Supplysm

Supplysm 2026 vol.18 no.1最新号

手術室の感染対策

滅菌供給部門の現状と改善活動について~役員間相互監査を実施して~

武内 未来子
洛和会丸太町病院 手術看護特定認定看護師 手術センター師長

※本記事は、「Supplysm 2026 vol.18 no.1」(2026年2月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

はじめに

皆さん、こんにちは。滅菌供給部門において、洛和会丸太町病院の取り組みについてご報告いたします。テーマは「滅菌供給部門の現状と改善活動について~役員間相互監査を実施して~」です。今回の内容は、第100回日本医療機器学会大会で発表した内容を改編し、より詳細な背景や改善プロセスを含めてお伝えしたいと思います。
まず、当院について簡単にご紹介します。洛和会丸太町病院は京都市中京区に位置し、地域の急性期医療を担う中核病院です。一般病床150床を有し、そのうち6床が高度治療室(HCU)です。救急・総合診療科、消化器内科・外科、心臓内科、耳鼻科、整形外科など幅広い診療科を備えています。手術室は4室あり、そのうち1室はバイオロジカルクリーンルーム(BCR)対応です。2024年度の年間手術件数は約2,100件、そのうち7割以上を整形外科手術が占めているという特徴があります。手術センターの職員数は、看護師と臨床工学技士を合わせて26名です。そのうち、手術看護特定認定看護師が1名(筆者)、第一種滅菌技師が1名在籍しています。
滅菌供給部門は、院内滅菌と院外滅菌のハイブリッド体制を採用しており、院内滅菌は委託業者である(株)ルフト・メディカルケアと連携しています。委託業者のスタッフ構成は再生処理担当6名と清掃スタッフ1名で、再使用可能医療機器(RMD)再生処理や器材補充を担っています。滅菌供給部門は一見「裏方業務」と思われがちですが、実際には病院の安全と医療品質を支える“最後の防波堤”です。滅菌や洗浄の質が手術の安全性に直結するため、病院全体の信頼性を左右する極めて重要な部門といえます。

監査を受けるに至った背景

なぜ今回、滅菌供給部門の改善活動に取り組むに至ったか。そのきっかけは、2024年12月に控えていた病院機能評価でした。さかのぼること10年前、当院は現所在地に新築移転をしましたが、当初は院内滅菌を最小限とし、器械は全て院外滅菌をベースとする運用を考えていました。しかし、手術件数の大幅な増加や迅速な対応の必要性から、次第に院内滅菌へ移行する方針となり、最終的には院内滅菌を中心とした体制に舵をきることになりました。設計時にこの考えはなかったため、今の限られたスペースで滅菌供給を行わざるを得ない状況となりました。
そのため、当時の滅菌供給部門は環境整備が十分とはいえず、施設として滅菌保証が担保できる状況にはありませんでした。さらに、業務を委託しているとはいえ、業者任せになっている部分が多く、病院側の管理・関与が不十分である点も課題でした。このような状況を踏まえ、まずは現状把握と課題抽出を行い、客観的な評価を受けることが必要だと考えました。では、どうすればよいのか?その答えとして、「医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール(以下:施設評価ツール)」を活用することにしました。
また、当院が役員間相互監査(後述)を受けるに至った背景には、単なる評価準備だけでなく、「医療安全文化の醸成」という大きな目的がありました。近年、医療現場では「安全管理」「感染対策」「標準化」が強く求められています。特に滅菌供給部門は、手術の質を左右する重要な部門であり、ここでの不備は患者安全に直結します。そのため、今回の監査は単なる点検ではなく、改善の起点であると考えました。

