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HosCom 2026 vol.23 no.2最新号

特集

血管カテーテルの最新動向と選択のポイント~ミッドラインカテーテルの有用性と管理~

中山 賢人
佐賀大学医学部附属病院 高度救命救急センター 助教
阪本 雄一郎
佐賀大学医学部 救急医学講座 教授

※本記事は、「HosCom 2026 vol.23 no.2(2026年7月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

はじめに

2024年、本邦においても、ミッドラインカテーテルという新しい末梢静脈カテーテルが登場しました。少しずつ使用されるご施設も増えてきているようですが、新しいカテーテルであり、PICC(Peripherally Inserted Central Catheter:末梢挿入型中心静脈カテーテル)とどう違うか、どんな使い方をすればよいか、どんな合併症に注意する必要があるかなど、現場における疑問は多いように感じます。これから使っていきたいという方にも、すでに使っている方にも現場で役に立つ実践的な情報をお届けできればと思います。
※従来の短い末梢静脈カテーテルとミッドラインカテーテルは末梢静脈カテーテルに分類されますが、本誌では従来の短い末梢静脈カテーテルを「末梢静脈カテーテル」と記載します。

ミッドラインカテーテルとは

ミッドラインカテーテルは、「上腕部の静脈から挿入され、先端が腋窩静脈付近に位置するカテーテル」1)等と定義されています。末梢静脈カテーテルのように簡便に挿入でき、PICCのように一定期間留置が可能という特性を併せ持つ“中間的”な位置づけのカテーテルです。注意点として、ミッドラインカテーテルはあくまで末梢静脈カテーテルの一種であり、中心静脈カテーテルとしては使用できないため、「留置長の短いPICC」ではないことを強く意識する必要があります。ミッドラインカテーテルの分類ミッドラインカテーテルは、ガイドワイヤー型(図1)と非ガイドワイヤー型(図2)に大別されます。ガイドワイヤー型は、PICCやCVC(Central Venous Catheter:中心静脈カテーテル)と同様に、ガイドワイヤーを使用し、カテーテルを挿入します。挿入時はマキシマルバリアプリコーションが推奨されます。一方、非ガイドワイヤー型は、末梢留置針と同じように内筒(穿刺針)と外筒(カテーテル)で構成されています。ガイドワイヤーを使用しないため、挿入手技が簡便であり、厳密な清潔操作を必要としないという特徴があります2)

図1 ガイドワイヤー型

図2 非ガイドワイヤー型

他のカテーテルとの比較

ミッドラインカテーテルを他のカテーテルと比較しました(表)。比較すると、ミッドラインカテーテルは、留置期間が短いという末梢静脈カテーテルの課題を補完するデバイスであることが分かります。また、挿入に時間を要するというPICCの課題も軽減できます。ミッドラインカテーテルの特徴は以下の通りです。穿刺部位上腕を3等分したうちの、中央の部位が穿刺部位として適切とされており、左右区別なく穿刺することができます。

穿刺血管

上腕内側を走行する尺側皮静脈が第一選択です。エコーで十分な血管径があり、動脈や神経の位置関係から、安全に穿刺できると判断した場合には、上腕静脈を選択することもあります。橈側皮静脈は、比較的浅い位置にあり穿刺しやすいという特徴がありますが、腋窩静脈への合流角度が急であり、カテーテルが通過しにくいことがあります。特に、長いカテーテルを使用する場合は注意が必要です。

先端位置

使用するカテーテルの長さや穿刺位置によって異なりますが、一般的には腋窩静脈から鎖骨下静脈に先端が位置します。

留置期間

一般的に6~14日程度の輸液治療が想定される場合に適応となります。ただし、15日を超えたからといって直ちに抜去が必要になるわけではありません。添付文書上は最大30日間の使用が可能とされている製品もあります。

使用できる薬剤

基本的には末梢静脈カテーテルと適応は同じと考えてください。しかし、昇圧剤や静脈栄養剤など比較的侵襲度の高い薬剤を投与するときは、ミッドラインカテーテルを優先していただいても差し支えありません2)。

