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HosCom 2023 vol.20 no.3

特集

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2023-2027の概要と医療機関での対応

具 芳明
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 統合臨床感染症学分野 教授

※本記事は、「HosCom 2023 vol.20 no.3(2023年11月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

ペニシリンをはじめとする抗菌薬・抗生物質(以下、抗菌薬)の開発と臨床使用は細菌感染症の治療と予防を可能とし、20世紀後半以降の医療の姿を大きく変えました。肺炎などの細菌感染症で命を落とすことは少なくなり、外科手術をより安全に行うことができるようになりました。抗がん剤による化学療法や免疫抑制剤を用いた治療が進歩したのも、治療に伴って発生しうる細菌感染症を抗菌薬によって治療や予防できるという前提があってのことです。このように抗菌薬の存在は現代の医療に不可欠なものです。
抗菌薬の開発当初から、抗菌薬の使用に伴って薬剤耐性(Antimicrobial resistance:AMR)が発生することが知られていました。ペニシリンを発見したアレクサンダー・フレミング博士は1945年にノーベル賞を受賞した際の講演でペニシリン耐性菌が広がることへの懸念を語っています。しかし、次々と新たな抗菌薬が開発されていた20世紀後半にはAMRはさほど大きな問題にはなっていませんでした。ある薬剤で耐性になっても、新たな抗菌薬によって治療できることが多かったからです。しかし、開発途上国を含め世界で多くの抗菌薬が使われるようになり、その一方で抗菌薬の開発がしだいに鈍化していくと、AMRの広がりが目立つようになってきました。動物への抗菌薬使用や環境への広がりが認識されるようになり、AMRは公衆衛生上の重大な問題であると考えられるようになりました。そのため国際社会はAMR対策に力を入れて取り組むようになってきています。
2015年、世界保健機関(WHO)はAMR対策のグローバルアクションプランを発表しました。世界各国がそれぞれアクションプランを作成してAMR対策に取り組むことが求められ、日本政府は2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020」(以下、アクションプラン2016)を発表しました1)。このアクションプラン2016は具体的な数値目標が掲げられた意欲的な内容となっており、その実現のためAMR臨床リファレンスセンター(国立国際医療研究センター)や薬剤耐性研究センター(国立感染症研究所)が設置されるなどし、さまざまな取り組みが始まりました。
アクションプラン2016は5ヵ年計画となっていましたが、COVID-19パンデミックのため延長されていました。そして2023年4月、新たに「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2023-2027」(以下、アクションプラン2023)が発表されました2)。これはアクションプラン2016の内容を概ね引き継ぎながら、より具体的な内容が盛り込まれたものとなっています。ここではアクションプラン2023の医療に関連した概要と医療機関での取り組みについて解説します。

アクションプラン2023の構成

アクションプラン2023は大きく6つの目標で構成されています。具体的には、①普及啓発・教育、②動向調査・監視、③感染予防・管理、④抗微生物剤の適正使用、⑤研究開発・創薬、⑥国際協力です。これはWHOのグローバルアクションプランの項目に国際協力を加えたものであり、アクションプラン2016の構成を踏襲したものです。それぞれの目標には戦略が設定されています。目標と戦略を表1に示します。
アクションプラン2023の目標と戦略はアクションプラン2016とほとんど同一です。日本政府がアクションプランの基本的な方向性を継続する方針であることがわかります。唯一異なっているのは戦略5.6です。戦略5.6は「抗微生物薬の持続的な開発、安定供給の強化」となっており、新規抗菌薬の開発に対するプル型インセンティブ(開発された抗菌薬に対するインセンティブ)の開始や、2019年に発生したセファゾリンの供給障害をきっかけに整備が進められている既存抗菌薬安定供給の取り組みが含まれたものとなっています。

