Supplysm

Supplysm 2024 vol.16 no.2

特集

滅菌供給部門における第三者評価と医療現場における滅菌保証のガイドライン2021

長瀬 清
岐阜大学医学部附属病院 手術部 副部長

※本記事は、「Supplysm 2024 vol.16 no.2」(2024年8月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

1. はじめに

滅菌供給部門は、品質マネジメントシステムQMS:quality management system に従い、再使用可能医療機器RMD:reusable medical deviceの洗浄滅菌を適切に実施する役目を担っています1-3)。滅菌供給部門は、業務委託されることも多いですがその専門性は高く、感染対策における重要部門です。洗浄や滅菌の質保証とバリデーション、感染対策、リコール、洗浄・消毒の中央化、既滅菌物の保管、業者貸出し手術器械など様々な課題があり、きちんと滅菌されたRMDを医療現場に届けるために適切なプロセス管理や評価が求められます。
本稿は、医療現場における滅菌保証のガイドライン2021(以下、ガイドライン2021という)2)や医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール(以下、施設評価ツールという)3)を用いて滅菌供給部門の特徴と、第三者評価から求められる課題や条件を整理します。

2. 日本における第三者評価 :病院機能評価の受審と対策としての解説集の役割

日本医療機能評価機構など第三者評価から認証を得ることは、医療の質向上や医療安全の推進など病院経営の根幹にも関わる極めて重要な取り組みです。
病院機能評価は、日本医療機能評価機構が実施する病院のあらゆる機能を対象とした審査です。その目的は、監査ではなく質を向上させること、職員と患者の安全の確立に加え質向上に取り組む意識化や行動化を通して職員全体が主体的に取り組める仕組み、そして病院組織全体の運営管理を評価し組織横断的な質改善活動を支援するツール(成果と課題を明確にし、課題を一緒に考えること)を目指しています1)
病院機能評価は、2013年4月に第三世代(3rdG:Ver.1.0)に移行し、その後も改訂を重ね今日に至っています。病院の特性に応じた機能種別が設定され、地域医療を支える中小規模の病院である一般病院1、二次医療圏の急性期医療を支える一般病院2、そして主に特定機能病院を対象とする一般病院3などに分類され、それぞれの役割に応じて審査されています。
2023年4月から3rdG:Ver.3.0に改められ、従来は一般病院3といわれる特定機能病院を対象としていた評価方法がそれ以外の病院(主に一般病院2)にも展開されるなど、評価方法が見直され大幅に拡充されました。一方で機能種別に応じて評価基準が異なるため、日本医療機能評価機構からは機能種別ごとに解説集が提供され、病院や医療機関の機能や質を評価するための手法や基準が解説集に記載されています。
病院機能評価では、書面審査と訪問審査の両面から審査されます。書面審査では、病院が事前に日本医療機能評価機構に提出した自己評価票を中心に、訪問審査ではケアプロセスシミュレーションをはじめ病棟訪問や部署訪問を通じて審査が行われます。病院機能評価の要求水準は解説集に示されており、また審査も解説集を逸脱して行われないとされているので、受審病院側も解説集に基づいた対策が求められます。
具体的には、受審病院は解説集を通して院内を振り返り、現状とのギャップを認識し、改善策を考えて話し合う、行動し活動するなどです。誤った問題を解決しても何も改善しないため、最初に行う対策は、解説集を理解し本来のあり方や解決すべき課題を抽出する作業です1)。しかし本来のあり方や解決すべき課題の抽出作業は、習慣や因習に影響され課題が日常業務に埋もれるなど困難を伴います。そこで解説集が何を意図して記述されているか客観的に読み解くことが重要です。解説集は、業務で必要とされる条件や項目をすべて列挙しているわけではありませんが、医療安全や感染対策をはじめとする日本医療機能評価機構が不可欠と考える条件を一貫して述べています。つまり解説集全体を読み通すと、正しい問題の抽出やヒントが容易に得られると思われます。
なお解説集は書店での取扱いはなく、日本医療機能評価機構から受審病院に対して配付される、あるいは日本医療機能評価機構のHPからのみですが冊子体を購入できます。

