようなモノ(今回は折り紙)でも色が違えば(今回は表と裏)結果が異なるため、誰が見てもわかりやすい内容で作成すること、④作成後、その手順に疑問が生じた箇所は修正が必要な個所であるため再度修正することが大切だ、とお話しされておりました。
今回の学会を通じて、今後再生処理業務においてもロボットやAI等、様々なテクノロジーが参入してくると考えられますが、業務の基本は再生処理を行っている「人」であることを感じました。
- 展示
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弊社展示ブースにて、ベッドパンウォッシャーCLINOX 3A AUTOや過酸化水素ガス滅菌器STERIACE100、医療器具洗浄剤シリーズ パワークイックなどを展示しました。
また、今回は弊社のサラヤメディカルトレーニングセンター(SMTC)にて、ステリエースの実機見学会を行いました。多数の参加者にお越しいただき、ステリエースの運転やプラズマ発生のメカニズムなど実機を使って見学していただきました。
- Medical SARAYA事務局より
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今大会は新規の事業や過去からの課題、添付文書や再生処理を行う「業務」と「人」の質向上に向けての発表等、大変多角的な内容でした。弊社も多角的に物事を捉え、安全な品質の高い医療器材の提供にお役に立てるように努めていきたいと思います。