現状把握と課題抽出

まずは2024年8月、施設評価ツールを用いて自己評価を実施しました。ここで施設評価ツールについて少しご説明させて頂きます。
施設評価ツールは、医療機関における滅菌管理体制を客観的に評価し、改善点を明確にするためのチェックリスト形式の評価ツールです。これは日本医療機器学会が策定したもので、施設の滅菌保証の質を高めることを目的としています。このツールは、複数の設問項目に対して「実施している」「一部実施」「未実施」などの選択肢から回答することで、各分野の評価が得られます。評価結果は点数化され、S・A・B・C・Dの5段階で示されます。S・A判定は優良施設とされ、D判定は改善が必要な水準を意味します。評価結果はレーダーチャートなどで視覚的に示され、施設の強みや課題が一目で把握できるようになっています。このツールは、施設内での自己評価だけでなく、外部審査や相互訪問の場でも活用されており、業務改善や教育研修の材料としても有効です。滅菌保証の質を高めるための「気づき」を促す仕組みとして、継続的な活用が推奨されています。
当院が施設評価ツールを選定した理由は、主観的な評価ではなく、客観的な指標に基づく改善を目指したからです。施設評価ツールには、洗浄・組立・滅菌・保管・文書管理・教育など多岐にわたる項目が含まれ、国際基準に準拠した内容となっています。これにより、現場の「見えないリスク」を可視化し、優先順位をつけて改善できる点が大きなメリットでした。
予想していたものの、結果は衝撃的でした。洗浄業務の達成率は6 7%、組立業務は40%、滅菌業務は87%と比較的高いものの、バリデーションは34%、標準作業手順書は10%、他部署とのコミュニケーションは16%と非常に低い結果でした。総合得点は4 9 点、得点率35%で、D判定となりました(図1、表1)。

図1  評価結果レーダーチャート(2024年8月)

表1 評価結果(2024年8月)

評価を通じて明らかになった課題は以下の通りです。

1. 物品の過密化・環境整備の不足

手術件数の増加により、保管庫は収容能力を超え、診療材料が段ボールのまま溢れ、滅菌済み物品と未滅菌物品が混在していました(写真1)。また、滅菌済み物品と未滅菌物品の一時置き場が明確でなく、清潔区域と不潔区域の動線が混在していました(写真2)。

写真1 診療材料が段ボールのまま保管庫に溢れている様子

写真2 滅菌済み物品と未滅菌物品が混在している様子

2. 手順書と実務の乖離

標準作業手順書が2015年から改訂されておらず、当時の業務をそのまま反映した内容となっていたため、現行の業務実態にあわず、最新のガイドラインの推奨とはかけ離れた内容でした。細かいマニュアルは作成されていましたが、慣習や口伝えで業務が行われている状態でした。さらに、委託業者の手順も統一されておらず、指示系統が不明確でした。

3. 設備管理・バリデーション未実施

洗浄器(WD)や高圧蒸気滅菌器(AC)の増設時にバリデーションを実施しておらず、滅菌保証の根拠が不明確な状態でした。

4. 職員教育の不足

滅菌供給部門の専門知識が手術室スタッフに十分共有されておらず、環境整備や滅菌保証の重要性が現場レベルで理解されていませんでした。
4点の課題が挙がりましたが、例えば標準作業手順書が2015年から改訂されていないという事実は、単なる書類不備ではなく、滅菌供給部門の現場での知識更新や教育が滞っていることを意味します。医療機器の進化や感染対策のガイドラインは年々変化しており、古い手順書では最新の安全基準を満たすことができません。また、段ボールでの保管は埃や微生物の温床となり、滅菌保証を損なうリスクがあります。こうした課題は、写真や現場観察を通じて明確になったと思います。

