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HosCom 2026 vol.23 no.2最新号

地域連携

岐阜県・岐阜市における地域連携の取り組み

馬場 尚志
岐阜大学医学部附属病院 感染制御室 室長 生体支援センター 教授/センター長

※本記事は、「HosCom 2026 vol.23 no.2(2026年7月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

はじめに

2020年からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、社会全体が大きな影響を受けました。その中で我々医療機関は、個々の施設での感染制御の強化とともに、診断や治療、ワクチン接種など様々な領域で、医療機関や保健所など地域全体で連携して乗り越えてきました。一方、“サイレントパンデミック”として気づかれることなく進行しつつある薬剤耐性菌の問題も、医療上の大きな懸念事項です。その対策においても、情報共有や対応支援など地域全体で連携して進めることが必要です。
本稿では、岐阜県・岐阜市の感染対策における地域連携の取り組みについて、その背景とともに紹介します。

岐阜県による地域連携ネットワーク

感染症は、急性期や療養型など医療機関の機能や規模にかかわらず発生しますが、感染制御の専門人材は限られています。そのため、以前より行政による地域ネットワーク・支援体制の整備が進められてきました。モデル事業として8つの県に地域ネットワークが設置された2004年以降、厚生労働省は繰り返し地域ネットワークの構築・強化について通知し、アウトブレイク時には保健所に報告し、必要に応じて地域ネットワークによる支援を受けるよう求めています1,2)
岐阜県でも、2005年に県が設置する協議会として、急性期病院の医師や看護師、岐阜県医師会や岐阜県病院協会の代表、保健所を含む行政機関からなる院内感染対策協議会が発足し、中小病院への訪問指導やアウトブレイク対応を支援しています(図1上、図2上)。これら訪問指導・支援の際には、県の医療整備課や地域を管轄する保健所が立ち合うとともに、必要に応じて地域で中心的な役割を担う急性期病院の感染制御担当者にも参加・協力を求め、お互いの視点や分析、指導内容を共有し、地域全体の情報共有・支援につなげています。また、医療機関の要請だけでなく、保健所など行政機関からも各医療機関からの届出や報告の内容について相談を受け、当該医療機関への追加調査や地方衛生研究所(岐阜県保健環境研究所)での病原体解析など、必要な対応について助言しています(図2下)。これら行政機関による緊密な地域連携・支援体制は、COVID-19においても迅速かつ的確な行政対応に貢献しました。

加算算定病院全体での合同カンファレンスとJ-SIPHEの活用

2012年には「感染防止対策加算」が新設され、診療報酬上でも病院間の連携や地域ネットワークの構築が図られています。その後、2016年に薬剤耐性対策アクションプランが策定されたことを受け、2018年には「抗菌薬適正使用支援加算」が追加され、COVID-19発生後の2022年には地域全体での感染症対策のさらなる推進・強化を目指し、「感染対策向上加算」として要件が見直されました3)。感染対策向上加算(2022年以前は感染防止対策加算)(以下、加算)の算定要件として、連携病院間での合同カンファレンスの開催がありますが、岐阜県では2012年から年2回、県内の加算算定病院すべてが参加する合同カンファレンスを開催しています(図1左下)。ここには岐阜県病院協会や岐阜県医師会のほか、県の医療整備課や県内すべての保健所も参加し、感染症に関する様々な課題について県全体で意見を交わし情報共有しています。以前は4職種(医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師)、計200人以上が集まり対面で開催していましたが、県域が広い岐阜県では遠隔地の病院を中心に参加に伴う負担が課題でした。COVID-19発生後の2020年からはweb会議システムを介したオンライン開催に切り替え、遠隔地にある病院の負担も軽減できました。一方、参加施設が多く、限られた時間の中で各施設の意見を取り上げることが難しいため、会議システムが持つ投票機能を活用するなど工夫もしています(図3)。さらに、2012年から続けている薬剤耐性菌や抗菌薬、手指衛生などのサーベイランスは、2021年に全病院がJ-SIPHE(感染対策連携共通プラットフォーム)に参加し、その中でデータを登録・収集し、フィードバックにも活用しています。これらのグラフは、J-SIPHEの「お気に入り」機能4)に登録してあり、カンファレンス時だけでなく、各施設がいつでも確認できるようにしています。

