HosCom 2024 vol.21 no.2
エキスパートに聞く
重症患者のCRBSI予防に向けた感染症管理~循環補助デバイス:ECMO/ IMPELLA使用時のカテーテル感染管理戦略~
- 藤谷 茂樹
- 聖マリアンナ医科大学 救急医学 主任教授
※本記事は、「HosCom 2024 vol.21 no.2(2024年7月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
ICUにおける治療戦略は、大きく変化してまいりました。ICUでの血管内デバイスとして、従来は中心静脈カテーテル、肺動脈カテーテル、大動脈内バルーンパンピング(以下、IABP※1)カテーテル、持続血液浄化カテーテルが主流でしたが、昨今では低体温療法としての血管内カテーテル、IMPELLA※2、ECMO※3などの新たなデバイスが登場してきました。IMPELLA登場前は、心機能低下患者に対して、VA-ECMO※4と左心室後負荷軽減のためのIABPを入れるのが主流でした。しかし、IMPELLAの登場により、VAECMOとIMPELLAを組み合わせたECPELLAによる心原性ショック患者の長期管理が行われるようになっています。
※1 IABP:Intra Aortic Balloon Pumping
大動脈内バルーンパンピングの略称。主に足の付け根にある大腿動脈からバルーンカテーテルを挿入し、下行大動脈に留置したバルーン部分を心臓の動きに合わせて拡張、収縮させる治療
※2 IMPELLA:
左心室に1本のカテーテルの先端(脱血口)と、大動脈に送血口を留置することで循環を補助するための超小型のポンプを内蔵したカテーテル装置
※3 ECMO:Extracorporeal Membrane Oxygenation
人工肺とポンプを用いた体外循環による治療。VA-ECMOとVVECMOに分類される
※4 VA-ECMO:Veno-Arterial ECMO
静脈から脱血し、人工肺で酸素化した血液を遠心ポンプで動脈に送血する治療
血管内カテーテル管理に関するガイドラインをベースにした、エキスパートコンセンサスにおいて、ICUにおけるカテーテル感染を予防するためには、2%クロルヘキシジン含有アルコールでの皮膚消毒(Grade 1)、クロルヘキシジン含有ドレッシング材の使用(Grade 2+)が推奨され、クロルヘキシジン含有ドレッシング材は、汚染等がなければ7日まで交換しなくてもよい(Grade 2-)と記載されています1)。しかしながら、実際には多くの症例でカテーテル刺入部の少量持続出血があり、清潔野を保つことが困難です(図1)。
IMPELLA補助循環用ポンプカテーテルとして、薬物療法抵抗性の急性心不全を適応とした、IMPELLA補助循環用ポンプカテーテルが、国内でいくつか承認されています。VA-ECMOでは、16Fr(送血管)、21Fr(脱血管)、そして、IMPELLAでは、14Frから21Frのカテーテルを経皮もしくはカットダウンにて挿入します。VA-ECMOの大規模メタアナリシスでは、感染が25%と報告されています2)。一方、対象患者群が異なりますが、体外循環式心肺蘇生法(以下、ECPR)患者では、感染が14%と報告されています3)。
VA-ECMOとECPELLAでの重症心原性ショック治療のマッチングコホート研究では、VAECMO群 vs. ECPELLA群で敗血症の発生率が、15.1%(40/265)、25.4%(49/193)、95%OR 1.04[0.21-5.24]と有意差は認められませんでした4)。
しかしながら、ECMOやECPELLAでは、複数のlarge bore(大口径)のカテーテルを留置し、ヘパリンでの抗凝固管理が必要です。そのため、カテーテル刺入時の皮膚消毒、刺入部からの出血予防(生体接着剤の使用)、カテーテル刺入前の予防抗菌薬投与の有無、カテーテルの留置角度、そして、ドレッシングの工夫にて日々の刺入部の観察をすることで、ライン感染症を最小限に抑えることができます。その対応方法として当院での工夫を紹介いたします。
当院での工夫
待機的消化器外科手術での皮膚消毒において、ポビドンヨード vs. オラネキシジングルコン酸塩の非盲検比較試験が行われています。結果は、オラネキシジングルコン酸塩での皮膚消毒がポビドンヨードと比較して手術部位感染(SSI)を有意に減少させました5)。ECPRは、時間との戦いであり、臨床現場では、Full precautions(フルプレコーション)などなく、ポビドンヨードをボトルごとかけることがあります。対してオラネキシジングルコン酸塩の特徴として、速乾性であり、また、消毒範囲がしっかりと認識できることで、緊急時であったとしても適切な皮膚消毒ができます。また、オリジナル論文では、消毒は一回で済むため5)、特に緊急時に一回で、消毒範囲が認識できるというメリットがあります(図2)。
口径の大きいカテーテル挿入時は、緊急時対応ということもあり、皮膚消毒そして、刺入部の管理が重要です。例えばECPRは、刺入部からの出血が原因で、ドレッシングがうまくいかないことが多いです。この刺入部の出血をコントロールするために、我々は皮膚刺入部にカテーテルの口径と同じサイズの皮膚切開片を縫合する他、生体接着剤を用いる工夫により、カテーテル皮膚刺入部からの滲出性出血(以下、woozing)を防いでいます(図3)。特に持続ヘパリンを用いて抗凝固療法をしている症例では、woozingにより、看護師が頻回のガーゼ交換を要し、適切なドレッシング材を貼付することができません。ましてや、クロルヘキシジン含有ドレッシング材などは、コストベネフィット的に用いることができません(図4)。
