HosCom 2025 vol.22 no.2
特集
「座談会」陰部ケア洗浄と清拭~各専門家の視点から~
- 土田 敏恵
- 兵庫医科大学 看護学部看護学研究科 教授/NPO法人 ストーマ・イメージアップ・プロジェクト(ファシリテーター)
- 三浦 美穂
- 久留米大学病院 感染制御部 副部長
- 太田 悦子
- 大阪大学医学部附属病院 感染制御部 副部長/看護師長
- 橋本 渚
- 大阪府済生会千里病院 看護師長/感染管理室 室長
- 安藤 嘉子
- 大阪赤十字病院 看護副部長/NPO法人 ストーマ・イメージアップ・プロジェクト
- 三富 陽子
- 京都大学医学部附属病院 看護部管理室 看護師長/NPO法人 ストーマ・イメージアップ・プロジェクト
- 渡邉 光子
- NPO法人 ストーマ・イメージアップ・プロジェクト
※本記事は、「HosCom 2025 vol.22 no.2(2025年7月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
医療機関や福祉施設において、適切な身体洗浄や清拭は皮膚の衛生状態を保つと同時に、感染対策の観点からも重要です。近年、陰部ケアの方法として、陰部清拭ワイプ(以下、ワイプ)なども注目されてきています。そこで、今号のHosComの特集では、兵庫医科大学の土田 敏恵先生をファシリテーターに迎え、感染管理認定看護師(以下、CNIC)3名と皮膚・排泄ケア認定看護師、Wound, Ostomy and Continence Nurse(以下、WOCN)3名にお集まりいただき、陰部ケアについての座談会を開催しました。
(座談会開催日:2025年2月11日)
土田(ファシリテーター):近年では陰部ケアにワイプを導入されている施設が徐々に増えつつあります。しかし、陰部洗浄ボトルを使用した陰部洗浄からワイプに全面的に切り替えている施設もあれば、対象患者を限定している施設もあります。また、陰部ケアには看護師や看護補助者、介護士など、様々な職種の方が携わります。本日は陰部ケアにおけるさまざまな取り組みについて、皆さんのお話を伺いたいと思います。HosCom読者の皆様に、「こんなことがあるのか」「こういう方向性で考えたらよいのか」「認定看護師とこんな風に協働したらよいのか」といった、明日の臨床実践のヒントになるようなことをお伝えできればよいと考えています。
陰部ケアの現状
土田:まずは、各ご施設での陰部ケアの現状についてご紹介いただけますか。
太田:現在、当院での陰部ケアは、陰部洗浄ボトルを用いた水と石けん、ガーゼによる洗浄が主で、尿道カテーテル留置患者やオムツを装着している患者に対して毎日実施しています。ワイプは、救命救急センターでのみ導入しており、尿道カテーテル挿入前に使用しています。元々は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)発生前にワイプの導入を検討していましたが、コロナの流行により、当時のコロナ病棟で必要とされたディスポーザブル(以下、ディスポ)製品として優先的に導入しました。しかし、急場でのディスポ製品というような扱いになってしまい、結果的にはおしり拭きのように扱われてしまうこともありました。1年くらいこの形で運用しましたが、現在では主に陰部洗浄ボトルを用いた陰部洗浄を行い、ワイプの使用は対象患者を限定しています。ただ、適切な陰部ケアを行うためにはスキンケアの観点や、物品の洗浄作業や運用などの感染管理の観点、業務の効率化という観点からも、現状のままでは課題があると感じています。そのため、ワイプの導入拡大を検討する取り組みを進めています。
三浦:当院における陰部ケアも、基本的に陰部洗浄ボトルを用いて水と石けん、ガーゼを使って行っています。オムツを装着している患者や尿道カテーテル留置患者に対して毎日ケアを行い、排便があった際にはその都度洗浄を行っています。以前、救命救急センターでカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)が流行し、新規の検出件数が減少しないという問題に直面しました。その際、陰部洗浄ボトルが問題ではないかと考え、ワイプに切り替えた結果、CREの発生が大幅に減少しました。現在は救命救急センターで尿道カテーテル留置患者にワイプを使用しています。対象患者にカンジダや褥瘡が見られる場合には、WOCNに相談して、ワイプの使用可否を判断しています。
