健康すまいる

健康すまいる 2025 vol.35

健すまインタビュー

社会福祉法人丹原福祉会 特別養護老人ホーム ル・ソレイユ『サラステディ コンパクト使用による効果の検証』

※本記事は、「健康すまいる vol.35(2025年1月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

『特別養護老人ホーム ル・ソレイユ』は、職員の業務改善の取り組みを積極的に実施されているご施設です。またご利用者の、“ご飯を沢山食べたい”、“いつまでも自分で自分のことは決めたい”といった願い(夢)を叶えることを目的として、業務に取り組まれています。“職員もご利用者も大切にしたい”という強い思いのあるル・ソレイユ様に、今回は主にノーリフティングケア(抱え上げない介助)推進の活動について取材しました。
取材日:2024年10月3日

ノーリフティングケアに対する取り組み

機器導入と愛媛県「ノーリフティングケア普及啓発事業」の参加

渡部さん(事務長)
2018年に浴室用リフトを、2019年にスタンディングマシンを導入しました。当時は職員数が少なく、職員がケアを無理なく継続していくための方法を模索した結果でした。これらの機器の導入により、職員の身体的負担の軽減や安心感につながり、移乗に手間がかからないことからご利用者のトイレで排泄する回数も確保できるようになるなど、導入の効果は大きいものでした。2021年には機器導入以降に入職した職員が多くなっていたため、改めて職員にノーリフティングケアの必要性を認識してもらうことと、ノーリフティングケアの技術向上を目的として、愛媛県の「ノーリフティングケア普及啓発事業」モデル事業所に応募し、採択されました。なお、愛媛県の提唱するノーリフティングケアは「トータルセーフティケア」といって、職員の腰痛予防だけを目的とするのではなく、ご利用者も苦痛がない状況で過ごせる、職員・ご利用者双方が24時間安心・安全でいられる環境を作ろうという考えに基づいています。その考えのもと、モデル事業所として約半年間活動を行いました。活動は、まずご利用者全員のADL(日常生活動作)や介助内容から、介助することによる腰痛発生リスクが高いご利用者を、事業で定められている基準で洗い出しました。それから、そのご利用者に適応するノーリフティングケアと必要な物品を確認し、ターンテーブルやポジショニングクッション、スライディングシートなどの物品を導入しました。その後は、事業から派遣された講師による当施設での研修や実技指導を定期的に受けながら、ノーリフティングケアを実践していきました。モデル事業所としての活動終了後に職員へアンケートを実施すると、身体的負担が軽減したという声が多く上がりました。なお、現在も講師が施設へ指導訪問する際に同行したり、ノーリフティングケアを検討している施設に当施設を見学してもらったりするなど、協力事業所という立場で同事業に補助的に携わっています。

サラステディ コンパクトの使用

渡部さん
2019年に導入したスタンディングマシンは基本的に自力で立ち上がれない方に使用していますが、立ち上がる力のある方にフィットするような機器を探していた時に、サラステディ コンパクト(以下、サラステディ)に出会いました。サラステディは移乗の助けになるだけでなく、ご利用者の姿勢や目線に変化を起こせることが好印象でした。車椅子の場合は、円背のご利用者だと胸郭がつぶれて呼吸器機能の低下や肋間筋の拘縮を引き起こす可能性や、目線が下がることで自分の世界に籠ってしまうという懸念があります。しかしサラステディを使用すると、車椅子使用時の姿勢より上半身が伸び、さらに目線が上がり景色が変わります。精神的にも意欲が高まり、(トイレなどに)行かされるという受動的な感覚ではなく、行こうという能動的な意識に変化するのでは、という期待がありました。

菅さん(介護士)
サラステディはご利用者自身で立ち上がり、職員はお尻を少し支えるぐらいなので、身体がとても楽です。さらに2019年に導入したスタンディングマシンよりも軽く動かせます。サラステディを使い始めた時は嫌がるご利用者もいましたが、他のご利用者がサラステディを使用しているところを見て、「あれ楽そうやね」「私もやってみようか」と言ってくださったり、私から「これ使ったら私らも楽なんよ」と伝えると「じゃあ頑張ってみよう」と協力してくださったりして、今では進んで使用させてくださる方が多いです。また目線が上がるので、ご利用者がサラステディに乗ることを楽しんでくださっていて、サラステディで散歩(施設内)に行くこともあります。

髙橋さん(介護士)
1勤務で3~4回はサラステディを使用しており、私も身体が楽に感じています。ただ、身体が小さい方や腕が伸びない方では前方のバーに手が届かないことがあり、その場合は後ろから支えて立っていただく必要があります。トイレでサラステディを使用する場合は、トイレ壁面にあるL字手すりを使わずに立ち上がってもらうことができ、ご利用者も立ち上がりやすそうです。