特にECMO用のカテーテルでは、事故(自己)抜去が、生命にも関与する事態であり、最低10針の皮膚固定を行っています。我々は従来より、皮膚刺入部近辺から皮膚固定を行っていました。また、皮膚刺入部周囲もスペースを作らないように皮下から縫合をしていましたが、この皮膚固定の針孔から、woozingが起こることがあります。それを予防するための工夫として、針孔にも生体接着剤を用いています。カテーテル皮膚刺入部から5cm離してから、皮膚固定をしています。そうすることで、カテーテル刺入部付近にしっかりとドレッシング材を貼付することができます(図3)。
IMPELLAに関しては、今まで述べた内容をプラスアルファして、次のことが推奨されています。カテーテル皮下部位に死腔を作らないように、刺入部近辺に小さなガーゼで枕を作ることで、皮下から血管刺入部が直線になり、たわみを作らないような工夫がメーカーから推奨されています(図5)。
Stitch lessが有効かどうか。カテーテル関連血流感染(Catheter-Related Bloodstream Infection:以下、CRBSI)予防ガイドラインでは、weak evidence(カテゴリー2)となっていますが、できれば縫合糸による皮膚固定は回避したいところです6)。しかしながら、自己抜去は危険であるので、皮膚固定は必須となります。生体接着剤の張度は、末梢穿刺中心静脈カテーテル(Peripherally Inserted Central venous Catheter :PICC)ラインであれば問題ありませんが、それより口径の大きい中心静脈カテーテルでは、縫合糸による皮膚固定と生体接着剤とのコンバインでの処置がよいのではないかと思っています。CRBSIを低減するための臨床適応を明記したFDA承認済のクロルヘキシジン含有ドレッシング材を、短期留置用の非トンネル型中心静脈カテーテルの挿入部位を保護するために使用することが推奨されており(カテゴリー1A)6)、如何に長期間カテーテル挿入部を清潔に保つことができるかが感染予防で重要となってきます。
参考文献
1)Timsit JF, Baleine J, Bernard L, Calvino-Gunther S, Darmon M, Dellamonica J, et al. Expert consensus-based clinical practice guidelines management of intravascular catheters in the intensive care unit. Ann Intensive Care. 2020;10(1):118.
2)Xie A, Phan K, Tsai YC, Yan TD, Forrest P. Venoarterial extracorporeal membrane oxygenation for cardiogenic shock and cardiac arrest: a metaanalysis. J Cardiothorac Vasc Anesth. 2015; 29(3):637-645.
3)Sun HY, Ko WJ, Tsai PR, Sun CC, Chang YY, Lee CW, et al. Infections occurring during extracorporeal membrane oxygenation use in adult patients. J Thorac Cardiovasc Surg. 2010; 140(5):1125-1132.e2.
4)Thevathasan T, Fureder L, Fechtner M, Mork SR, Schrage B, Westermann D, et al. Left-Ventricular Unloading With Impella During Refractory Cardiac Arrest Treated With Extracorporeal Cardiopulmonary Resuscitation: A Systematic Review and Meta-Analysis. Crit Care Med. 2024;52(3):464-474.
5)Obara H, Takeuchi M, Kawakubo H, Shinoda M, Okabayashi K, Hayashi K, et al. Aqueous olanexidine versus aqueous povidone-iodine fo r surgical skin antisepsis on the incidence of surgical site infections after cleancontaminated surgery: a multicentre, prospective, blinded-endpoint, randomised controlled trial. Lancet Infect Dis. 2020; 20(11):1281-1289.
6)CDC. 2017 Updated Recommendations on the Use of Chlorhexidine-Impregnated Dressings for Prevention of Intravascular Catheter-Related Infections 2017 [Available from: https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/c-i-dressings-H.pdf. Accessed March 24, 2024.