3. 院内感染対策における滅菌供給部門の役割

第5次医療法改正に伴い、感染対策として院内に感染防止対策部門の設置や、院内感染管理者の配置が求められました。院内感染対策では、職員それぞれの努力だけでなく病院全体で取り組み、どの病院でも感染対策のマニュアル策定や様々な指針整備が求められるため、院内感染管理者の役割や具体的な業務も明確にされています。
そして洗浄・消毒・滅菌・手術器具の取扱いも、滅菌供給部門で使用する自部署のマニュアルに記載されるのみでなく、感染対策のマニュアルとの連携により院内で共有される必要があります。また洗浄・消毒の中央化を含めた院内洗浄のあり方や汚染されたRMDの適切な搬送方法の共有など、滅菌供給部門として医療関連感染制御における組織的な位置付けも必要です。さらに役割や責任の所在を明確にすると院内全体の感染対策に役立ちます。
例えば、RMDのリコールは院内の全部署に影響が及びます。あらかじめリコールを定義するなど想定されるリコールの種類、リコールが発生した際の手順など、必要時に適切な対策が取れるような仕組みが求められます。物理的パラメータや各種インジケータの不具合、インジケータの変色不良、洗浄不良、異物の混入、不十分なラッピング、ヒートシールの不良、有効期限の逸脱などは当然ですが、員数不足や員数のカウントミスもリコール対象と考えます。
滅菌供給部門として、リコールを含め院内感染管理者や感染防止対策部門と感染対策のマニュアル策定に関与する必要があります。

4. 滅菌供給部門が向き合う特殊な2つの課題

院内感染対策において重要な役割を担う滅菌供給部門には、院内の他部署と比較して特殊な課題が2つあります。
1つは、感染管理を含む病院機能の重要な領域を担っているにもかかわらず、多くの病院では洗浄滅菌業務として外注委託され、病院職員による滅菌供給部門の運営や業務の関与が乏しいという点、もう1つは洗浄滅菌業務の質はプロセス評価が中心であり、滅菌後のRMDはその1つひとつが実際に検証されないまま、臨床現場で使用されるという現実です。
現在ではどの病院でも様々な業務委託が行われています。むしろ効率的な業務委託は、病院の重要課題です。委託にあたっては、委託する業務の検討、適切な契約、病院側の管理者による委託業務と履行確認、委託した業務の評価などが適切に行われる必要があります。委託により専門知識や技術が活用できるため業務の質向上が期待できること、また周辺業務を委託することで病院側も業務の効率化や生産性の向上が可能になる利点があります。しかし委託による課題は、業務は委託できても責任は委託できないという点であり、常にこの点を考慮します。
病院は、洗浄滅菌という感染管理に関わる重要な病院機能の一部を委託しても、リコールなど事故発生時の対応や、委託業務の質と履行確認などの責任をどのように果たすのか、事前に委託業者と定期的な話し合いが必要です。病院側も専門知識を備えた職員が必要であり、委託業者との知識が非対称であれば、業務内容の適切な評価が困難です。よってどれほど委託業者が優秀であっても、また医療関連サービスマーク取得業者であっても、委託業者との契約やコミュニケーションなどを通して、病院側の責任を果たす必要があります。
もう1つの課題も、洗浄滅菌業務の特殊性に関わります。すべてのRMDは確実に滅菌できているという直接的証拠に従い臨床使用されるのではなく、正しいプロセスを経て再生処理されたという条件で、(確実に滅菌できているだろうという推測の下に)臨床使用されているという事実です。
この事実は、洗浄滅菌業務におけるバリデーションを含めたプロセス管理の重要性を示しています。国際標準化機構ISO:international organization for standardizationの規定でも、該当する製品の質が事前に検証できないという点で、洗浄滅菌は特殊な領域と見なされています。滅菌供給部門において、常に適切なプロセス管理が求められる理由です。
滅菌供給部門にはこのような特殊な2つの課題がありますが、実は同じ課題を異なる視点で捉えたに過ぎず、背景となる考え方は同じです。この2つの課題を解決するために、滅菌供給部門では、医療機器の製造に特化したISO13485に基づく品質マネジメントシステムQMSが求められています。そしてこのQMSの仕組みは第三者評価でもガイドライン2021や施設評価ツールでも同じように問われています。

