感染症info

ジカウイルス感染症

ジカウイルス感染症とは

ジカウイルス感染症は、フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによって起こる感染症で、蚊(ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカ)によって媒介されます1,2)。ヒトスジシマカは日本にも生息しており、国内の活動時期は概ね5月中旬~10月下旬頃までです2)。日中、野外での活動性が高く、活動範囲は50~100メートル程度で、ヒトがよく刺されるのは墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などとされています2)。ジカウイルス感染症は、感染症法上の4類感染症に指定され、ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症に病型分類されています1)。ジカウイルス病は、後天的にジカウイルスが感染することにより起こる感染症で、軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛などが主な症状です2)。先天性ジカウイルス感染症は、ジカウイルスが母体から胎児への感染により起こる感染症で、小頭症などの先天性障害を起こす可能性があります2)。2013年以降、海外の流行地域で感染し、発症した症例(輸入症例)が報告されていますが、日本国内で感染した症例はありません2)

臨床症状

潜伏期間は2~12日(多くは2~7日)2)で、不顕性感染率は約80%とされています1,3)。症状は主として軽度の発熱、斑丘疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、疲労感、倦怠感、頭痛などを呈します2)。これらの症状は軽く、2~7日続いて治まり、予後は比較的良好な感染症です2)。血小板減少などが認められることもありますが、他の蚊媒介感染症であるデング熱やチクングニア熱より軽症と言われています1,2)
しかし、ポリネシア連邦の流行では、ギラン・バレー症候群や神経症状を認める症例が報告され4,5)、ブラジルでは妊婦がジカウイルスに感染することで胎児が感染し、小頭症児が多発しているとの報告もあります6)。これまでの研究結果から、世界保健機関(WHO)や米国疾病管理予防センター(CDC)はジカウイルス感染が小頭症やギラン・バレー症候群の原因になるとしています7,8)

感染経路

感染経路は蚊媒介性感染で、ジカウイルスを持った蚊がヒトを吸血することで感染します2)。基本的には感染したヒトから他のヒトに直接感染することはありませんが、母子感染や輸血、性行為によって感染する場合もあります2)

治療方法

ジカウイルス感染症に特効薬はなく、特別な治療方法はありません1,2)。対症療法となります2)。通常は比較的症状が軽くて特別な治療を必要とせず2)、痛みや発熱に対して解熱鎮痛剤を投与する程度にとどまることがほとんどです1)。脱水症状が強い場合は、輸液も実施します1)

感染対策

現在のところジカウイルス感染症に有効なワクチンはないため、蚊に刺されない工夫が重要です1)。具体的には、長袖服・長ズボンの着用、虫よけ剤(ディート : DEETを含むものが効果が高い)の使用などです1)。海外の流行地域へ出かける際は、長袖服・長ズボンを着用するなどできるだけ肌を露出せず、虫よけ剤を使用するなど、蚊に刺されないように注意します9)。また、妊娠中にジカウイルスに感染すると胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがあるため9)、妊婦あるいは妊娠の可能性のある女性はジカウイルス感染症流行地への渡航を避けることが望ましいです1,2,9)。WHOは、妊婦は流行地域への渡航をすべきではないと勧告しています10)。流行地域からの帰国者に対しては、症状の有無にかかわらず、虫よけ剤の使用など蚊に刺されないための対策を少なくとも2週間程度は特に注意を払って行うことが推奨されています9)。また、性行為により感染した事例が報告されており1,12)、症状の有無にかかわらず、流行地域に滞在中は性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること、流行地域からの帰国者に対しては少なくとも6か月、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えることが推奨されています2,9)。また、媒介する蚊の発生を抑えることも重要です。蚊の繁殖地の除去として、バケツや植木鉢など周辺のたまり水を除去したり、不要なものを撤去したり、週1回は清掃や水の交換などを行ったりします13)。成虫対策としては、下草を刈ったり、網戸や防虫網を設置したりするなどします13)。医療機関では、針刺し事故など患者の血液に曝露することで感染する可能性があるため充分注意します14)。患者が出血を伴う場合、ガウンや手袋、眼の汚染リスクがある場合にはゴーグルやフェイスシールドなどのPPEを装着します14)。患者の血液で環境が汚染された場合には、水拭き後、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで消毒します14)。患者の個室隔離は不要です14)

参考文献

1)国立感染症研究所感染症疫学センター. ジカウイルス感染症とは.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/6224-zika-fever-info.html
2020年5月13日現在
2)厚生労働省. ジカウイルス感染症に関するQ&Aについて. 2016年12月14日更新.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109899.html
3)Duffy MR, et al. Zika virus outbreak on Yap Island, Federated States of Micronesia. N Engl J Med. 2009 ; 360(24) : 2536-2543.
4)Oehler E,et al. Zika virus infection complicated by Guillain-Ba rresyndrome--case report, French Polynesia, December 2013. Euro Surveill. 2014 ; 19(9). pii : 20720.
5)Cao-Lormeau VM, et al. Guillain-Barré Syndrome outbreak associated with Zika virus nfection in French Polynesia : a case-control study.Lancet. 2016 ; 387(10027) : 1531-1539.
6)CDC. Increase in Reported Prevalence of Microcephaly in Infants Born to Women Living in Areas with Confirmed Zika Virus Transmission During the First Trimester of Pregnancy ̶ Brazil, 2015 MMWR. 2016 ; 65(9) : 242‒247.
7)CDC. CDC Concludes Zika Causes Microcephaly and Other Birth Defects. 13 April 2016
https://www.cdc.gov/media/releases/2016/s0413-zika-microcephaly.html
8)WHO. Zika virus Fact sheet.
https://www.who.int/en/news-room/fact-sheets/detail/zika-virus 
2020年5月13日現在
9)厚生労働省. ジカウイルス感染症について.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000109881.html
2020年5月13日現在
10)WHO. Information for travellers visiting countries with Zika virus transmission. Updated July 2019
https://www.who.int/csr/disease/zika/information-for-travelers/en/
11)D'Ortenzio E, et al. Evidence of Sexual Transmission of Zika Virus. N Engl J Med. 2016 ; 374(22) : 2195-2198.
12)Davidson A, et al. Suspected Female-to-Male Sexual Transmission of Zika Virus - New York City, 2016. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2016 ; 65(28) : 716-7.
13)東京都福祉保健局. 施設管理者向け蚊の発生防止対策 ~蚊媒介感染症防止のために~ 令和元年6月発行.
14)国立感染症研究所. 蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第5版). 2019年2月7日第5版作成.

作成日:2020年5月13日

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