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手術時手指消毒

解説

答え:

術者の手指についた細菌は、手術用手袋の中で急速に増殖し、術野へ入るとSSI(手術部位感染)の原因となります1)。そのため手術時手指消毒は、手指に付着する皮膚通過菌を極力除去し、皮膚常在菌もできるだけ減少させることで、術中に手袋に穴が開くなど、破損した場合の感染リスクも減らすことを目的として行われます2)

  1. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p.28.
  2. 大久保憲, 尾家重治, 金光敬二 編集. 〔2020年版〕消毒と滅菌のガイドライン:へるす出版, 東京, 2020. p.25.

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解説

答え:×

ラビング法とは、普通石けんと流水を用いて手と前腕の汚れを洗い落とし、未滅菌ペーパータオルを用いて水分を拭き取り、完全に乾かした後、アルコール手指消毒剤を用いて手と前腕を消毒する方法です。ウォーターレス法とも呼ばれています。

  1. 安原洋 監修. 手術時手指消毒の手引:サラヤ株式会社, 大阪, 2013. 用語解説.
表1 主な手術時手指消毒方法
方法名 主な消毒方法
スクラビング法*1 スクラブ剤を用い、ブラシを使用して手と前腕をブラッシングし消毒を行う方法
揉み洗い法 スクラブ材を用い、ブラシは指先のみを使用またはまったく使用せず、素手で手と前腕を擦り消毒を行う方法
ツーステージ法*2 スクラブ材を用いて手と前腕を消毒し、滅菌ペーパータオルを用いて水分を拭き取り、完全に乾かした後、アルコール手指消毒剤を用いて手(と前腕)を消毒する方法
ラビング法*3 普通石けんと流水を用いて手と前腕の汚れを洗い落とし、未滅菌ペーパータオルを用いて水分を拭き取り、完全に乾かした後、アルコール手指消毒剤を用いて手と前腕を消毒する方法

*1「スクラブ法」とも呼ばれる *2「2剤併用法」とも呼ばれる *3「ウォーターレス法」とも呼ばれる

※「第1章 手術時手指消毒 概論」のダウンロードは会員様限定となります。

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解説

答え:×

手術時手指消毒に用いる消毒剤は、抗微生物スペクトルが広く、刺激性の低い殺菌成分を含有し、作用が迅速でかつ持続的であることが求められます1)。また、手術時に使用する手指消毒剤は、
1. 手指消毒の直後(即時効果)
2. 手指消毒の後、手術用手袋を6時間装着した後(持続効果)
3. 5日にわたり複数回消毒した後(累積効果)
の手から検出される細菌量に基づいて評価され、即時効果と持続効果は、製品の効能を判定する上で最も重要であると考えられています2)

  1. 安原洋 監修. 手術時手指消毒の手引:サラヤ株式会社, 大阪, 2013. p.2.
  2. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p.28.

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解説

答え:×

アルコールには持続的抗菌作用がありません。61%エタノールのみを含有する製品では、手指消毒6時間後に十分な持続的抗菌作用を保っていないことが分かっています。クロルヘキシジングルコン酸塩や第四級アンモニウム塩、オクテニジン、トリクロサンをアルコールベースの溶液に添加することで、持続的抗菌作用を得ることが出来るとされています。日本では0.5~1.0%クロルヘキシジングルコン酸塩含有アルコールが市販されています。

★持続的抗菌作用のある手指消毒剤
ヒビスコールシリーズ

  1. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p.17, p.28.

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解説

答え:×

スクラブ法はブラシを用いるため手荒れを生じやすく、手荒れのある皮膚には多数の細菌が小膿瘍を形成するため、感染防止の面から好ましくないと指摘されるようになりました1)。一方、ラビング法は手荒れの心配が少なく、短時間で消毒が可能であり、SSIの発生率に有意差がないことから広く行われるようになっています2)

  1. 安原洋 監修. 手術時手指消毒の手引:サラヤ株式会社, 大阪, 2013. p.2.
  2. 日本手術医学会. 手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版):日本手術医学会誌, 東京, 2019. p.S85.

