健康すまいる

健康すまいる 2024 vol.32

感染対策インタビュー

社会福祉法人岩手県社会福祉事業団福祉型障害児入所施設 てしろもりの丘よつば/障害者支援施設 てしろもりの丘あおば

※本記事は、「健康すまいる vol.32」(2024年1月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

てしろもりの丘は、福祉型障害児入所施設の「てしろもりの丘よつば(以下、よつば)」と障害者支援施設の「てしろもりの丘あおば(以下、あおば)」がある障害者・児支援の複合施設です。今回は、あおばでの日頃の感染対策や新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)クラスターのご経験についてお話をお伺いしました。
取材日:2023年10月18日

施設の特徴

山根さん(よつば・あおば 施設長)
あおばでは現在22歳から50歳の重度の知的障害者29名が生活しており、短期入所も積極的に受け入れています。あおばは花鳥と風月の2つのエリアで構成されています。各エリアは中扉によってユニットに分けることができ(花鳥エリアは花と鳥ユニット、風月エリアは風と月ユニット)、各ユニットにある8室の居室は全て個室です。自分の部屋として落ち着ける場所となる個室は自閉症の方に有効で、安心して過ごすことができます。

日頃の感染対策

佐々木さん(よつば・あおば 主任看護師)
感染対策マニュアルを作成し、さらにその中の標準予防策の内容をA4用紙1枚のチェック表にまとめています。冊子のマニュアルは読む時間がかかりますが、A4用紙1枚であれば一目で確認できます。このチェック表を使って、毎月職員による相互チェックを行います。チェックの際は、〇△×を付けて100点満点で点数化し、チェック終了後に私がコメントを書いて職員に共有します。マニュアルを準備しても、マニュアル内容を理解できているか、マニュアル通りに実行できているかといったことは直接確認できません。しかし、職員自身が実際に取り組んでいる内容や方法を相互チェックすることで、マニュアル内容を把握し習得してもらうことにつながります。また点数化しデータとして残すことで、確認や振り返りの際にも役立ちます。日頃努力していることを記録として残したいと考えています。
さらに感染対策情報をA4にまとめて毎月職員に配布しています。情報は、厚生労働省や岩手県、盛岡市、NHK、サラヤのホームページや情報誌・セミナーなど、信用できる情報源から収集します。Webセミナーなどの内容を取り入れる場合は、専門家からの情報だと分かるように参考元として「〇〇先生より」と記載しています。コロナが5類移行になった時、感染対策が事業者の判断に委ねられることになり、実際どのように対応したらいいか困りましたが、サラヤのWebセミナーで5類移行後の対応に関する情報を入手できて非常に助かりました。

矢幅さん(よつば・あおば 栄養士)
厨房内は委託業者の衛生マニュアルに沿って対応しています。また衛生区域と非衛生区域の床の色を変えて完全にエリア分けし、手指衛生は全てオートディスペンサーを取り入れて環境表面に触れないようにしています。普段、利用者は食堂で集まって食事をしますが、食事前は必ず手指衛生を行います。

野田さん(あおば 業務係長)
利用者は食事前に各ユニットにある洗面所にて、石けんで手を洗い、ペーパータオルで拭いた後すぐにオートディスペンサーに手をかざしてアルコール手指消毒をしてから食堂に向かうことが習慣となっています。利用者の中には、水で濡らすだけやペーパータオルで拭かないまま手指消毒をするなど手指衛生が不十分な方、逆に手洗いを何回もしたり、手の皮が剥けるほど手を拭いたりするなど手指衛生をやり過ぎてしまう方がいます。そのため、洗面所で職員が見守りや声掛け、一部支援を行っています。以前は手指消毒剤のジェルをつけると違和感があり嫌がる利用者もいましたが、手指消毒を繰り返し行ううちにジェルをつけても大丈夫だと受け入れてくれました。このように習慣化や受け入れには、生活の中で職員と一緒に取り組みながら繰り返し行うことが必要です。

佐々木さん
当施設では例年夏に、手洗い強化月間を設定し、職員と利用者が一緒に手洗いチェッカーを使った手洗い練習を行っています。利用者は手洗い手順ポスターを見ながら手洗いをします。言葉で説明して理解してもらったり、真似してもらったりすることは利用者にとってハードルが高いことですが、文字や絵・写真を使った説明(視覚支援)だと理解しやすいです。また2語文の「手を・洗いましょう」「マスクを・しましょう」といった分かりやすい言葉を使用します。 
利用者はマスクを着けても数分後には自分で外す方がほとんどです。そのため、生活の場である施設内ではマスクの着用はできず、利用者同士の感染を防ぐことは難しいです。ただ先ほどの手指衛生と同様、日々の積み重ねを繰り返し行い、現在は通院など外出時にはマスクを着用してくれるようになりました。施設外の地域に出ても問題ないように感染対策を身につけてもらう努力をしています。

