健康すまいる 2025 vol.38
施設で気になる感染症のはなし
足にカビがニョキニョキ!?足白癬
“足白癬”というとあまり聞きなれないかもしれませんが、“水虫”というとどうでしょう?ものすごく足が痒くなりそうな響きですね。今回はそんな水虫・・・正式名称、足白癬について、深堀りしていきましょう。
※本記事は、「健康すまいる vol.38」(2025年9月発行)に掲載した内容です。記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
白癬って?
白癬とは、皮膚糸状菌(白癬菌)というカビ(真菌)の一種によって起こる主に皮膚表面の感染症です1-4)。皮膚糸状菌に分類される菌は多数あり、日本では10種ほどの菌が知られています2)。その中でも、Trichophyton rubrum(トリコフィトン・ルブルム)やT.interdigitable(トリコフィトン・インタージギターレ)という菌が多いとされています2,4-6)。皮膚糸状菌は、ケラチンという蛋白質を栄養源に生きています2,7)。ケラチンは、皮膚の角質、毛や爪の主成分のため、皮膚糸状菌はこれらのケラチンが豊富にある箇所、とりわけ足底や爪に好んで生息します。
皮膚糸状菌による感染症は、菌の感染部位によって分類されます(図1)。この中でもっとも患者数が多いのが、「足白癬」です。
足白癬と爪白癬
足白癬は、俗称“水虫”といわれています。足白癬は、足の指の間(趾間)が白くふやけたり、皮が厚くむけることで赤みが出たり亀裂が生じたりする「趾間型」、足の裏に小さな水ぶくれができる「小水疱型」、足の裏全体の角質が増殖して分厚く固くなり、ひび割れることもある「角化型」に分類されます(図2)2-4)。特に、湿度が高く皮膚がやわらかい趾間は皮膚糸状菌が侵入・増殖しやすく3, 7)、2023年に実施された調査では、足白癬のうち趾間型が半数以上を占め、次いで角化型(約30%)、最も少ないのが小水疱型(約20%)でした9)。“水虫”というと、一般的に「痒い」というイメージがありますが、実は痒みを伴う足白癬は少なく10%程度とされています2)。角化型足白癬では、ほとんどの場合は痒みが生じないとされています2-4)。
足白癬を治療しなかったり、不適切な治療をしたりしていると、爪に菌が侵入して「爪白癬」になる可能性があります4, 8)。爪白癬は、痒みは出ませんが、爪が白や黄色に変色したり分厚くなったり、爪が脆く剥がれやすくなったりします1, 2)。爪白癬が進行すると、爪全体が破壊されてボロボロになってしまいます8)。また見た目の問題だけではなく、痛くなったり、歩きにくくなったり、爪が浮くことで転倒しやすくなったりすることもあります2, 8)。そのため、肉体的・精神的な負担がかかり、QOL の大幅な低下にもつながります8, 9)。
さらに、足・爪白癬は、皮膚や爪に傷があると傷口から細菌が侵入して、細菌による二次感染を起こす可能性があります2, 7, 8)。深部へ感染が拡がると、蜂窩織炎や壊死性筋膜炎などにつながる恐れもあります。趾間は、真菌だけではなく細菌にとっても増殖しやすい環境のため、趾間型足白癬は特に注意が必要です7)。
2021年に実施された疫学調査では、足・爪白癬は加齢に伴って患者数が増加し、60 歳以上が過半数を占め、70 歳代で最多となることが報告されました6)。また、2023年に実施された疫学調査では、皮膚科を受診した患者(受診目的が足・爪白癬の診察を除く)14,588 例に対して医師による足の健康調査が行われ、足白癬は13.7%、爪白癬は7.9%、足白癬または爪白癬のどちらかに罹患している潜在患者は16.6% と推定されました9)。つまり7人に1人が足白癬、13人に1人が爪白癬、6人に1人が足白癬または爪白癬の潜在患者である可能性が示されています。
足白癬の感染予防
ポイントは、①足を清潔にする②足の湿度に注意する③環境(特に浴室)を清潔にすることです。
①足を清潔にする
皮膚糸状菌が角質に侵入し感染が成立するまでは、最低24時間かかるとされています1, 2)。言い換えれば、角質に侵入する前に菌を除去することができれば感染を防ぐことができます5)。そのため毎日1,2回、足を洗浄またはウェットワイプなどで拭き、菌を物理的に除去します1, 5)。特に趾間には注意して、1趾間あたり4~5 回優しく擦ります1)。
なお、皮膚に傷がある場合は菌の侵入速度が速くなり、12時間で感染するという報告もあります2)。ナイロンタオルや軽石などで強く擦ったりして傷を作らないこと、保湿ケアを行い乾燥や亀裂・ひび割れを予防することも大切です1, 2)。
