Supplysm

Supplysm 2024 vol.16 no.1

手術室の感染対策

安全な手術器材の提供を目指して ―委託業者と協働した器材の目視点検・メンテナンスの実施に向けた取り組み―

富島 美幸
琉球大学病院 看護部 副看護部長/感染管理認定看護師

※本記事は、「Supplysm 2024 vol.16 no.1」(2024年2月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

はじめに

医療器材の再生処理は、洗浄・滅菌を理解し、医療器材の材質や構造に合わせた洗浄剤や洗浄機、洗浄工程、滅菌方法の選択、滅菌の質保証など多くの知識と技術を必要とします。特に手術器材は、鏡視下手術や手術支援ロボットなど高度医療の拡大により、複雑な構造の器材が増え、その器材の洗浄や組立はさらに熟練が必要です。一方、再生処理を行う部門である滅菌管理部門(Central Sterile Service Department 以下、CSSD)で働くための特別な教育はなく、働きながらスキルを習得することになります。
筆者の施設では、以前まで手術器材の洗浄を手術室看護師が手術の合間や夜間に手術部で実施していました。洗浄についての知識や設備が十分でない状態での洗浄であったため、手術器材の再生処理の質の担保と、看護師の本来業務への専念を目的に、2017年から手術器材の洗浄・組立業務を材料部に中央化し、それに伴い、手術器材の洗浄・滅菌業務を外部委託しました。しかし外部委託したからといって、その質の担保ができるわけではありません。その理由は、前述のように十分な専門知識と技術を備えるための教育機関がなく、これまでの経験や先輩からの教えが引き継がれることが多いためだと考えます。CSSDの管理者として、委託業者と連携・協働し、ガイドラインをもとに、医療器材の再生処理の質向上に取り組みました。その中でも、器材の目視点検と性能検査、メンテナンス実施体制の整備について報告します。

当院の概要

当院は、病床数600床の沖縄県唯一の大学病院であり、特定機能病院です。手術室は11室(手術器材の洗浄・組立業務の中央化により空いたスペースを活用し、2017年に1室増室)で、年間手術件数は約6,000件です。当院は2025年1月に現在の西原町から宜野湾市西普天間地区に移転を予定しています。移転後は、集中治療部門を増床し620床となり、手術室は14室に増室予定です。

材料部の概要

当院の材料部は手術部とは別の部門として別フロアに位置しています。SPD業務と洗浄・滅菌業務を行っており、SPD業務と手術器材の洗浄・滅菌業務を外部委託し、病棟・外来の器材の洗浄・滅菌業務は病院職員で行っています(図1)。洗浄・滅菌機器等は、共有して使用しています。
2017年に手術部で手術室看護師が実施していた、手術器材の洗浄・組立業務を材料部に中央化しました。中央化に際し、手術器材の洗浄・組立・滅菌業務を外部委託し、担当する部門を分けて共同業務を行っています。

図1 材料部組織図

医療施設の滅菌業務の委託状況

医療施設では、検体検査や清掃、リネンの洗濯・供給、洗浄・滅菌業務など、多くの業務を外部委託しています。その中でも、滅菌業務は一定の水準を満たした業者に委託することが推奨されています。厚生労働省通知で「委託する業務に関する最終責任は医療機関にあるとの認識の下に、滅菌消毒現場の課題を認識し、(中略)受託者との必要な調整及び受託者に対する必要な指示を行う」とし、委託する側の対応が求められています(図2)1)。業務委託契約では、その業務に係る教育・訓練は、受託者が実施することとなっていますが、前述のとおり、最終的には委託する側の責任のもと業務を実施することになるため、その品質について確認および改善する必要があります。
報告書によると、滅菌消毒分野は「成長期」の段階にあり、委託率は年々上昇しています(図3)2)。500床以上の大規模病院では、80%を超えており、全国国立大学病院材料部長会議2019年度調査では43施設中39施設90.7%(一部委託含む)が外部委託している結果となっています。

委託業者との連携と工夫

手術部とCSSD、委託業者、事務部、看護部で月1回のミーティングを実施

ミーティングでは、手術器材の洗浄・組立の中央化に向けて、業務移行の推進と問題の解決に取り組みました。事務部と看護部管理者にもメンバーとして入ってもらい、手術部やCSSD、委託業者では解決しにくい問題に対応してもらいました。洗浄・組立スペースの確保を行い、WD(ウォッシャーディスインフェクター)を1台増設、手術部の組立テーブルをCSSDに移管するなど、作業環境の整備を行いました。手術器材の洗浄・組立業務の中央化は順調に進み、1年で完了しました。

図2 第三 医療機器等の滅菌消毒の業務について (平成五年二月一五日)(指第一四号)(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省健康政策局指導課長通知)