5. 滅菌供給部門で求められるISO13485:QMSと標準作業手順書

ガイドライン2021の冒頭に、「滅菌供給部門におけるRMDの再生処理は、QMSを基盤としたバリデーションに従って実施する」と書かれています2)。つまり滅菌供給部門では、洗浄、消毒、検査保守、組立包装、滅菌、供給によりRMDが再生され、この再生処理されたRMDは清浄で無菌性が確保される必要があります。RMDとして必要な品質性能が恒常的に確保されていること、これを達成させるのが洗浄、消毒、包装、滅菌の各プロセスのバリデーションであり、バリデーションとはISO13485が求めるQMSに基づきます。つまり「洗浄や消毒、滅菌等の後でも形状や強度、性能に変化がないこと、RMDの特徴・特性に応じた洗浄、消毒、滅菌等の方法が定められていること」は必ず達成すべき条件です1)
このISO13485では、次の5つの項目が求められています。標準作業手順書の作成と作業記録の整備、責任と権限の明示、RMDの識別方法、作業者に対する教育訓練、そして滅菌供給部門の責任者です。
ガイドライン2021に、「滅菌供給部門におけるRMDの再生処理はQMSを基盤としたバリデーションに従って実施すること」と述べられているように、最初に標準作業手順書の作成が求められます。バリデーションとは、客観的証拠を得ることにより、恒常的にあらかじめ定められた仕様に適合する製品が得られることを確立する手順とされています。何を洗浄のバリデーションとするのか、滅菌のバリデーションとするのか、施設ごとに決める必要があります。これを標準作業手順書に落とし込みます。
そして何を標準作業手順書に記載するかは、施設評価ツールが参考になります。この施設評価ツールでは、標準作業手順書に記載すべき項目として、回収、洗浄、組立、滅菌、保管、業者貸出し手術器械、清掃、災害時の対応などの項目が挙げられています。特に洗浄、組立、滅菌では、RMDごとに洗浄方法の選定、乾燥や清浄度判定の方法、機能性を確認する方法、ラップ材や滅菌コンテナの選択、滅菌方法、保管条件や保管方法まで、記載すべき事項は幅広くあります3)。施設評価ツールには必須項目が設定されているので、これらの項目を列挙するだけで、必要事項が網羅された標準作業手順書が完成します。
しかしどのような標準作業手順書が必要かという議論の前に、滅菌供給部門で働く誰もが理解でき共有できるという視点で標準作業手順書が作成されることが重要です。第三者評価では、RMDの特徴・特性に応じた洗浄、消毒、滅菌等の方法が定められていることが求められています。実際の標準作業手順書の作成では、各プロセスの過程における責任と権限を踏まえ、作業者の教育訓練の教材として代表的なRMDやその種別ごとに標準作業手順書を作成すれば、大きな労力にならないと考えられます。
なお医療関連サービスマーク制度において、受託業者は様々な条件を満たすことが求められています。管理体制、備えるべき機器と設備、医療用器材の消毒・洗浄・包装、医療用器材の滅菌、滅菌済みの確認と表示方法、滅菌済みの医療用器材の整理・保管、運搬、業務の案内書、そして標準作業書や作業日誌が求められます。そのため受託業者は滅菌消毒業務の標準作業書を備えていることが求められる4)ので、委託側の病院はこの確認が重要です。
しかし標準作業手順書は必ずしもすべての施設で作成されていないという報告5)があり、標準的な標準作業手順書の見本やひな型もありません。病院が業務委託する際は、標準作業手順書により手順やバリデーションの方法が具体化され、規定通りに行われることが病院と委託業者の間で確認されていれば、前述した滅菌供給部門に関わる特殊な2つの課題がいずれも解決できると考えます。

