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HosCom 2023 vol.20 no.2

ユーザー訪問記

特定医療法人 東筑会 東筑病院 災害時の対応と感染対策~病院機能評価「災害時の対応項目」Sランクを取得~

※本記事は、「HosCom 2023 vol.20 no.2(2023年8月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。

福岡県北九州市に位置する東筑病院は、急性期一般病棟、地域包括ケア病棟、障害者施設等一般病棟、回復期リハビリテーション病棟、医療型療養病棟を併せ持ち、在宅医療も行うケアミックス型病院として、疾患の治療からリハビリ、介護、福祉も含めた切れ目のない医療を提供されています。
2000年に日本医療機能評価認定を受けられ、2021年の更新時には「災害時の対応項目」を含めた複数項目でSランクを取得されました。今回は同病院の黒田事務部長、村田総務課長、東看護主任(感染管理担当看護師)に病院機能評価で評価されたポイントや、感染対策を含めた具体的な災害時の対応についてお話をお伺いしました。
取材日:2023年4月6日

感染対策の組織

当院の感染対策の組織は、感染対策委員会、その下部組織として感染対策チーム(以下、ICT)があります。ICTは医師・看護師・検査技師・薬剤師などで構成され、院内の感染症発生状況を把握し、定期的な環境ラウンドでは職員に直接指導を行っています。その他に看護部の感染対策担当者から構成されるリンクナース委員会があります。

災害対策について

〜医療施設の災害対応のための事業継続計画(BCP)の策定〜

介護施設では2024年からBCP策定が義務化されましたが、現状、病院では災害拠点病院だけが義務化されています。当院は災害拠点病院ではありませんが、災害はいつどこで発生するかわからないため、BCP策定の重要性を認識し、2019年4月以前からBCPを策定していました。また、災害時には病院に多くの患者さんが来院する可能性があるので職員への周知も重要です。職員にはBCPの概念から、福智山断層帯がどのように分布しているのかなどの、地震に関する地域の情報、万が一、災害時にライフラインが止まってしまった場合の対応として、当院の非常用発電や太陽光発電等の設備の運用方法や、水は備蓄されているもの以外に地下水があること等を一通り説明し周知していました。その他、災害時に各部署から何人集まれるのか、各人が何を担当するか、どのような連絡体制にするか等のフローやトリアージする場所、備品や薬関係の在庫量についても把握し、書類にまとめてBCPに盛り込みました。
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が流行してからは集合研修が難しく、管理職研修で訓練して各スタッフへ落とし込み、指導をするという形をとっていましたが、今後は年2回実施している消防訓練などと併せて職員全員にBCP訓練を実施していく予定です。

〜ICTとしての取り組み〜

地域の感染対策の中核施設としてNPO法人北九州感染制御ティーム(KRICT)にも参加しており、地域の医療機関と連携して感染対策および情報交換などを行っています。当院は感染対策向上加算3を取得しており、加算1の病院と年に数回のカンファレンスに加えて、電話やメールで相談もしています。
災害時には、①手指衛生の状況把握・手指消毒の強化(手洗いができない場合は速乾性手指消毒剤を配布など)、②衛生用品確保の状況把握、 ③体調管理の把握、 ④清潔保持(入浴不可の場合にはクロスで清拭)に努めることが重要だと考えており、ICTとして対応できる体制を整えています。

〜病院全体で取り組んでいること〜

特にライフラインの確保に力を入れて取り組んでいます。当院は地域密着型の病院であり、大規模災害が起こった際に、近隣の方が避難できるスペースやライフラインを確保することの重要性を感じています。建替え前の旧病院時代から、ガスコージェネレーションシステム*を導入していますが、建替えのタイミングで非常用発電やガスコージェネ発電設備に加え太陽光発電を新たに導入しました。停電が起きても3日間ほどの電気量がカバーでき、3日以内に燃料が供給されれば発電できるので安心です。それに加えて、飲料水としても利用できるように敷地内に井戸も整備しています。建替え予定の病院が当院に見学に来て下さることもあり、これまで九州各地から9病院に見学いただきました。
*. ガスコージェネレーションシステム:クリーンな都市ガスを燃料として電気をつくり、その際に発生する熱を冷房・暖房・給湯などに利用できるシステム

