健康すまいる 2025 vol.38
健すまインタビュー
養護老人ホーム 小樽育成院
※本記事は、「健康すまいる vol.38」(2025年9月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
小樽育成院は、要介護者も入居可能な特定施設入居者生活介護(特定施設)の指定を受けている施設です。
今回は手指衛生の取り組みや、感染管理認定看護師である吉村さんの活動などについてお話を伺いました。
取材日:2025年6月4日
手指衛生の取り組み
研修の実施
吉村さん(感染管理認定看護師)
感染対策の基本は手指衛生だと考えているため、手指衛生に力を入れて取り組んでいます。年2回の施設全体を対象としたシミュレーション研修(以下、全体研修)のうち、1回は手指衛生をテーマとし、手洗い手技の評価やWHO手指衛生5つのタイミングなどの教育を行っています。
荘司さん(介護士)
ブラックライトを使用した手洗い手技の評価では、注意して手を洗ったつもりでも、爪先や指の間、手首などに洗い残しがあり、意外と汚れが落ちていないことに驚きました。この研修のおかげで自身の洗い残しやすい部分に気付き、研修後は手洗い時に特に意識するようになりました。
長内さん(介護士)
研修後は、WHO手指衛生5つのタイミングを意識しながら、手指衛生を行うようになりました。以前は、手指衛生というと利用者さんに触れた後に行うイメージがありました。しかし研修で、利用者さんと関わる際に自分が感染源となる可能性があるため、「利用者さんに触れる前」にも手指衛生することが重要だと学びました。現在はケア後だけでなくケア前も含めて手指衛生を徹底しています。
吉村さん
全体研修に参加できなかった職員のため、全体研修後にフロア毎の少人数ミニ研修を実施しています。写真やイラストを多めに用いて、全体研修内容をまとめた資料(下図)を参加者に配布し、15分程度で説明しています。できる限り多くの職員が手指衛生の重要性を学び、取り組むことができるように、このような2段階形式の研修を行っています。
手指消毒剤の携帯
吉村さん
当施設の介護・看護職員は、手指消毒剤(250mL)をポーチやポシェットに入れて携帯しています。導入当初は、「ケアの邪魔になる」「重い」といった否定的な声がありましたが、手指衛生の必要性をこまめに伝えたことで現在は皆が手指消毒剤を携帯するようになり、手指消毒をしないと不安に感じるほど意識が変化しています。
手指衛生への取り組みの結果
長内さん
当施設の利用者さんの平均要介護度は1で、自由に動ける方が多いため、以前は施設内で感染症患者が出ると一気に50人規模で感染が拡がっていました。しかし、手指衛生の取り組み以降、感染症の拡がりは少人数で収まり、ノロウイルス感染症患者は発生しておらず、インフルエンザ感染者も減ったように思います。世間的な影響もあるかと思いますが、やはり手指衛生のおかげだと感じています。
吉村さん
手指消毒剤の使用量が増えただけでなく、感染対策に対する意識も高まったと感じています。例えば、私から指示するよりも先に介護職員から感染対策について提案してもらう機会が増えました。手指衛生をきっかけに感染対策への意識が変わり、その意識が感染者の減少につながっていると思います。
その他の感染対策~感染症別の対応キットを準備~
吉村さん
感染症発生時に速やかに対応できるよう、個人防護具や対応手順書などの必要物品をまとめたキットを用意しています。キットは感染症に応じて3種類(新型コロナウイルス感染症/インフルエンザ/ノロウイルス感染症)を準備しています。ノロウイルス感染症のキットには、ラミネート加工した吐物処理の手順書と、それをすぐ壁に貼れるよう画鋲を入れています。入口すぐの見えやすい場所に手順書を貼ることで、その時の対応者だけでなく、応援に来た人も手順書を見ながら一緒に対応でき、夜勤担当者に交代した際も同様の対応を混乱なく行うことができます。なお、次亜塩素酸ナトリウム製剤は都度濃度調製が必要なため、キットには入れず、別の場所で管理しています。
児玉さん
看護職員は利用者さんの症状などから3種類のうちどのキットが適切かを判断し、介護職員は指示されたキットを使ってすぐに対応します。キットが無かった時は必要物品がバラバラに保管されていて、何を用意したらいいのか分からず困ることもありました。しかし現在は、必要物品が全てキットにまとめられているので、素早く対応することができ助かっています。
感染管理認定看護師(CNIC)を取得
吉村さん(感染管理認定看護師)
取得の経緯
新型コロナウイルス感染症が流行していた時、当施設で唯一医療的役割を担う看護職員が中心となって感染対策を実施する必要があり、感染対策方法に苦悩する場面が多くありました。この経験を機に、感染対策をしっかり勉強し、介護現場で活躍したいという想いで休職して学校へ通い、2023年にCNIC*を取得しました。
*日本看護協会の認定資格
取得後の活動
感染対策委員会の中枢を担い、年2回の全体研修も担当しています。福祉施設は病院と異なり、利用者さんの生活の場であるため、「生活の場を守りつつ感染対策を実施する」という落としどころを探る必要があります。その落としどころを考える時、CNIC取得前は自信を持って判断できませんでしたが、取得後は学校で学んだ知識や技術を基に根拠を持って判断できるようになり、このことがCNICを取得した強みだと感じています。
施設内の活動だけでなく、地域の講演会や研修で登壇する機会も増えました。当施設の法人グループにある小樽市北西部地域包括支援センターで一般市民向けの手洗い講座を行ったり、小樽市の栄養士会総会で手洗い研修を行ったりしました。また、小樽市内の複数の調剤薬局や後志老人福祉施設協議会から、感染対策研修の実施を依頼されています。
今後の課題~薬剤耐性菌について~
薬剤耐性菌対策は福祉施設における今後の重要な課題だと思っています。国内だけでなく、世界中で薬剤耐性菌対策の必要性が訴えられている一方で、多くの福祉施設ではその必要性を十分に認識していないように思われます。福祉施設でどのような対応ができるのか、CNICとして考える必要があると感じています。その対応のひとつとして、標準予防策の徹底、特に接触感染に関連する「排泄物の取扱い」は一番に取り組んでいきたいです。職員が負担なく実施できる方法を検討したいと思います。

養護老人ホーム 小樽育成院
〒048-2671 北海道小樽市オタモイ1丁目20-20
TEL:0134-26-0162 http://www.otaru-ikuseiin.com/ikuseiin
定員数:110名(全室個室) 介護・看護職員数:約30名
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