役員間相互監査の実施

こうした課題を踏まえ、2024年8月17日に洛和会丸太町病院にて、自身が役員を務める北摂セントラルサプライ研究会の役員間相互訪問監査が行われました。感染管理特定認定看護師や手術看護特定認定看護師、第一種滅菌技師などの専門家が参加し、事前に施設概要と自己評価を共有した上で、監査施設でプレゼンテーション、施設見学、質疑応答を行いました(写真3-5)。
質疑応答を通じて、他施設の視点から見ることで、「自分たちでは当たり前と思っていた慣習」が、実は改善の妨げになっていたことに気づき始めました。
監査の内容をご紹介したいと思います。まず、洗浄や滅菌といった重要な業務の責任体制が明確でない点が指摘されました。現在は手術センターに業務が紐づいていますが、誰が最終的な責任を持つのかが曖昧なままとなっていました。幸いにも、第一種滅菌技師の資格を持つスタッフがいるため、そのスタッフを中心に責任の所在を明確にし、業務の質を安定させていくことが良いとのことでした。また、業務の一部を外部に委託しているため、契約書に基づいた監督体制の強化も必要でした。マニュアルや手順書など、契約で定められた成果物の提出をしっかり求めるとともに、病院側も業務に積極的に関わっていく姿勢が大切であると助言を受けました。現場では、器械の定数が少なく整形外科手術に偏っており、すぐに再滅菌を必要とする場面が多くあるためか、用手洗浄が多用されている実態がありました。すでに最新の洗浄装置(WD)が導入されているため、これをもっと活用することで作業の効率化と衛生管理の向上が期待できるとのことでした。シンク周辺の清掃や整理整頓も、より衛生的な環境づくりのために見直しが必要です。また、手術に間に合わせるために本来の洗浄・滅菌プロセスを省略し、代替手段を取っているケースも見受けられました。こうした対応がどれくらい行われているかを数値で把握し、コストやリスクを「見える化」することも改善の一歩となります。さらに、医療機器以外の物品に対する滅菌保証については、明確な方針を文書で示すとより良いと言われました。シングルユースデバイスの取り扱いについても、院内全体でルールを整備し、関係部署と連携しながら運用していくことが重要であるとのことでした。加えて、洗浄や滅菌のバリデーションが行われていない点も課題として挙げられました。洗浄管理は滅菌保証の中でも特に重要な役割を担っており、日々の業務の中で安定した品質を保つためには、洗浄器のメンテナンスや水質の確認、計器の精度管理など、細やかな監視体制を整えていくことが大切です。もしコスト面の工夫として洗浄剤を変更される場合には、浮いた分の費用を洗浄評価や機器の較正などに充てることで、全体の品質を維持・向上させることができるのではないかと思います。もし院内での実施が難しい場合は、メーカーと連携しながら現実的な方法を検討していくことが求められます。最後に、滅菌物の保管方法や使用期限の設定についても見直しが必要です。保管棚の配置や高さ、清潔さなど基本的なルールを再確認し、より安全で効率的な環境づくりを進めていくことが大切であると助言を受けました。
このように監査では施設評価ツールに沿って滅菌保証体制や洗浄管理、作業動線、保管方法、職員教育など多角的に評価をして頂きました。結果はD判定となりましたが、これは現状の体制や運用に見直しが必要であることを示しています。そのため是正に向けた計画を立てて、具体的な改善に取り組んでいくことで改善できると考えました。

写真3 用手洗浄の方法を確認している様子

写真4 当院の施設紹介と施設評価を監査メンバーにプレゼンテーションしている様子

写真5 高圧蒸気滅菌器の使用と払出状況を説明している様子

改善活動

ここからが本題です。私たちは改善活動を開始しました。

1. 滅菌供給部門検討チームの結成

手術看護特定認定看護師と感染管理特定認定看護師、第一種滅菌技師、臨床工学技士、事務、委託業者で構成し、毎月1回の定例会議を実施しました。問題点を共有し、滅菌供給部門会議で承認された内容を手術室運営会議で院長にも報告する仕組みを作りました。

2. 環境整備の強化

診療材料保管用の専用ケースを買い足し、段ボールを全面的に撤廃しました。定数・定位置の徹底も図りました(写真6)。
また、スペースの制約により配置変更はできませんでしたが、未滅菌物品と滅菌済み物品のすみ分けを明確にするため、未滅菌物品保管棚を赤テープでマーキングしました。動線が一目で分かるよう視覚的に工夫し、混在を防ぐ体制を整えました(写真7)。

写真6 段ボールを撤廃し折りたたみコンテナへ切り替え

写真7 未滅菌物品保管棚を赤テープでマーキングした様子

3. 標準作業手順書の改訂

委託業者に正式に要請し、事務部門と連携して標準作業手順書を最新の業務内容に合わせて改訂しました。作業手順だけでなく、各工程の責任者、記録様式、トレーサビリティ方法を明文化し、誰が見ても同じ作業ができるようにしました。

4. ACバリデーションの実施

コスト面での課題がありましたが、滅菌供給部門会議で必要性を説明し事務部門の理解を得て、2024年12月に実施しました。これにより、滅菌保証の根拠を明確化できました。

