健康すまいる 2023 vol.30
トピックス
知っておきたい褥瘡予防
※本記事は、「健康すまいる vol.30」(2023年9月発行)に掲載した内容です。所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
褥瘡はなぜできる?
私たちは通常、寝返りや座り直しなどで、同じ部位に長時間圧力が加わらないようにしています1-3)。このような動作を「体位変換」といいます。自分で体位変換できない方は、同じ部位が体重で長時間圧迫されることにより、阻血性壊死が生じ、「褥瘡」が発生します。
褥瘡になりやすい部位はどこ?
褥瘡好発部位は皮下脂肪組織が少なく、骨が突出している部分です(図1)1,4)。
褥瘡発生の危険因子
褥瘡の要因は同じ部位への長時間の圧迫だけでなく、皮膚や栄養状態、介護力といった様々な危険因子も関与します(図2)3,5)。したがって、これらの危険因子を減らすことが褥瘡予防につながります。
褥瘡の予防
褥瘡は数時間で発生することもありますが、治療には長い時間がかかります2)。そのため、予防がとても大切です。
皮膚をこまめにチェック
着替えや入浴、体位変換時などに皮膚状態を確認します。褥瘡好発部位の皮膚が赤くなっている場合、それが褥瘡かを確認する方法として「ガラス板圧診法」と「指押し法」があります1,3,5)。ガラス板(プラスチック板)もしくは人差し指で赤くなっている部分を3秒ほど押して白くなるか確認します。押した部分が白くなり、再び赤くなれば褥瘡ではありません。一方、押しても白くならず赤いままであれば初期の褥瘡と考えます。褥瘡の早期発見により、いち早く予防ケアを開始できます。
体位変換・体圧分散
ベッド上では長時間同じ部位に圧力がかからないよう、体圧分散マットレスを使用したうえで4時間以内の体位変換が推奨されています5)。また褥瘡好発部位に体重の圧力が集中しないように体位を工夫します。クッションなどを活用し、体を30度程度傾けた体位(30度側臥位)をとると、面積の広いおしり(殿筋)で体重を支えるため、仙骨部や大転子部への圧迫を防げます(図3)1,3-5)。ただし、人によっては殿筋が乏しく骨が突出していることもあるため、30度はあくまで目安とします。
栄養管理
栄養状態の評価を行い、必要な栄養素を算出し摂取します。蛋白質・エネルギー低栄養状態(Protein-Energy Malnutrition:PEM)患者で、普段の食事から栄養素を賄うのが難しい場合は、高蛋白質、高エネルギーの栄養補助食品を活用します5)。
スキンケア
褥瘡予防には健康な皮膚の維持と保護が大切です4)。
①便・尿失禁から皮膚を保護
仙骨部は便・尿失禁による皮膚の浸軟が起こりやすい部位で4)、また排泄物が付着した状態が長時間続くと皮膚への刺激が加わり、褥瘡発生につながりやすくなります1)。肛門・外陰部や殿部の弱酸性皮膚洗浄剤での洗浄や、皮膚保護クリームなどの塗布が褥瘡予防に効果があったとの報告があります1,3,5)。
②多汗から皮膚を保護
汗をかくと皮膚が浸軟して皮膚損傷を受けやすいため、吸水性・熱放散性の高い寝衣やベッドシーツを使用します。シーツの上にタオルを敷くと吸湿性はあっても、温度が上がって発汗し湿潤の原因となったり、しわが新たな圧迫の原因となったりします3,4)。
③浮腫のある皮膚を保護
浮腫は外力による皮膚損傷を受けやすく、皮膚表面は乾燥しています4)。浮腫のある部位がベッド枠に当たったり、寝具・寝衣のしわで圧迫されたりすると褥瘡を起こすことがあるため、ベッド枠カバーや伸縮性のあるシーツ・衣類を使用します。また皮膚を傷つけないように、足・腕用カバー等を着用し皮膚の露出は最低限にします。皮膚の乾燥による痒みでひっかいてしまうことがあるため、乾燥防止のために保湿剤を塗布します。
④摩擦・ずれから皮膚を保護
皮膚の摩擦力を低減するために、すべりのよいドレッシング材を骨の突出部に貼付します1,4,5)。その他に、履き口のゆるい靴下を履くと、踵にかかる摩擦に合わせて靴下がずれるため、皮膚にかかる摩擦力を低減できます4)。皮膚が乾燥して表面がガサガサになると、摩擦力が高くなり、ずれを起こしやすくなるため、保湿剤を塗布して皮膚表面を滑らかにします。
参考文献
1)日本褥瘡学会. 一般・福祉関係の皆様. https://www.jspu.org/general/index.html. 2023年7月12日現在.
2)日本形成外科学会. とこずれ(褥瘡). https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/tokozure/tokozure.html. 2023年7月12日現在.
3)真田 弘美. 褥瘡対策のすべてがわかる本. 共同印刷. 2002年.
4)山本 由利子. 褥瘡予防・ケア. 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 編集. スキンケアガイドブック. 照林社. 2017. p.202-217.
5)日本褥瘡学会 編. 褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版). 照林社. 2022.

