Supplysm

Supplysm 2023 vol.15 no.2

Technical Report

内視鏡関連ガイドラインを参考にした内視鏡洗浄・消毒のポイント

前川 晃大
社会医療法人 畿内会 岡波総合病院 感染管理認定看護師 内視鏡技師

※本記事は、「Supplysm 2023 vol.15 no.2」(2023年8月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

当院の紹介

当院は三重県の伊賀地域に位置し診療科20科、病床数335床を有する地域医療支援病院で、地域の中

核病院として救急医療から回復期まで幅広い医療を提供する役割を担っています。
内視鏡センターは、看護師4名、臨床検査技師3名で内視鏡検査介助を行っています。
2021年度の内視鏡検査は、上部内視鏡2,202件、下部内視鏡1,376件、EUS(超音波内視鏡)は430件、ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)は203件行っています。さらにEUS-BD、EUS-GBD等の超音波内視鏡を用いて治療を行うインターベンションEUSに力を入れています。

写真1 社会医療法人 畿内会 岡波総合病院

内視鏡ガイドラインと一次洗浄における注意点

消化器内視鏡は、上部消化管内視鏡、下部消化管内視鏡、十二指腸内視鏡、超音波内視鏡など種類が多いです。これら内視鏡は、観察するためのレンズや生検などで使用する処置具を通すための管路が組み込まれた、複雑な構造であり、多数の患者の検査や治療に繰り返し使用するため適切な洗浄・消毒が必要です。気管支鏡や膀胱鏡は滅菌して使用されますが、消化器内視鏡などは高圧蒸気滅菌ができない構造であり、検査・処置中に患者の粘膜に接触することから高水準消毒が求められる器材です1)。内視鏡に付着した血液・体液等が次の患者への感染源とならないように、内視鏡洗浄・消毒に関するガイドライン(表1)を参考に各施設1適したマニュアルを作成し、洗浄・消毒を確実に実施することが重要です。
2013年に日本環境感染学会、日本消化器内視鏡学会、日本消化器内視鏡技師会の3学会の合意のもとに「消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド」3)(以下、実践ガイド)が発行され、現行の消化器内視鏡の洗浄・消毒方法の主流となっています。この実践ガイドに記載されているベッドサイド洗浄、一次洗浄、自動洗浄・消毒装置についてまとめました(図1)。
検査後のスコープ外表面は、粘液や血液などの体液が付着しており感染の危険性が高いため、検査直後にベッドサイド洗浄を行います。外表面を拭うガーゼ類は酵素洗浄剤に濡らして使用することで汚染物の凝固・固着を防ぐことができます。200mLの吸引にも、酵素洗浄剤を使用します。洗浄剤ではなく消毒剤(アルコール)を使用すると蛋白質などの有機物を凝固させてしまいノズル詰まりを起こしてしまうので、使用してはいけません。
一次洗浄は、内視鏡外表面の汚れを落とし、各種ボタンを洗浄し、内視鏡の管路をブラッシングするように示されています。この際のブラッシングは、流水下において内視鏡管路先端から出たブラシに汚れ(粘液・血液・体液などの有機物、無機物)が付着していないことを目視で確認できるまで繰り返し行うように、用手による洗浄方法(以下、用手洗浄)が示されています。吸引ボタンには、写真2のようにボタン部を押すと青い矢印で示す丸い穴があり、検査・処置で吸引する患者の血液や体液はこの穴の部分を通って吸引装置へと吸引されます。そのためこの吸引ボタンのブラシ洗浄は重要す。赤矢印で示す所は、孔がありブラッシングを行います。さらに用手洗浄後の内視鏡は、自動洗浄・消毒装置によって管路内に洗浄液を流して洗浄と消毒が行われます。消毒を確実に行うために濃度管理を適切に行うことが必要になります。

表1 内視鏡関連ガイドライン

図1 実践ガイドの洗浄方法

写真2 吸引ボタン

特殊スコープの洗浄の注意点

十二指腸内視鏡や超音波内視鏡(コンベックス)には、副送水管路があり、血液、造影剤等の逆流により汚染されます。米国食品医薬品局FDA(Food and Drug Administration、2015)から、十二指腸内視鏡を介したCRE(カルバペネム耐性腸内細菌科細菌)の感染伝播について報告されており、2015年に厚生労働省からも十二指腸内視鏡の洗浄・消毒方法の遵守について医療機関へ通知されています。
副送水管路は、ブラッシングができない細い管路になっており、水圧による一次洗浄が必要になります。管路が細いため10mL以上のシリンジを用いて水圧をかける際にはかなりの力が必要です。そのため、筆者はオリジナル洗浄方法を考えました。副送水管路洗浄チューブ取り付け部(写真3)に専用の洗浄チューブと2.5㏄シリンジと20㏄シリンジを取り付けることで(写真4)、管路内の洗浄を抵抗なくできるようになりました。このオリジナル洗浄の後、自動洗浄消毒装置にて洗浄・消毒を行います。