5. 洗浄業務管理

日常点検表を作成・実施しました。また、洗浄剤を純正品からメーカー製品へ切り替え、コストダウンを図りました。アルカリ洗浄剤は1Lあたり1,371円から714円へ、酵素洗浄剤は1,446円から1,428円へ削減できました。さらに、サラヤ(株)によるテストデバイスを用いた洗浄評価をして頂きました(表2-3)。洗浄評価では、数値化した結果をスタッフにフィードバックしました。これにより、改善の成果が「見える化」され、モチベーション向上につながりました。

表2 洗浄評価テストデバイス(報告書より一部抜粋)

表3 残留蛋白質の結果(報告書より一部抜粋)

6. 教育体制の整備

滅菌供給部門業務に関する勉強会を定期的に開催し、洗浄・滅菌・保管管理の知識をスタッフ間で共有しました。院外研修への参加を推奨し、職員のスキルアップを図る仕組みづくりを進めています。

再評価結果

これらの取り組みを経て、2025年8月に再度、施設評価ツールで自己評価を行いました。結果は、洗浄業務の達成率は75%、組立業務60%、滅菌業務93%、バリデーション48%、標準作業手順書3 3%、他部署とのコミュニケーション20%、総合得点は66点、得点率48%でD判定となりましたが、49点から66点へ、35%から48%へ改善しました(図2、表4)。特に「洗浄管理」「作業手順」「教育・運営体制」の3項目で顕著な改善が見られました。この結果は、単なる評価の数字以上に、現場の意識変化を反映した成果といえます。例えば、洗浄業務の点数が上がったのは、日常点検表の導入により、チェック漏れが減少したためです。組立業務の改善は、器材配置の見直しと教育強化が奏功しました。一方で、標準作業手順書やコミュニケーションの点数はまだ低く、今後の重点課題であることが明確になりました。しかし、以前は「委託任せ」「現場依存」だった体制が、現在では多職種が関わり、協働して改善に取り組む体制へと変化しており、改善活動が施設評価ツールに大きく反映された結果となりました。

図2 評価結果レーダーチャート(2025年8月)

表4 評価結果(2025年8月)

まとめ・今後の展望

今回の取り組みを通じて、問題点や課題を明確化でき、また北摂セントラルサプライ研究会の役員間の互いの成長につながりました。解決へのノウハウを知ることで近道となり、役員間相互監査の意義を実感しました。特に「役員間での相互監査」という形式は今回初めてでしたが、他施設の視点や専門家の意見を取り入れることで、自施設の課題を客観的に把握できる非常に有効な手段であると実感しました。
今後は、標準作業手順書を自施設の基準とすり合わせ改訂を重ねていきたいと思います。また、滅菌物の使用期限が滅菌方法によって異なるため、使用期限の統一と保管環境の改善も実施する予定です。そして、職員教育の充実、院外研修への参加体制の整備、委託業者と共に成長する姿勢を忘れず、より良い滅菌供給部門を目指します。また、院内教育プログラムを体系化し、滅菌供給部門スタッフだけでなく手術室スタッフにも滅菌の基本を理解してもらう取り組みを進めていきたいと思います。さらに、委託業者との連携を強化し、定期的な合同研修の実施も予定しています。
これは希望的意見になるのですが、当院でもDX化を推進しており、手順書や点検記録を電子管理することで、トレーサビリティを確保できればと考えています。これにより、監査対応だけでなく、日常業務の質向上を目指していけるのではないかと思っています。
今回の取り組みは、単なる監査対応ではなく、医療安全文化を根付かせる第一歩でした。相互監査の「輪」をさらに広げ、施設同士が互いに学び合い、高め合う関係を築くことで、地域全体の医療安全と滅菌品質の向上を目指していきたいと考えています。
小さな一歩から始まった取り組みですが、完璧を目指すのではなく、できることから着実に進めることが、結果として大きな変革につながります。これからも「共に学び、共に成長する滅菌供給部門」を目指し、より良い体制づくりに努めていきたいと思います。ありがとうございました。

sup18-1-ope.pdf