HosCom 2023 vol.20 no.2
特集
手指衛生の向上をめざして〜WHO手指衛生ガイドラインの理解と活用〜
- 鈴木 由美
- 国立病院機構 下志津病院 感染症内科・小児科
※本記事は、「HosCom 2023 vol.20 no.2(2023年8月発行)に掲載した内容です。執筆者の所属および記事内容は掲載当時のものであり、現在とは異なる場合があります。
はじめに
1)「十分な手指衛生の実践」とは
「アルコール手指消毒剤による手指衛生」は誰でも、20〜30秒で簡単にできます。しかし、手指消毒が広く推奨されるようになり、WHO手指衛生ガイドライン20091)が公開されてから14年経過した現在でも、私の施設も含めて「手指衛生を十分に実践できている」と自信を持っていえる医療機関はなかなかないと思われます。一定のレベルに達したと思われる施設でも100%の遵守にはなりえず、改善に向けた取り組みを継続する必要があります。
医療関連感染を防ぐためには、手指衛生が「適切な瞬間に」、「実際に患者等に触れる手の表面がくまなく清潔にされ」、これらが「高い遵守率で行われていること」の三つが大切です。しかし、患者に触れる全ての職員に行動変容を求めるのは、簡単なことではありません。このため手指衛生は標準予防策の基本中の基本でありながらも、いまだに世界的に未解決な課題とされています。
2)WHO手指衛生ガイドライン20091)
世界には他にも「手指衛生改善を目指すためのガイド」はありますが、前述の「適切な瞬間」、「手の表面をくまなく清潔に」、「高い遵守率」の三つを包括的に網羅し、世界中から数多くのエビデンスを集めて総合的に整合性がとれる形で各種ツール類を準備しているのはWHO手指衛生ガイドラインだけです。これらのツール類は、先進国から発展途上国まで、全ての医療機関で活用できるように作成されています。
これまで日本でWHO手指衛生ガイドラインは、「全貌をつかむのが大変」、「各ツール類がそのままの形ですぐに使えない」、「英語で書かれているため理解しにくい」など言葉の壁もあり、「手指衛生の5つの瞬間」という言葉のみが部分的に抜き出されて使われてきた以外ではあまり積極的に広くは導入されてきませんでした。しかし、このガイドラインを利用する時には自施設に合わせて適宜工夫やアレンジを加えること(Adapt to Adopt)が推奨されています。基本を理解した上で少し手を加えれば今の日本の医療現場でも十分に通用するので、是非、一度この全体を理解し、Adapt to Adoptしながら導入していただけたらと思います。
適切な瞬間に実施するために
1)手指衛生の「5つの瞬間」の概念
現場スタッフに「いつ手指衛生をするべきなのか」をわかりやすく伝えることは重要であり、日本では長い間「一処置一手洗い」と言われてきました。「手洗い流しで手を洗う」しかなかった時代には、これが現実的な標語でしたが、医療者の手が病原体を伝播させる場面は「処置」以外にもたくさんあります。アルコール手指消毒剤の普及により、いつでもどこでも、簡単に手指衛生ができるようになりました。が、何かを触るたびに手指消毒をするのは無駄が多すぎます。このため「感染を生じるリスク」、「現場における実行性」、「世界中で活用できる一貫性と汎用性」、「教育効果」、「遵守率の計測」など様々な要素を考慮したコンセプトが考案され、2007年に発表されました2)。「その前後の動作から鑑みて、そこで手指衛生を行うことに大きな意義がある」と考えられる「機会」を5種類にわかりやすくまとめたものが有名な「患者ケア時における手指衛生の5つの瞬間」(図1)です。そしてこの2年後、遵守率改善のための多角的戦略と組み合わせた「WHO手指衛生ガイドライン2009」1)が公開されました。
「5つの瞬間」は「一処置一手洗い」ほど、単純な内容ではありません。この概念を説明するための重要な単語の解説を表1に示します。基本的なコンセプトとして、患者由来の微生物(患者の微生物)に覆われていると想定される範囲を「患者ゾーン(患者と患者周囲環境)」、不特定多数由来の微生物に覆われていると想定される範囲を「医療エリア」と定義されています。しかし、患者周囲のどの物品までが「患者周囲環境」であるのか、明示されていません。患者のオーバーテーブルは「患者周囲環境」、複数の職員で共有する電子カルテ端末は「医療エリア」、というように、概ね見解が一致する物品もあります。しかし、ベッド周囲のカーテンやパーティション等、専門家の間でも議論になるものもあります3)。これがこのガイドラインの「わかりにくさ」の一因でもありますが、同時に「世界のあらゆる医療現場で活用できる汎用性の高さ」があるともいえます。判断に迷う場合は、各施設でリスク評価を行い、院内で統一します。