橋本:当院では2021年からワイプを導入しています。導入のきっかけは、「陰部洗浄にかかる時間が多い」という意見が寄せられたことでした。看護部からの意見を集め、専門家チームで検討を重ねた結果、ワイプの使用を進めることになりました。現在ではワイプを用いた陰部ケアが日常化しており、新人研修を含む陰部ケアの教育もワイプを用いて行っています。
安藤:当院では従来通り陰部洗浄ボトルを使用し、水と石けん、ガーゼによるケアを継続しています。現在のところワイプは導入していませんが、今後の陰部ケアの簡略化や廃棄物量削減、感染対策の観点等から、新たな選択肢としてワイプによる陰部清拭の必要性を感じています。
三富:当院でも安藤さんの施設と同様に、陰部洗浄ボトルでの洗浄を基本としています。ワイプについては、まだ導入していません。以前、ワイプを試用した際に、数量が多く余ってしまうことがありました。しかし、近年、少数単位で販売されているものもあり、再度検討を始めたいと思っています。ただし、WOCNの視点から見ると、褥瘡リスクが高い便失禁患者では、ワイプだけではきれいにできないことがあるのが課題です。食物残渣を含む下痢便の場合、尿道口周囲などワイプを使用しにくい部位は、何度も拭き取るより、陰部洗浄ボトルで洗い流してしまう方が、物理的刺激も少なく、手早いこともあるので、使用方針を練る必要があります。
また、物品選定に関して、当院は共同購入となるため、製品の独自選択や導入が難しいのが現状です。皮膚を保護するためには、成分や使用感等を確認した上で選択したいという思いはありますが、共同購入品の中から使用製品を選ばざるを得ないジレンマがあります。
渡邉:当院ではコロナ対応等で、特に業務量の削減が求められる中、トップダウンでワイプの導入検討の話が持ち上がったことがあります。少し前に感染対策の面から陰部洗浄ボトルの使用を廃止し、紙コップでの洗浄に変更していましたので、ワイプの導入についても感染対策の観点を含めてCNICと検討を重ねました。しかし、コロナが収束に向かう中で、「教育をどうするか」という課題が浮上しました。また、オムツ装着患者の便失禁では、ワイプで十分な洗浄ができるかも疑問でした。そのため、導入が頓挫した経緯があります。現在はワイプも新しい製品が発売され、種類が増えています。看護技術を定着させるためには、新人教育からすり込む必要性もあるため、運用を含めてワイプの導入を再検討したいと思っています。
安藤:ワイプを使用しているご施設に質問です。そのワイプは洗浄剤(界面活性剤)含有のものでしょうか。
土田:また、陰部洗浄時に排便があるような場合はどのように対応されていますか。
三浦:洗浄剤配合で、皮膚保護剤も含まれているワイプを使用しています。おしり拭き用ワイプは別に用意し、排便がある場合はおしり拭き用ワイプを用いて、あらかじめ定めている手順に沿って対応します。おしり拭き用ワイプでは対応できないほど汚れがひどい場合は、ペアで実施しているうちの1人が必要物品を調達し、すぐに水と石けんを使用した陰部洗浄に切り替えられる体制で作業をしています。
橋本:大判の洗浄剤含有のワイプを8分割して使用しています。泡立てて使用後は洗い流す必要はなく、ベッドサイドにあるティッシュやおしり拭き用ワイプ等で拭き取る方法を採用しています。この方法でこれまでかぶれ等の報告はなく、しっかりと拭き取りを行うことで陰部の真菌(カビ)の発生も減少しているように感じています。ただし、下痢便の場合には水と石けんを使用した陰部洗浄を併用しないと便を取りきることが難しいため、その点は注意が必要です。
陰部清拭ワイプの使用対象患者
土田:橋本さんの施設では、オムツ装着患者全員にワイプを使用しているのですよね。
橋本:はい、そうです。ただし、重度の下痢便の場合や皮膚が脆弱な方には、泡で優しく洗い流す方が良いと、WOCNよりアドバイスを受けています。そのようなケースでは、水と石けんを使用した陰部洗浄を実施することもあります。
土田:それ以外のワイプ導入施設では、使用する対象患者を限定しているという理解でよろしいでしょうか。
