健康すまいる 2023 vol.30
施設で気になる感染症のはなし
汚物処理室は病原微生物のリゾート地?
※本記事は、「健康すまいる vol.30」(2023年9月発行)に掲載した内容です。所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
汚物処理室は複数の利用者の便や尿が持ち込まれて処理されるため、病原微生物の温床となりやすく、伝播リスクの高い場所です1-3)。人や物が汚染を広げる媒介物とならないための、汚物処理室での注意ポイントを振り返りましょう。
清潔・不潔のエリア分け
汚物処理室の中は、清潔エリア・不潔エリアを明確に分ける必要があります1-3)。清潔・不潔が入り混じると汚染が伝播する可能性があります。物品がどちらに分類されるかを考え、適切にエリア分けできているか、清潔に管理したい物品が汚染される環境でないか確認しましょう。上下にエリア分けする場合は清潔が上、不潔が下とします。清潔・不潔の分け方の例を表に示します。適切にエリア分けできるスペースを確保するため、汚物処理室に不要な物品は置かないようにします3)。不要な物品が多いと、清掃の妨げにもなります。
また、シンクや汚物槽近くに、洗浄・消毒後汚物容器や、個人防護具(以下、PPE)を置いていませんか? シンクや汚物槽近くはしぶきなどで汚染される可能性が高いため、可能な限り遠ざけます3-5)。距離が取れない場合は、汚染が拡大しないように仕切りを付けたり、物品を棚や引き出しに保管したり工夫します4)。洗浄・消毒後汚物容器は汚物処理室で保管しないことが理想です1,3,6)。
洗浄・消毒・乾燥
汚物容器の洗浄・消毒が不十分なまま再利用された場合、感染伝播の要因になる可能性があります2)。
洗浄が不足していると十分な消毒効果が得られないため、消毒の前に確実な洗浄を行います。洗浄の際には溝を含め隅々まで洗浄します6)。洗浄用のブラシやスポンジは、汚染を放置すると菌が増殖し、次に洗浄する容器に汚染を広げる可能性もあるため、使用後は十分に洗浄し、水気を切り乾燥させます4,6)。スポンジは内部の洗浄・乾燥が難しく菌が増殖しやすいため2,3)、2週に1回以上交換しましょう3,6)。
消毒は、適切な濃度・作用時間で実施します6)。次亜塩素酸ナトリウムは温度・光・有機物による影響で濃度が低下しやすいため使用の都度調製し6)、お湯での希釈は避けます4)。浸漬時には物品が完全に消毒液に浸かっているか、内側に空気が入っていないか確認します4,6)。落し蓋を使うと物品が浮くことを防げます。
洗浄・消毒後は完全に乾燥させます。口を下に向け立てて乾燥させることが基本です6)。タオルなどを下に敷いて乾燥させている場合は、何度も使いまわすと雑菌が増殖するため注意します。食器乾燥機を使用すると便利です。
自動で洗浄・消毒ができるベッドパンウォッシャーの導入により感染防止や労力削減などを図れるため2)、未導入のご施設では是非検討してみてください。
感染対策その他のアレコレ
汚物処理室の入退室時には必ず手指衛生を行います1)。また洗浄・消毒作業後など適切なタイミングで手指衛生を行えるよう1,5)、手指衛生に必要な物品が揃っているか、手指衛生をしやすい環境かを確認します2)。
作業時には、身体の汚染される可能性がある部分を考え、標準予防策に基づき適切なPPEを着用します。例えば洗浄・消毒を行う際には、手袋・マスク・エプロン(ガウン)・フェイスシールド(ゴーグル)を着用します6)。必要なPPEがすぐに利用できるようにしておきます。
汚物処理室の清掃は、汚染拡大を防ぐためにも徹底します。トイレ清掃と同様に、清潔と不潔の区分けを意識して、汚染を広げない清掃の順番、清掃用具の管理、清掃時の手袋交換、手指衛生のタイミング等を確認しておきます2)。手のよく触れる部分は1日1回以上清掃します2,3,5)。適切な空調管理のため、換気・通気口にほこりが溜まっていないか確認します3,5)。一時的でなく慢性的に臭気がある場合は、物品の洗浄・消毒・乾燥や清掃、換気が不十分であったり、未洗浄物品が放置してあったりと、汚染を伝播しやすい環境となっている可能性があるため4,5)、原因を探ってみましょう。
ランクアップのために
汚物処理室での動線・動作をマニュアル化することで、誰もが同一の手順で実施できるようになります5)。
参考文献
1)笹原鉄平 他. 入居型高齢者施設における日常的な入居者介助のための感染対策手順書. 排泄介助と汚物室の使用(第1版). 2020年.
2)平岡康子, 市川ゆかり. 汚物処理(洗浄)室. 坂木晴世編. INFECTION CONTROL 2019年夏季増刊 院内エリア&部署別“はじめてさん”の感染対策レクチャーブック. メディカ出版. 2019.
3)三橋美野. 汚物処理室. 渋谷智恵編. INFECTION CONTROL 2018年夏季増刊 環境整備ICTマニュアル. メディカ出版. 2018.
4)木村英恵. 汚物処理室. INFECTION CONTROL 2020. 29(12). 50-4.
5)吉田理香. 汚物処理室の管理. INFECTION CONTROL 2020. 29(3). 41-4.
6)笹原鉄平 他. 入居型高齢者施設における日常的な入居者介助のための感染対策手順書. 物品の洗浄・消毒(第1版) . 2020年.

