Q 手指衛生の遵守は、どのように確認したらよいでしょうか?
第三者が医療従事者の手指衛生行動を直接観察する方法と、自己申告を行うあるいは手指衛生剤の使用量を測定するなど間接的に観察する方法があります。
解説
手指衛生の遵守は、医療現場において病原微生物の伝播を防ぐために最も重要であることは、広く認知されています。手指衛生の遵守を確認する方法は複数あり、それぞれ長所と短所があります。主な方法としては、直接観察法と間接観察法があります。直接観察法は、第三者が、手指衛生が必要な機会と実際に行った回数、さらに手技などを調査する方法のことです。一方、間接観察法は、聞き取りまたは質問用紙を用いて、手指衛生回数などを調査する方法(自己申告)、アルコール手指消毒剤や石けんなどの使用量を測定する方法(手指衛生剤の使用量調査)があります1,2)。その他にも、無線デバイスを内蔵したアルコール手指消毒剤や石けんのディスペンサーを用いて、手指衛生回数に関する情報を得る方法(自動モニタリングシステム)、なるべく目立たない場所にビデオカメラを設置し、手指衛生行動を観察する方法(ビデオ監視)、薬剤耐性菌の伝播率や医療関連感染率を用いる方法(医療関連感染率)などが間接観察法に含まれます1,2)。
手指衛生の遵守を確認する場合は、それぞれの長所と短所を踏まえ、自施設に適した方法を選択する、あるいは組み合わせて実施することが重要です。
*手指衛生遵守率の評価方法について、詳しくはこちら
【コラム】
手指衛生遵守率と手指衛生剤使用量の計算方法
手指衛生の遵守状況を確認する方法としては、研修を受けた第三者による直接観察法がゴールドスタンダードであるとしています。直接観察法では、観察者がケアの場面を直接見ながら、感染対策Q&A(Q5)で解説した5つのタイミングにおいて、手指衛生が実施されたか否かを記録し、次の計算式で遵守率を求めます。詳細な手順はWHOのマニュアルに解説されています3)。

手指衛生の遵守率を確認する別の方法として、手指衛生剤の使用量を測定する方法があり、多くの施設で採用されています。この方法には、選択バイアスがかかりにくく、また安価であるという利点がある一方で、個々の医療従事者が実施する手指衛生のタイミングや方法などの行為について評価することが困難であるため、WHOは直接観察法と併用することを推奨しています。以下に1,000患者・日あたりのアルコール手指消毒剤の使用量を月毎に算出する場合の計算式を示します4,5)。

1ヶ月間のアルコール手指消毒剤の使用量を求める方法はいくつかあります。例えば、薬剤部からのアルコール手指消毒剤の払い出し量を用いる方法や、アルコール手指消毒剤の重量を測定し使用量を算出する方法、あるいはアルコール手指消毒剤の容器に印を付けて使用量を確認し算出する方法などがあります4-7)。

参考文献
1)World Health Organization. WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care: First Global Patient Safety Challenge Clean Care Is Safer Care.
2)Haas JP, Larson EL. Measurement of compliance with hand hygiene. J Hosp Infect. 2007; 66(1):6-14.
3)World Health Organization. Hand Hygiene Technical Reference Manual: to be used by health-care workers, trainers and observers of hand hygiene practices.
4)洪愛子編集. 現場を変える!徹底させる!手指衛生パーフェクトガイド. メディカ出版. 2008.
5)久斗章広, 宮良高維, 森山健三, 他. 手指衛生コンプライアンス指標の向上とMRSA分離率の減少. 日本環境感染学会誌. 2011; 26(4):243-8.
6)本田順一, 小川 節子, 野田 順子, 他. 速乾式手指消毒薬使用量とMRSA検出数. 環境感染. 2005; 20(4):231-6.
7)西岡達也, 岡本和恵, 井澤初美, 他. 速乾性手指消毒剤による手指衛生の遵守率向上への取り組みとその評価. 日本環境感染学会誌. 2010; 25(1):37-40.