表1 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2023-2027の目標と戦略

アクションプラン2016の成果

先述の通り、アクションプラン2023はアクションプラン2016の方向性を踏襲した構成となっています。それではアクションプラン2016ではどのような成果が得られているのでしょうか。
アクションプラン2016によって得られた最大の成果は、教育啓発やサーベイランスの仕組みが整備されたことです。アクションプラン2016には成果指標が設定されていました。ヒト領域では主な細菌の薬剤耐性率(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業検査部門で得られる耐性率)と抗微生物剤の使用量(販売量ベースの人口千人あたり一日抗菌薬使用量)の指標が具体的に記載されていました。その成果指標と実際を表2に示します。抗菌薬使用量は目標には到達してはいないものの、大きく減少しています。一方、薬剤耐性率は目標にかなり遠い状況です。
抗菌薬使用量の大きな減少はCOVID-19パンデミックに伴う減少を加味して考える必要があり3)、パンデミック後の変化を慎重に追う必要があります。とはいえ、アクションプラン2016の発表後、抗菌薬使用量は徐々に減少していました(図1)。なかでも外来での経口抗菌薬使用がもっとも減少しています(図2)。抗菌薬適正使用の意識が広がり、外来診療を中心に不必要な抗菌薬処方が減ってきているものと考えられます。一方、薬剤耐性率はあまり大きくは変化していません。大腸菌のフルオロキノロン耐性率はむしろ高くなっています。AMRそのものを減らしていくことがAMR対策の大きな目標ですので、耐性菌の減少が十分でないことは懸念されるところです。ただし、対策を開始してから耐性菌の割合減少が明らかとなるまでにはタイムラグがあると考えられますので、この先数年の動向に注目したいところです。

表2 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020の成果指標(医療分野)と実際

図1 全国抗菌薬販売量推移2013-2022(経口薬+注射薬)https://amrcrc.ncgm.go.jp/surveillance/020/file/Sales_2013- 2022_1.pdf

図2 全国抗菌薬使用量推移(診療所と病院に分けた集計)

アクションプラン2023の方向性

1)普及啓発・教育

アクションプラン2016が展開される中で、国立国際医療研究センターにAMR臨床リファレンスセンターが設置され、AMR対策に関する全国的な普及啓発活動や医療従事者を対象とした教育・研修活動が開始されました。アクションプラン全体をとりしきっている内閣官房による国民啓発活動や、職能団体や学会などによる活動も展開されました。これらによりAMR対策についての医療従事者の認識が広がり、処方行動にも変化が生じて抗菌薬使用量が変化していると考えられます。しかし、国民レベルではAMR対策に関する認識は必ずしも十分ではないとの調査結果が出ています4)
これらを踏まえ、アクションプラン2023ではこれまで展開されてきた国民向けと専門職向けの、教育啓発活動を継続する方針が打ち出されています。国民向けには、抗微生物薬適正使用や感染予防・管理、ワンヘルス・アプローチなどこれまでに取り組まれてきた事項に加え、AMRの実態についての啓発が必要とされています。専門職に対して新たに加わった記載には、手指衛生の重要性や薬剤感受性表(アンチバイオグラム)を活用した教育プログラムなど、感染予防・管理の基本的な手法があらためて強調されています。

2)動向調査・監視

アクションプラン2016によって最も進歩したのがこの領域です。JANIS(厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業)検査部門の薬剤耐性菌サーベイランスは、より詳細な情報を公開するようになりました。国内の抗菌薬使用量が定期的に集計・公開されるようになり、系統別、都道府県別などの情報が得られるようになりました(https://janis.mhlw.go.jp/report/kensa.html)。医療機関向けのサーベイランスプラットフォームであるJ-SIPHE(感染対策連携共通プラットフォーム)がスタートし、医療機関におけるサーベイランスと地域連携への活用が省力化されました(https://j-siphe.ncgm.go.jp/)。診療所版J-SIPHEと称されるOASCIS(診療所における抗菌薬適正使用支援システム)も開始されました(https://oascis.ncgm.go.jp/)。さらに、国立感染症研究所に薬剤耐性菌バンク(JARBB)が設置され、研究開発や精度管理に活用できる仕組みが構築されました(https://jarbb.jp/)。これらにより、たとえば都道府県によって抗菌薬使用や薬剤耐性のパターンが大きく異なることや、薬剤耐性菌の頻度は中小病院において高い傾向があることなどの重要な知見が得られ、それに応じた対策の必要性が認識されるようになりました。
これらの進歩を踏まえ、アクションプラン2023ではサーベイランスデータに基づいた対策の展開が一層意識された記載となっています。都道府県別、医療機関の規模別(とくに中小病院、診療所)、診療部門別(診療科など)と層別化された形でのサーベイランス推進と解析、さらにはフィードバックの充実を進める方針となっています。微生物についても細菌検査の精度管理や、動物・食品・環境を含めたAMR動向調査とデータ連携といった記載が目立ちます。
アクションプラン2016ではデータに基づく対策を進める方向性が示され、それに伴って様々なシステムが整備されました。アクションプラン2023ではその方向性をさらに進めることが明確となっています。

