Supplysm 2024 vol.16 no.1
Technical Report
「きれいに洗浄できています」と言うために~RMDにおける洗浄評価の重要性~
- 藤井 幸子
- 群馬大学医学部附属病院材料部 看護師・第1種滅菌技師
※本記事は、「Supplysm 2024 vol.16 no.1」(2024年2月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
はじめに
滅菌供給部門における再生処理は、医療機関によって人員構成や保有機器・設備など様々ですが、施設の規模を問わず、洗浄や滅菌の品質保証が求められています。適切な洗浄が行われずに器材上の初発菌数が106を超えたまま滅菌をしてしまうと、無菌性保証水準(sterility assurance level:SAL)10-6に到達できず滅菌不良になる可能性があります1)。汚染物が付着したまま滅菌をした場合、蒸気などの滅菌剤が器材表面に当たらず、その部分は滅菌できなくなってしまいます。また、細菌の死骸であるパイロジェン(発熱物質)が血流に混入した場合、発熱の原因になることがあります2)。
つまり滅菌前の洗浄は、再使用可能医療機器(reusable medical device 以下、RMD)の無菌性を保証する上でとても重要となります。
洗浄の質保証の考え方
洗浄の質を保証するためには、バリデーションと日常モニタリングが必要となります(図1)。バリデーションとは、品質を満たすためのプロセスを確認して検証を行い、手順化をしていくことです。日常モニタリングとは、検証された工程が確実に実行されているかどうかを確認し記録することです。この2つは、洗浄の質を保証するための基本的な考え方となります。
バリデーションについて
洗浄方法は主に、ウォッシャーディスインフェクター(washer-disinfector 以下、WD)、超音波洗浄、用手洗浄などがあります。今回は最も代表的なWDについて述べます。日本医療機器学会の医療現場における滅菌保証のガイドライン2021によると、バリデーションの流れは、図2のようになります。キャリブレーション(較正)・据付時適格性確認(IQ)・運転時適格性確認(OQ)は、洗浄器メーカーが行います。その後、医療現場にて、稼働性能適格性確認(PQ)・バリデーション報告書の作成・標準作業手順書(SOP)の作成を行います1)
稼働性能適格性確認(PQ)について
IQ・OQを確認した後、洗浄装置に日常使用しているRMDを積載します。あらかじめ定められた設定で作動させ、適切に洗浄できているかを実証します。PQは、最大積載量のRMDを積載し、①残留蛋白質量 ②すすぎ性 ③熱水消毒効果 の3つを確認します。
1)残留蛋白質量の確認
蛋白質は、約50℃以上になると卵を茹でたときのように固まります2)。洗浄評価を行う際には、蛋白質の定量結果に影響を与える可能性があるため、熱水消毒プロセスを適用しない1)とされています。そのため、洗浄装置を熱水消毒工程の前に中断し、対象となるRMDを取り出し検査を行います。
ここからは、当院で行ったPQをご紹介します。積載は図3のように、日常使用しているRMDを過積載にします。被験器材は、手術後2時間経過した、汚染がひどい器材10本とし、洗浄ラックの各段に2~4本ずつ積載しました(表1)。
目視で清潔を確認した後、抽出判定法:ビシンコニン酸(BCA)法を用いて残留蛋白質量を測定しました(図4)。
日本の洗浄評価基準は、洗浄後のRMDに残留する蛋白質量が、200㎍/RMD以下となっています1)。200㎍を超えると不合格となりますが、結果は全て基準値以内でした(表2)。
2)すすぎ性の確認
WDのすすぎ工程に供給された水とすすぎ工程後の排水を採取します。そして、pH、導電率、洗剤成分などを調べすすぎが良好に行えているか判定します1)。
3)熱水消毒効果の確認
WDの庫内に温度センサーを設置し、実際の温度を測定します。熱水消毒工程において設定した温度・時間、もしくは規定された消毒基準に必要なA0値(熱水消毒を評価するのに用いられる値です)以上に到達していることを確認します1)。WDの国際規格では、手術器材を洗浄するWDの性能に、A0値3,000以上達成できることが求められています。
日常モニタリングについて
日常洗浄業務において、その効果を判定するために、WDが規定の洗浄・消毒工程を達成しているか日常的にモニタリングしておく必要があります。洗浄効果判定の方法は直接判定法と間接判定法があり、両者を組み合わせて実施し、結果を保管する必要があります3)。
1)直接判定法
直接判定法とは、洗浄後のRMDに付着している残留蛋白質量を評価する方法です3)。
①目視法
洗浄評価判定ガイドラインでは、洗浄工程終了後の器械に付着している残留物(蛋白質、多糖類、脂質、薬物、など)を目視で確認することは洗浄評価に必須な基本的確認方法である(拡大鏡の使用が望ましい)4)とされています(図5)。
