健康すまいる 2024 vol.33
感染対策インタビュー
社会福祉法人 鹿児県社会福祉事業団障害者支援施設 ゆすの里
※本記事は、「健康すまいる vol.33」(2024年5月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
木の温もりと太陽の暖かさを感じられる、広々とした施設、ゆすの里。障害者支援施設での取り組みについて、園長・副園長・看護師・栄養士の方々に取材しました。
取材日:2024年2月8日
どのような施設ですか?
大野さん(園長)
身体・知的・精神など、総ての障害者を対象とした障害者支援施設です。リハビリテーションを強みとしており、機能訓練の規模は県内一で、地域の方だけではなく県内各地や離島など遠方からの利用者もおられます。設立は1976年で、2015年に新築移転しています。
現在の感染対策について
大野さん
利用者に向けた感染対策のお願いとして、マスク着用などの案内を掲示しています。マスクは利用者が自由に使えるよう、施設内の各所に用意しています。高次脳機能障害などの障害特性により感染対策を理解できない利用者もいらっしゃいますが、そのような方には、支援員が施設を巡回する中で声掛けを行い、感染対策の徹底を図っています。
井上さん(支援課 主査看護師)
手指衛生を必要時に行えるように、手指消毒剤を玄関口や訓練室の出入口などの各所に配置した上で、利用者に手技やタイミングを説明したり、職員が一緒に実施したりしています。
感染対策は強制するのではなく、利用者それぞれの特性に合わせて可能な範囲での実施をお願いしていて、例えば半身麻痺の利用者の場合は、片手だけ手を洗っていただくようにしています。
下薗さん(副園長兼総務課長)
ゆすの里では、移転前から出入口に自動の手指消毒剤を置いていました。利用者の中には基礎疾患のある方や病気により身体障害になった方も多く、感染や重症化リスクが高いので、感染対策は大事だという考えがかねてより浸透していたのだと思います。また全職員が平時の感染対策から感染症発生時の対策までを網羅した感染対策マニュアルを1人1冊持っており、職員は勤務中、マニュアルの内容に沿って感染対策を行っています。
井上さん
職員の個人防護具着脱の練習は看護師が主体となって実施しており、年1回の全体会議と、必要に応じて支援員会議でも実施しています。清掃は、毎日支援員が手すりやドアノブなど高頻度接触表面を中心に実施しています。
德田さん(栄養士)
食堂は、椅子を1日1回、テーブルを食事開始前と終了後に拭くようにしています。座席は対面にならない形で配置しています。
新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)禍、5類移行前後で変わったことは?
德田さん
5類移行前は、食事の時間を棟で分けて2部制にし、人が密集しないようにしていました。移行後は2部制を廃止しましたが、利用者自身の判断で混雑している時を避けるなど時間をずらしてくださっています。感染対策が当たり前になったのだと感じます。
井上さん
各種訓練も、移行前は食事と同様に2部制で実施し、パソコンや器具など利用者の使用した物品は使用毎に全て消毒していました。移行後は2部制を廃止しましたが、物品の消毒は続けています。面会は、移行前はリモートや窓越しで行ったり、時間や人数制限を設けたりして試行錯誤していました。移行後は規制を緩和し、自由に面会や外出・外泊ができるようにしています。利用者のマスクの着用は、移行前は居室でも着用するようお願いしていましたが、移行後は集団活動時のみ着用をお願いしています。
コロナ禍、イベントはどうしていましたか?