例えば、人工呼吸器を「患者」の一部とするならば、「1の瞬間」として、人工呼吸器に触れる前に手指衛生をします。一方これを「患者周囲環境」とするならば、必ずしもこれに触れる前に手指衛生をする必要はありません。「患者周囲環境に触れる前」も感染対策上、確かに「手指衛生をした方がよい」です。しかし、患者周囲環境には「患者の微生物が多数生息している」と考えるのが原則なので、ここに医療エリアの微生物が多少付着したとしても、患者の微生物がすでに圧倒的多数存在しているため、いずれこれに置き換わると考えられています。このため「患者周囲環境に触れる前」の手指衛生は「5つの瞬間」に比べて重要ではないとされています。患者に触れる手は「直前に手指衛生を実施した」もしくは「手指衛生実施後に患者由来微生物のみが付着した」状態であればよいため、「1の瞬間」は患者周囲環境に触れる前でも後でも問題ないとされています(図2)。詳細についてはテクニカルリファレンスマニュアル(Technical Reference Manual)4)をご確認ください。
2)直接観察法に関する、よくある疑問点
①ベッド周囲のカーテンは患者周囲環境ではないのか
ガイドラインには患者ゾーンと医療エリアの境界が明示されていないため「観察者の観察しやすさの都合」や「これまでその施設で独自に行っていた直接観察法」に合わせて解釈される傾向にあります。例えばベッド周囲のカーテンを開ける前の手指衛生が「直接観察しやすい」ことから、これを「1の瞬間」とみなすこともあるかと思います。私たちも以前はそうしていました。しかし、ベッド移動や入退院と同時に必ずしも交換されていないベッド周囲のカーテンは、多数の患者由来の微生物が付着している「医療エリア」とみなすのが、このガイドラインの基本に沿った考え方です。また、患者ゾーンから出るときに手指衛生をせずにカーテンを触れば、カーテンにはどんどん患者の微生物が付着します。このため、なるべくきれいな手で患者に触れる、そして、可能な限りカーテンを清潔に保つために、カーテンは「医療エリア」として扱うのが妥当と考えられます(図3)。しかし、飛沫感染対策として使用されたカーテンには、大量の気道分泌物が付着している可能性が高いため、このようなカーテンは触れる前より触れた後に手指衛生をした方が良いとも考えられます。この場合はカーテンを「医療エリア」ではなく「体液曝露リスクが発生する部位」として扱い、これに触れた後は「3の瞬間」であると考えます。このように使われたベッド周囲のカーテンは、患者の退院とともに交換するのが理想です。
②入退室時の手指衛生を1、4、5の瞬間とみなしてよいか
例えば個室療養が基本であるアメリカでは、入退室時の手指衛生を、1、4、5の瞬間、として記録するのは妥当とされています5,6)。しかし日本では多床室が多いため、入退室時のみの観察では、1、4、5の瞬間の多くを見落として、正しい遵守率の評価ができていない可能性があります。
このように、直接観察法において疑問を感じた際には、科学的整合性、リスク評価、現実性といった観点で検討し、施設として合意できるルールを設定する必要があります。ちなみに、私たちの施設では、昨年度までベッド周囲カーテンは「患者ゾーン」として扱ってきました。この理由は2つあり、一つ目は、やはり直接観察がしやすいからです。二つ目は、当院(440床)の過半数を占める障害者病棟(240床)では、多くの患者は数十年近く入院しています。これらの患者のベッド周囲カーテンには、その患者の微生物だけが付着していると評価し「患者周囲環境」と扱っていました。しかし、現場スタッフが成長して、病室の中での直接観察が行えるようになってきたこと、また在宅人工呼吸器患者の障害者病棟への短期入院による2剤耐性アシネトバクターの持ち込み事例が増えて、環境を介した感染リスクが高まったため、2023年度からWHO手指衛生ガイドラインの基本的な考え方と同様に、患者のベッド周囲のカーテンを「医療エリア」として扱うことにしました。