コロナクラスターの発生

野田さん
2023年8月18日~9月10日までに、あおばの利用者14名(短期入所者1名含む)と職員2名がコロナに感染しました。最初の感染者は花ユニットの利用者だったため、普段は開放している花と鳥ユニット間の中扉を閉めて、花ユニット内での封じ込めを行いました。しかし、鳥ユニットでも感染者が出てしまったことから、花鳥エリア内だけで感染を抑えて、風月エリアに拡大しないよう、花鳥エリアをレッドゾーンとしてゾーニングを徹底しました。職員は鳥ユニットの入り口から入り、花ユニットの非常口から出るようにして一方向の動線を確保しました。通常時は風月エリア職員が花鳥エリアでも勤務(交換勤務)していますが、職員同士の交差を防ぐためにクラスター時は花鳥エリアの職員が花鳥エリアだけを担当し、個人防護具(以下、PPE)を着用して利用者支援を行いました。一方、風月エリア職員は洗濯や食事の準備などの後方支援に努めました。風月エリアに感染拡大しないよう徹底した感染対策を行った結果、花鳥エリアでは13名の感染者が出ましたが、風月エリアでは感染者は1人も出ませんでした。
また、あおばとよつばの施設も内部で繋がっていますが、感染者が出たときに職員が行き来できないよう施設にあらかじめ備え付けられている廊下の中扉をゾーニングに利用し、よつばへの感染拡大も防ぐことができました。

佐々木さん
事前に職員会議で感染者が出た場合の対応方法について現場なりのアイデアを出し合ったり、シミュレーションを行ったりしていました。コロナ禍に入ってからは年2回ほど、サラヤのPPE着脱手順動画を観ながらPPE着脱の研修を行いました。それでも時間が経てば曖昧になってしまうことがあるため、クラスター対応時にはあらかじめPPE着用室として利用することを決めていたリネン室にPPE着用手順ポスターを掲示し、PPEを着用順に配置することで誰でも適切な方法と順番で着用できるように工夫しました。

矢幅さん
クラスター時はユニット内での弁当形式の食事となりましたが、栄養量を落とさないために利用者個々の食事量を厨房職員が計量し盛り付けを行いました。また選択メニューを設けるなど普段と変わらない食事を提供するように努めました。脱水にならないよう水分量にも気を付け、1日の必要水分量1,500mLを目安に摂取できるよう職員に伝え、飲み物が入った紙コップをワゴンで運んで、利用者へのこまめな水分補給を行いました。職員の協力を得たおかげで利用者の栄養状態を維持することができました。

佐々木さん
当施設は全部屋24時間換気システムが導入されていますが、それだけでなく隙間換気も行っており、クラスター時も意識して換気に取り組みました。自閉症の方の中には、窓や扉を閉めることにこだわりがあり、換気のために窓を開けていても閉める方がいます。そのため、排煙窓を開けたり、利用者が寝た後に窓を開けたりして換気を行いました。

最後に一言

山根さん
職員には、施設で感染者が出たとしても「職員はうつらないように、職員が感染していたとしても利用者にはうつさないという気持ちで」と伝えています。難しいことだとは分かっていますが、意識が大切です。クラスターは発生しましたが、職員は2人だけの感染で済み、また風月エリアへの感染を防げたのは、職員が油断せず感染対策を頑張ってくれたからだと思います。今後も気持ちを緩めないで感染対策を行っていきます。
福祉施設での仕事は「大変、辛い」と感じることもあると思いますが、利用者を守るという使命のある尊い仕事です。誇りを持ちながら皆で一生懸命頑張っていきましょう!

佐々木さん
感染対策は職員全員での頑張りでしか成り立たず、一人でも怠ると失敗してしまうと思っています。上からの指導ではなく、横並びで職員全員が頑張っていくことが大切です。障害者施設の職員は、医師・看護師や栄養士、支援職員など様々な職種で構成されていますが、連携してみんなで感染対策を頑張りましょう!

社会福祉法人岩手県社会福祉事業団
福祉型障害児入所施設 てしろもりの丘よつば
障害者支援施設 てしろもりの丘あおば

〒020-0401 岩手県盛岡市手代森6-10-6
TEL:019(613)9721
https://www.iwate-fukushi.or.jp/shisetu/teshiromori/index.html

<てしろもりの丘よつば> 職員数 39名 定員数 40名
<てしろもりの丘あおば> 職員数 24名 定員数 30名

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