6. 単回使用医療機器 SUD : single use deviceをめぐる課題

SUDをめぐる対応も重要です。どの病院もSUDの再使用を推奨せず、SUDは再使用していないと主張し、たとえSUDの再使用例があったとしても承知していないと思われます。どの第三者評価もSUDの再使用を禁止していることや、SUDの再使用がメディアで報道され様々な批判があった過去も理解しています。
しかしお題目のように「SUDの再使用はない」と言い切れるほど、再生処理の過程は単純ではありません。意図的にSUDを再使用する病院には何も言及できませんが、誤って再使用されるSUDをめぐる問題として、使用部署と滅菌供給部門の関係、SUDが内包する問題、さらに倫理的な問題があります。そしてこの3つの問題が院内で管理されていれば、どの病院もSUDの再使用を行っていないと主張できると考えます。

6-1)SUDの使用部署と滅菌供給部門が関わる問題

滅菌供給部門の役割から考えます。滅菌供給部門は外部委託が多く、洗浄滅菌依頼に対応する再生処理が委託を受けた業務です。ニーズに対してサービスを提供します。そのため滅菌供給部門の立場から考えると、再生処理してはいけない物品が洗浄滅菌依頼されるとは考えづらく、ニーズに対するサービス拒否も難しい現実があります。つまり技術的に再生処理が可能とみなし再生処理を行っても、滅菌供給部門の役割としてやむを得ない事情があります。そもそも再生可能か単回使用かについて識別する業務までを委託されていません。病院は、委託業者が自発的にSUDを識別すると期待してはいけないし、滅菌供給部門が誤って再生処理しても滅菌供給部門に第一義的責任を求めるのは誤っています(図1)。SUDが誤って再生処理されないよう識別するためには、業務を全面委託としない、滅菌供給部門にも病院スタッフを配置するなど、滅菌供給部門が適切に構築されるべきです。
また、SUDの仕様は開封時に確認するため、SUDと識別する責任や、SUDの再使用を防止する責任は使用部署あるいは再生処理の依頼者にあります(図2)。まずSUDを廃棄する運用の徹底が求められます。次に感染防止対策の観点から再生処理を依頼する担当者の責任も明確にすべきです。つまりSUDが再生処理の依頼をされない仕組みが必要です。
しかし滅菌供給部門も病院組織の一部であるので、感染対策に協働する責任があります。SUDが洗浄滅菌依頼されないという前提で物品管理しないのは、ルールが形骸化します。例えば滅菌供給部門も洗浄滅菌する物品を事前にリスト化して識別する、あるいは添付文書も管理しSUDを識別する、さらに感染防止対策部門を通してSUDが洗浄依頼されないようにする仕組み作りが求められます(図3)。

図1:SUDである開封前のステープルリムーバー(左)と、SUDと知らず誤って再滅菌されたステープルリムーバー(右)

図2: 外装に再使用禁止マーク(〇の部分)が入った製品に切り替えたCO₂サンプリングチューブ

図3:歯科口腔外科外来において、器具の廃棄/再生をまとめた一覧表

6-2)SUDの識別に関わる問題

2つ目はSUDそのものが内包する問題です。例えば、再使用は禁止でも「院内で滅菌してから使用する」と添付文書に書かれ、院内滅菌が禁止されているわけではない高度管理医療機器の医療材料、SUDなのに個別包装には「再使用禁止」と明記されていない物品(図4)、すべてステンレス製なのに「再使用禁止」とされているSUDの鋼製小物、またSUDではありませんが、「3回をめどに交換する」と上限再生回数があいまいな医療機器など、直感では識別しにくい物品が複数あります。
SUDの識別には、製品の外装や添付文書の確認、メーカーへの問い合わせが必要です。