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解説

答え:

手術時手指消毒のスクラブ法との比較では、ラビング法の方が手術時手指消毒にかかるコストが少ないとされています。2つのCCU(冠疾患集中治療室)で行われた試験では、アルコールベースの手指消毒剤のコストは、スクラブ剤を使用した手洗いの半分であったとの報告があります。

  1. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p.33.

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解説

答え:

日本の1病院において、553手術症例を対象に、ラビング法とスクラブ法をそれぞれ6ヶ月間行い、その実施期間でのSSI発生率について比較したところ、SSI発生率に有意差はなかったとの報告があります1)。また、フランスの6病院を対象として、16ヶ月間1ヶ月ごとに交互にラビング法とスクラブ法を実施し、SSI発生率を比較検討した結果、2つの消毒法によるSSI発生率に有意差はなかったとの報告があります2)。ラビング法とスクラブ法を比較すると、その消毒効果に差がないことが明らかとされています3)

  1. 深田民人, 藤井昭, 戸田芳美, 松本比登美. 当院における手術時手洗い法変更によるSSI発生率. 手術医学 2006;27(3):28-30.
  2. Parienti JJ, Thibon P, Heller R, Le Roux Y, von Theobald P, Bensadoun H, et al: Hand-rubbing with an aqueous alcoholic solution vs traditional surgical hand-scrubbing and 30-day surgical site infection rates. JAMA 2002;288(6):722-727.
  3. 日本手術医学会. 手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版):日本手術医学会誌, 東京, 2019. p.S84.

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解説

答え:×

スクラブ剤で手術時手指消毒を行う際は、通常2~6分程手と前腕の擦り洗いを行います。長時間の擦り洗いは必要なく、長時間の手術時手指消毒が原因で皮膚の損傷にいたることが多いと報告されています1,2)
手術時の手洗い水は、滅菌水を使用する必要はなく管理された水道水を用いることで同等の効果が得られます3)

  1. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p50.
  2. WHO. WHO Guidelines for Safe Surgery 2009: http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/44185/9789241598552_eng.pdf?sequence=1. accessed February 22, 2022.
  3. 日本手術医学会. 手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版):日本手術医学会誌, 東京, 2019. p.S85.

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解説

答え:

クロルヘキシジングルコン酸塩ベースのスクラブ剤の持続的抗菌作用は、ヨードホールベースのスクラブ剤よりも高いことが報告されています1)。これまでクロルヘキシジングルコン酸塩とポビドンヨードの手指消毒効果について、消毒直後の効果は類似し、持続殺菌効果はクロルヘキシジングルコン酸塩の方が優れているとされてきましたが、最近では消毒直後の消毒効果もクロルヘキシジングルコン酸塩の方が優れていると示唆される報告もあります2)
また、クロルヘキシジングルコン酸塩は皮膚と強い親和性があり、活性時間が6時間以上持続します3)

  1. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p.28
  2. 安原洋 監修. 手術時手指消毒の手引:サラヤ株式会社, 大阪, 2013. p.3.
  3. Larson EL.Guideline for use of topical antimicrobial agents. Am J Infect Control 1988; 16: 253-66.

★持続性抗菌活性のあるスクラブ剤 製品例
スクラビインS4%液

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解説

答え:

手術時手指消毒の前に時計などの装飾品を外すことは、「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン」だけでなく、「手術医療の実践ガイドライン」や「医療現場における手指衛生のためのWHOガイドライン」でも推奨されています1,2,3)
また、病院に勤務する腕時計を装着した医療従事者の手首と手指から試料を採取して細菌汚染を調べた結果、腕時計非装着者より腕時計装着者の方が黄色ブドウ球菌が多く検出されたとの報告があります4)

  1. 満田年宏 監訳. 医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン:国際医学出版株式会社, 東京, 2003. p.50
  2. 日本手術医学会. 手術医療の実践ガイドライン(改訂第三版):日本手術医学会誌, 東京, 2019. p.S85.
  3. WHO. WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care: http://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/44102/9789241597906_eng.pdf?sequence=1. accessed February 22, 2022.
  4. Jeans AR, Moore J, Nicol C, Bates C, Read RC. Wristwatch use and hospital-acquired infection, J Hosp Infect 2010;74(1):16-21.

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