③ 直接観察は正確ではないといわれているが、その意義はあるのか
WHO式の直接観察法ではホーソン効果のために平時より遵守率が上がるだけでなく、そもそも「全ての「手指衛生の瞬間(=手指衛生を実施する必要がある機会)」の数%程度までしか観察ができない」といわれています。さらに、現場で実施された手指衛生行動の全てが「手指衛生の5つの瞬間(手指衛生が必要な機会)」に該当する訳でもありません。このため、他の一般的な医療関連感染サーベイランスなどと比較すると、かなり曖昧なデータしか得られません。しかし直接観察では、全体の遵守率の数値だけでなく、その部署で「5つの瞬間」のどの場面が、どういった人ができていないのかをみることに大きな意義があります。例えば同じ50%でも、「5つの瞬間」のすべてが100%遵守の人と0%の人が同数、という場合と、全ての人が「4,5の瞬間」は毎回できているのに「1の瞬間」は一度もできていない、という場合では、遵守率を上げるために取り組むべき内容は違ってきます。
直接観察法でより正確な遵守率を得るコツは、なるべく短時間で多くの「手指衛生の瞬間」(手指衛生を実施した数ではなく、手指衛生を実施すべき機会の数)を観察することです。最初の5分くらいは観察されていることに気づかない人も多く、ある程度普段に近い手指衛生行動がみられます。しかし、観察されていることに気づく人が増えるにつれ、遵守率が右肩上がりになることがよくあります。私たちは、短時間で多くの手指衛生の瞬間を観察できるよう朝の申し送り直後の時間に合わせて訪問し、1回の観察は20〜30分程度で20件以上の手指衛生が必要な機会を記録できたところで、切り上げるようにしています。
④ 直接観察より覆面観察や電子モニタリングなど他のモニタリング法が良いのではないか?
覆面観察や電子モニタリングでは、ホーソン効果は生じません。しかし覆面観察では病室の中は観察できず、マンパワーも必要です。センサーを使用した電子モニタリングには大きな可能性が秘められていますが、現状では大きなコストがかかり、導入できる施設も限られます。現状ではどのモニタリング手法にも限界があり、どの施設でも導入できる、単独で完璧な手法はありません。WHO戦略では直接観察法の短所を補うために、アルコール手指消毒剤などの消費量調査も行うことを推奨しています。消費量調査でざっくりと「広く浅く全体的な傾向」をつかみ、直接観察で「一部を抽出して詳しく分析」します。私たちの施設でもこの両方を組み合わせて各病棟の手指衛生の状況を評価しています。現状では他の多くの施設にとっても、これが最も現実的に実践可能、かつ現場の改善に確実に繋がるモニタリング法であると考えます。
手の表面をくまなく清潔にするために
1)WHOの手指消毒手順と国内で用いられている手順
WHOの手指消毒手順は手の全表面がカバーできるように、6つのstepで構成されています(表2)。(WHOのガイドラインにはこれとは別に、戦略の進め方 the step-wiseapproach、の中に「5つのステップ」という記述もあります。ここでは手順のstepに関してはローマ字で表記します。)これはもともとヨーロッパで市販の手指消毒剤の製品評価のために考え出されものです。これまで日本で広く用いられている手指消毒手順も6つのstepで構成されていますが、WHOの指の背をこするstepが、手首をこするstepにおきかわっています(図4)。しかし、実際に医療現場で患者に直接接触するのは「手首」より「4本の指の背」ではないでしょうか。私たちの施設では手順を切り替えるにあたり、WHO式と従来の日本の方法で、手の表面のカバー率や塗り残しを比較する研究を行いました。この結果、手掌側は差が見られませんでしたが、手背側は、WHO式の方が「全体カバー率が高く、親指以外の4本の指の背の部分の塗り残しも少ない」ことがわかりました7)。私たちの施設では現在、WHO式6stepsの手順を応用したポスター(図5)を掲示し、研修でもこの手順で指導しています。
2)WHOの手指消毒手順の課題