写真3 副送水管路洗浄チューブ取り付け部

写真4 オリジナル専用の洗浄チューブ

高水準消毒について

高水準消毒薬である過酢酸、グルタラール、フタラールはすべての微生物に有効で、かつ血液などの有機物の存在下でも効力低下が小さいと実践ガイドに示されています。過酢酸、グルタラール、フタラール使用後のすすぎが不十分な場合残留した高水準消毒薬によって有害作用が起きることがあり、十分なすすぎを行う必要があります。緩衝化剤添加後の過酢酸やグルタラールは、使用していない状態においても経時的に分解して消毒効果が劣化するとの認識が必要です。いずれも洗浄使用回数、使用環境により濃度が低下します。そのため濃度管理を適切に行うことが重要となります。消化器内視鏡洗浄・消毒に使用される高水準消毒についてまとめました(表2)。消毒時間については、添付文書には、過酢酸5分間以上、グルタラール30分間以上、フタラール5分間以上とあります。グルタラールおよびフタラールの消毒時間が添付文書と実践ガイドで記載が異なるのは、実践ガイドにおいては種々の実験データや英米での現状を勘案した消毒時間が示されているためです。

表2 高水準消毒 下記表は、実践ガイドを参照

ATPふき取り検査(A3法)を使用した洗浄評価方法

A3法は、ヒト由来の汚れや微生物に含まれるATP(アデノシン三リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、AMP(アデノシン一リン酸)を指標にしています。これらは血液、リンパ液、消化液、唾液、汗などの体液、排泄物、分泌液、組織片などに含まれています。汚れが多いとATP+ADP+AMP量も多いため、その数値から洗浄不足と判断できます。試薬一体型検査キット(写真5:ルシパックA3Surface)および、発光量測定器(写真6:ルミテスターSmart)、内視鏡管路内部のふき取り専用のルシスワブES(写真7)を用いることで、簡単にA3法を行うことができます。内視鏡の吸引管路にルシスワブESを差し込み、管路の先端からふき取り部分先端が現れるまで挿入したら、ふき取り部分が他に触れないようにルシパックA3Surfaceの抽出試薬容器に差し込み、試薬と混濁させます。その後、ルシパックA3Surfaceの綿棒ホルダーを本体に戻し試薬と十分に混濁させ、ルミテスターSmartに入れ測定します。洗浄工程中は、病原微生物が付着している可能性があるので、個人防護具(PPE)の着用や環境周囲の消毒等感染対策を行う必要があります。A3法による測定値は、試薬との反応により発生した光の量Relative Light Unit(RLU)で示されます。
※ルシパックA3Surface、ルミテスターSmartおよびルシスワブESは、キッコーマングループの日本における登録商標です。

写真5 試薬一体型検査キット(ルシパックA3Surface)

写真6 発光量測定器(ルミテスターSmart)

写真7 ルシスワブES

A3法の注意点

(1)検査のタイミング
汚れが残った状態で消毒すると効果は期待できないため、確実に消毒効果を高めるためには、洗浄を十分行う必要があります。ふき取り検査は用手洗浄後の自動洗浄消毒装置に入れる前に行うと用手による洗浄評価ができるため適切な消毒につながると考えます。

表3 消化器内視鏡のA3法の推奨基準値

表4 一次洗浄後のA3法の結果

(2)基準値について

キッコーマンバイオケミファ社では用手洗浄後のA3法で、消化器内視鏡の暫定管理基準値として100RLUを推奨しています(表3)。自施設にて上部内視鏡を実践ガイドに準じて洗浄した際のA3法の結果を示します(表4)。平均は27RLU、中央値27RLU(最大値:35RLU、最小値:16RLU)で暫定基準値内になりました。
A3法による、数値としての評価に加えて、定期的な培養検査にて評価することも必要と考えます。

おわりに

内視鏡洗浄・消毒に関するガイドラインを参考に各施設に応じたマニュアルを作成し、洗浄に携わるスタッフが順守できるよう洗浄担当者が教育していく必要があります。
医療器材は、日々新しくなるため、洗浄方法も変わってきます。そのため定期的に洗浄方法を見直し、洗浄が適切に行えているか評価することが重要です。

参考文献

1)日本医療機器学会. (2015):医療現場における滅菌保証のガイドライン.
2)日本医療機器学会・滅菌技師認定委員会.( 2012):洗浄評価判定ガイドライン.
3)日本環境感染学会・日本消化器内視鏡学会・日本消化器内視鏡技師会.(2013):消化器内視鏡の感染制御に関するマルチソサエティ実践ガイド[改訂版].
4)日本消化器内視鏡技師会. (2004):内視鏡の洗浄・消毒に関するガイドライン(第2版).
5)World Gastroenterology Organisation-Organisation Mondialde Gastro-Enterologie:WGO-OMGE, Organisation Mondiald’ Endoscopie Digestive:OMED, 日本消化器内視鏡技師会訳. (2005), 日本消化器内視鏡技師会会報(36), 東京.
6)David J. WeberMD, MPH. (2013):Assessing the risk of disease transmission to patients when there is a failure to follow recommended disinfection and sterilization guidelines,American Journal of Infection Control 41, S67-S71.
7)Design of Endoscopic Retrograde Cholangiopancretography(ERCP) Duodenoscopes May Impede Effective Cleaning:FDA Safety Communication.
8)キッコーマンバイオケミファ株式会社. (2016):ATP+AMPふき取り検査を用いた消化管内視鏡の洗浄効果の確認, 月間HACCP, 7, 94-104.
9)佐藤早和子, 森下耕治, 笹宏之, 他. (1998):消化器内視鏡の洗浄・消毒に関する基礎的および臨床的検討, Gastroenterological Endscopy,40(3), 543-9.

sup15-2-techreport.pdf