図3 滅菌消毒業務の委託率推移 一般社団法人 医療関連サービス振興会 令和3年度医療サービス関連実態報告書より

院内リソースを活用した教育の実施

当院は病院職員と委託業者が同じ場所、設備を共有して作業を行っているため、業務の実施状況を確認することができます。目視点検の未実施や、作業者の知識不足により器材のメンテナンスが十分に行われず、品質管理が行き届いていない場面が見受けられました。錆や熱やけ器材への対処を行わないと、器材の滅菌不良につながるため、目視点検、性能検査、メンテナンスが実施できるよう取り組みを開始しました。また、病院スタッフに第1種滅菌技師や感染管理認定看護師が在籍しており、リソースを活用した学習会に委託業者も一緒に参加してもらいました。さらに、滅菌管理についてはベテランの暗黙知を技術評価表として形式知に変え、OJTと技術評価を実施する体制を整備しました。委託業者も技術評価を実施して、滅菌業務に携わってもらっています。

事業所責任者・本部責任者とのかかわり

委託当初から業務移行期の混乱が続き、長時間の残業をしながら手術器材の再生処理業務をこなしている状況でした。そのため、離職率が高く、教育してもすぐに人が入れ替わる状況があり、品質管理に大きくかかわる状況がありました。事業所責任者では解決が難しいことだと判断し、当院事務部と委託業者本部責任者に連絡をとり、現状と要望を伝え続けました。この問題に対応して、人員確保業務を本部が支援し、また離職防止・人材育成の視点で、本部責任者が2ヵ月毎に来院し、スタッフの面談を実施する体制が整備されました。本部責任者が来院することで、さらに改善してほしいことなどを伝えやすくなり、継続して改善に取り組んでいることを委託側として把握することができました。

態度・コミュニケーションの工夫

委託側と受託側という立場から、委託業者は弱い立場になってしまいがちです。病院職員は何でもお願いできると勘違いしてしまうことがあり、滅菌してはいけないものを滅菌するよう依頼したり、無理なことをお願いしたりすることがありました。このようなときは、滅菌管理のプロとして、滅菌の質保証ができないものは断ってよいこと、それを伝えにくい時は、CSSD管理者に報告するよう依頼しました。病院スタッフは、「委託業者は滅菌管理のプロとして、契約を結んだパートナーである」との認識を持つ必要があると考えます。「委託しているから当たり前」という態度ではなく、きちんと業務をこなしてくれていることに感謝を伝えることはとても大事なことだと思います。そして、改善してほしいことはきちんと伝え、改善されたか確認することも委託側としての責任です。一方、委託業者は、専門性を認めてもらえるように知識・技術を高め、それを実践してほしいと思っています。

再生処理の流れ

RMD(Reusable Medical Device:再使用可能医療機器)の再生処理過程は、主に回収→洗浄→組立・点検・包装→滅菌→払出・保管です(図4)。この一連の過程の中で、「洗浄工程終了後の器械に付着している残留物(蛋白質、多糖類、脂質、薬物、など)を目視で確認することは、洗浄評価に必須な基本的確認方法である(拡大鏡の使用が望ましい)」と洗浄評価判定ガイドラインに示されています3)。

図4 RMDの再生処理過程

目視点検、性能検査、メンテナンス

目視点検では、洗浄後の器材に異物や汚染が残っていないか、また、孔食や錆、亀裂などがないか、拡大鏡を用いて目視で確認を行います。性能検査は、器材自体の性能が発揮できるような状態かを確認します。クーパーは切れ味チェック、ピンセットは先で組織をつまむことができるか、ラパロ鉗子は動作確認などを行います。メンテナンスは、必要な器材に注油を行ったり、ネジの緩みがないか確認します(図5,6)。
また、錆や熱やけがある器材は、除去する薬剤を使用し特別な処理を行った後、再洗浄します。

図5 器材の目視点検、性能検査、メンテナンス①

左上、右上:照明付き拡大鏡を用いた目視点検の様子
左下: 鉗子類の性能チェック。かみ合わせがずれている
右下: ラチェットチェック。一つ分とめた状態ですぐに外れないか確認を行っている

図6 器材の目視点検、性能検査、メンテナンス②

左上:ボックスロック部分の錆
右上:関節部の亀裂と孔食
左下:剪刀の切れ味テスト。切れ味が悪い場合は、修理や研磨を検討する
右下:洗浄後の剪刀。粘着物が残留している状態

目視点検実施・強化に取り組むきっかけ インシデント事例

当院では洗浄後に汚れや錆が残っている器材が度々発生していました。洗浄不良器材を探し出すのは人の目しかありません。ボックスロックのある器材など一部の器材に目視点検を実施していましたが、そんな中、洗浄不良に気が付かず器材を供給してしまうインシデントが発生しました。滅菌済み剪刀を開封し、使おうとしたところ刃先で糸を引いていたため、使用を取りやめたという事例です。この事例を通し、改善のため洗浄不良対策と、目視点検をすべての器材に実施することとしました。
洗浄不良が発生した要因として、使用済み器材への予備洗浄スプレー未使用による汚れの固着や錆の発生が考えられたため、予備洗浄スプレーを使っていない部署に周知を行いました。また、本事例は粘着物を剪刀で切ったことで、その粘着物が刃先に残留し発生したと考えられました。粘着物はWDでは落とすことができません。この剪刀は主に、外科病棟で創傷処置等のドレッシング剤やテープを切断するために使用されていたため、テープの切断を滅菌剪刀で行う必要があるのか、使用部署と協議し協力依頼を行いました。外科病棟でのドレッシング剤やテープの切断は未滅菌剪刀の使用でもよい処置であったため、専用の剪刀の準備と使用後のアルコール清拭の実施を依頼しました。その後、完全になくなったわけではありませんが粘着物の残留は減少しました。
手術器材では、骨片がはさまっていた事例など、目視点検を実施していれば防げたインシデントが発生していました。また、錆や熱やけのある器材をメンテナンスせずにそのまま組み立てている状況が見受けられたため、委託業者にも目視点検の徹底を依頼しました。
手術器材の錆除去などメンテナンスができない原因には、交換できる器材が不足していることがありました。手術部と連携し交換器材を増やすなどの対応も同時に行っていきました。

