感染対策実践ガイド

環境整備

汚染時の清掃・消毒

血液・体液による汚染

血液や体液には、多量の感染性微生物が含まれている可能性があります。これらにより環境表面が汚染された場合は、速やかな除去と曝露・拡散防止が重要です。

個人防護具(PPE)の着用
作業者は自身の曝露を防ぐため、また周囲に汚染を拡散させないため、必ず手袋などの個人防護具(PPE)を着用します。特にノロウイルスなどが疑われる嘔吐物処理の際は、エアロゾル中に含まれるウイルスの吸入を防ぐため、サージカルマスク(場合によりN95マスク)も着用することが望まれます。

血液・体液汚染の処理
血液や体液の付着箇所の消毒には、基本的に次亜塩素酸ナトリウムを使用しますが、次亜塩素酸ナトリウムは有機物(血液や汚れ)が存在すると効力が急速に低下します。そのため、まずはペーパータオルなどで汚染箇所を、外側から内側に向かって汚染を広げないように拭き取ります。その後、次亜塩素酸ナトリウムを含浸させたペーパータオルなどで汚染箇所を中心に広めに消毒します。
東京都健康安全研究センターの調査では、模擬嘔吐物を1mの高さから落下させると半径約2mの床の範囲に飛散し、80cmの高さから落下させると、160cmの高さまで飛散したことが報告されています。飛散範囲は嘔吐時の状況や嘔吐物の性状などの条件により異なりますが、汚染が目に見えない範囲まで微生物が広がっている可能性を考えて、広範囲を消毒することが望まれます。

次亜塩素酸ナトリウム使用時の清拭素材の選び方
次亜塩素酸ナトリウムを用いて消毒を行う際は、薬液を含浸させる清拭素材にも注意が必要です。
次亜塩素酸ナトリウムは有機物によって分解されやすい性質があるため、色のついたペーパータオルや新聞紙を使用すると、脱色により塩素成分が消費されるため、塩素濃度が低下してしまいます。消毒効果を確実に発揮させるためには、汚れのない白色の雑巾や、塩素を消費しにくいクロス素材、白色のペーパータオルなどを選択することが大切です。

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汚物処理方法(例)

  • 手順パネル
    「殺菌・漂白剤 ジアノック」他、サラヤ製品を用いた汚物処理マニュアルをご用意しています。

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  • 教育用動画
    汚物・吐物処理の例を動画でご覧いただけます。
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特殊な病原体による汚染

VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)やクロストリディオイデス・ディフィシル、ノロウイルスなど、環境を介した伝播リスクが高い微生物については、患者が退室(退院)した後の病室は、特に入念な清掃・消毒(ターミナル清掃)を行う必要があります。

病原体に応じた消毒薬の選択
微生物の種類によって有効な薬剤が異なるため、必要に応じて適切な選択が求められます。
薬剤耐性菌(VRE、MRSAなど)は日常的に使用される第四級アンモニウム塩や両性界面活性剤を含んだ除菌洗浄剤で十分除去が可能ですが、消毒薬耐性が高いクロストリディオイデス・ディフィシル芽胞やノロウイルスは次亜塩素酸ナトリウムなど、これらの微生物に効果のある消毒薬を使用する必要があります。

ノータッチ技術による清掃の補完
人の手による清掃・清拭は、ばらつきや拭き残しのリスクが伴います。この課題を解決するため、ノータッチ技術の導入が注目されています。主に紫外線照射装置と蒸気化過酸化水素装置が使用されており、どちらも芽胞を含む広範囲の微生物に対する有効性が報告されています。これらの技術は、人の手による清掃や清拭を代替するものではありませんが、清掃後の仕上げとして活用することで、環境からの感染リスクを最小限に抑えることが可能です。

表.紫外線照射装置と蒸気化過酸化水素装置の特徴

 

紫外線照射装置

蒸気化過酸化水素装置

除菌時間

15~20分間(機種・対象微生物による)

30~60分間

換気・空調システム停止

不要

必要

有効範囲

直接または間接的に照射される範囲

閉鎖空間全体

除菌後の部屋の使用

直後に使用可能

稼働後2時間程度エアレーション(強制排気)が必要

文献5より一部改変

参考

1)大久保憲, 尾家重治, 金光敬二 編集, 2025年版 消毒と滅菌のガイドライン, へるす出版, 東京,  2025.

2)CDC. Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities. 2003.

3)国公立大学附属病院感染対策協議会 編集, 病院感染対策ガイドライン2018年版, じほう, 東京, 2018.

4)東京都健康安全研究センター:ノロウイルス対策緊急タスクフォース 最終報告:平成22年9月:https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/assets/diseases/gastro/noro_task/final_report.pdf

5)飯沼由嗣:グラム陰性薬剤耐性菌制御に関わる環境整備に関する資料集:2018 年 12 月: https://amr.jihs.go.jp/pdf/201812_grams_chromosome.pdf