三浦:救命救急センターの尿道カテーテル留置患者にのみワイプを使用しています。WOCNからのアドバイスを参考にし、まずは利用患者を限定して考えることにしました。現場で陰部ケア方法が混乱しないように、WOCNと連携してシンプルなワイプ使用フローチャートを作成しています。手技を確認できる範囲内で使用する必要があると感じているため、院内全体への導入にはハードルが高く、今のところ対象患者を変更する予定はありません。
太田:救命救急センターの初療からワイプを導入し、現在は救命救急センターで便が出ていない尿道カテーテル留置患者に使用しています。次のステップとして、院内全体で尿道カテーテル留置患者や臥床患者の陰部ケアに展開を図りたいと考えています。ケア方法の決定には院内の質向上委員会が関与しており、看護部門が中心となって進めています。また、新棟にはベッドパンウォッシャーを設置していないため、感染対策上できるだけ洗浄物を減らしたいという考えがあります。そのため、陰部洗浄関連の物品もできる限りディスポにしたいと望んでいます。
土田:現在、ワイプを使用していない施設で導入するとしたら、どのような対象患者を考えますか。
安藤:まずはモデル病棟として、脳外科や緩和ケア病棟、ICUを候補に考えます。そこで評価やサンプリングを行った上で、全体的な導入を目指すつもりです。その理由としてはスタッフが診療科を越えて他の病棟へ応援に行く体制があり、その際に「保清」に関する応援を求められることが多く、早期にケアの標準化が必要と考えているからです。脳外科や緩和ケア病棟、ICUから始めることで、業務効率だけでなく、患者にとってもより快適なケアを提供できるというポジティブなイメージを持ってもらい、導入につなげるのが良いかと考えます。また、対象患者が複雑化すると現場の負担が増えたり、あれこれ難しく考えてしまったりする可能性があるため、できるだけシンプルにする必要があります。すべての排便において水と石けんを使用した洗浄が必要というわけではないため、尿道カテーテル留置の有無にかかわらず、「便の性状」を基準にする方が明確になるのではないかと考えます。
三富:もし導入するのであれば、一度にすべての部署に導入したいです。安藤さんのご指摘のように、現在は診療科の垣根を越えた空床管理が行われており、看護師も部署間を行き来することが増えています。そのため、各部署で独自の方法を行うのではなく、ケアの標準化を進めていきたいです。
また対象患者については便の有無だけではなく便の性状を元に検討し、例えば排便の場合でもコロコロした形の有形便であれば拭き取ることが可能だと思います。WOCNとしては、皮膚障害を防ぐために、軟便や水様便、大量の下痢便時には、陰唇や臀裂部まで汚れを確認して洗い、その後には撥水クリームを塗布するなどのスキンケアを施してほしいです。しかし、このように便の性状に応じた洗浄を行うと、下痢をしていない患者には水と石けんによる陰部洗浄を行う機会が減少する可能性があり、果たしてそれで問題がないのか悩みどころです。もし導入するなら、長期療養が必要な重症患者の場合を除き、シンプルに2択程度にする方が運用しやすいのではないかと考えています。
渡邉:以前に土田先生と、海外では洗い流す習慣がないため、便失禁の際でも清拭が当然であり、標準ケアになっているという話をしたことがあります。失禁関連皮膚炎(IAD)予防のスキンケアマニュアルに、便失禁のケアや陰部清拭を組み合わせることで、1回で3つのケアが効果的に定着できるのではないかと思いました。そう考えると、便失禁患者を特別扱いする必要はないのかと感じてきました。
ワイプ導入の成功体験と課題
土田:ワイプの導入に関する成功体験や課題について、もう少し具体的にお聞かせください。
三浦:先ほどお話ししたようにワイプを使用する際のフローチャートを、WOCNと連携して作成しました。このフローチャートでは、看護師がどのようにワイプ使用を選択すべきか、どこに注意すべきか、などのポイントを示しています。これに基づいて、ワイプの正しい活用法を徹底しています。
橋本:看護部からの意見を元に、ケア時間短縮による業務量削減、さらには使用物品の洗浄や準備といった感染対策の面から新たな陰部ケアの方法を検討し、ワイプを導入しました。
