健康すまいる 2023 vol.30
感染対策インタビュー
サービス付き高齢者向け住宅 リハ・ハウス来夢
- 矢代 虎太郎さん
- 管理者統括
※本記事は、「健康すまいる vol.30」(2023年9月発行)に掲載した内容です。所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
リハ・ハウス来夢は、富山県氷見市で初めて開設されたサービス付き高齢者向け住宅であり、デイサービス・訪問介護・居宅介護支援事業所を併設しています。今回はICTを活用した感染対策の取り組みや新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)施設内集団感染時の対応について伺いました。
取材日:2023年6月1日
お話を伺った方:管理者統括 矢代 虎太郎さん
ICTを活用した取り組み
見守りシステムの導入
業務の効率化や生産性向上、ケアの質を高めることを目的に、令和元年12月に見守りシステム(ライフリズムナビ+Dr.:エコナビスタ株式会社)を全居室に導入しました。このシステムは室内にセンサーを設置して、パソコンやタブレットの画面から室内にいる入所者が寝ているのか、トイレに入っているのかなどの行動状況をリアルタイムで確認できるというものです。ベッド上にいる場合は呼吸・心拍数も把握できます。例えば、トイレに設置しているセンサーによって、ある入所者が習慣的に4時間おきにトイレに行っていることを予め把握していると、その入所者が5時間を経過してもトイレに行っていない時に、先にお声がけをして排泄の失敗を防ぐことができます。私たちはこれを「先回り介護」と呼んでいます。排泄を失敗するとズボンやシーツの交換などに20分ほどかかりますが、先回り介護ではシステムの画面確認からお声がけまでの2~3分で済むため、時間と労力を節約できます。また、ある入所者が1日中トイレにこもっていることをシステムで確認し医師に相談したところ、尿路感染症を起こしていたことが分かり、早期に回復されたこともありました。
新型コロナ対策としても、このシステムが役立ちました。排泄介助が必要な新型コロナ罹患者の場合、システムにて対象者がトイレに入っている時やトイレに行きそうな兆候(お部屋で活動している、離床しようとしている)で排泄介助のお声がけができるので、頻繁に居室に入る必要はありません。罹患者の居室への頻回な訪問はウイルス伝播のリスクとなるため、システムによって職員の安全を守り、また職員がウイルスを伝播させることも防止できます。このシステムにはアラート機能も付いていて、罹患者が居室から出てしまった場合にはアラートが鳴り、瞬時に把握できるため、認知症の罹患者であってもゾーニング対応を維持することができました。
システム導入の初期費用は決して安くはないですが、介護現場の業務効率化やICT機器導入のために国や自治体からの補助金が活用できる場合もあり、当施設は補助金を申請してシステムを導入しました。その他に月額使用料がかかりますが、業務効率化やケアの質向上、また感染対策として利用者や職員の安全を守ることができるため、システムを導入する価値は十分ありました。
チャットワークの活用
当施設では一定の時間を勤務している職員には携帯電話を支給しており、申し送りを含む情報伝達はチャットワーク(SNS)を活用しています。必要な職階に必要な情報を文字や画像、動画などにて伝達し、新型コロナ発生時を含む緊急時には具体的な状況や指示などをチャットワークで流すことにより、全員へ瞬時に情報を伝えることが可能です。
新型コロナ施設内集団感染を経験して
当施設は大きな新型コロナ施設内集団感染(以下、集団感染)を2回経験しています。初めての集団感染は2022年7月で、入所者・職員含めて合計19名が罹患しました。この集団感染の前から事業継続計画(BCP)を作成していましたが、想定していた状況と現実は全く違っていて、BCPを含む感染対策マニュアルが機能しませんでした。例えば、罹患者を1箇所に固めるまでのゾーニング対策ができなかったため、厚生センター(保健所)より当事業所に即した指導を受けました。個人防護具(PPE)着脱エリアにはサラヤのPPE着脱順序ポスターに、厚生センターから指導を受けた内容を付け足してアレンジして掲示しました。また初日に罹患者が6名発生し、濃厚接触者を特定できなかったために、備蓄していたPPEを数日間で消費してしまい、結果足りなくなりました。すぐに市や県、他事業所にPPEの提供をお願いすると同時に、業者にも発注しました。しかし、この時期は全国的に新型コロナが流行していたため、業者も在庫がなく、PPEを確保するのに時間がかかりました。この経験から、現在は仮に集団感染が起こったとしても5日間は耐えられる量のPPEを含めた全ての必要資材を備蓄しています。看護職員は罹患者の対応時に、N95マスクを着用していましたが、介護職員まで浸透していませんでした。その結果、N95マスクを着用せずに夜勤時に罹患者を対応した職員が複数名感染してしまいました。現在は施設内にて感染が疑われる際は、全職員のN95マスク着用指示を出しています。
