目次
外観の点検とメンテナンス
洗浄後の医療器材の点検では、まず外観を確認します。汚れが残っていないかだけではなく、腐食や亀裂がないかといった異常がないかを確認し、問題があれば早期に対処することが重要です。
腐食とは
医療器材などの金属が周囲の環境(水、空気、消毒薬など)と化学的・電気化学的な反応を起こし、表面が摩耗したり、本来の機能や見た目が損なわれたりする現象を「腐食」といいます。医療器材の腐食の代表例として、以下のようなものがあります。
孔食(こうしょく)
金属が水道水、血液、消毒薬、生理食塩水などに含まれる塩化物イオンと長時間接触すると、不動態被膜*が破壊され、点状の穴(孔食)が発生します。孔食部分は、汚れや洗浄剤が残りやすく、サビの原因となります。進行すると亀裂や折損など器材の重大な損傷につながるため、早期の修理や交換が必要です。
*不動態被膜とは
多くの鋼製小物にはステンレス鋼が用いられています。ステンレス鋼は鉄を主成分とし、クロムやニッケルを含む合金です。このうちクロム※が空気中の酸素と結合することで、表面に極めて薄い保護膜が形成されます。これを「不動態被膜」といいます。不動態被膜は、内部の金属を外気や溶液から遮断するバリアとして機能し、腐食(サビなど)から守る役割を果たします。一方で、塩素イオンには弱いという性質も持ち合わせています。
※ステンレス鋼(クロム含有)のほか、チタン合金やニッケルチタン合金など不動態被膜により優れた耐食性を発揮する金属があります。
サビ
金属が酸素や水と化学反応(酸化)を起こすことで発生する酸化物です。サビが発生すると、金属強度の低下や動作不良を引き起こすだけでなく、見た目も損なわれます。
また、サビがない器材と同時に洗浄・乾燥すると、サビのある器材が原因で周囲の器材にまで腐食が広がる「もらいサビ」につながる恐れがあります。ほかの器材への影響を防ぐためにも、早期の発見と除去が推奨されます。
発生したサビは、専用の薬剤を用いて取り除くことができます。
熱ヤケ
主にステンレス製の器材が、高温(洗浄時の熱水工程や高圧蒸気滅菌)に繰り返しさらされることで酸化膜が形成され、器材表面にくもりや変色(茶褐色)が生じ、光沢が失われる現象です。すすぎ不足により残留した洗浄剤が高温にさらされることでも発生します。
熱ヤケが発生すると、見た目が損なわれるだけでなく、その色味によって汚れの残留が見分けにくくなり、洗浄不良につながる恐れがあります。また、熱ヤケを放置すると器材の劣化を早める原因にもなるため、早めの対処が推奨されます。
発生した熱ヤケは、専用の薬剤を用いて取り除くことができます。
日常の腐食防止策
医療器材のサビ発生を未然に防ぐことは、器材の寿命を延ばし安全性を確保するための重要なメンテナンスです。
洗浄・すすぎ後の器材に潤滑・防錆剤を適用することで、器材の動きを滑らかにする潤滑作用と、腐食を抑制する防錆作用が期待できます。さらに、乾燥促進効果を備えた製品も多く、工程時間の短縮(作業効率の向上)にもつながります。これらの薬剤は塗布後のふき取りや洗浄は不要で、そのまま乾燥させて次の工程(滅菌など)へ進めることができます。
機能の点検
医療器材の点検において、外観確認後は、器材が本来の性能を十分に発揮できるかどうかを確認することが重要です。具体的には「切れる」「挟める」「動かせる」といった基本機能が確実に保たれているかを点検します。
鉗子の点検
汚れや腐食がないこと
※特に把持部の溝、先端構造、ボックスロックに注意する
把持部のかみ合わせに変形がなく、左右対称であること
ラチェットがゆるくないこと
※ラチェットを一段だけかけた状態で手の平に数回打ち付け、すぐに外れる場合は修理が必要


剪刀の点検
汚れや腐食がないこと
※テープ跡など洗浄では除去できない汚れが残っている場合があるため注意
刃こぼれや先端の変形がないこと
切れ味が良好であること
※試し切りを行い、スムーズに切りきれることを確認
関節部が緩すぎず、硬すぎないこと
※剪刃を横にして開いた状態で上側の持ち手を放したときに、自重で刃が完全に閉じ切らない位置で止まる状態が理想


鑷子の点検
汚れや腐食がないこと
※特に把持部の溝や先端構造に注意する
把持部のかみ合わせに変形がなく、左右対称であること

持針器の点検
汚れや腐食がないこと
先端に摩耗、欠け、剥がれがないこと
※先端がタングステンカーバイト製のタイプは欠けや剥がれが生じやすいため特に注意
ラチェットがゆるくないこと
※ラチェットを一段だけかけた状態で手の平に数回打ち付け、すぐに外れる場合は修理が必要
最後まで握り切った際にラチェットが正常に開放されること(マチュータイプ)
バネ部分の摩耗による腐食や、ネジのゆるみがないこと(マチュータイプ)