目視点検が定着するまで

目視点検が当たり前に実施できるようになるまで約3年かかりました。目視点検を実施すると決めても、全員がすぐに実施してくれるわけではありませんでした。実施しなくてもわかりにくい作業工程であり、多忙な労働環境の中でも実施してもらうために以下の取り組みを行い導入・定着を図りました(表1)。
取り組みを実施していく中で、これまで照明器具としてしか使用されていなかった(ように見受けられた)照明付き拡大鏡を、急にのぞき込む姿がみられるようになりました。そのきっかけとなったのは、滅菌済み手術セットの洗浄評価の結果、孔食のある器材から血液成分が検出されたことでした。検出結果のフィードバックと目視点検方法のレクチャーをメーカーに少人数制で実施してもらい、質問に丁寧に対応してもらいました。これはスタッフにとって衝撃的な出来事で、ガイドラインでいわれている目視点検の必要性や孔食のある器材を使用してはいけない理由がよく理解できた瞬間でもあったようです。一気に目視点検実施率が上がり(表2)、「電子顕微鏡が欲しい」と要望が聞かれるようになりました。目視点検が実施できるようになってから、器材のメンテナンス数が多くなり、交換が必要な器材の提案が行われるようになりました(表3)(図7)。その後1年間のモニタリングで目視点検に関連するインシデントの発生はありませんでした。

表1 目視点検実施のための取り組み

表2 委託業者の目視点検実施率

表3 手術器材(委託業者)のメンテナンス本数推移

図7 メンテナンスが必要な器材

「うちの病院の医療器材は、安全です!」と、CSSDスタッフが自信をもって言えるように!

「そんなこと当たり前でしょ。」と、思われるかもしれませんが、CSSDで働いている方にはそれがいかに大変なことか理解していただけると思います。一言に、「安全な医療器材」といってもその再生処理は専門的な知識と技術を持った人材が、適切に整えられた設備、機器を扱い、常にその動作を確認し行われることが前提にあり、これは簡単なことではありません。当院では、自ら実践していることが“先輩からの言い伝え”で、なぜその方法で実施しているかその理由(根拠)がわからず、現状の方法でよいのか自信が持てないという声が聞かれていました。そこで、滅菌管理の拠り所となる「医療現場における滅菌保証のガイドライン」(図8)を読み合わせし、学びながら、実践していることの根拠を確認しました。また、ガイドラインと乖離していることは何かを把握し、どう取り組むか検討するきっかけとなりました。
現在、日本医療機器学会から「医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール」が発行されており、誰でもダウンロードし活用することができます(図9)。本ツールは、CSSDが実施しなければならない業務内容や運営体制についての項目がチェックリスト方式で網羅されており、ガイドラインより簡便に自施設の再生処理を評価・確認することができます。
また、CSSDで働くスタッフの教育ツールも、ダウンロードし活用できるようになっています(図10)。このようなツールを活用し、学習を深め滅菌管理の質向上に繋げていきたいと考えています。

図8 医療現場における滅菌保証のガイドライン2021

図9 医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール

図10 滅菌管理部門スタッフのための教育ツール基礎編

図8〜10(一社)日本医療機器学会より許可を得て転載

おわりに

手術室では、安全に手術が遂行できるよう、医師や看護師、臨床工学技士、薬剤師などさまざまな専門職がチームとなり患者に関わっています。そして、滅菌管理業務を行うCSSDスタッフや委託業者は、医療施設内にいるどの職種よりも洗浄・滅菌について知識・技術を有している滅菌管理の専門家として、手術に関わっています。私たち、CSSDスタッフ、委託業者はその自覚をもち、知識・技術を深め日々鍛錬していく必要があると思います。

引用・参考文献

1)厚生労働省医政局通知:病院、診療所等の業務委託について(平成五年二月一五日).
2)令和3年度医療関連サービス実態調査結果の概要:一般社団法人医療関連サービス振興会.
3)洗浄評価判定ガイドライン:一般社団法人日本医療機器学会(2012年8月).
4)医療現場における滅菌保証のガイドライン2021:一般社団法人日本医療機器学会.
5)医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールVer.1.1:一般社団法人日本医療機器学会.
6)滅菌管理部門スタッフのための教育ツール 基礎編:一般社団法人日本医療機器学会.

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