表 カテーテルの比較

カテーテル選択のアルゴリズム

2025年9月に、「輸液カテーテル管理の実践基準2025年版 輸液治療の穿刺部位・デバイス選択とカテーテル管理ガイドライン 改訂2版(南山堂)」2)が発売されました。本ガイドラインでは、投与薬剤の血管刺激性および、想定される治療期間に基づいて、適切なカテーテルを選択することが推奨されています。一方、実臨床においては、DIVA(Difficult Intravenous Access:静脈路確保困難)患者に対して、どのカテーテルを選択するかということが、重要な判断ポイントとなります。そこで当院では、DIVA患者に限定した図3のようなアルゴリズムを採用しています。想定される治療期間によって、短期間ならエコーガイド下末梢静脈路確保、それ以上ならミッドラインカテーテルを選択しています。これはあくまで「想定される治療期間」であり、カテーテルの使用期限とは異なる点は注意が必要です。私たちの部署(高度救命救急センター)では、重症患者の急性期対応を主に担っており、カテーテル選択時点で治療期間が明確に定まっているというケースは多くありません。そのため、DIVA患者に対してPICCを選択することはほとんどありません。

図3 DIVA患者におけるカテーテル選択のアルゴリズム

ミッドラインカテーテルが適応となりにくい場合

透析患者や慢性腎不全患者では、将来的なシャントの作成に影響を及ぼす可能性があるため、ミッドラインカテーテルの使用を避けることが望ましいとされています。その他、上腕に熱傷や外傷がある場合や著明な凝固異常のある患者、リンパ浮腫のある患者(腋窩部位の手術や放射線療法後など)、ならびに麻痺のある上肢への穿刺も避けるようにしてください。

ミッドラインカテーテルが有効と思われる使用例

主な適応としては前述の通りDIVAですが、それ以外に、比較的血管刺激性の高い薬剤を使用する場合、末梢静脈カテーテル使用中に静脈炎や点滴漏れが頻回に起こる場合などに適応となります2)。さらに、高齢者医療においてもミッドラインカテーテルは重要な役割を担います。ミッドラインカテーテルは穿刺時に透視装置を必要としないという特性から、急性期病院のみならず、慢性期病院や介護施設などにおいても導入可能です(図4)。また、ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)が低下した高齢者が重篤な疾患で入院した場合、ACP(Advance Care Planning:人生会議)が十分でないと、家族説明を行っても治療方針の決定に時間を要することがあります。そのような状況では、ミッドラインカテーテルを留置した上で治療を開始し、経過を踏まえて治療方針を再検討するという選択が可能となります。実際に高齢者医療でミッドラインカテーテルを使用されている施設からは、「ミッドラインカテーテルは『意思決定のための時間を確保する一時的なルート』として活用でき、治療的意義を超えた役割を果たしている。治療を中断することなく、患者・家族が必要な時間と全身状態の安定を得られる点は、今後の高齢者医療における重要な視点といえる(一部修正)」との報告が寄せられています3)

図4 高齢者施設におけるミッドラインカテーテル導入事例

ミッドラインカテーテルのメリット

ミッドラインカテーテルの最大の利点は、末梢静脈カテーテルと比較して長期留置が可能という点にあります。末梢静脈カテーテルは、当院では72時間ごとにカテーテルを交換していますが、DIVA患者では、交換のたびに複数回の穿刺を要することも少なくありません。これは患者・医療者双方に大きな負担となっています。ミッドラインカテーテルを使用することで、それらの問題を軽減することが可能です。当院のデータでは、ミッドラインカテーテルの使用により、1患者あたり6.7回、末梢静脈穿刺回数を削減できると見込まれます。1回の穿刺に30分かかると仮定すると、合計201分の穿刺に費やす時間が削減される計算になります4)。合併症に関するメリットミッドラインカテーテルのその他のメリットとして、他の血管内カテーテルと比較して、カテーテル関連合併症を低減できる可能性が挙げられます。末梢静脈カテーテルでは、静脈炎、カテーテルの自己抜去、浸潤など、さまざまな要因により、約43~59%の症例で何らかの合併症が生じていると報告されています5)。また、PICCと比較して、CRBSI(Catheter-Related BloodstreamInfection:カテーテル関連血流感染)の発生率が低いという報告もあります6)。ミッドラインカテーテルは上腕から挿入され、先端が中心静脈まで到達しないため、CVCのように致死的な合併症が生じる可能性は極めて低く、CVCより安全性は高いといえます。

