HosCom 2025 vol.22 no.2
特定看護師の実践現場から
特定行為研修を修了した感染管理認定看護師が、現場でさらに活躍するために
- 金城 真一
- 滋賀医科大学医学部附属病院 看護部 看護師長 感染管理特定認定看護師
特定看護師(特定行為研修を修了した看護師)
※本記事は、「HosCom 2025 vol.22 no.2(2025年7月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
はじめに
筆者が勤務する滋賀医科大学医学部附属病院は、県内唯一の特定機能病院であり、高度医療の提供と医療人の育成を担う大学病院です。当院では、医療の質向上を目的として看護師の教育にも力を入れています。特に、看護師の専門性向上を目的とした特定行為研修に注力しており、看護師特定行為の指定研修機関として、病院長の直下に「看護師特定行為研修センター」を設置しています(図1)。このセンターでは、看護師が特定行為研修を履修し、臨床現場で特定行為が実践できるようサポートを行っています。
2025年3月現在、院内には44名の特定行為研修修了者(以下、特定看護師)が在籍(2025年度中には64名になる予定)しており、それぞれの専門分野で活躍しています。
これらの特定看護師は、個々の活動だけでなく、チームとしての協働にも力を入れており、患者の安全や医療の質向上に大きく貢献しています。本稿では、特定看護師が関わるチーム活動、特に栄養に関連するカテーテル管理領域における感染管理教育の取り組みについて詳しく紹介します。
CCOTラウンドおよび多職種フォローアップ外来の取り組み
特定看護師が主体となって取り組んでいる活動の一つに、CCOT(Critical Care Outreach Team*)ラウンドがあります。CCOTラウンドは、院内迅速対応システム(Rapid Response System:RRS)の一部を担うことで、患者の急変を未然に防ぐ活動をしています。このチームでは、特定看護師が入院患者のバイタルサインやカルテ情報をスクリーニングし、急変のリスクが高い患者を特定して病棟ラウンドを実施しています。CCOTラウンドの活動は2022年に開始され、特定看護師が日替わりで対応しています。この取り組みにより、患者の状態悪化を早期に察知し、迅速な介入を行うことが可能となり、急変のリスクが大幅に低減しています。
もう一つの取り組みとして、多職種連携のフォローアップ外来があります。ここでは、呼吸器関連の特定行為区分を修了した特定看護師が、神経難病患者を対象に非侵襲的陽圧換気(Non-invasive Positive Pressure Ventilation:NPPV)の設定の変更やマスクフィッティング、家族の心理的な支援などを行っています。これらのケアは、患者の生活の質(Quality of Life:QOL)を向上させることを目的としており、医師やメディカルスタッフ(臨床心理士、難病コーディネーターなど)との連携のもと、外来での継続的なケアを提供しています。このような活動を通じて、特定看護師は患者支援の要として重要な役割を果たしています。
* Critical Care Outreach Team:急変リスクのある患者を早期に認知し、医療介入する事で転帰の改善を図るためのチーム
栄養に関連するカテーテル管理領域での取り組み
筆者は、2006年に感染管理認定看護師(CertifiedNurse in Infection Control: 以下、CNIC)を取得しました。特定行為については、2010年より開始された厚生労働省の試行事業に参加し、2017年に特定行為研修を修了しました。
この研修を受講した動機は、感染管理の専門性をさらに深め、看護の現場に新たな視点を提供したいという思いからでした。研修を修了してからは、感染症診療の補助として特定行為を行うことのメリットやアウトカムについて考察するようになり、感染対策における看護の可能性をより広く捉えるようになりました。現在、どのような特定行為を行っているのか、その一部を紹介します。
特定行為研修の一環として、栄養に関連するカテーテル管理領域における特定行為には、中心静脈カテーテル(Central Venous Catheter:以下、CVC)の抜去や末梢留置型中心静脈カテーテル(Peripherally InsertedCentral venous Catheter:以下、PICC)の挿入が含まれています。当院では、これらの特定行為を修了したCNICや特定看護師が在籍し、専門的なケアを提供しています。2025年3月現在、栄養に関連するカテーテル管理を修了した特定看護師は11名在籍しており、感染管理の視点を取り入れたチーム活動を展開しています。
このチームの活動内容は多岐にわたります。まず、特定行為研修を修了したCNICが他の特定看護師に対して、PICC挿入(写真1)やカテーテル挿入部位の観察、ケア方法について指導しています。さらに、これらの指導を基に、特定看護師は患者個々の状態に応じた適切なカテーテル管理方法を院内の看護師に教育しています。また、感染徴候が見られた際やカテーテル管理が不要となった場合にはCVCを抜去するなど、患者の安全を確保するために一連の感染対策を実践しています。特定看護師チームは、これらの活動を円滑に行うために病棟ラウンドを定期的に実施しています(写真2)。このラウンドでは、看護師全体の意識向上を図り、感染対策の重要性をカルテ記載とともに共有しています。また、実際の患者ケアを通じて、特定看護師が指導者としての役割を果たし、看護師のスキルアップを支援しています。これらの活動は、中心静脈ライン関連血流感染(Central lineassociated blood stream infection:以下、CLABSI)の予防に向けた取り組みとして重要な意義を持っています。
成果と今後の課題
PICCの挿入やCVCの抜去といった手技だけにとどまらず、この特定看護師チームは看護の視点でのPICC挿入から抜去までを一貫して管理しています。この結果、感染対策の徹底が可能となり、CLABSIの発生リスクが低減されています。さらに、部署ラウンドを通じて他の看護師に対する教育的介入を実現し、看護師全体のスキル向上にもつながっています。これにより、特定看護師は単なる手技の実施者ではなく、感染管理のリーダーとしての役割を果たすようになります。
しかし、さらなる課題も明らかになっています。特定行為研修を修了したCNICがPICC管理に関する教育をより一層強化し、PICC挿入から抜去までの一連の管理に早期から介入することで、感染対策や感染症診療への支援にどの程度の効果をもたらすかを検証する必要があります。また、特定看護師が医療チーム全体の中でリーダーシップを発揮し、医師や他職種、他チーム(例えば、栄養サポートチームや感染対策チームなど)との連携をさらに深めることが求められます。これにより、感染管理体制のさらなる充実と医療の質向上が期待されます。
おわりに
特定行為研修制度は、看護師が高度な技術と知識を活用し、患者ケアの質を向上させるための重要な制度です。当院では、特定看護師が中心となり、感染管理を含む包括的な看護実践を推進しています。この取り組みは、患者の安全を確保するだけでなく、看護師全体の専門性を高めるという点で大きな意義を持っています。今後も特定看護師が現場での実践を通じて、感染対策や患者ケアの質向上を目指し、他職種や他チームとの協働を強化していくことが期待されています。
引用・参考文献
1)滋賀医科大学 看護師特定行為研修センターホームページより引用. https://www.shiga-med.ac.jp/~tokutei/index.html. 2025年2月1日現在.

