HosCom 2026 vol.23 no.1
聞いてみよう!となりの感染対策
効果的な地域連携~研修やカンファレンスの工夫~
- 高橋 並子
- 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 看護次長/感染制御部
※本記事は、「HosCom 2026 vol.23 no.1(2026年3月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
はじめに
2022年の診療報酬改定では、感染防止対策加算が見直され、感染対策向上加算へ名称変更されました。それを機に新設された加算もあり、地域連携がそれまで以上に重要視されるようになりました。地域の医療機関等が連携により感染対策の質を向上させ、感染症アウトブレイク時などに迅速に支援し合う体制が望まれていると考えます。また、2024年の診療報酬改定時の見直しでは、感染対策向上加算1の施設基準へ新たに「介護保険施設・指定障害者支援施設等から求めがあった場合には当該施設へ赴いての実地指導等感染対策に関する助言を行うこと」1)などが加わり、感染対策における地域連携の範囲は拡大しています。虎の門病院は、東京都港区にある許可病床数819床の急性期病院で感染対策向上加算1(以下、加算1)を取得しています。2025年12月時点では、加算1を取得している都内の3病院と連携し相互ラウンドを行っている他、同じく都内の感染対策向上加算2・3(以下、加算2・3)の2施設と年4回の合同カンファレンスを開催しています。また港区内および近隣の区で外来感染対策向上加算を取得している診療所・クリニック27施設、精神障害者グループホーム1施設と連携しています。
互いに連携していて良かったと思えるような情報共有・意見交換を目指して、連携に関わる業務を行っています。本稿ではカンファレンスや研修の実際についてご紹介します。
加算2・3施設との合同カンファレンス
2019年まで、カンファレンスはすべて対面で行っていましたが、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック以降はWeb+対面のハイブリッド形式で実施しています。2施設とも長年当院と連携しているため、各施設の診療の特徴やICTの活動スタイル、課題などをお互いが理解した上でディスカッションができています。カンファレンスでは定例の議題として「①薬剤耐性菌検出状況」「②抗菌薬使用状況」「③手指衛生推進の取り組み」の3つを設定し、各施設のデータを報告し合い、継続して討議しています。②、③に関してはJ-SIPHE(感染対策連携共通プラットフォーム)も活用し、施設間の比較検討を行っています。また、毎回当院のICTメンバーが「話題提供」としてテーマを決めてプレゼンテーションを実施しています。プレゼンテーションの担当は、医師、薬剤師、臨床検査技師、看護師の4職種で輪番制としており、連携施設の参加者の方々に興味を持っていただけるようなタイムリーなトピックスを取り上げるように努めています。最近行ったプレゼンテーションのテーマとしては「抗菌薬適正使用とAWaRe分類※」「2025年度感染症法の届出基準の変更(CRE(カルバペネム耐性腸内細菌目細菌)とCPE(カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌)、その他感染症)」「血液培養検査について」「CDI(クロストリジオイデス・ディフィシル感染症)について」などがあります。また年1回は、当院ICTメンバーが加算2・3の施設を訪問し、感染対策ラウンドを行っています。現場を実際に見ながら、困っていることや取り組んでいること等を伺い、気がついた事柄はフィードバックし、感染対策の改善に役立ててもらっています。当院としても指摘するだけでなく、参考にできる工夫なども多く有り、やはり直接顔を合わせ、現場を見て意見交換することはとても有意義だと感じます。
※AWaRe分類:WHO(世界保健機関)が提唱している抗菌薬の適正使用を推進するための国際的な分類指標。耐性化リスクから抗菌薬を3つのカテゴリーに分け、「Access:優先的に使用すべき抗菌薬」「Watch:慎重に使用をすべき抗菌薬」「Reserve:最後の手段(他の手段が使用できなくなった時)として使用すべき抗菌薬」とわかりやすく整理し、抗菌薬の適正使用を図っている。
精神障害者施設との新たな連携
今年度、初めて医療機関以外の施設と連携を結ぶことになりました。区内の精神障害者グループホームで、精神疾患を抱えた方が自立に向けて生活している施設です。当初は連携先として何を求められ、何を提供できるのかあまりイメージがついていませんでした。そこで、まずは施設を訪問し、職員の方から施設の特徴や業務内容について、お話を伺うことにしました。この施設では、精神疾患の方特有の問題として、居住環境の整備や私物の管理が困難なケースがあります。定期的に居室内の清掃や片付けを支援したり、食事や入浴などの生活行動が適切に行われるように見守ったりすることが主な業務で、直接的な身体介助や介護をすることは少ないとのことでした。施設内をラウンドし、管理体制や衛生管理の実際も確認しました(写真1)。これまでの職場教育の内容や業務マニュアル、感染症発生時のルールなどを確認し、状況を把握することができました。
その後、施設側からの要望があり、職員を対象に感染対策の研修を行うこととなりました。訪問時に確認した情報を踏まえて事前にアンケートを行い、研修のニーズを把握しました。アンケートは図1のような結果となり、その結果をもとに研修内容を決定し、講義+演習(個人防護具着脱と手指衛生の実技)の形式で「感染症から入居者を守り、自分たちも守る」をテーマに研修会を開催しました(写真2、図2,3)。会の中では、質疑応答や意見交換の時間を多めに取り、対話を重視しました。終了後アンケートでは「質問ができて良かった」「役に立つ内容だった」等好評でした。また、今後は入居者の方に対しての研修をしてほしいとの依頼も受けています。
終わりに
機能や置かれている環境が異なる施設との連携では、その施設の現状を理解した上で感染対策上の課題や解決方法を共に考えることが大切だと感じています。日ごろからコミュニケーションを重ね、参加者や施設側のニーズも踏まえた効果的な研修や実地指導ができるように工夫を重ねていきたいと思います。
参考文献
1)診療点数早見表. 2024年度版[医科]. 医学通信社. 2024年5月20日発行. 第1版 第1刷
2)森兼啓太. 精神科における感染管理ハンドブック 増補改訂版. 住友ファーマ株式会社. 2022.8