製品選定においては、成分等を含めてWOCNと共に検討した後、まずは、使用頻度の高い救命救急センターと脳外科病棟、介護度の高い病棟で先行使用し、アンケート調査を行いました。現場からは、「陰部洗浄なのに洗い流さないのは看護ではない」「逆に陰部の真菌(カビ)や尿路感染が増えてしまうのではないか」といった意見も寄せられました。サーベイランスでそのような事実がないことを確認しつつ、慎重に導入を決定しました。
導入後、看護師からは「業務が簡素化されて楽になった」という声が多く上がっています。また、ケア物品のディスポ化が業務軽減につながっており、メリットの方が多かったと感じています。
土田:ワイプが正しく使えているのか、また陰部がきれいになっているのかという点については確認されていますか。
橋本:WOCNが現場でオムツ交換のOJT※を実施しており、その際に確認と指導を行ってくれています。
※ OJT(On the Job Training):上司や先輩が、部下や後輩に
実際の仕事を通じて指導し、知識、技術習得を目指す教育方法
安藤:以前、ワイプ導入についてCNICと共に検討したことがあります。しかし、製品の良し悪しや使用手順よりも、実際にそれらを使用する看護師が小陰唇を適切に拭くことができるのか、という技術面の不安を感じたため、導入には至りませんでした。そこから現在に至っており、再度、導入を検討していく上で解決する必要があると感じています。
三富:ワイプ導入でケアを簡便にしたいと思う一方、WOCNの観点から、ワイプの導入にはいくつかの懸念があります。例えば、お肌に優しい洗浄剤もありますし、洗い流すことによって得られるすっきり感も重要だと思います。また、清拭時に拭き取りが不十分であれば、皮膚障害や陰部の真菌(カビ)が発生するリスクも否めません。さらに、汚れがたまりやすい部位を、すべてのケア実施者がしっかりと拭き取れるかどうかも疑問です。看護師の人数が多く、新しいスタッフが中途採用で増えたり、退職したりする中で、手技の標準化は大きな課題だと感じています。
渡邉:即戦力として中途採用された方々への教育は新人とは別に考慮が必要ですね。
ケア標準化に向けた工夫や教育について
土田:教育の話が話題に上がりましたが、ワイプなどの物品に関しては、コストや共同購入といった難しさもある中で、看護の質向上にどのように寄与するかも考えて新しいケア方法の導入や物品選定をされているかと思います。一方で、特に病床数の多い医療機関では、ケアの標準化は大きな課題となっています。この課題に対して、具体的な取り組みや工夫があればぜひ共有していただきたいです。
橋本:当院は、皆さまの病院と比べると看護師数は少なく、病棟も8つと限られているため、情報の周知は比較的スムーズです。新しい施策や感染管理に関する取り組みを導入する際には、看護師全体に直接説明を行い、必要な情報を確実に伝えることを重視しています。また、師長会やリンクナースを通じた情報共有も行い、伝達内容の確認を怠らないように努めています。新入職者に対しても新しい手順に沿った指導を行い、新しい方法や考え方を入職早期から根付かせるよう努めています。
太田:認定・専門看護師が集まるリソースナース会のグループの一環として、ナーシングスキルに基づくケアの標準化に取り組んでいます。システム上で各自がケア方法を確認できる他、2ヶ月に1回ナーシングスキル紹介ポスターを作成し、更衣室や病棟に掲示しています。これまで作成したポスターは冊子にまとめて各病棟へ配布しています。現在、現場でのケアの実践は新人のみがチェックを受けていますが、チェック者である先輩の手順に不安もあり、教育体制の見直しが求められています。
三浦:現場での手技確認が重要と考えています。ワイプ使用時には、決められた使用枚数とそれぞれ1枚でどこを拭くのかという決まりがありますが、もったいないという意識から必要枚数を使わないケースも散見されます。そのため、定期的に救命救急センターを訪問し、リンクナースと共に手順や手技を細かく確認しています。
その他、輸液ルートを変更した際に、血液培養の陽性者が増加したことがあり、その際は、全看護師に対して血液培養検体の取り方や輸液装着に関する安全等のOJTを実施しました。現場での実技指導に加えて、実際に物品を使った演習を含む勉強会を年間約30回行い、看護技術の技能向上を目指しています。
