健康すまいる

健康すまいる 2023 vol.28

感染対策インタビュー

特別養護老人ホーム杉の樹園

※本記事は、「健康すまいる vol.28」(2023年1月発行)に掲載した内容です。所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

特別養護老人ホーム杉の樹園は、地域の高齢者が安心して過ごす場を提供したいという思いから、地域ではじめての高齢者施設として平成4年に開設されました。そのようなご施設での感染対策の取り組みやそれぞれの立場からの思いを、施設の感染対策委員の皆様に伺いました。
取材日:2022年11月17日

感染対策はどのようにしていますか?

手指衛生

馬籠さん(看護部長)
入居者がいるフロアでは、全ての手洗い場には石けんとアルコール手指消毒剤、全ての居室前や職員が頻繁に行き来する階段下の廊下などの各所にアルコール手指消毒剤を設置しており、その多くを、接触感染リスクを考慮して自動ディスペンサーにしています。これらは動線を考えて設置しているため、職員は必要時にすぐ手指衛生を行うことができますし、入居者の自主的な手指衛生にも繋がっています。また職員は、入職時と年に1回の感染対策研修で、ブラックライトを用いて手洗い手技を確認しています。

環境整備

榎本さん(統括管理者)
法人理念の「快適・安心・活力」にも通じますが、入居者に清潔で快適に過ごしてほしいと考え、高齢者施設特有の臭いが発生しないよう清潔維持を徹底しています。清掃専門の職員3名および委託業者で毎日トイレや居室等全般を清掃しています。またドアノブや手すり等のよく触る箇所は1日2回消毒しています。

普段の食事について教えてください

鈴木さん(管理栄養士)
こまめに入居者に声をかけて食べたいものをヒアリングしたり、職員を通じて入居者のリクエストを聞いたりして、それを献立に盛り込むなど、食事面でも入居者に楽しんでいただけるように工夫しています。また、きめ細やかに入居者の栄養管理をするため、普段からの現場の職員との密なコミュニケーションや、入居者の食事介助を実施することで、食事量が減少している入居者にはなるべく早めに介入するようにしています。

新型コロナウイルス禍での感染対策や変化したことについて教えてください

馬籠さん
2021年11月から2~3か月間、施設内で全職員対象の個人防護具(以下、PPE)に関する研修を行い、着脱の練習や、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染症患者発生時に必要なPPEを着た状態で普段のケアを行う体験をしました。PPEを着用しながらのケアがどのくらい大変なのかを知ることができ、感染源を持ち込まない・広げないようにしようという意識付けにもなりました。

倉持さん(施設長)
PPE着脱演習として、PPEの外部研修に参加した6名の職員をリーダーとした班を編成し、班ごとに1人ずつ着脱を確認したところ、「この方法だと脱ぐ際に汚染してしまう」、「ガウンは背中が開くため気を付けないといけない」といった意見が出てきました。そこでより良い手技を皆で考え、各班で話し合った意見をリーダーがまとめ、PPE着脱マニュアルを更新しました。PPEを着た状態で普段のケアを行う体験では、個人に合うPPEのサイズが確認でき、またフェイスシールドを着用すると視界が狭まったり曇ったりして入居者にぶつかることもある、動きづらい、入居者がPPEを着用している職員を嫌がる等の問題点を把握することもできました。研修を実施していたことで、2022年4月にクラスターが発生した際も職員はスムーズにPPE着脱ができ、また事前に問題点を把握しその対策を行っていたため、PPEを着ながらのケアも適切に行えたと思います。その他の取り組みとして、職員には勤務時に着用するマスクは職員個人で準備してもらっているため、正職員にはマスク手当を支給し、パートや勤務時間の短い職員には現物支給として定期的にマスクを配布しています。新型コロナ対策上マスクは必要不可欠ですが、価格が高騰した時期もあったため、購入に負担を感じることを懸念し、新型コロナ発生当初から続けています。また、新型コロナ患者が発生した際にはすぐ対応できるよう、必要なPPEなどの物品をまとめてワゴンにセットして備えています。

榎本さん
職員は密にならないよう、昼食を車の中でとったり、施設内で食べる場合も時間や場所を割り振ったりして個別でとるようにしています。クラスター発生時には、技能実習生以外は車通勤のため、職員は全員車で昼食をとるようにしました。

