健康すまいる 2024 vol.32
感染を引き起こすアイツの正体を見破れ!
ケン探偵の事件簿①
※本記事は、「健康すまいる vol.32」(2024年1月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
手がかり1
「どんなヤツ?」
本来は自然界(土壌や水環境)に生息する細菌1-5)
人工環境に入り込みアメーバを宿主として増殖1-4)
手がかり2
「どうやって感染する?」
主に菌に汚染されたエアロゾルの吸入によって感染(経気道感染)1-5)
人から人へ感染しない1-5)
手がかり3
「発症するとどうなる?」
発症した場合、肺炎または一過性のインフルエンザ様症状となる1-5)
手がかり4
「事件ファイル」
アメリカのホテルで開かれた在郷軍人大会での肺炎集団発生がきっかけで発見1, 3, 4)
高齢者施設でも、加湿器や入浴設備を原因とした集団感染や死亡例が確認されている
正体は・・・レジオネラ属菌だ!!
ケン:君のおかげで、アイツの正体を突き止めることが出来た。調査報告書を渡しておこう。
調査報告書
特徴
レジオネラ属菌(以下、レジオネラ)は、本来土壌や水環境(河川、湖、沼など)に生息する菌だが1-5)、土埃などに運ばれて人工環境に入りこむと考えられており3)、そこに生息するアメーバなどの原生生物に寄生することで増殖する1-4)。水中では長時間生き残り、水道水で1年といわれる1)。エアロゾルを発生させる人工水環境(噴水、冷却塔、加湿器等)や循環水を利用した循環式浴槽の増加が感染機会を増やしたと考えられる2)。
レジオネラによる感染症はレジオネラ症と呼ばれ、病気のタイプは、重症の「レジオネラ肺炎(在郷軍人病)」と、軽症の「ポンティアック熱」に分かれる(表)1-5)。レジオネラ肺炎は、1976年、アメリカで行われた在郷軍人集会(Legion)で集団肺炎として発見されたことが命名の由来である1-5)。レジオネラは細胞内増殖能があり、自然界では本来細菌を捕食して栄養源にするアメーバに、人の体内では殺菌機構を持つ細胞のマクロファージに侵入し増殖できる1, 3)。そのため、レジオネラを含んだエアロゾルを吸入しレジオネラが肺胞に到達すると、肺胞のマクロファージで増殖し、感染症を引き起こしてしまう2, 3)。レジオネラの感染性は強くはないとされているが、高齢者や新生児など感染症への抵抗力が低い人では肺炎を起こすリスクが高く、注意が必要である2, 4)。また健常者でも、菌の曝露量が多ければ肺炎を起こす可能性がある1, 4)。
犯行を阻止するために
レジオネラを増殖させない、汚染されたエアロゾルを発生させないことが感染予防のカギとなる。レジオネラは20~45℃で増殖、60℃以上では死滅するため、適切な温度管理を行う2)。また、レジオネラの増殖パターンは「他の細菌の増殖→その細菌を捕食するアメーバの増殖→レジオネラの増殖」であること2)、ヌメリ(バイオフィルム)がある場合はヌメリが盾となり消毒薬が届かず生き残り増殖しやすくなること3, 4)から、環境を清潔に保ち、細菌・アメーバの増殖やヌメリの発生を防止することが重要である。ヌメリが発生した場合は直ちに除去する。エアロゾルが発生しやすい設備(循環式浴槽、気泡発生装置、シャワー、超音波加湿器など)は厳重な管理が必要である4)
加湿器の管理
タンクは毎日水を入れ替えて洗浄し、常に清潔な状態を保つ3, 5)。水を加熱し蒸気を発生させるタイプの加湿器は、加熱と共に殺菌されるため感染源になる可能性は低いが、加熱しない加湿器(特に超音波式)は、管理が不十分であればレジオネラが加湿器内で増殖しエアロゾルとして空気中に拡散される危険性があり、注意が必要である3)。
風呂場の管理
感染リスクの高いジェットバスやジャグジーなどの気泡発生装置は、連日使用の浴槽水は使用しない3, 4)。これらの設備がなくても、風呂場はシャワーの使用などでエアロゾルが発生しやすいため、定期的な洗浄・消毒や適切な水の管理を行い、レジオネラの増殖を防ぐ必要がある。循環式浴槽は構造上、ヌメリが形成されやすくレジオネラのすみかとなりやすいため、塩素濃度維持などの衛生管理を徹底する。
→詳しくは『健康すまいるvol.28(2023)p.5』をチェック!
茶番にお付き合いいただき、ありがとうございました。
事件簿①としてしまったので、続く…のか?
加湿器やお風呂が恋しくなる季節です。
レジオネラに注意しながら、この冬を乗り切りましょう。 (執筆者より)
参考文献
1)吉田眞一. レジオネラ属. 吉田眞一, 柳 雄介, 吉開泰信 編集. 戸田新細菌学 改訂34版. 南山堂. 2015. p.275-9.
2)国立感染症研究所. レジオネラ症とは. 2014年6月25日改訂. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/530-legionella.html:2023年11月17日現在.
3)中原俊隆 編集. レジオネラ症防止指針 第4版. 公益財団法人日本建築衛生管理教育センター. 2019.
4)厚生労働省. 循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル. 2019年12月17日改正. https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000577571.pdf:2023年11月17日現在.
5)厚生労働省. レジオネラ症. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html:2023年11月17日現在.