ミッドラインカテーテルを使用する上で注意すべきポイント

上述のように、ミッドラインカテーテルは末梢静脈カテーテルより安定し、PICCより感染リスクが低く、CVCより安全に使用できる、素晴らしいカテーテルです。しかし、注意すべきポイントがいくつかあります。

1:適応判断を正確に

ミッドラインカテーテルは多くのメリットを有する有用なデバイスですが、適応判断を誤ると予期せぬ合併症を招く可能性があります。手技的に導入しやすいという利点はあるものの、末梢静脈路が確保できないという理由だけで、すべての症例に使用すべきではありません。禁忌事項、使用予定の薬剤、想定されるカテーテル留置期間、血管径など複数の要素を総合的に評価した上で、適応がある場合に限って使用することが重要です。また、他のカテーテルと同様に、不要となった時点で速やかに抜去することも忘れてはなりません。

2:各カテーテルの注意すべきポイント

Argyle™ Fukuroi Midline カテーテル(カーディナルヘルス株式会社)キットに同梱されているガイドワイヤーは細く、ややコシがないと感じられる場合があります。固定用のゴムリングを外さないまま誤ってガイドワイヤーを進めようとすると、屈曲してしまう可能性があるため注意が必要です(図5)。

図5 ワイヤーの屈曲

Arrow™ Midlineカテーテルキット(テレフレックスメディカル株式会社)
ダブルルーメンのカテーテルは5Fr(外径:1.8mm)サイズで、現在市販されている製品の中では最も径が大きいです。カテーテル径が大きいことで、滴下や採血が安定するというメリットはありますが、血管径によっては適応とならないケースもあり、使用にあたっては慎重な判断が求められます。

サーフローMidela(テルモ株式会社)
カテーテルの意図しない抜去や位置ズレを抑えるための固定具が入っており、カテーテル挿入後はカテーテル根元の突起に固定具をはめ込みます。これによって輸液ライン等のロックコネクタが皮膚に接触することを避けることもできます。突起がやや確認しづらいため、固定具を装着した際に「カチッ」という音がすることを必ず確認してください(図6)。

図6 カテーテル固定具の装着確認(テルモ株式会社より引用)

3:挿入時の清潔操作について

ガイドワイヤー型と非ガイドワイヤー型で、求められる清潔操作が異なります。ガイドワイヤー型では、マキシマルバリアプリコーションが推奨されます2)。特にミッドラインカテーテル挿入に不慣れな場合や、20cm以上の長いカテーテルを挿入する際は、ガイドワイヤー操作によって不潔になるリスクが高まります。そのため、滅菌手袋と滅菌ガウンを着用した上で挿入していただくことが望ましいと考えます。
一方、非ガイドワイヤー型は、ガイドワイヤー操作がなく、挿入手順も比較的シンプルなため、マキシマルバリアプリコーションは不要であり、非滅菌手袋装着での挿入が許容されます。しかし、刺入部の清潔は確実に維持する必要があり、エコープローブカバーの使用は必須です。近年、非滅菌の超音波ゲルを経皮的手技に使用した事例で、患者の血液から細菌が検出された報告が複数あったことを受け、CDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国疾病予防管理センター)は、経皮的手技では滅菌超音波ゲルのみを使用するよう注意喚起を行っています7)。このような背景から、非ガイドワイヤー型ミッドラインカテーテル挿入においても、エコー関連器材を含めた感染対策の確実な実施がより重要となります。その具体的な手段の一つとして、エコープローブカバーとカテーテル固定フィルムの役割を兼ねた製品を用いることで、挿入時の清潔維持に寄与すると考えられます(図7)。

