健康すまいる 2023 vol.28
トピックス
手荒れとハンドケア
※本記事は、「健康すまいる vol.28」(2023年1月発行)に掲載した内容です。所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
冬になると特に気になる手荒れですが、新型コロナウイルス感染症流行により手指衛生の機会が増えたことで以前よりも気になっているという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか?手荒れをしてしまうと痛くて辛いですが、手荒れは個人の問題にとどまらず施設全体の感染対策にも影響を及ぼす可能性があることはご存知でしょうか?今回は手荒れが及ぼす感染対策への影響や手荒れ対策についてご紹介します。
手荒れの種類と仕組み
※本稿では、「接触皮膚炎」=「手荒れ」として解説いたします。
手荒れは刺激性接触皮膚炎とアレルギー性接触皮膚炎に大別されます1-4)。刺激性接触皮膚炎は、物理的、化学的な刺激が直接皮膚を傷害して生じる皮膚炎で、手荒れの約7割を占めます。アレルギー性接触皮膚炎は、ゴム手袋、洗浄剤・消毒剤に含まれる特定の成分などによっておこるⅣ型アレルギー(遅延型アレルギー)で、初回の接触では手荒れが生じませんが、2回目以降原因物質に接触すると湿疹症状や痒みが強く出る特徴があります1,4,5)。
手指は皮脂腺が少ないことから、皮脂分泌による皮膚保護が期待しにくい特徴があります3)。さらに加齢やアトピー性皮膚炎、血行不良、湿度や気温の低下などの様々な原因により、皮膚のバリア機能を保つために重要な角質層が乾燥しやすくなります3,6)。それによりバリア機能が低下し、細菌やホコリ、化学物質などの異物が内部に侵入しやすくなります。そこに手への刺激やアレルギー反応が加わることで、手荒れが生じます(図1)。
手荒れと感染対策
手荒れがある看護師は健常な手指の状態の看護師と比較して手指に保有している細菌の種類が多いとの報告7)や、通過菌(手に一時的に付着した細菌)が検出された割合が高かったとの報告8)があります。また、手荒れをしているとアルコール手指消毒剤がしみてとても痛いです。痛みにより適切なタイミングで手指衛生ができず、手指衛生遵守率が下がり、施設全体の感染対策に影響が出る可能性があります。このようなことから、手荒れ対策は個人任せではなく、施設全体で取り組む必要があります。
手荒れ予防のために
手荒れの原因はひとつとは限らないため、様々な対策をする必要があります。是非、次の対策を普段から取り入れましょう。
手指衛生方法について
アルコール手指消毒剤は保湿剤が含まれていることから、手洗い石けんに比べて手荒れを起こしにくいとされています9)。手に目に見える汚れがない場合はアルコール手指消毒剤で手指消毒をするというように、手指衛生方法を適切に使い分けて流水と石けんによる手洗いの回数が過剰にならないようにしましょう。基本的に流水と石けんで手を洗った後に手指消毒はしません5,10)。また手洗いの際に長時間お湯を使用すると、手の皮膚の角質細胞間脂質が減少し乾燥しやすくなるため冷たい水を使用します6)。最後にペーパータオルで手を拭く際にも、ゴシゴシ拭くのではなく、軽くおさえるように拭きます。
ハンドケア剤の使用
手指衛生に関する各種ガイドラインにおいても、ハンドケア剤の使用が推奨されています5)。ハンドケア剤には保湿を補うタイプと手に皮膜を形成しバリア機能を高めるタイプ、またこれらが組み合わさったものがあり、皮膚の状態や作業内容などに合わせて使用します。ハンドケア剤を選択する場合には、使用している手袋の材質や、手指消毒剤の消毒効果への影響も考慮するなど5)、ハンドケア=感染対策と意識し、適切な製品を選ぶことが重要です。
ハンドケア手順
図2は弊社でおすすめしているハンドケア手順例です。ハンドケア剤使用時の特に重要なポイントとしては、手のシワに沿って塗り広げること、関節やシワを伸ばしながら親指から小指まで1本ずつ塗ること、指と指の間をマッサージしながら塗ること、最後は乾燥するまで手になじませることです。是非皆様で実践してください。
参考文献
1)日本皮膚科学会, 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会: 手湿疹診療ガイドライン. 2018年. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/Hand_eczema_GL.pdf. 2022年11月21日現在.
2)日本皮膚科学会, 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会: 接触皮膚炎診療ガイドライン2020. 2020年. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf. 2022年11月21日現在.
3)坂木晴世. 感染対策とハンドケア. 感染対策ICTジャーナル2022: 17(4): 324-328.
4)安部正敏. 湿疹・皮膚炎. 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会編. スキンケアガイドブック. 照林社. 東京. 2018: 69-72.
5)CDC: Guideline for Hand Hygiene in Health-care Settings. 2002: https://www.cdc.gov/mmwr/PDF/rr/rr5116.pdf?_fsi=QYllS1Lo. 2022年11月21日現在.
6)野村有子. スタッフに伝わる!手荒れのメカニズム. INFECTION CONTROL 2019; 28(10): 84-90.
7)Larson EL, et al. Changes in bacterial flora associated with skin damage on hands of health care personnel. Am J Infect Control 1998; 26(5): 513-21.
8)Rocha LA, et al. Changes in hands microbiota associated with skin damage because of hand hygiene procedures on the health care workers. Am J Infect Control 2009; 37(2): 155-9.
9)Larson E, et al. Skin reactions related to hand hygiene and selection of hand hygiene products. Am J Infect Control 2006; 34(10): 627-35.
10)Kampf G, et al. Dermatological aspects of a successful introduction and continuation of alcohol-based hand rubs for hygienic hand disinfection. J Hosp Infect 2003; 55(1): 1-7.