安藤:当院でも教育はナーシングスキルを基盤としています。コロナ禍を経て動画を用いた教育が主流となりましたが、習得した知識と現場での実践が乖離するケースも多く見られます。特に基本看護技術は個々の感覚に依存する部分も多く、全看護師の手順をOJTで確認できることが理想的です。しかし、時間やマンパワー等の問題があるため、実際にはリンクナースによる落とし込みとなり、伝達時はできていても、現場での実践ではできていないということが多々あります。以前、特定の病棟を対象にオムツの装着技術を徹底させるためのプロジェクトを実施しました。教育前後で看護技術の採点を行い、改善等を評価したところ定着率が大幅に向上し、教育効果が顕著に現れました。しかし、同様の方法を継続することは難しく、持続的な改善に向けての努力が必要です。
三富:当院も同様に動画を用いた教育を行っており、特にコロナ禍ではオムツ交換方法等多くの動画を制作しました。動画は夜勤の合間に視聴できるなど非常に便利ではありますが、対面での研修ではディスカッションを通じて質問を受けることや実技指導もできるというメリットがあるため、現在は実技実習を取り入れた対面研修を増やしています。
また、専従のWOCNはハイリスク患者がいる部署を優先的にラウンドしているので、仙骨部などの臀部の褥瘡ケア時に陰部洗浄を見る機会があり、洗浄方法を確認・指導しています。CNICが手指衛生の直接観察を実施されているのと同じく、適切な手技の取得にはこうした活動の継続が重要と思っています。
渡邉:当院でもナーシングスキルの動画学習を行っていますが、なかなか定着していません。また、各病棟への伝達を行うリンクナースの理解不足等から正確な情報伝達が難航しています。例えば褥瘡関連では、褥瘡管理者であるWOCNが全病棟での伝達に立ち会わないと周知が難しいところです。以前に、褥瘡発生率の高い病棟で、WOCNが清拭の時間に担当看護師と共に訪問し、身体清拭の手技を確認したことがあります。そうすることで、拭き方やその部署のケアの技術など、各人の力量をある程度把握することができ、それに応じた教育提案をその部署の管理者にしました。清拭技術の向上を図ったことで、褥瘡発生率を減少させるという成果につながり、WOCNが直接ケアに参加する必要性も感じました。しかし、全部署に同様の対応をすることは難しく、多くの部署を効果的に回るための新たなアプローチを考える必要があると思います。
太田:ディスポ製品は便利ではありますが、看護師がその便利さに過度に依存すると、時として本来の目的を見失ってしまうことがあります。だからこそ、導入の目的や意義をしっかりと理解してもらい、それをどのように活用していくかを教育することが非常に大切だと感じています。
また、先程リンクナースの話がありましたが、伝達を担当するのが若い世代であるケースも多く、確実に情報が伝わっていないこともあります。そこで、日頃からWOCNとコミュニケーションを取り、リンクナースの理想的な姿を模索しています。
土田:現場において陰部洗浄の手技を観察することは、プライバシーの観点から難しいこともありますね。血管留置カテーテル等の他の手技では互いに練習し合うことが可能ですが、陰部洗浄の場合はモデルを使った練習になります。しかし、モデルでは陰唇を開く必要がなく、人の皮膚とは硬さや構造が異なるため、感覚をつかむことが難しいです。また、模擬便を使用した演習も行いますが、高齢者の皮膚にみられるしわなどを再現できないため、清拭で簡単に便が拭き取れてしまいます。そのため、陰部ケアのOJTは難しいと感じています。
三富:私の場合、観察者としてではなく、「褥瘡の専門ナースで、今日は一緒にケアをさせてもらいに来ました」という形で現場に入っています。このアプローチにより、実際の現場を確認しながら、手技の確認や適切な方法の指導が可能となります。
三浦:当院ではワイプの使用は救命救急センターのみなので、現場に入って手技を確認することはできています。そういった面では一般病棟での使用はまだ難しいところもあります。
WOCNとCNICの連携の重要性
土田:今回はWOCNとCNICにお集まりいただいたので、両者の連携や協力体制について、お話しいただければと思います。