図4:外装に再使用禁止マークが入っていない製品として唯一残るバイトブロック

6-3)倫理に関わる問題

3つ目は、それでもどうしてもSUDを再滅菌して欲しいと無謀な依頼をする一部の医療者に対する対応です。権威勾配の中でどう断るか、どうしたら断れるかはマニュアルに掲載されていません。病院経営上の理由や予備物品の欠品など様々なご託宣を並べられ、それに反論しても論点がすり替えられるなど、無駄な労力が求められます。
その際に、誰もが納得する明快な断り方が1つだけあります。それは、「法律上あるいは制度上できない」という(法律かつ第三者的な)理由を伝える方法です。「登録されていない物品は技術的に再生処理できない」と伝えるのも簡便です。登録されていなければ、洗浄条件も滅菌条件もわからないと伝えれば十分です。現場の問題として、洗浄条件も滅菌条件も不明な物品の再生処理はお引き受けできません。ほとんどの依頼者は洗浄滅菌の仕組みがわからず、理解している人は依頼しないので、反論できず引き下がると思われます。
第三者評価の審査において、「洗浄滅菌する物品のリストはありますか」「どのような物品を再生処理していますか」「再生処理依頼の伝票を見せて下さい」「再生処理できる物品はどのように決められていますか」などと質問されると、SUDに関わる問題が露呈します。滅菌供給部門は、病院のあらゆる部署の様々なニーズを受け止めるゴールキーパーのような部署です。しかし無理難題への対処だけでなく、洗浄滅菌依頼された伝票などを見返し、物品ごとに洗浄や消毒・滅菌方法についてリストを作成すれば、つまり標準作業手順書にリストを組み込めば、SUDの再生処理に関わる様々なトラブルは減ると思われます。

7. 再生処理の上限が定められている物品

SUDと直接関係ないのですが、再生処理できる上限回数が定められているRMDの回数管理も重要です。このようなRMDは、再生処理の回数をどう管理しているか説明が求められます。
しかしこれは簡単なようで難問です。外装や化学的インジケータに再生処理回数をマジックで記入するのは好ましくないので、回数管理のための専用台紙が必要になります。微細な手術で用いられる細いドリルバーの使用回数もどのように識別したらよいか、(使用回数が異なる)複数のドリルバーをまとめて洗浄する状況に、適切なアイデアは難しいものです。
更に極端な例があります。気道確保に用いられる声門上器具の中には、蒸気滅菌で40回まで再生処理できる製品があります。サイズを別にすればまったく外観が同じである声門上器具をまとめて再生処理すると、再生回数をどう管理したらよいか皆目見当がつきません。識別するために1本ずつ洗浄して滅菌する手間を考えると、SUDの利用を検討されてもよいと考えます。

8. 滅菌供給部門の専門性の高さ

そもそも洗浄滅菌領域は専門性が高いため、丁寧に説明しないと他部署から理解されない、あるいは理解してもらえない領域です。専門用語が多く専門知識も必要です。洗浄方法や洗剤種別、滅菌方法も多種多様で、それぞれ規則や決まりがあります。各RMDにも洗浄や滅菌の条件や特徴があり、なかなか踏み込みづらい領域です。
一方でISO13485に代表されるQMSの考え方は、医療で語られることが多い不確実性という概念の対極に位置します。どのような場合でも厳密な成果(滅菌性)を担保しなければならないという洗浄滅菌の考え方は、工場では当たり前ですが、医療では特殊な領域です。また工場では不良品も一定数を許容しますが、医療では不良品も許容できないため、更に特殊な領域です。
日本医療機器学会が設ける第1種滅菌技師資格や日本滅菌業協会が行う滅菌管理士の資格取得はかなり難関です。第三者評価の機会を活かして、滅菌供給部門の専門性を院内に幅広くアピールする、感染対策で協働するなどの作業は、人材育成や部署の将来性の担保にもつながります。

