手指衛生のススメ
一般的に手荒れは、手の角層の柔軟性やなめらかさがなくなり、乾燥、鱗屑、肥厚、亀裂などが生じた状態のことをいいます1)。手荒れの原因には内因性と外因性があり、内因性には性別、年齢、アトピー素因など、外因性には洗浄、消毒、摩擦、湿度などが含まれます2)。これらの原因により皮脂などが除去され、さらに外因性の刺激が加わることで手荒れが起こります3,4)。医療従事者を対象としたアンケート調査結果では、7割以上が手荒れがあると回答し5,6)、手荒れは医療従事者にとって共通の問題となっています。手荒れは黄色ブドウ球菌などの通過菌が定着しやすくなり7,8)、また、手指衛生剤使用時の皮膚刺激により手指衛生遵守率の低下につながるなど医療関連感染対策上も問題となる可能性があります9)。そのため、日頃から手荒れ予防に取り組むことが重要です。
医療現場における主な手荒れの予防方法を以下に示します。既に手荒れがある場合は、それ以上症状が悪化しないよう、原因を取り除き、手の状態が十分に良くなるまでケアを続けることが重要です。また重度の手荒れの場合は、皮膚科の医師による適切な治療が必要になります。
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医療現場における主な手荒れの予防方法
・手荒れを起こしにくい手指衛生剤を選択する
・自分に合った保湿剤が配合されたアルコール手指消毒剤を使用する※1
・手肌に優しい石けんを使用する・刺激となる手指衛生慣習を減らす
・アルコール手指消毒の前後で、必ずしも石けんと流水による手洗いを行う必要はない
・石けんと流水による手洗いに温水を使用しない
・石けんと流水による手洗い後は、十分にすすぐ
・手を拭くときは、ペーパータオルを用いて優しく押し当てるように水分を拭き取る(強く擦らない)
・手袋は、完全に乾いた手に装着する
・パウダー付き手袋を脱いだ後は、石けんと流水による手洗いを行う
・パウダーフリー手袋を使用する
・ラテックスフリー手袋を使用する※2・アルコールが刺激となる場合には、低刺激性の手指消毒剤を使用する
・ハンドケア剤を使用する
※1 手が目に見えて汚れていない場合やアルコールに抵抗性を示す微生物による汚染が疑われていない場合
※2 ラテックスアレルギーの予防
- ハンドケア剤の使用
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ハンドケア剤は、手荒れの有無に関わらず日頃から頻回に使用し、皮膚の水分保持機能の低下を防ぐこと、また角層バリア機能を正常に保ち、水分の蒸発や外部からの刺激、体内への異物の侵入を防ぐことが大切です。ハンドケア剤には、保湿機能を補う保湿剤と手に皮膜を形成しバリア機能を高める保護剤、これらの機能を併せ持った製剤が販売されています。ハンドケア剤の選定ポイントは下記の通りです。
ハンドケア剤の選定ポイント
・ポンプタイプ、あるいは個人携帯用
広口容器は汚染を受けやすく、感染源となる可能性がある
・手指消毒剤の消毒効果に影響を与えない
・手袋の性能に影響を与えない
- ハンドケア手順(例)
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- 商品のご紹介
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サラヤの低刺激性手指消毒剤
サラヤのハンドケア製品
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- 参考文献
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1)松崎文昭. 手荒れ. 於 : 日本化粧品技術者会編. 化粧品辞典. 東京 : 丸善 2003 : 607.
2)伊藤正俊. 手湿疹. 於 : 日本美容皮膚科学会監修. 漆畑修, 他編集. 美容皮膚科プラクティス. 東京 : 南山堂 1999 : 480-489.
3)武田穆典. ハンドケア製品の現状と課題. FRAGRANCE JOURNAL 1991 ; 2 : 17-23.
4)久家智子, 他. 手指消毒剤による手荒れとその対策. 感染症 1992 ; 22(6): 231-236.
5) 藤原順子, 他. 消毒剤・ゴム手袋による手荒れの調査.手術部医学 1992; 13(2):395-398
6) 澤井洋子, 他. 手術時手洗いにおける消毒剤の皮膚におよぼす影響について.手術部医学1993; 14(2): 289-292
7) Larson EL et al. Changes in bacterial flora associated with skin damage on hands of health care personnel. Am J Infect Control 1998 ; 26(5) : 513-521.
8) Rocha LA et al. Changes in hand microbiota associated with skin damage because of hand hygiene procedures on the health care workers. Am J Infect Control 2009 ; 37(2) : 155-159.
9)Boyce JM, et al ; Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee ; HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force. Guideline for hand hygiene in health-care settings. Recommendations of the Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force. Society for Healthcare Epidemiology of America/Association for Professionals in Infection Control/Infectious Diseases Society of America. MMWR Recomm Rep. 2002 ; 51(RR-16) : 1-45.