3)感染予防・管理

日本の医療機関は1980年代から1990年代にかけてMRSAの発生と拡大を経験しました。院内感染対策の仕組みはこれを大きなきっかけとし30年以上かけて構築されてきました。院内感染対策は主にAMR対策として展開されてきたのです。アクションプラン2016のもとで、さらに感染対策向上加算が新設されました。感染対策の地域連携はここ数年強調されてきたところではありますが、感染対策向上加算は地域連携をさらに強化し、病院間のみならず診療所や医師会、保健所との連携を求めるものとなっています。COVID-19パンデミックがこの流れに大きく影響しているのは間違いないですが、AMR対策に地域連携が重要であることは以前から指摘されていました。この加算はAMR対策を推進する意味合いも強いと考えられます。
アクションプラン2023では地域連携をさらに進める方向性が打ち出されています。具体的には、集団発生に備えた医療機関の体制構築および保健所との連携を進めることや、リスク評価に基づいて病院から保健所や地域の感染症専門家、都道府県、国に支援を要請する仕組みを検討することとされています。また、薬剤耐性菌感染症の集団発生に地域で対応するためのマニュアル、ガイドラインの更新や、医療機関における日常的な手指衛生を評価する研究の実施など、感染予防・管理の具体的な内容に踏み込んだ記載が目立ちます。
これらの記載の背景には、ここ数年各地でバンコマイシン耐性腸球菌(以下、VRE)感染症のアウトブレイクが発生していることがあるものと思われます。VREは地域で拡がりやすく、アウトブレイクが判明した時点ですでに周囲の医療機関・施設にも拡散していることが珍しくありません。地域でAMRの拡散を防ぐには、原因を検討しつつ並行して対応を進めていく必要があります。必要な場面で地域ぐるみの取り組みを進めるため、行政組織を含め日頃から対応していくことが重要であり、そのための地域連携というわけです。AMRを含め感染症対策は公衆衛生にも大きく関わる課題です。その一方で、手指衛生という基本的な院内感染対策の手技を推進することが明記されています。地域連携を進めると同時に、医療機関の感染対策を底上げしていく意図があるものと考えられます。

4)抗微生物剤の適正使用

医療機関でのAMR対策において、抗菌薬適正使用は感染予防・管理とともに二本柱となります。病院における抗菌薬適正使用の重要性は以前から指摘されていたところであり、抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)を設置するなどして入院診療における抗菌薬適正使用を推進している病院が次第に増えています。一方、外来診療における抗菌薬適正使用は注目度が高くありませんでした。そこでアクションプラン2016のもとで「抗微生物薬適正使用の手引き」が作られ(第1版2017年、第2版2019年)5,6)、広く周知が図られました。また、診療報酬でも2018年以降、外来での抗菌薬適正使用が評価されるようになり、外来診療における抗菌薬使用量が大きく減少するなど、一定の実績が得られています。
アクションプラン2023ではこれらの成果を受け、抗菌薬適正使用支援活動を中小病院に拡大して展開していくことや、診療所版J-SIPHE(OASCIS)を活用して外来診療での抗菌薬適正使用をさらに進めること、さらにそのための資材となる「抗微生物薬適正使用の手引き」を更新して活用を進めることが記載されています。これまでの「手引き」は外来診療を対象にCOVID-19パンデミック以前に作られたものでしたが、COVID-19の流行を踏まえてアップデートすることや、入院診療における抗菌薬適正使用に関する内容を含めていくことが考えられます。調査研究を進める内容としては、医療機関でのAST設置や専任従事者確保に関すること、静注抗菌薬の適正使用の取り組みに関すること、抗菌薬適正使用支援システム(仮)の開発や薬剤師によるシステム活用に関すること、が記載されています。
これらの内容から、アクションプラン2023では抗菌薬適正使用をさらに推進する方向性が強く示されていると言えます。外来診療における抗菌薬適正使用が重要なターゲットであることは変わりませんが、中小病院を含め入院診療での推進についても、人材育成や方法論の研究を進めていく方向性が明らかです。