太田:当院には専従のWOCNが2名おり、個別のケアについて話し合う機会は多く、非常に助けられています。ワイプ導入に関して実は、WOCNは推奨しているわけではありません。業務の簡略化や使用物品の削減等、効率性という面で利点はあるものの、スキンケアに関しての懸念があります。また、他にも十分な洗浄剤があるため特にワイプの必要性は感じていないようです。専門家の視点から、お互いに率直な意見交換ができ、よりよいケアを提供できるように努めています。
三浦:ワイプについては、試用やフローチャート作成を含めた導入において、WOCNの力添えや助言がありました。日常的に連携を取ることが多く、例えば抗菌薬適正使用支援チーム(AST)ラウンドで皮膚やテープに関する問題が発生した際も、WOCNに相談しています。当院にはWOCNが4名おり、困ったときにはすぐに助けてもらえる関係性を日頃から構築できています。
橋本:先程述べたように、現場所属のWOCNがオムツ交換のOJTにて「この方法はいいよ」と実際に使用方法を広めてくれ、大変助かっています。現在はWOCNと排尿ケアに力を入れており、尿道カテーテルを迅速に抜去し、その方のQOLを保つための生活スタイルを共に考えています。良い関係性を築けていると感じており、WOCNは私にとってかけがえのない存在でもあります。
安藤:CNICとは同じ部屋で仕事をしているため、日常的に「こんなときはどうしたらよいか」という意見交換ができます。特に話題に上がるのは、陰部洗浄ボトルの洗浄・消毒ですね。どういった洗浄条件にするか等を相談しています。
三富:毎月開催されるリソースナース会議の中のグループの1つで、CNICと連携し、手荒れ対策やスキンケアについての検討を行っています。院内の手荒れ実態を把握するためのサーベイランスも協働で実施しており、日常の相談もスムーズです。こうした連携は大変ありがたいです。
渡邉:CNICやWOCNのメンバーが役職についていないため、師長会や材料決定会議には参加できず、ワイプのような新製品導入を進めにくいのが現状です。しかし、私たちは協働して作戦を立て、会議で担当の師長や副部長から提案してもらうための資料作成に取り組むなど、連携関係を築いており、困ったときには気軽に相談や意見交換ができるので、とても助かっています。
新アイテムへの期待
土田:最後に、今後期待する新アイテムについて意見をお伺いします。
橋本:介護施設へのラウンド時には、陰部洗浄の手技や陰部洗浄ボトルの管理状況を必ず確認するようにしています。施設では1ユニットに1つしか陰部洗浄ボトルが設置されていないケースがあります。そのため、病院での対応方法を紹介しますが、介護施設は病院以上にコストがかけられず改善が難しいのが現状です。陰部洗浄の手技や陰部洗浄ボトルの管理方法を正しく理解してもらうことも容易ではありません。これらの解決策を提案できるCNICのような人材が不足しているのも事実で、介護施設向けに特化したアイテムや方法が求められていると感じます。
太田:少し話題から外れるかもしれませんが、最近、教育の重要性を強く感じています。例えば、スキンケアでは、皮膚の構造やケア方法を基礎から体系的に学べるプログラムが必要だと考えています。皮膚のバリア機能やスキンケアを理解した上で、陰部洗浄が看護ケアの一環としてどのように位置づけられるのかを一連の流れとして学習することができれば、看護師たちももっと自信を持ってその手技に取り組めると思います。ただ単に手技を覚えるのではなく、その目的や意義を理解し、関連する知識を持ってグループで学び合えるようなプログラムの開発をぜひお願いしたいと思います。看護ケアを科学的に捉えられるプログラムの導入で、教育環境をより充実させていきたいと願っています。
さらに、看護に必要な道具や材料の進化についても考えさせられています。陰部洗浄ボトルや清拭用の道具など、昔からあまり変わっていないものもありますが、既存の物品を適切に使用する一方で、最新の知見を基に、使いやすくケアに適した新しい製品が登場することを期待しています。
さいごに
土田:本日の座談会では、ワイプの導入をはじめ、陰部ケアにまつわる多くの貴重な意見を伺いました。陰部ケアの重要性と、その改善に向けた具体的な取り組みが確認できました。ケア用品の技術の進歩や、スキンケア、感染対策の意識の高まりが、患者にとってより良いケアの実現に繋がることを心から願っています。本日はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございました。


