健康すまいる

健康すまいる 2023 vol.29

トピックス

サルコペニア・フレイルって何??

※本記事は、「健康すまいる vol.29」(2023年5月発行)に掲載した内容です。所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

現在日本では高齢化が進み、要介護高齢者も増加しています。令和3年の調査では要介護高齢者の介護が必要になった主な原因として、1位に認知症、2位に脳血管疾患、3位に高齢による衰弱があげられています1)。今回は、3位の「高齢による衰弱」に関連のある「サルコペニア・フレイル」について解説いたします。

サルコペニアとは?

筋肉量が減少し、筋力もしくは身体機能の低下が生じている状態を指し2,3)、加齢が原因である一次性サルコペニアと、活動不足・疾患・低栄養など加齢以外の原因によって起こる二次性サルコペニアに分けられます3,4)。サルコペニア該当者はQOLの低下や転倒、骨折のリスクが高いと報告されており3)、筋肉量や筋力が低下していない人に比べて、総死亡リスクは男性で2.0倍、女性で2.3倍、要介護発生リスクは男性で1.6倍、女性で1.7倍高いとの報告もあります5)。また海外の報告によると、地域在住の65歳以上の高齢者の1~29%、施設入所高齢者では14~33%がサルコペニアに該当することが示されています3)

フレイルとは? 

加齢に伴い、軽度の感染症や事故、手術による侵襲などの外的ストレスへの対応力が低下した状態を指し6,7)、ストレスに対して十分な回復力を有する健常な状態と自立した生活が困難である要介護状態の中間的な状態です(図1)。フレイルは、低栄養や転倒、摂食嚥下機能低下などの「身体的側面」、認知機能・意欲の低下や抑うつなどの「精神的側面」、閉じこもりがちになり社会交流の機会が減少するなどの「社会的側面」の3つの側面があり、多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態です2,6)。ただし、早期に適切な多面的介入を行うことで、再び健康な状態に戻ることができます2)

図1 フレイルの概念 8)

サルコペニア・フレイルの対策

低栄養状態はサルコペニアに繋がり、活力や筋力、身体機能が低下します。それにより活動度や消費エネルギー量が低下すると食欲が低下して低栄養状態を促進させ、さらにサルコペニアが進行してしまう悪循環(フレイル・サイクル)が生じます(図2)。フレイルの進行の原因の1つにサルコペニアがあるため、サルコペニア・フレイルの対策のためには、このフレイル・サイクルを断ち切ることが重要です2,7)
フレイルとサルコペニア両方の予防・対策方法として栄養療法と運動療法があげられます2,4)

図2 フレイル・サイクル(文献7より一部改変)

栄養療法

十分なエネルギー摂取に加え、タンパク質の適切な摂取が必要です。予防には体重1kg当たり1.0~1.2g、改善には1.2~1.5gのタンパク質摂取が必要とされています2,3)。またタンパク質は多数のアミノ酸が結合したもので、特に筋肉の3~4割を構成している分枝鎖アミノ酸(BCAA)の摂取が注目されています3,8)

運動療法

6~7週間ベッド上で安静が続くと骨格筋量が減少し、特に下肢の筋力は20%程度低下するといわれています3)。したがって運動ならびに活動的な生活が推奨されます3,4)。運動は、タンパク質合成を直接促進させるスクワットなどのレジスタンス運動(運動強度が大きい運動)と階段や傾斜のある道の歩行などの歩行能力を向上させる有酸素運動が勧められます2,9)。また、日常的に実施できる低負荷でリスクが少ない運動として、起立着席運動があげられます7)(図3)。ひとりでの立ち上がりが難しい場合、立位補助器などの介助機器を用いることもおすすめです。
これらの栄養療法と運動療法は単独で実施するよりも併用する方が有効とされています。サルコペニアの高齢者に対して運動単独、栄養単独、運動+栄養の複合介入を行った結果、3ヶ月の介入で運動+栄養群のみに足の筋量と歩行速度の改善が認められたとの報告もあります10)

図3 起立着席運動 7)

感染症とフレイル

フレイルは、ストレスへの対応力が低下した状態ですが、そのストレスの1つに感染症があります8)。COVID-19やインフルエンザ、肺炎などの罹患により要介護状態に陥ることもあるため、感染予防が重要です4)。またCOVID-19などの感染症流行下においては、高齢者は感染予防に努めるだけでなく、自粛などによるフレイルの進行に注意しなければなりません。利用者の状態が悪化しないよう日常的な運動習慣や栄養管理、コミュニケーションの場を設けるなどの対策を行いましょう11)

参考文献

1)内閣府. 令和4年版高齢社会白書 2)健康・福祉. https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/html/zenbun/s1_2_2.html: 2023年4月10日現在.
2)日本生活習慣病予防協会. ロコモティブシンドローム/サルコペニア/フレイル. https://seikatsusyukanbyo.com/guide/locomotive.php: 2023年4月10日現在.
3)サルコペニア診療ガイドライン作成委員会. サルコペニア診療ガイドライン 2017年版 一部改訂. https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001021/4/sarcopenia2017_revised.pdf: 2023年4月10日現在.
4)沓澤 智子. サルコペニアとフレイル. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2021; 29(3): 359-364.
5)Kitamura A, et al. Sarcopenia: prevalence, associated factors, and the risk of mortality and disability in Japanese older adults. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2020; 12(1): 30-38.
6)一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会. フレイル診療ガイド. http://jssf.umin.jp/clinical_guide.html: 2023年4月10日現在.
7)荒井 秀典 監修. フレイルハンドブック2022年版. (株)ライフ・サイエンス. 2022.
8)荒井 秀典. フレイル・サルコペニア. 日内会誌 2018; 107: 2444-2450.
9)厚生労働省. eヘルスネット サルコペニア. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-087.html: 2023年4月10日現在.
10)Kim HK, et al. Effects of exercise and amino acid supplementation on body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese sarcopenic women : a randomized controlled trial. J Am Geriatr Soc. 2012; 60(1): 16-23.
11)一般社団法人日本老年医学会. 「新型コロナウイルス感染症」高齢者として気をつけたいポイント. https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/citizen/coronavirus.html: 2023年4月10日現在.

kenko29-topics.pdf