5)研究開発・創薬、国際協力

研究開発と国際協力はアクションプラン2023ではそれぞれ一章が割かれていますが、医療機関の診療活動にやや距離のある課題であることから本稿ではまとめて記載します。
アクションプラン2016により、研究開発の領域では、薬剤耐性菌バンク(JARBB)の整備、細菌のゲノムデータベース拡充、臨床・疫学研究の推進、産学官連携の推進など、一定の成果が得られています。アクションプラン2023では、これらをさらに推進するとともに、薬剤耐性菌の菌株と臨床情報を一括管理するシステム構築をめざすこととしています。その他にも様々な研究課題が記載され、データに基づく対策を推進する方向性や、様々なレベルで研究開発を行っていくことが示されています(表3)。
AMR対策が重要課題とされるようになったきっかけとも言える新薬開発の停滞に対しては、新たな抗微生物薬に対する市場インセンティブ(いわゆるプル型インセンティブ)の仕組みを導入することが記載されました。プル型インセンティブとは、どうしても市場規模が小さくなる薬剤耐性菌感染症治療薬の開発を推進するため、開発に成功した後にインセンティブをつけて研究開発を行う企業を支援しようというものであり、国際的にも導入が模索されている手法です。既存抗菌薬については、2019年にセファゾリンの供給障害が発生し、その後も様々な理由でジェネリック医薬品全体の供給障害が生じていることから、安定供給に不安な状態が続いています。β-ラクタム系抗菌薬の国内生産を支援する事業が開始されており、経済安全保障の観点から「抗菌性物質製剤」が特定重要物資に指定されたことから、その成果が期待されているところです。アクションプラン2023には、医薬品サプライチェーンの強靭化や、国内での安定供給体制を整備することが記載されています。抗菌薬の安定供給は、抗菌薬適正使用はもちろん、医療全体を継続するための根幹となります。
AMR対策は国際的な課題であり、国際協力なくしては進めることができません。アクションプラン2016のもとで、日本政府はWHOの活動に参加するとともに、AMRワンヘルス東京会議を開催するなどの活動を行ってきました。アクションプラン2023には、AMR対策に関する国際的な政策に日本が積極的に取り組む方針が示されており、G7諸国における研究開発の推進や国際的取り組みに主導力を発揮すると記載されています。

表3 推進すべき研究課題の例

アクションプラン2023の成果指標

アクションプラン2016の大きな特徴は成果指標が明記されていたことでした(表2)。この成果指標はあくまでも国全体の指標として設定されたものですが、感染症診療・感染制御を専門とする医療従事者にはわかりやすい指標であり、対策の目安とした医療機関もあったようです(そもそも医療機関の目標値でないことには注意が必要です)。
アクションプラン2023でも成果指標が設定されています(表4)。指標微生物の薬剤耐性率と抗微生物剤の使用量の二本立てになっているところはアクションプラン2016と同様ですが、指標は同じものの目標値を見直している項目と、指標そのものが変更となった項目とがあります。成果指標がその内容を適宜修正しつつ継続となるのは、AMR対策を実効性のあるものにしていく上で重要と考えられます。
指標微生物の薬剤耐性率では、アクションプラン2016のペニシリン耐性肺炎球菌からVREへと成果指標が変更されていることが目につきます。すでに述べたようにVREのアウトブレイクが各地で発生しており、医療機関と保健所を中心に地域ぐるみで対策が行われています7)。VREの国内全体への拡散を防ぐ正念場と言ってもよい状況を踏まえ、成果指標を変更してまでVRE対応を進めようとの強い意図が感じられます。VREの成果指標は感染症に基づく届け出数(80人以下)となっており、他の成果指標と異なるのは、他の耐性菌ほど頻度が高くないためと推測されます。この妥当性については今後検討されていくものと思われます。他の成果指標はこれまでと同様ですが、検体が明記されるようになったことと、目標値が変更されていることがあります。アクションプラン2016では成果指標をどのサーベイランスのどの値でみていくのかが明記されていませんでしたが、アクションプラン2023では明記されています。また、2027年の目標値の根拠が記載されました。
抗微生物剤(抗菌薬)の使用量についても、成果指標が一部変更され目標値が見直されています。アクションプラン2016で経口セファロスポリン系薬とされていた指標が経口第3世代セファロスポリン系薬と変更されました。また、静注抗菌薬全体が対象となっていたものがカルバペネム系に限定されています。これらはよりターゲットを絞った形での対策を進める方向性が反映されているものと思われます。目標値がそれぞれ変更されていますが、それぞれの設定根拠についても記載されています。

表4 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2023-2027の成果指標(医療分野)