WHOの手順にも課題はあります。一つ目は順番です。WHO式では「親指」と「指先」が最後です。しかし日常業務の中では、「親指」と「指先」が最も多く患者に触れる部位でありながら、多くの研究で「洗いそびれや消毒しそびれが多い」と指摘されています8-12)。「指先」を最初に消毒するWHOの6steps方式13)や、最初に「指先」と「親指」を消毒し、残りは手全体をくまなくこする14)方法も報告されています。これらを参考に、私たちの施設の手順では、指先と親指を最初にしています(図5)。二つ目は「手の甲」をこする際に指の股に意識が行きすぎて、手の甲の消毒がおろそかになるという報告があります7,15)。三つ目は、手の大きさに合った「最適な1回量」がよくわからない、という問題があります。ガイドライン1)やテクニカルリファレンスマニュアル4)には「手のひらにいっぱい(a palmful)の量」と書いてあり、「手の大きさに応じた最適な量」を使用することが数年前から改めて注目されています16)。私たちの施設では手の大きさに関わらず「とりあえずワンプッシュ」という人がよく見られますが、「ワンプッシュ」で出てくる量は、当院で採用している8種類の製品でもばらつきがあり、この点に関して今後の課題と考えています。
遵守率を上げるために
1)戦略的に取り組む
職員の遵守率を上げるためには、行動変容が必要です。ジュネーブ大学病院では1990年代に、医学だけでなく認知行動学の視点2)も取り入れて多角的に取り組み、職員の行動変容に成功しました。この成果が2000年にLancetに報告されました17)。これにさらに世界中からの数多くの研究結果も含めて「多角的」な「5つの要素」と「戦略的」な「5つのステップ」、および「5つの瞬間」のコンセプトと合わせて「手指衛生多角的戦略」(図6)が考案され、「WHO手指衛生ガイドライン20091)」が作成されました。
「5つの要素」には図7のように数十個ものツールがあり、この中には「病院長への手紙」、「5つの瞬間のポスター」などが含まれます。
戦略の基本的な進め方は「導入の手引き Guide to Implementation18)」、自施設の手指衛生の取り組みのプロセス評価・優先順位の判定ツールとしては「手指衛生自己評価フレームワークHand Hygiene Self-Assessment Framework(以下、HHSAF19))」が活用できます。私たちの施設で2014年に戦略を導入した時は全ての要素の点数が低かったため、「現場のリーダーとなる人員の配置」、「手指衛生サーベイランス体制の構築」といった土台となる部分に注力しました。その後、数年で「ICT(感染制御チーム)が中心となった活動」から「現場のスタッフが自覚と責任をもって取り組む活動」に移行しました。具体的には、「前年度HHSAFで点数が低い要素を中心」に「5つのステップを意識して」取り組んでいます20,21)。表3に「5つの要素」、表4に「5つのステップ」について、内容の概要を示します。当院での実践を報告した論文の日本語訳を、病院のホームページ22)に掲載しています。よろしければそちらもご参照ください。
2)他施設の仲間、世界の仲間とともに手指衛生の文化を醸成する
手指衛生は「毎日淡々と続けていくもの」なので、改善の取り組みそのものも時間が経つと単調になってしまいがちです。WHO戦略にはこのための対策も、沢山用意されています。
①【リーダーシップ基準】
HHSAFで高得点を目指して取り組みを続けていくと、最終的には「リーダーシップ基準」の項目に取り組むことになります。この中では学会発表、論文執筆、他の施設への指導内容が含まれます。これらは自施設の手指衛生の改善に直結するわけではありません。しかし、これまでやってきたことを俯瞰的に見直せば、別の観点から今後の課題が見えてきます。また多くの施設が発信しあうことで、お互いの取り組みを参考にして、切磋琢磨しながら全体のレベルアップが期待できます。
②【Hand Hygiene Excellence Award】23)
Hand Hygiene Excellence Award(HHEA)という「手指衛生優秀施設」が表彰される国際的な賞も用意されています。本戦略を3年以上継続して成果が得られている、HHSAFで高得点、そして地域に向けてリーダーシップを発揮していることが、応募条件となっています。ヨーロッパ、ラテンアメリカなど、WHO管轄地区ベースに審査・受賞が行われており、日本の施設はアジア太平洋地区HHEAに応募します。主催団体は、WHO、ジュネーブ大学、エースクラップ、そしてその地区の感染制御学会(アジア太平洋地区はAPSICアジア太平洋地区感染制御学会)で、この学会に所属する国際的なエキスパートチームによる審査を受けます。私たちの施設は日本国内の施設として2022年に初受賞しました(図8)。受賞だけでも嬉しいことですが、受賞により、これまでの私たちの取り組みに自信を持って他の施設に紹介できるようになったことが大変よかったと感じています。
