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HosCom 2024 vol.21 no.3

特定看護師の実践現場から

特定行為実践で何が変わる? 感染管理で活かせる特定行為の実際

勝平 真司
医療法人伯鳳会 赤穂中央病院 院内感染管理担当者 課長 感染管理特定認定看護師

特定看護師(特定行為研修を修了した看護師)

※本記事は、「HosCom 2024 vol.21 no.3(2024年11月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

はじめに なぜ特定行為研修を受講したのか?

私は2008年に感染管理認定看護師(以下、CNIC)の資格を取得し、2018年に特定行為研修(感染症管理モデル)を受講した。特定行為研修受講前は、文献を参考にASTシートを作成し、電子カルテで対象となる患者の症状や状態を把握してからカンファレンスに参加していた。しかし、カンファレンス中の抗菌薬に関する話し合いは医師と薬剤師が中心で、微生物が同定されていないエンピリックセラピーの介入や臓器移行性を考慮した抗菌薬の変更等に意見する事が出来なかった。そこで「このままではAST専従者の役割を果たせない」という思いが強くなり、特定行為研修を受講した。
私が実践出来る特定行為は、①感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与 ②末梢留置型中心静脈注射用カテーテル(以下、PICC)の挿入 ③中心静脈カテーテル(以下、CVC)またはPICCの抜去 ④脱水症状に対する輸液による補正 ⑤持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整である1)。実践してきたこれらの一部の内容について述べる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)発生

特定行為研修を修了してから約1年後、COVID-19がパンデミックを起こしたため感染管理活動がメインとなり、特定行為を実践出来る時間が極端に少なくなった。しかしその中でも、特定行為研修で学んだスキルを実践出来る場はないかと考え、臨床現場に可能な範囲で関わった。主な活動内容は、(1)発熱外来患者の問診内容検討及び実施 (2)COVID-19検査オーダー(代行) (3)発熱外来、COVID-19入院患者の関わり (4)クラスター施設等へ出向いた場合の抗ウイルス薬投与推奨、等である。これらの活動は、特定行為研修を受講していなければ実施していない項目ばかりである。この中でも(3)の発熱外来でCOVID-19重症化を予測し入院させ、無事に退院させた症例は強く記憶に残っている。

1. 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与について

COVID-19が5類感染症に移行してからは、迅速に発熱患者や血液培養陽性患者、許可制・広域抗菌薬患者に介入し特定行為を実践している。具体的には手順書を基に、電子カルテや病棟看護師等から不足している情報を患者から聴取し、フィジカルアセスメントスキルを活用して問診、身体診察を行う。その後、感染症診療の原則に則りグラム染色、ラボデータ、培養検査結果等からアセスメントを行い感染臓器、微生物を特定し、抗菌薬の選択、投与量と投与日数の提案、カルテ記載、経過を追い日々ラウンドも行っている(図1)2)。実際に特定行為を実践した成果事例を紹介する。
1. 手術部位感染を起こしている患者のソースコントロールを提案し、完治させた症例 2. 播種性カンジダ血症患者の真菌性眼内炎を予測し、眼科受診を勧め真菌性眼内炎治療が開始になった症例等である。これらの活動の結果、主治医からコンサルテーションを受けて介入する機会が増えてきた。
また、特定行為の実践は教育的役割も担っている。例えば血液培養2Set提出の意義を指導して血液培養2Set提出率の向上、維持(現在、血液培養ボトル供給不足に対応するためマニュアルを変更)、汚染率低減に向けて検査技師と協働しながら検体採取動画を作成し周知した。またAST患者ラウンド時には薬剤師と共に身体診察(写真1)を行い、チームとしてのレベルアップにつながる関わりも実践している。

図1 実践している特定行為の流れ(日本感染症学会発表スライド)1)