医療機関での取り組み

ここまでアクションプラン2023の内容について解説してきました。これを受けて医療機関はAMR対策として何を行っていけばよいのでしょうか。
医療の視点からみると、アクションプラン2023全体で二つの方向性が明らかです。まず、データを活用した対策を推進する方向性が繰り返し強調されています。2016年まではAMR対策に関連したサーベイランスが不十分な状況でした。ここ数年で抗菌薬使用量サーベイランスが整備され、薬剤耐性菌サーベイランス(JANIS)はより充実し、病院での感染対策をより効率的に進めるためのツール(J-SIPHE)が始まりました。日本全国あるいは都道府県別のデータを容易に入手できる「薬剤耐性(AMR)ワンヘルスプラットフォーム」も公開されました。臨床研究や疫学研究が進んだことと合わせ、日本国内の状況に基づいた対策を進めることが可能となりつつあり、アクションプラン2023ではデータに基づく対策をさらに展開されることが強調されています。もうひとつの方向性は地域単位での取り組みです。都道府県別のデータが整備され、地域による違いが見えてきています。その要因を検討した上で対策を推進していくことが求められます。薬剤耐性菌感染症の集団発生に対しても地域連携で対処していく方向性が示されており、COVID-19パンデミックの経験も踏まえ、地域連携の枠組みを構築して感染対策に取り組んでいくことが求められています。
それぞれの医療機関ではこれらの方向性を意識して感染対策の仕組みを整備していくことが求められます。J-SIPHEなどのシステムを活用し、各医療機関や地域のデータに基づいて合理的に感染予防・管理や抗菌薬適正使用を進めていく必要があります。医療機関には今後、感染対策に関するサーベイランスをより広く行うことが求められる可能性が十分あります。医療機関におけるサーベイランスはともすると感染対策担当者が多大な労力を払ってデータ収集をすることに終始しがちです。しかし、それではサーベイランスの本来の目的であるデータ解析とそれに基づく対応の手前で疲弊してしまいます。抗菌薬使用量や薬剤耐性菌のサーベイランスはJ-SIPHEを活用し、その他のサーベイランスも電子カルテシステムの活用など、できるだけ労力の少ない形で構築していく必要があります。J-SIPHEの活用は、他の医療機関と同じ尺度(単位)でサーベイランス結果を集計し、適切な比較を行うためにも有効と考えられます。
感染対策に関する診療報酬の加算で地域連携が強調されてきました。2022年度に開始された感染対策向上加算では病院間だけではなく、診療所、地域の医師会や保健所との連携を求め、さらに少なくとも年1回は新興感染症の発生等を想定した訓練を実施するというものです。地域の感染症対策が一医療機関だけでは済まないことはCOVID-19対応からも明らかです。AMR対策の視点からも地域連携の重要性は高いです。地域の医療機関(病院、診療所)や行政組織(保健所)が日頃から顔の見える関係を築くことは非常時のスムーズな対策に大いに役立つはずです。国が政策誘導する形で地域連携が推進されていく方向性は当面変わらないものと思われます。医療機関ではこの流れを意識し、単に診療報酬対策ということではない有機的な連携をめざす必要があると考えられます。定期的なカンファレンスや訓練のあり方を含め、地域の感染対策のレベル向上に積極的に取り組むことが重要です。

まとめ

アクションプラン2023はこれまでのAMR対策の流れを継承しつつ、より詳細な記載となっています。なかでもデータに基づく対策や地域連携の推進は繰り返し強調されており、それぞれの医療機関も方向性を理解して対応していく必要があります。

References

1)国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議. 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016-2020.https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/0000120769.pdf(accessed September 11, 2023)
2)国際的に脅威となる感染症対策の強化のための国際連携等関係閣僚会議. 薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2023-2027.https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/ap_honbun.pdf( accessed September 11, 2023)
3)Ono A, Koizumi R, Tsuzuki S, Asai Y, Ishikane M, Kusama Y, et al. Antimicrobial Use Fell Substantially in Japan in 2020—The COVID-19 Pandemic May Have Played a Role. International Journal of Infectious Diseases. 2022; 119:13-7.
4)国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 AMR臨床リファレンスセンター. 「抗菌薬意識調査レポート」(2022年9月30日)https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20220930_report_press.pdf(accessed September 11, 2023)
5)厚生労働省健康局結核感染症課. 抗微生物薬適正使用の手引き 第一版(2017年6月1日)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000166612.pdf (accessed September 11,2023)
6)厚生労働省健康局結核感染症課. 抗微生物薬適正使用の手引き 第二版(2019年12月5日)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000573655.pdf( accessed September 11, 2023)7) Saito N, Kitazawa J, Horiuchi H, Yamamoto T, Kimura M, Inoue F, et al. Interhospital transmission of vancomycinresistant Enterococcus faecium in Aomori, Japan. Antimicrobial Resistance & Infection Control. 2022;11

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