感染収束後には職員各々で反省点や気づきなどの意見を出し合い、その意見をまとめた振り返りシートを作成し、それを基に反省会を実施して今後の注意点や対応を話し合いました。この反省会での内容はその後の感染対策に活かすことができ、1回目の集団感染以降、入居者が数名罹患することはありましたが、職員の罹患はなく、結果として感染拡大を防げていました。
しかし2023年5月に2回目の集団感染が起こり、合計8名が罹患しました。このときは一気に感染拡大するのではなく、1日1名ずつ罹患者が増えたので、職員はいつ感染が止まるのか精神的な負担を感じていたと思います。感染拡大につながった反省点は、要観察者として注意すべき5名の入居者に対して居室対応を決断できなかったことです。新型コロナ5類移行後だったため、濃厚接触者として疑わしい要観察者を居室対応に切り替えるべきかを悩み、またゾーニング対応をした際に他の利用者の間で「あの人は新型コロナかもしれない」と噂になってしまう可能性を懸念しました。5類移行後、強制的な行動制限はできなくなっていますが、新型コロナの性質は変わらないので、今後感染者が発生した場合や疑わしい場合は、必要に応じて居室対応に切り替えるなどの感染拡大予防をしっかり行う必要があると感じています。現在は感染が収束しているので、反省会を実施して今後の対応に落とし込んでいきたいと考えています。
感染対策
手指衛生
手指衛生は、1ケア1手洗いを徹底しています。手指消毒剤は手すりの上やエレベーターの中など出入りする際に接触するところすべてに配置し、職員にも携帯してもらって、いつでも必要なタイミングで手指消毒ができるようにしています。2023年5月の集団感染で厚生センターから指の間や爪の先までしっかり手指消毒するよう指導を受けたので、今後は手技にも注意していく予定です。
環境整備
居室やホールは、手すりや床等の清掃を毎日2回行っています。よく手が触れるところは、使い捨てのクロスで随時消毒をするように気を付けています。
また、ゴミの取り扱いにも注意しています。ゴミ箱はペダル式のためゴミを捨てるときにゴミ箱を触る必要がなく、密閉度が高いためしっかりと封じ込めができます。ゴミが溢れないようにゴミ箱の設置数を増やし、ゴミ回収業者への回収依頼は集団感染の発生以降、隔日から毎日に変更しています。
座席表の作成
デイサービスやレクリエーション、食事などの際には座席表を作成して記録し、感染者が出た時に感染者の周囲にいた要観察者が誰なのかが分かるようにしています。BCPには座席表作成までは記載していませんが、人の記憶は曖昧なため、このような細かい運用ルールで感染対策を行っています。
職員への検査と自粛期間
毎週月・木曜の週2回、全職員に対して新型コロナ抗原検査(集中的検査)を実施しています。感染者が突然数名出た場合には誰が感染しているか分からないため、毎日検査をします。2023年5月の集団感染時では複数名が感染した段階で毎日検査に変更した結果、陽性者が判明して迅速に対応でき感染拡大を止めることができました。職員や同居家族が体調不良の場合は、曜日に関係なく、本人や同居家族に検査キットを提供して検査をしてもらっています。新型コロナ5類移行後は、職員本人が罹患した場合は7日間、職員の同居家族が罹患した場合は少なくとも5日間は出勤自粛としています。休む期間が長くなってもいいので、しっかり根を絶つ必要があると考えています。
職員への想い
新型コロナに罹患した職員は、会社に迷惑をかけて、家族にも心配をかけて申し訳ないという気持ちになります。また罹患していない職員はその分仕事をしなければいけない状況となります。そのような中で、職員の精神面のケアとモチベーション維持のため、集団感染発生時のみ「来夢喫茶」をオープンしています。たくさんのお菓子や飲み物を準備して、自由に職員が飲食できるようにし、また職員のリクエストに応えて栄養ドリンクやアイスクリーム、ドリップコーヒーなども用意しました。職員からは来夢喫茶が癒しになったと言ってもらっています。
サービス付き高齢者向け住宅
リハ・ハウス来夢
〒935-0015 富山県氷見市伊勢大町2丁目14番20号
TEL 0766-54-5519 https://raimucare-t.jp/
デイサービス:定員30名 サービス付き高齢者向け住宅:40部屋(単身用36部屋、夫婦用4部屋)
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