岐阜市感染対策地域連携カンファレンス

岐阜市では、2022年に「外来感染対策向上加算」が新設されたことをきっかけに、市内の加算1算定病院と岐阜市保健所、岐阜市医師会、隣接するもとす医師会により新たな地域連携の枠組みを立ち上げ、岐阜市感染対策地域連携カンファレンスとして、年2回のカンファレンスと訓練を開催しています(図1右下)。
このカンファレンスには、岐阜市医師会もしくはもとす医師会に所属し外来感染対策向上加算を算定する診療所のすべて、岐阜市内に6つある加算1算定病院、連携する加算2・3算定病院のすべて、そして岐阜市保健所が参加しています。参加医療機関の数は160を超えており、岐阜市医師会館をメイン会場としてハイブリッド開催しています。会の内容としては、医師会、保健所、加算1算定病院が、それぞれの立場から情報提供する時間を必ずとり、地域の状況や取り巻く環境、関連する知識・情報について地域全体で共有しています(図4左)。また、情報提供だけでなく、各診療所の疑問や問題点などを集め、それを加算1算定病院が解説する双方向のやり取り(Q&A)も重要な柱です。さらに、各診療所からの意見をリアルタイムに把握するため、ここでも会議システムの投票機能を活用しています。訓練は、加算1算定病院が各病院のアイデアや強みを活かし交代で企画していますが、診療場面の実演や保健所と協力し作成した麻しん対応の動画を取り入れるなど、実際の場面での課題解決につながるよう工夫しています(図4右)。

図1 岐阜県の感染対策における地域連携の枠組み(2026年3月時点)

図2 岐阜県院内感染対策協議会の構成と活動

図3 感染対策向上加算算定病院 合同カンファレンスの様子

図4 岐阜市感染対策地域連携(外来感染対策向上加算)カンファレンスの内容と訓練の様子

今後の地域連携に向けて

COVID-19による混乱の要因を振り返ると、新たな病原体で当初は病態や治療もはっきりしておらず、情報が乏しい中、多くの不安が渦巻いたことが挙げられます。また、その後も急ピッチでワクチンや治療薬、検査体制が整備され、行政対応も刻々と変化する中、医療機関同士、また保健所など行政機関との間でタイムリーかつ十分な情報共有ができず、意思疎通を欠いたことも否めません。これらの教訓から、新たな感染症発生への備えとして、保健所や地域の医療機関全体で、感染症やその課題・対応について情報共有・情報交換する場があることは重要です。また、薬剤耐性菌対策や抗菌薬適正使用、高齢者施設での感染対策など、地域全体での取り組みが十分とは言えない領域もあります。そのため、これまで岐阜県・岐阜市で医療機関と行政機関とで築き上げてきた地域連携体制を、さらに発展・進歩させていくことが必要と考えています。

参考文献

1)厚生労働省. 医政局指導課長通知「医療機関等における院内感染対策について」. 医政指発0617第1号 平成23年6月17日. https://www.mhlw.go.jp/topics/2012/01/dl/tp0118-1-76.pdf:2026年3月24日現在.
2)厚生労働省. 医政局地域医療計画課長通知「医療機関における院内感染対策について」. 医政地発1219第1号 平成26年12月19日. https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000845013.pdf:2026年3月24日現在.
3)厚生労働省. 令和4年度診療報酬改定の概要 個別改訂事項Ⅰ(感染症対策).https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000911809.pdf:2026年3月24日現在.

4)AMR臨床リファレンスセンター. J-SIPHE参加施設マニュアル2025年12月(ver.7.2.0).https://j-siphe.jihs.go.jp/files/J-SIPHE参加施設マニュアル.pdf:2026年3月24日現在.

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