健康すまいる 2024 vol.33
トピックス
物品の洗浄・消毒(前編)~洗浄と消毒の基礎知識~
※本記事は、「健康すまいる vol.33」(2024年5月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
洗浄・消毒とは?
使用した物品は病原微生物が付着している可能性があり、その汚染された物品を介して感染が拡大することがあります1)。物品を介した感染を防ぐため、使い捨ての物品は原則使い回さずに廃棄し、再使用可能な物品は洗浄・消毒を行います。
消毒前に「洗浄」を!
Point!
消毒前に洗浄を行わないと、消毒効果が低下します。
物品を消毒する時は、先に洗浄で汚れを落とすことが基本です。
汚れが微小であったり、無色だったりすると、目に見えず汚れていないと思い、洗浄せずに消毒だけを行うことがあります5)。また、感染リスクを下げる目的で洗浄より先に消毒してしまうこともあります。しかし、汚れがある状態で消毒しても、その汚れが妨げとなって物品表面に消毒薬が到達できず、十分な消毒効果が得られません5, 6) (図1)。特に汚れの主成分であるタンパク質は、消毒薬によって変性し、固着します。また、汚れ自体が消毒薬の有効濃度を下げることがあります3, 5)。物品の消毒を行う際は、必ず先に洗浄して汚れを落としましょう。
消毒の基本
消毒の第1選択は熱である3)
70~93℃の熱(熱水、蒸気)は細菌芽胞を除く全ての病原微生物に有効で、消毒薬に比べて効果が確実、かつ残留毒性がないため、耐熱性の物品やリネンなどには熱消毒が適します。例えば、腸管出血性大腸菌O157やノロウイルスで汚染された衣類の消毒には、80℃・10分の熱水洗濯が有効です。
熱消毒ができない場合は消毒薬を使う
非耐熱性の物品には消毒薬による消毒を行います。消毒薬は殺滅できる病原微生物の種類の範囲(抗微生物スペクトル)によって、「高水準消毒薬」、「中水準消毒薬」、「低水準消毒薬」に分類されます3, 6)(図2)。
高水準消毒薬は、抗微生物スペクトルが最も広く、あらゆる病原微生物を殺滅します。高い消毒力を持つ一方で、人体に対する毒性が強いため、使用する際は注意が必要です。中水準消毒薬は、細菌芽胞以外の結核菌やその他の細菌、ほとんどのウイルスや真菌に効果があります(次亜塩素酸ナトリウムは殺芽胞性も有します)。低水準消毒薬は、抗微生物スペクトルが最も狭く、細菌芽胞や結核菌などには無効であり、効果があるのは一般細菌や酵母様真菌、一部のウイルスに限定されます。
この分類は簡潔で分かりやすいですが、消毒薬によっては一部の病原微生物が抵抗性を示す場合があります。例えば、中水準消毒薬はウイルスに有効とされていますが、消毒薬抵抗性が強いノロウイルス(ノンエンベロープウイルス)に対しては、一般的なアルコール消毒では十分な効果が得られません3, 4)。そのため、熱消毒や次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行う必要があります。この分類はあくまで目安のため、使用する消毒薬はどのような病原微生物に効果があるのか確認することが重要です。
適切な消毒薬を選択する際は、消毒薬の抗微生物スペクトルを考慮するだけでなく、物品の使用目的や各消毒薬の特性(物品との適合性など)を踏まえることも大切です。次号(後編)は、「物品の使用目的や各消毒薬の特性に応じた消毒の選択」を解説します。
参考文献
1)笹原鉄平. 入居型高齢者施設における日常的な入居者介助のための感染対策手順書. 物品の洗浄・消毒(第1版). 2020.
2)日本環境感染学会. 日本環境感染学会教育ツールVer.3(感染対策の基本項目改訂版). 洗浄・消毒・滅菌. http://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/3-3_17.pdf: 2024年3月11日現在.
3)大久保憲, 尾家重治, 金光敬二編. 2020年版 消毒と滅菌のガイドライン. へるす出版. 東京. 2020.
4)厚生労働省老健局. 介護現場における感染対策の手引き. 令和5年9月. https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001149870.pdf: 2024年3月11日現在.
5)菅原えりさ. 高齢者施設での対応ポイント. INFECTION CONTROL 2021. 30(9). 65-71.
6)小野和代編. 看護における 医療器材の取り扱いガイドブック~器材の再生処理・使用・保管管理~. ヴァンメディカル. 東京. 2018.