井上さん
外出行事や夏祭りなどの外部の方を招待するイベントはコロナ禍では自粛しましたが、代わりとして新たにイベント食の企画など、施設でできる行事を工夫しました。
德田さん
イベント食では、全国のご当地グルメの提供や、テラスでの野外昼食会、デザートバイキング、選択メニューなどを企画しました。ライブキッチンといって、施設に寿司屋が来て目の前でお寿司を握ってくれるイベントを実施したこともあります。利用者と話をしていると、「これが食べたい」という意見を聞くことができ、委託業者と連携を取りその内容を取り入れたりしています。
下薗さん
従来ゆすの里では、地域の方に向けて対面での無料開放講座を年に数回実施していました。コロナ禍では対面での実施を控え、その代わりとしてYouTubeで講座を配信しました。講座は各専門職が年1回担当し、各自で内容を考えています。
井上さん
コロナをきっかけに、地域の方に感染対策の重要性を発信していきたいという思いがあったので、私は感染対策について講義しました。主に厚生労働省や自治体の発信情報をもとに、ご家庭で気を付けていただきたいことや、施設で実施している感染対策を、わかりやすく紹介しました。次の講座は、久々に対面で実施します(2024年2月末に開催)。施設に地域の方をお呼びして、手洗いチェッカーで手洗い時の洗い残しを確認し、手洗いの正しい方法をお伝えする予定です。
コロナ集団感染の経験
大野さん
2024年1月2~20日の間に、入所者24名、職員2名のコロナ集団感染が発生しました。重症化する方はいませんでしたが、あっという間に全棟で感染者が出て、なかなか収束しませんでした。感染対策として、利用者に居室の窓を開けて換気するよう毎日朝晩放送で呼びかけたり、ゾーニングを実施したりしましたが、利用者の中には障害の影響でこのような感染対策を理解できない人もいらっしゃいます。気が付けば陽性者がゾーンを越えて歩いていることもありました。
井上さん
隔離された利用者は、居室に一人でいるのが不安だったり、怖かったりすると思います。そのため検温に行くときに色々話をしたり、必要なものがないか声掛けをしたりして、気を配っていました。
当施設は全室個室ですが、トイレは共用です。隔離中のトイレに関しては、本来はポータブルトイレを陽性者の居室に置いて使用してもらうほうが良いのですが、転倒などの怪我に繋がる懸念があったので、コロナ陽性者用のトイレを決め、そこを使用していただくようにしていました。陽性者がトイレを使用する度に、職員が消毒液を持って駆けつけて、高頻度接触表面の消毒を徹底していました。
大野さん
陽性者用のトイレを指定しても、普段利用するトイレの場所が決まっていて、いきなり対応することが難しい利用者もおられたので苦労しました。
德田さん
集団感染中は食器を使い捨てにして、居室での食事に切り替えました。使い捨て食器は食事介助をした職員がその場で処分するようにしました。身体障害者で自助食器が必要な方は、居室まで使い捨て食器で運び、対応職員が居室で自助食器に移し替えて、食事後は自助食器を居室で洗ってもらいました。厨房のスタッフが感染すると食事の提供ができなくなるので、厨房に「持ち込まない」対策を徹底しました。陽性者発生時や集団感染時の対応はBCPで厨房も対象となっているので、すぐに対応を切り替えられました。食事の内容については、食欲が低下した方に「おにぎりだったら食べる」と言われた時にはおにぎりを作るなど、利用者が無理なく食べられるよう要望を聞きながら対応しました。
食事に対する考え
德田さん
献立表を発表する毎週月曜日には、皆さん楽しみに掲示を待っています。食事を楽しみにされている方が多いのと、食事は健康な体作りの上で大事だと思うので、利用者に美味しく、楽しく食べていただけるように日々頑張ります。
感染対策に対する考え
大野さん
利用者の安心・安全を第一に考えているため、感染対策の徹底は当たり前と考えています。また、十分な感染対策を行わずに、利用者が感染し、重症者が出て大惨事になるほうが、将来的に見れば損失が大きいので、感染対策のための経費は必要なコストと考えています。県や市の感染対策関連の補助金が色々あるので、積極的に活用しつつ、感染対策物品を十分に揃えるようにしています。
補助金の活用でいうと、支援員の負担軽減やサービスの均一化のために、移乗サポートロボットも導入しています。この業界は人手不足なので、そこを補うための取組も進めていきたいと考えています。
下薗さん
施設は利用者にとっては生活の場なので、締め付けすぎてはストレスが溜まってしまいます。一方、私たちは利用者を感染から守るという仕事を全うしなければいけないので、コロナ禍では色々葛藤がありました。コロナ集団感染発生時は、施設内を巡回してマスクを着用するよう利用者に注意していて、それで良かったのかと今でも思いますが、命を守るために、やり過ぎないように気を付けつつ今後も頑張ります。
井上さん
身の回りにはいつも細菌やウイルスがいるので、感染対策は時期が限定されるものではありません。施設には感染や重症化リスクの高い利用者が沢山いるので、常に気を引き締めて注意しています。感染症が広がりやすい環境なので大変ですし、これで良いのか?と日々思い悩んでいますが、利用者の安全を守るため、できる限りのことをしたいと常に思っています。
社会福祉法人 鹿児島県社会福祉事業団障害者支援施設 ゆすの里
〒899-2503 鹿児島県日置市伊集院町妙円寺1丁目1番1号
TEL:099(273)4175
https://www.yusunosato.com/
定員数:【日中活動系サービス】生活介護40名、自立訓練(機能訓練)30名(生活訓練)10名
【 住居系サービス】施設入所支援70名、短期入所2名+空床
職員数:31名(2024年2月現在)
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