〜災害時に備えた感染対策〜

災害が起きたら、まず状況の把握を行い、感染症発生予防・拡大防止、感染症サーベイランス体制の整理を行う事が必要と考えています。また、感染対策物資などの十分な確保も重要です。備蓄に関しては日ごろから意識しており、ガウン約1年分、エプロン約2ヶ月分、手袋約2ヶ月分、手指消毒剤(ウィル・ステラVなど)約2週間分、環境清拭用クロス(サラヤエタノールクロス80など)約1週間分など、数週間から数ヶ月分は確保しています。新型コロナ流行の初期にはマスクや手指消毒剤、個人防護具(PPE)などが不足し、ビニール袋を加工してエプロンを作ったり、クリアファイルでシールドを作成するなど大変苦労しました。災害時の備蓄で考えると2週間分ぐらいの確保で十分だとは思いますが、現在は新興感染症なども考慮して多めに備蓄するようにしています。また、職員の手指衛生に関しては、平時から各職員が手指消毒剤を携帯して手指消毒に高い意識で取り組んでいます。
その他に、厨房では患者・職員用の食料3日分、患者用の飲料水3日分(1,200L)を確保しています。飲料水の他に地下水(井戸水)も整備しています。平時には厨房や検査室等、衛生上注意しなければならないエリアは上水、トイレの排水等にはランニングコストが安い地下水を使用する仕組みになっています。地下水は飲料水として使用することもできるため、災害等でどちらかが使用できない状況になった場合でも、すぐに切り替えて停止している側に補給できるようになっています。

〜コロナ禍で活かされたこと〜

新型コロナの蔓延初期にコロナ対策委員会を設置し、事務方では分からないことなどを質問形式で、感染対策のためにどういった設備が必要か、衛生用品の備蓄はどの程度準備すればよいか等を院内で確認と情報共有をしました。実際にコロナ禍ではPPEが不足して大変でしたが、当院では予めBCP対応の一環でPPEの備蓄量を把握し、一定量を準備しておいたため、大きな混乱がなくて済みました。PPEが不足していた期間は各管理者に共有の表を配布し、各病棟の使用量や残数を報告してもらうことで各病棟の必要量や在庫からの使用可能量などを考えながら割りあてることができ適切に運用ができました。

病院機能評価「災害時の対応項目」Sランクを取得した際の評価ポイント

病院機能評価4.6でSランクを取得した病院の危機管理の項目「1. 災害時の対応を適切に行っている」の評価視点は、「火災や大規模災害を想定した対応体制が整備され、訓練や備蓄等が行われていること」と、病院機能評価 機能種別版評価項目に記載されています。
当院がSランクを取得することができたポイントとして、①防災マニュアルに緊急時の責任体制、役割分担、連絡網を明示しており、さらに火災と地震別に対応手順を網羅し、各部署に配布して周知している、②災害への備えとして、備蓄食品や飲料水、経管栄養食を患者・職員用とも3日分を確保している、③災害対策委員会を毎月開催しており、災害を想定した年2回の消防避難訓練を実施している、④大規模災害を想定したライフライン確保の対策として、病院の建替えを機にガスコージェネレーションシステムに加えて、地下水設備、非常用発電設備、太陽光発電設備を導入している点が挙げられます。

「災害時の対応項目」でSランクを取得後の変化

Sランクを取得したことで自信に繋がり、当院の紹介パンフレット等で患者さんや地域の方へもアピールできるようになりました。院長も外部で講演する際は、万が一災害が起こった場合でも対応できる設備を整えているということを話しています。大災害は起きないに越したことはありませんが、いざ災害が起こっても対応できる設備が整っているという安心感があります。消防法では年に1度、非常用発電機の点検が義務付けられており、一昨年には地域停電を想定し、病院の送電を2時間程度停止させた訓練を行いました。非常用発電機も常用発電機も問題なく動き、電気の供給などに大きな問題がないことが確認できました。また、井戸からの給水も通常通り使用できました。建替え前の旧病院では非常時の設備が整っておらず心配事が多かったのですが、現在は不安が無くなりました。

今後の展望

2025年に6回目の更新となる病院機能評価が控えており準備中です。2021年に災害時の対応項目で取得したSランクを維持しながら更に水準を上げていかなければなりません。また、新型コロナのクラスター発生により収益が減少し、今後は感染対策費の補助も減少するため、廃棄物処理費用や光熱費、物価高騰などによるコスト増への対応も課題です。新型コロナ5類移行後も感染対策を継続しながら収益改善を図りつつ、業務の効率化を行っていきます。

左から、 黒田 事務部長、水﨑 看護部長、早川 理事長/院長、村田 総務課長、東 看護主任(感染管理担当看護師)

特定医療法人 東筑会 東筑病院

〒807-0856 福岡県北九州市八幡西区八枝1丁目7番地20号

■ 病床数:199床(内科専門の在宅療養支援病院)  ■ 開放型病院認定
■ その他運営施設 : 介護老人保健施設 翡翠苑、住宅型有料老人ホーム リバーサイド東筑、中間クリニック、訪問看護ステーション、ケアプランセンター

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