9. 第三者評価と医療現場における滅菌保証のガイドラインが求める水準

専門性が高いと述べた滅菌供給部門を評価するツールが2つあります。第三者評価と、ガイドライン2021あるいは施設評価ツールです。
第三者評価では、洗浄・滅菌が適切に実施されていることを評価の視点とし、使用済み機器・器材の洗浄・消毒の中央化、滅菌の質保証、既滅菌物の保管・管理、作業環境の整備という4つが評価の要素に加えられています。またQMS、医療安全、感染対策、関係する法律の視点などからそれぞれの要素が解説集で詳記されています。QMSの達成は、病院の機能種別の違いにかかわらずすべての病院で求められる要求事項であり、その点で第三者評価の基準は洗浄滅菌の本質を汲み取っています。
一方で日本医療機器学会からガイドライン2021が発行されたものの、日本国内に存在する数万の医療機関やその滅菌供給部門がこのガイドラインを遵守することは学術的にも技術的にも難しいと思われます。そこで少なくとも満たすべき洗浄滅菌業務を基準とした施設評価ツールが2023年に発行されました。この施設評価ツールもQMSに沿って構成され、特に再生処理業務と標準作業手順書作成が全体の2/3を占めています。つまりどちらの評価ツールであっても本質的な違いはなく、標準作業手順書の整備が重要であると読み取れます。

10. 第三者評価が求める当たり前の基準

ゾーニングやワンウェイ化、そして一次洗浄の中央化は、感染対策上の要点です。
まずゾーニングやワンウェイ化について考えます。滅菌済みのRMDが汚染されないため、既滅菌物と非滅菌物の取り違え事故を防ぐため、どのような作業環境が求められるのでしょうか。例えば滅菌により壁の反対側に滅菌物が移動するパススルー方式は理想的です。しかし滅菌器周辺のスペースに余裕がなく、滅菌器の前で既滅菌物と非滅菌物の配置に苦慮している施設も多いかもしれません。
まず汚染エリアと清潔エリアに分けるゾーニング対策が求められます。そしてワンウェイ化では、既滅菌物と非滅菌物の識別、滅菌器周辺のスペース確保、清潔・不潔・洗浄の作業エリアや動線が交差しないこと、そして使用済み機器・器材の返却、洗浄、組立、滅菌、保管までの一連の業務におけるワンウェイ化が求められます。この問題への対策として、施設評価ツールでは各作業室の広さを尋ねています。つまり広い作業スペースの確保が回答の1つです。
第三者評価では、一次洗浄の中央化も求めています。その理由として、感染対策の標準化や洗浄業務の有効性、経済性のためとされています。使用部署ごとの一次洗浄は感染管理の上からも推奨されず、やむを得ず使用部署で一次洗浄を行う際は、滅菌供給部門と同等の基準で汚染の拡散防止に最大限の注意を払い、確実な防護で実施する必要があります。
また使用後のRMDは、汚染防止のために密閉容器による搬送が求められます。これも医療法や医療関連サービスマーク制度に関連するだけでなく、感染対策で求められる条件です。間違っても患者が触れる可能性がある場所に、使用済みのRMDが放置されてはいけません。
第三者評価では、感染対策や安全管理が重要な要点となっているため、滅菌供給部門も感染対策や安全管理が求められます。