②色素染色法
アミドブラック10B(低臭)Ⓡなど蛋白質と結合する色素で染色し、直ちに流水ですすぎ、目視で判定する方法です(図6・図7)。蛋白質が残留していると青色に染色されるので、簡便に検出が可能です。蛋白質が残留していなければ染色されません(図8)。
また、吸引管などの内腔器材の清浄度チェックは、ナイスチェックⓇにて比色ゲージを用いて確認できます。吸引管にアミドブラック10Bを流して専用の液ですすぎ、その後回収する抽出液の色で残留蛋白質量を判定します。比色ゲージと照らし合わせた結果は、0~10㎍でした(図9・図10)。
③拭き取り法
指標物質が蛋白質のニンヒドリン法は簡便に定性結果が得られます1)。また、ビューレット/BCA法も簡便に半定量値が得られます1)。
2)間接判定法
間接判定法とは、WDが正常に稼働したかどうかを確認する方法です。市販の洗浄インジケータ(以下 、インジケータ)を器材と一緒に洗浄し、洗浄後インジケータに塗布されている色残りの状態で判定します(図11)
例えば、洗剤チューブが詰まっていて洗剤が投入されていなかった場合など、インジケータを使用していればWDの異変に気づくことができます(図12)。
ポイントは、洗浄インジケータの運用および評価方法は、特性を十分理解した上で使用することです1)。同じインジケータでも、WDの機種や洗剤により、色落ちが異なります。そのため、いろいろな種類のインジケータが販売されているなかで、施設のWDと洗剤にあったインジケータを選ぶことが重要です。近年、手術の低侵襲化が進み、それに伴いRMDは内腔が細長い複雑な構造のものが多くなってきており、洗浄が困難になっています。手術支援ロボット用鉗子は内腔表面の汚染度が高く、内腔を有する手術機器の洗浄においては、内腔汚染除去が重要と報告されています5)。当院では、手術支援ロボット用鉗子やラパロ鉗子の洗浄の際は、内腔まで洗浄できているかを確認するために、通常のインジケータと内腔用のインジケータの両方を使用しています(図13)。
インジケータの設置の注意点は、毎回同じ位置に設置して評価することです。また、インジケータの上に、器械や遮蔽物がないことを確認します。
洗浄評価判定ガイドラインでは、インジケータの使用頻度は、WDの運転時に毎回実施することが望ましいとしています4)。当院では毎回インジケータを使用し、WDが正常に稼働したか否かを確認しています。
まとめ
RMDの再生処理において、洗浄の質を担保することが、滅菌の質の保証につながります。滅菌前のRMDの初発菌数を106未満にしない限り、無菌性の保証はできません。そのため、日常的に洗浄ができたかどうか、洗浄評価を行うことが重要です。
2022年5月、医療機器学会が自施設を評価するために発行した「医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール」6)においても、設問46.洗浄工程、洗浄剤などに変更または新規採用があった際、洗浄効果試験を実施し、基準を満たしていることを確認していますか?と記載されています6)。また、設問47.適格性の確認(再確認)として、確認(再確認)項目を定め、年1回以上定期的に洗浄効果試験を実施していますか?と記載されています6)。このことからも、日常的に洗浄評価が求められていることがわかります。
滅菌供給部門では、医師や看護師などから「安全な器材なのか」と問われることがあります。その際に、「当院の器材は、きれいに洗浄し滅菌しているから大丈夫です!」と言えるようにしたいと思っています。そのためには、妥当性を検証し、日常的に決められた工程が行われているか確認し記録していくことが大事だと考えます。
おわりに
多くのご施設で化学的インジケータ(CI)や生物学的インジケータ(BI)などの滅菌の質の保証は、日常的に行っていると思います。しかし、洗浄の質の保証はまだ行えていないところも多いかと思います。滅菌の質を保証するためには、洗浄の質の担保が必要ですので、今後、洗浄のバリデーションと日常モニタリングが普及することが期待されます。
引用・参考文献
1)一般社団法人日本医療機器学会, 医療現場における滅菌保証のガイドライン2021.
2)ヤン・ハュス(Jan Huijs), 高階雅紀監修, 鴻巣浩司, 山根貫志訳, 医療現場の清浄と滅菌, 中山書店, 2012.
3)島崎豊, 吉田葉子:医療器材の洗浄から滅菌まで, ヴァンメディカル, 2013.
4)一般社団法人日本医療機器学会, 滅菌技師認定委員会, 洗浄評価判定の指針を調査・作成するための検討 WG:洗浄評価判定ガイドライン2012年8月.
5)齋藤祐平:手術支援ロボット用鉗子の再生処理における課題, 日本外科学会誌, 2019. 16巻6号, P611-614.
6)一般社団法人日本医療機器学会, 医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール, Ver.1.0, 2022.