写真1 AST 患者ラウンド時に身体診察を行っている様子

2. PICCの挿入について

PICCの挿入(写真2)についての実際は5件/月程度であるが、末梢静脈ライン確保も併せて実施し、穿刺の技術が鈍らないよう努力している。PICCは当初、エコー下穿刺に慣れておらず、かなり難渋した。
看護師は通常、血管を直視で確認・穿刺する。しかし、PICCで穿刺する血管(尺側皮静脈、上腕静脈等)は皮膚から1cm程度の深さにあるため、エコーを使用しなければ視認出来ない。そのためエコーで針の先端と血管の位置関係、血管の径、深さ等を確認しながら針を進めなければ針が血管を突き破ってしまう。まずはエコー下穿刺に慣れる必要があったため、循環器医師指導下で症例を重ね続けた。今では自信を持ちPICC挿入が出来るようになった。PICCはCVCに比べると患者の苦痛が軽減でき、自由度も高く、患者ADLも向上する。そしてきちんと管理をすれば、3か月程度の長期留置が可能であり感染率低減にもつながる3)。挿入から管理まで包括的に実施出来るのはCNICの強みである。いずれCVC挿入をPICCに総替え出来るよう、栄養サポートチーム(以下、NST)とも協力しながら患者を探し、医師に推奨していきたい。
そしてエコーを看護師の必需品として使用出来るよう来年度の教育プログラムに組み込み、脱水時等の患者に使用出来るよう教育していきたい。

写真2 PICC 挿入の様子

3. CVCまたはPICCの抜去について

CVCまたはPICC抜去も感染管理とつながる。抜去時は空気塞栓を考慮し患者は仰臥位、息止め等が必要になる。もちろん特定行為にこれらの知識、技術は必要になるが、これだけではなく患者の状態をアセスメントし、挿入されているカテーテルを1日でも早く抜去する判断が出来るようになった事で、感染リスクを減らす関わりが出来ている。

4. 脱水症状に対する輸液による補正

5. 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整について

特定行為研修では輸液、栄養に関して知識不足を痛感したため、研修後はNSTにも所属した。そして輸液、栄養管理について学んだ事を、様々な取り組みを行いながら知識を定着、ブラッシュアップさせていった。
例えば下痢患者への介入、胃ろうなどを設置している経管栄養患者の誤嚥性肺炎予防である。下痢患者の介入について便回数は把握していたが、便性状を数値化することは出来ていなかった。そこでブリストルスケール(以下、BS)の導入を行い、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症発生時の早期介入や、隔離解除基準にBSを取り入れた事で現場スタッフの見える化につながった。また誤嚥性肺炎予防では口腔ケア、体位、それに伴い経管栄養物品の消毒、管理も併せて強化する事が出来た。そして患者の食事摂取状況、飲水状況、検査データ、患者ラウンドを通じて、「今この患者に必要な水分、栄養摂取方法は何なのか?」をアセスメント、提案する事で患者の免疫力を高め、感染予防にもつなげている。

おわりに

特定行為研修の受講前と比べ感染症治療、感染対策の両方に関わる事で患者を包括的に管理出来るようになった。これは看護師の視点だけでなく、特定行為研修で学んだ医師の考え方、医師の目線で患者を診る事を学んだ事が大きい。ただ、特定行為研修で学んだ知識や技術は使わなければ劣化していくため、日々の症例を大切に積み重ねる事が必須である。もちろんうまくいかない時もあるが、その時は一旦手を止めてなぜうまくいかなかったのか分析し、次はしっかり準備をして助走をつけてから「出来ない事を出来るようにする」をモットーにチャレンジしている。
現在、後輩が東京医療保健大学 感染制御学教育研究センター「感染制御実践看護学講座」を受講中である。次世代を担う後輩を育成し、今後は更に特定行為が積極的に実践出来る体制を整備しながら、タスクシェアリングを推進する役割を担えるよう、日々情熱を持ち活動していきたい。

引用・参考文献

1)日本看護協会. 特定行為研修. https://www.nurse.or.jp/nursing/tokuteikenshu/index.html. 2024 年8 月5 日現在.
2)勝平真司. 第98 回日本感染症学会学術講演会・第72 回日本化学療法学会総会合同学会パネルディスカッション3 with コロナ時代の感染制御〜NEXT STAGEに向けた多職種の取組み〜中規模病院における特定行為実践の成果と課題.
3)日本VAD コンソーシアム. 輸液カテーテル管理の実践基準. 輸液治療の穿刺部位・デバイス選択とカテーテル管理ガイドライン2016. 南山堂.

hoscom21-3-field.pdf