11. 洗浄や滅菌の質保証

洗浄と滅菌の質保証は、第三者評価でもガイドライン2021でも極めて重要です。そしていずれも質保証のために具体的な記述がされています。蒸気滅菌器におけるBD:Bowie Dickテストの実施、物理的パラメータの監視、化学的や生物学的インジケータの使用、生物学的インジケータではPCD: process challenge deviceの併用など、第三者評価でも施設評価ツールでも常にプロセス確認が求められます。化学的インジケータの使用もバッグの内側と外側の両方で求められており、生物学的インジケータの使用頻度に違いがあるものの、インジケータを通した滅菌の質管理が述べられています。
しかし第三者評価と施設評価ツールには相違点も認められます。滅菌のバリデーションは、第三者評価には具体的な記述がなく、施設評価ツールではかなりの項目が列挙されています。例えば第三者評価には熱水消毒の基準や洗浄のバリデーション評価を含め、洗浄の質保証も詳記されていません。これらは今後の課題と思われます。
さらに、フラッシュ滅菌器(重力置換式蒸気滅菌器)の取扱いも盲点と考えています。フラッシュ滅菌器の管理も感染対策上の重要課題ですが、第三者評価でも施設評価ツールでも触れられていません。とても簡便な滅菌器ですがフラッシュ滅菌器には限界もあり、使用頻度が高い施設もあるため憂慮しています。フラッシュ滅菌器を安全に使用するため、フラッシュ滅菌器に関する標準作業手順書も必要と考えます。
業者貸出し手術器械の取り扱いも重要です。業者貸出し手術器械には様々な注意点がありますが、どの施設も滅菌前に業者貸出し手術器械を必ず洗浄すべきです。なぜなら前の使用者が、どのような洗浄工程を経て返却したのかが不明で、洗浄の質が担保されていないためです。見た目のきれいさだけに基づき、多くの施設で軽視されている可能性があります。
このように第三者評価にも施設評価ツールにも追記や改訂をお願いしたい要点も多々あります。

12. 病棟における物流管理

病棟や外来におけるRMDや医療材料の管理、そして感染防止対策も重要です。清掃や整理整頓は当然ですが、滅菌されたRMDや医療材料が引き出しや棚の中に保管されているか、積み重ねられていないか、水気が近くにないか、先入れ先出しで保管されているか、材料の在庫数は適正か、回診車の上で滅菌物と使用後の医療材料が混在していないかなどの管理、また、感染性廃棄物の扱いや使用後の医療材料の取扱いと洗浄室に搬送するまでの仕組みと方法が重要です。
基本的事項ですが、整理整頓が示す概念も重要です。整理とは、「必要なものと不要なものを分けること、不要なものを捨てること」です。整頓とは、「収納や置き場所など物の位置を決めること、使用後に元の位置に戻すこと」です。整理整頓という概念が共有できていないと、片付けると一言で済ませても真意がうまく伝わりません。第三者評価では、滅菌供給部門だけでなく院内のRMDなどの管理も含め評価されます。

13. まとめ

第三者評価と医療現場における滅菌保証のガイドライン2021は、医療の質向上や医療安全を目指す目標や方向性は同じですが、その役割や手法は必ずしも同じではありません。相互に補いながら業務に活かす必要があります。洗浄滅菌領域は、知識や仕組みが多職種で共有されて初めてその専門性が担保されます。そしてこの領域で活躍される多くのスタッフの専門性が、今以上に高く評価されることを祈っています。

機器と感染カンファレンス開催計画について紹介

日本医療機器学会は、学術集会だけでなく様々な講演会を開催しています。機器と感染カンファレンスもそのうちの1つで、医療機器と洗浄滅菌や感染に関わる講演会として全国各地で年に2回開催しています。2024年は熊本市と松山市で開催しました。2025年は3月に倉敷市、夏頃に山形市で開催する予定です。医療機器と洗浄滅菌や感染に関わる最新の知見を取り上げる講演会として、学会員でなくても参加していただけますので、お近くで開催される際は、ぜひご参加ください。

文献

1)公益財団法人 日本医療機能評価機構. 病院機能評価 機能種別版評価項目 解説集 〈3rdG:Ver.3.0〉.
2)一般社団法人日本医療機器学会. 医療現場における滅菌保証のガイドライン2021.
3)一般社団法人日本医療機器学会. 医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール.
4)一般社団法人日本医療機器学会. 高階雅紀編. 医療現場の滅菌. 改訂 第5版. 2020.
5)久保木修. 滅菌供給部門における標準作業手順書に関する実態調査報告(会議録). 医療機器学 2023;93.245.

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