②足の湿度に注意する
湿度のある温かい環境は、皮膚糸状菌が増殖しやすく4)、角質への侵入速度が速くなるとされています1)。必要時以外靴を脱ぐ、通気性の良い靴を履く、入浴後は足を完全に乾かすなど、湿度を下げる工夫が必要です1, 4)。
なお、裸足のまま靴を履くと、かかとの乾燥や趾間の蒸れを助長する可能性があるため1)、靴を履くときには靴下を着用することが望まれます。
DATA MEMO
角質への皮膚糸状菌の侵入速度や侵入後の菌の除去に関する実験10)
この実験では、屋内で①靴下または②裸足の状態で8時間、その後、それぞれ屋外で靴と靴下を履いて16時間過ごした状態を想定して、角質片に皮膚糸状菌を塗った後に①湿度90% または②湿度80%で8時間培養後、さらにそれぞれ湿度100%で16時間、菌を培養しました。
その結果、①屋内で靴下の条件では、菌が速く深く角質片に侵入し、洗浄しても菌が除去されませんでした。②屋内で裸足の条件では、菌の角質片への侵入速度は遅く、侵入した菌も洗浄によりほとんど除去されました。
この結果から、足白癬の予防には、足の湿度を低く保つこと(靴を脱いだときは裸足など)と毎日の物理的洗浄が必要で、これらの対策を怠ることで足白癬になる可能性が高まると考察されています。
③環境(特に浴室)を清潔にする
足白癬の感染経路は、足と足が直接触れることによる感染と、環境からの間接的な感染が想定されます5)。皮膚糸状菌は、乾燥した環境では1カ月程度で死滅しますが、湿った環境では1カ月以上、菌の種類によっては半年以上生き残る場合もあるとされています5)。さらに、垢(剥がれた角質)と一緒の場合は1年以上生き続けるとされています2)。そのため、日常的な環境整備を怠らないことが重要です。湿った環境である浴室は特に注意しましょう。環境中の皮膚糸状菌は拭き取り(浴室においては洗浄、乾燥)で除去が可能とされています1, 5)。
なお、未治療の足白癬患者の多くは、裸足の状態では環境中へ菌を拡げ続けていると考えられています5)。足の異常に早く気付くためにも、日常的に足の清潔ケアを行い、足白癬や爪白癬を早期に発見して治療し、菌の拡散を防ぐことが大切です。施設の皆様で、健康的な足作りに取り組みましょう!
参考文献
1)一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会編. スキンケアガイドブック. 照林社. 2017.
2)日本皮膚科学会. 皮膚科Q&A. https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/index.html: 2025年7月2日現在.
3)日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン改訂委員会. 日本皮膚科学会皮膚真菌症診療ガイドライン2019. 日皮会誌. 2019. 129(13). 2639-2673.
4)Leung AK, Barankin B, Lam JM, Leong KF, Hon KL. Tinea pedis: an updated review. Drugs Context. 2023 Jun 29;12:2023-5-1. doi: 10.7573/dic.2023-5-1. PMID: 37415917; PMCID: PMC10321471.
5)丸山 隆児, 福山 国太郎, 加藤 卓朗, 杉本 理恵, 谷口 裕子, 渡辺 京子, 西岡 清. 白癬の感染予防. 日本医真菌学会雑誌. 2003. 44(4). 265-268.
6)Nakamura K, Fukuda T. 2021 Epidemiological Survey of Dermatomycoses in Japan. Med Mycol J. 2023. 64(4). 85-94.
7)中西 健史. 足白癬, 爪白癬のアセスメント. 日本フットケア・足病医学会誌. 2022. 3(3). 111-115.
8)原田 敬之. 爪白癬. Med Mycol J. 2011. 52(2). 77-95.
9)畑 康樹, 上田 純嗣, 服部 尚子, 仲 弥, 江藤 隆史. 足白癬・爪白癬の実態と潜在罹患率の大規模疫学調査(Foot Check 2023)第1報. 日本臨床皮膚科医会雑誌. 2024. 41(1). 66-76.
10)森下 宣明, 二宮 淳也, 清 佳浩, 滝内 石夫. 皮膚糸状菌の角質内侵入と予防に関する研究. 日本医真菌学会雑誌. 2004. 45(4). 247-252.