渡部さん
L字手すりを使用するよりも自然な立ち上がり姿勢が取れるところも、サラステディの良いところだと思います。また、サラステディの厚みのあるフットボードに足を乗せたまま排泄していただくので、踏ん張りやすい排泄向けの姿勢になることもメリットだと考えています。
現在、サラステディ使用によるご利用者と職員への身体的・精神的効果を研究しています。ご利用者の姿勢や重心位置の変化(姿勢評価アプリで解析)、ご利用者のADLへの影響や下肢のトレーニング効果(立位時間の延長や立位の安定)の有無、ご利用者の精神状態の変化、職員の身体的負担の変化など、様々な評価を実施しています。

ノーリフティングケア推進と介護観のジレンマ

髙橋さん
ご利用者の中には、車椅子などの福祉用具にすら抵抗感を持ち、ノーリフティング機器が受け入れられない方がいます。ご利用者には苦痛なく生活してほしいし、ご利用者の気持ちに寄り添ったケアを行いたいと考えているので、その方に対しては機器を使用せず人力で移乗していますが、一方で自分の身体的負担を考えると機器を使用したいという思いもあり、ジレンマを感じます。どんなご利用者にも受け入れられやすい機器があればと思っています。

渡部さん
職員は、ご利用者が嫌がることや不安に思うことをしたくないという介護観がとても強いです。ご利用者は初めて使用する機器に対して不安を感じることや、そもそも機器を使われることに抵抗感を持たれることもあり、「ご利用者のそのような反応を見ると心を痛めてしまう、それでもノーリフティングケアをやらないといけないのか」と職員から言われたことがあります。職員から葛藤の声を聴き、ノーリフティングケアを推進することは正しいのかと私も悩みました。しかし、ノーリフティングケアは職員の身体を守る手段です。ご利用者の反応で機器の使用をやめてしまうと、職員の身体を守るという目的を達成できなくなってしまいます。“職員の身体を大切にするため、機器を積極的に使用してほしい”という私の思いと、“ご利用者の嫌がることはしたくない”という職員の思いで板挟みになっていました。
そのような中でサラステディを紹介いただきました。サラステディはご利用者自身の力で立ち上がるので、機器を使われるというよりもご利用者自身に機器の使用にご協力いただく形となり、不安感をカバーできるのではと思ったことも、使用を始めたきっかけとなりました。また、機器を何回か使用すれば抵抗感が無くなるご利用者もいらっしゃったので、最近は、ご利用者が不安がっても何度かトライしてほしいということと、機器は基本使う前提という認識を高めてほしい、と伝えています。
その他、地域の方にノーリフティングケアを知ってもらうことも重要と考えます。普段からご利用者や地域の方がノーリフティング機器を見る機会があれば、“ノーリフティング機器は介護に使用するものだ”という前提ができるので、ご利用者の抵抗感の解消に繋がると思っています。

そのほか取り組まれていること

褥瘡管理

髙橋さん
褥瘡の早期発見に繋がるように、皮膚の異常を発見したらすぐに看護師に報告し、職員全体で共有します。今年春には介護職員主催の褥瘡勉強会を開き、知識を高めました。ご利用者の身体に褥瘡が一度できてしまうと治りにくいので、ポジショニングやエアマットを使用した除圧、栄養管理等を行い予防に努めています。

渡部さん
新入職員は入職時研修として、褥瘡の基礎知識とトータルセーフティケアを勉強します。一度、治りにくい褥瘡があった時に、サラヤのCCステップスを使用してバイオフィルム有無の評価を行いました。結果的にはバイオフィルムは検出されませんでしたが、医師への情報提供のツールとして活用できそうだと感じました。

菅さん
当施設では、オムツの使用を無くす(オムツゼロ)取り組みをしています。各ご利用者の行動履歴を記録し、何時間おきにトイレへ行けばトイレで排泄ができるのかを把握して、可能な限り布パンツに切り替えてトイレで排泄していただきます。一般的には排泄ケアの方法としてパッド交換もありますが、立てなくなってもきちんとトイレで排泄したいとの気持ちを持つ方もいます。そのようなご利用者の願いをできる限り叶えることができているのは、私の喜びにも繋がっています。また、トイレに行くことでご利用者の活動量が増えるので、ご利用者の夢の実現にも近づけると考えています。

*バイオフィルム(菌が作り出すヌメリ)が褥瘡にあると治りにくいとされている。CCステップスは、バイオフィルムを簡単に可視化する製品。

ご利用者の夢を叶えるために

渡部さん
ご利用者の生活を豊かにすること、さらに職員がスキルアップ・レベルアップすることが、ご利用者の笑顔や夢の実現に繋がると考えています。そのための手段は沢山あるはずであり、サラステディの使用も手段の一つだと考えています。今後も様々な手段を模索して、チャレンジを続けていきたいです。ご利用者に対する素晴らしい介護観を持ったスタッフに感謝して、これからもサラステディのような機器を紹介しながらサポートしていきたいです。

社会福祉法人 丹原福祉会特別養護老人ホーム
ル・ソレイユ

〒791-0503  愛媛県西条市丹原町今井457番地1
TEL:(0898)76-2111
http://www.le-soleil.or.jp/index.html

定員数:特別養護老人ホーム 50名(全室個室)
職員数:65名

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