図7 エコープローブカバーとカテーテル固定フィルムの役割を兼ねた製品(ニチバン株式会社より引用)

4:PICCと混同しない

PICCと穿刺部位が同じで外観も類似していますので、ミッドラインカテーテルをPICCと誤認し、中心静脈栄養や高濃度カリウム製剤をミッドラインカテーテルから投与してしまうというリスクがあります。このような誤使用を防ぐためには、ミッドラインカテーテルが末梢静脈カテーテルの一種であることを院内で十分に周知する必要があります。当院では、ミッドラインカテーテル導入時にハンズオンや説明会を実施するとともに、高度救命救急センターの看護師に1人1冊ずつ私が執筆した書籍1)を配布し、理解の促進を図っています。

5:創部観察を怠らない

ミッドラインカテーテルはカテーテルが深い位置にあり、目視できませんので、静脈炎や点滴漏れの発見が遅れる可能性があります。日々、創部の観察を注意深く行うようにしてください。

6:カテーテル閉塞に注意する

当院の高度救命救急センターにおいて、ミッドラインカテーテルを留置した29例を対象に合併症の検討を行いました。その結果、ミッドラインカテーテル関連合併症として最も多く認められたのはカテーテル閉塞で2例でした8)。カテーテル閉塞は予定外の抜去の要因となります。カテーテル閉塞を予防するため、薬剤の配合禁忌を十分に確認するとともに、カテーテル採血後やカテーテルロック時にはパルシングフラッシュを徹底してください。

7:カテーテル自己抜去に注意する

ミッドラインカテーテルは無縫合でも安定した固定性が得られます。実際に経験した患者からは「前腕の末梢ルートより上腕に留置したミッドラインの方が気にならない」との意見が聞かれました。しかし、せん妄などにより、自己抜去のリスクが非常に高いと判断される場合には、カテーテルの縫合固定を検討することも必要です。

おわりに

ミッドラインカテーテルは、これからの輸液管理を大きく変えていく可能性を秘めています。正しく理解し、適切に使いこなすことで、患者さんにとっても医療者にとっても、より良い選択肢となるはずです。明日からの臨床に、ぜひ活かしていただければ幸いです。

参考文献

1)中山賢人. すぐわかる!ミッドラインカテーテル46の疑問. 南山堂.2025年.
2)日本VADコンソーシアム研究会. 輸液カテーテル管理の実践基準 2025年版 輸液治療の穿刺部位・デバイス選択とカテーテル管理ガイドライン 改訂2版. 南山堂. 2025年.
3)福添恵寿. その一本が、 医療に“対話”を取り戻す― Midlineで変わる意思決定の現場. Chorusline. Vol.57.
4)中山賢人, 小網博之, 阪本雄一郎. 第9回日本VADコンソーシアム研究会発表 一般演題.
5)Pittiruti et al. European recommendations on the proper indication and use of peripheral venous access devices(the ERPIUP consensus):A WoCoVA project, The Journal of Vascular Access 2021.
6)Shah P, Jones C, Smith R, et al. Comparing complication rates of midline catheter vs peripherally inserted central catheter: a systematic review and meta-analysis. Open Forum Infect Dis. 2023;10(2):ofad024. doi:10.1093/ofid/ofad024.
7)Centers for Disease Control and Prevention. Alert: Use Only Sterile Ultrasound Gel for Percutaneous Procedures. CDC; 2025.
8)中山賢人, 小網博之, 阪本雄一郎. 高度救命救急センターにおけるミッドラインカテーテル関連合併症の検討. 日本救急医学会雑誌. 2026.
9)Cardinal Health. パルシングフラッシュの方法. https://cardinalhealth-info.jp/faq/pulsing-flush/ (accessed January 8, 2026)

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