健康すまいる 2024 vol.34
トピックス
物品の洗浄・消毒(後編)~適切な消毒方法を選択・実施するために~
※本記事は、「健康すまいる vol.34」(2024年9月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
スポルディングの分類
使用済み物品を洗浄後、どのように処理(滅菌や消毒)するかについて、物品の人体への使用部位によって決定する「スポルディングの分類」という考え方があります(表)。人体のどの部位に接触するかで感染リスク度が異なるため、そのリスク度に応じて物品を3つに分類し、各分類に対して最低限求められる処理方法を示しています。この分類は多くのガイドラインやマニュアルで準拠されていますが、各消毒薬の「抗微生物スペクトル」(前編で解説)や「材質適合性」までは考慮されていないため、状況に応じた判断が必要です。
各消毒薬の特性
消毒薬によっては特定の材質への影響や、取り扱い次第では効力低下や人体へ悪影響を及ぼします。適切な消毒方法を選択・実施するために、各消毒薬の特徴と注意点を把握することが大切です。
次亜塩素酸ナトリウム:中水準消毒薬
特徴
低残留性(タンパク質と反応すると食塩に変化)という点で安全であり、「食」や「呼吸器」関連の器材やリネン類の消毒に使用されます1, 2)。また、殺芽胞・抗ウイルス作用を有するので、クロストリディオイデス・ディフィシルの芽胞汚染や、ノロウイルスやB型肝炎ウイルスなどのウイルス汚染を受けた環境消毒に用いられます1)。
注意点
金属腐食性があるため1, 2)、金属部位に使用した後は水拭きなどをする
脱色作用があるため、色・柄物には適さない1, 2)
木材やセメントでは効力が低下するため、これらの材質には適さない4)
毛、絹、ナイロン、アセテート、ポリウレタンに用いると、材質劣化が生じることがある1)
塩素ガスが発生し、粘膜を刺激するため、蓋なし容器での使用や換気ができない場合での広範囲清拭は控える1, 2)
有機物(汚れ)で効力が低下するため、汚れを除去した後に使用する1)
温度が上がるほど、また光が当たるほど効力が低下するため、温度が高い場所や光が当たる場所(直射日光下など)での保管は避け、希釈液の作り置きはしない2, 5)
アルコール:中水準消毒薬
特徴
速効性があり、揮発性が高く、残留性もないため、手指や環境など幅広く使用されます1, 2)。
注意点
芽胞やノロウイルスなどのノンエンベロープウイルスには十分な効果が得られない1, 2)
※pH調整などにより、ノンエンベロープウイルスに対して効力を高めたアルコール製剤が普及している引火性があるため、床などの環境への広範囲の使用は適さない1, 2)
プラスチック類に用いると、材質劣化が生じることがある2)
第四級アンモニウム塩(陽イオン界面活性剤):低水準消毒薬
特徴
逆性石けんとも呼ばれ、洗浄効果も有します1, 2)。材質を傷めにくく、生体から環境まで幅広く使用されます1)。
注意点
抗微生物スペクトルが狭く、効果があるのは一般細菌や酵母様真菌、一部ウイルスに限定される1, 2)
含浸ガーゼは長期間にわたる分割・継ぎ足し使用で細菌汚染を受けやすいため、調製後24時間で廃棄する1, 2)
容器への継ぎ足しで細菌汚染を受けやすいため、継ぎ足しは避ける1, 2)
両性界面活性剤:低水準消毒薬
特徴
界面活性作用による強い洗浄効果があり、材質を傷めにくいです1)。低毒性ですが、脱脂作用があるため手指消毒には適さず、器材や環境の消毒に使用されます。
注意点
抗微生物スペクトルが狭く、効果があるのは一般細菌や酵母様真菌、一部ウイルスに限られるが、長時間の接触で結核菌に効果がある1, 2)
含浸ガーゼは長期間にわたる分割・継ぎ足し使用で細菌汚染を受けやすいため、調製後24時間で廃棄する1, 2)
容器への継ぎ足しで細菌汚染を受けやすいため、継ぎ足しは避ける1)
参考文献
1)大久保憲, 尾家重治, 金光敬二編. 2020年版 消毒と滅菌のガイドライン. へるす出版. 東京. 2020.
2)尾家重治編. 病棟で使える消毒・滅菌ブック. 照林社. 東京. 2014.
3)日本環境感染学会. 日本環境感染学会教育ツールVer.3(感染対策の基本項目改訂版). 洗浄・消毒・滅菌. http://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/3-3_17.pdf: 2024年7月1日現在.
4)尾家重治. 消毒薬の取り扱い上の留意点-次亜塩素酸ナトリウムの不活性化-. 感染制御 JIPC. 2014. 10(2). 123-127.
5)社団法人日本病院薬剤師会. 消毒薬の使用指針 第三版. 薬事日報社. 東京. 1999.