③【SAVE LIVES Clean Your Handsキャンペーン】24)
WHOは世界中のどの施設でも参加登録できるSAVELIVES Clean Your Handsというキャンペーンを立ち上げており、このキャンペーンのホームページでは毎年5月5日の手指衛生の日を盛り上げるために、様々なものが公開されています。こういったキャンペーンに参加することは、自施設の手指衛生の改善に直結するように一見つながらないかもしれません。しかし、これは特に私たち…自施設の中で「嫌われ役」な立場になりがちな院内感染対策担当者にとっては、世界中の仲間も同じように、地道に手指衛生改善に取り組んでいるのだ!という連帯感が感じられ、勇気づけられます。毎年新しいデザインで提供されるポスター用のテンプレートは自由にダウンロードできるPowerPointファイルで、写真や病院のロゴなどを入れて簡単に加工できます。他にもホームページ用のバナーや、web会議用の背景など、多彩なツールが用意されていますので、是非使いやすそうなものから取り入れください。私たちの施設がある千葉県では、今年から、SAVE LIVES Clean Your Handsに登録している11施設で連携を始めました。自施設に合わせてアレンジ(Adapt)したツール類を共有したり、オンラインミーティングでお互いの取り組みを紹介したりして、楽しくこの戦略に取り組み始めています。
④【Train the Trainers in Hand Hygiene 】
ジュネーブ大学病院の感染制御チームが講師陣として各国を回り、WHO手指衛生戦略や直接観察法の指導者を育成するセミナー(Train the Trainers in Hand Hygiene:TTT)があります25)。2020年に日本で開催されたTTTの受講生たちの一部が講師陣となって、現在日本版のTTT-Japanセミナーを毎年1回開催しており、各回の受講生も随時新規講師陣メンバーとしてお迎えしています(2021年12月on-line、2022年11月大阪、2023年11月(開催予定※))26)。TTT-Japanの講師陣は、お互いの施設や地域での取り組みの情報交換や、日本版の直接観察教育動画の作成、子ども向けイベントの講師を務めるなど、様々な形で連携してWHO戦略の普及に取り組んでいます。是非セミナーを受講していただき、よろしければ講師陣の仲間に入って頂けますと嬉しいです。※今年度のTTT-Japanセミナー開催案内は、日本環境感染学会、日本集中治療医学会、国立病院機構のホームページに掲載予定です。
おわりに
手指衛生以外にも、医療関連感染対策として取り組むべき課題は沢山あります。手指衛生のためだけにWHOの膨大なガイドラインを読み解き、実践するエネルギーを割くことはできないと感じておられる人も多いと思います。しかしこのガイドラインは実際に現場で試行錯誤しながら手指衛生向上に取り組んできた人達が作成したガイドラインです。使ってみて初めてわかる良いところもたくさんあります。日本の皆さんが気軽に使えるように、わかりやすい日本語の解説書さえあれば、と思っています。すでに一部のツールの日本語訳は公開されていますが、現在TTT-Japanの講師陣が中心となって、ここに上げたようなイラストを多用した解説書の作成に取り組んでいます。
私たちは手指衛生の改善のためだけにこの戦略に取り組み始めました。しかし何年も取り組んでいるうちに、行動変容が必要なあらゆる医療関連感染対策、さらには医療安全全般にも活用できる基本的な考え方(それらの枠組み)が身につき、応用できる便利なツールまで、たくさん手に入れることができたと感じています。これは完全に予想外の、嬉しいことでした。どの施設も例外なく、手指衛生には取り組まなくてはなりません。皆さんもせっかく取り組むのであれば、現場のみんなを巻きこんで行動変容をおこすことができ、世界ともつながることのできる、このWHO手指衛生多角的戦略に、じっくりと取り組んでいただけたらと思います。
参考文献
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