入澤さん(介護長)
入居者にマスク着用や手指衛生をするようお声がけしました。手指衛生では、寒くて手が冷たくなる時等はやりたくないと言われることもありましたが、そのような時でも手指衛生の重要性を伝えて実施してもらいました。新型コロナ禍に入って大きく変わったのは面会や行事、外出等ができなくなったことです。面会の代わりに職員が毎月、入居者の施設でのご様子を書いた手紙と写真をご家族に送っています。また行事や外出ができない代わりに、お寿司やケーキ、パンのバイキング等を開催しました。施設内でも楽しんでいただけるようなイベントを開催することで、入居者の心のケアに繋がればと考えています。

感染対策で難しいと感じることはありますか?

鈴木さん
クラスターが発生した際、厨房に感染を持ち込まないようなるべく現場との接触を避けなければならず、栄養管理がすぐにできないということがありました。収束後に久しぶりにお会いしたら痩せている入居者がおり、早期に栄養改善が出来なかったことにもどかしさを感じました。感染対策も大事ですが、クラスターによる行動制限で入居者の体力や食欲が落ちている時こそ栄養管理が大事であったと感じています。

入澤さん
入居者の中には、マスクを着けていると苦しいから取りたいという方や、職員が着用しているマスクを取って投げてしまう方もいて、マスク着用の理解を得るのが難しいと感じました。またクラスターが発生した際には、ゾーニングや対応方法が事前のシミュレーション通りにならないことも多く、物品の配置等シミュレーションできていなかった部分もあったため戸惑いました。

榎本さん
感染拡大を抑えるためには、感染症に関する情報を全職員に漏れなく連絡する必要がありますが、正職員やパート等様々な勤務形態がある中で全職員への情報伝達が難しいと思っています。常に様々な職員に直接声をかけ、伝わったかの確認と情報伝達が完了したことに関して倉持施設長へフィードバックをするようにしています。また、新入職員には入職時に体調不良時の対応も確認しています。
例えば自分自身が体調不良の時だけでなく、同居家族が体調不良を訴えた時にも、まずは上司や施設長、看護部に電話をして対応を相談するよう伝えています。以前に家族が発熱したもののその時点では自身に症状がなかったことから出勤した職員が、後にインフルエンザだと判明して施設内でインフルエンザ感染が広がったことがあったため教訓にしています。

馬籠さん
クラスター発生時に感染者以外の入居者も行動制限し、集まらないように各居室で生活してもらいました。しかし、行動制限中にこれまで歩けた入居者が車いすになったり、食欲が落ちたり、認知症が進んでしまうということがあり、制限を解除してからも健康状態の回復に時間がかかってしまいました。

倉持さん
感染者だけ行動制限していた他施設ではクラスターの収束に時間がかかったと聞くこともありました。収束が長引くと職員や入居者の負担になるため、感染者が出ても短期間で収束させようと、今回のクラスター発生時には入居者全員の行動制限を行いました。それにより2週間程度での早期収束が叶いましたが、入居者の健康状態への影響を考えると、今後クラスターが発生した際も同じように制限するべきか判断に迷っています。また、新型コロナ禍で、職員が各自責任感を持って感染に気を付けて生活をしてくれていると思いますが、先が見えない状況でどこまで我慢を強いるのかを考えると心が痛みますし、負荷をかけている状況で職員の心のケアをどうやっていけばいいのか頭を悩ませています。

最後に

倉持さん
新型コロナ禍になって、改めて人とのコミュニケーションが大切だと感じました。今後新型コロナを含め感染症流行が落ち着いた際には、入居者とご家族がコミュニケーションをとれる場を設け、散策等外に出る行事の企画も増やしたいです。あわせて、見守りセンサーや職員間の連携がスムーズに進むツール等でIT化を進め、職員の負担を減らしたいと考えています。新型コロナ禍でまだまだ先が見えず、それぞれのご施設で色々と辛いこともあると思いますが、介護職員や他の職員のみなさまも一丸となって頑張っていきたいと思います。

特別養護老人ホーム 杉の樹園

〒321-3404 栃木県芳賀郡市貝町続谷736
TEL:0285-68-4111 http://suginokien.com/

特別養護老人ホーム : 56床
地域密着型ユニット : 20床
ショートステイ : 4床

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