水痘
目次
水痘とは
水痘は、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoter virus;VZV)によって起こる急性の伝染性疾患で、1)一般には「みずぼうそう」として知られています2,3)。9歳以下の小児によく見られる疾患で1,3,5,7)、年間を通じて患者の発生がみられますが、季節的には毎年12~7月に多く、8~11月には減少します1,4)。
初感染からの回復後は終生免疫(一度の感染で生涯、その感染症にはかからない)を得ますが1,2,8)、ウイルスは神経節に潜伏し、加齢や疲労などの要因で免疫力が低下した際に再活性化することで、帯状疱疹を引き起こします5,7,10)。
水痘は日本を含む世界中で発生しており、WHOは世界で最低でも1億4,000万人が罹患し、4,200人が亡くなっていると試算しています6)。日本においては2014年10月1日から水痘ワクチンの定期接種が導入され3,6,7)、同年の定点あたり報告数が50.1(人/年)から、2020年には10.1(人/年)と、ワクチン導入年の20%程度まで減少しました7)。
水痘は感染症法の5類感染症(定点把握疾患)に指定されており、指定届出機関(全国約3,000か所の小児科定点医療機関)は週毎に保健所に届け出なければなりません1,6)。
感染経路
水痘はヒト-ヒト感染します1)。感染経路は、患者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる感染(飛沫感染・空気感染)、あるいは、水疱や粘膜の排出物に接触することによる感染(接触感染)があります2-4,6)。発疹が出現する1~2日前からすべての水疱(水ぶくれ)が痂皮(かさぶた)化するまで感染性があります2,6)。
臨床症状
潜伏期間は2週間程度(10~21日)ですが1,2,6,9)、免疫不全患者ではより長くなることがあります1)。初発症状としては小児においては発熱と同時に掻痒を伴う発疹が出現しますが6)、成人では発疹の出現前に1~2日間の38℃前後の発熱と全身倦怠感を伴うことがあります1,6)。
発疹は頭皮と顔から始まり、徐々に体幹と四肢に出現し1,4-6)、鼻咽頭、気道、膣などの粘膜にも出現することがあります1)。発疹は紅斑(皮膚の表面が赤くなる)から始まり、丘疹(盛り上がった赤い発疹)、水疱、膿疱(粘度のある液体が含まれる水疱)を経て痂皮化して治癒します1-3,6)。新しい発疹が次々と出現するため、それぞれの段階の発疹が混在することが特徴で1,2)、すべての発疹が痂皮化するまでに6日程度かかります2)。
正常な免疫を有する小児では、多くの場合軽症ですが4,9)、免疫不全状態の小児が罹患した場合は、熱性痙攣、肺炎、気管支炎等の合併症により重症化3)や死亡することもあります4)。
成人は小児と比べて重症化しやすく6)、肺炎や髄膜炎、脳炎、小脳失調症、血小板減少などの合併症の頻度も高いとされています2,6)。免疫不全患者においては、病初期に特徴的な皮疹が出現せず、気付かないうちに多臓器不全、凝固障害などの合併症が進行し、死亡に至ることもあります11)。
治療方法
基礎疾患のない小児においては自然軽快が見込めるため抗ウイルス薬を使用する必要はありません6)。成人においては抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルなど)が使用されます2)。
感染対策
水痘の拡大防止には空気・飛沫・接触感染予防策が必要です6,8)。
また、ワクチン接種が有効とされており、2014年10月1日から水痘ワクチンが定期接種となりました3,6,7)。水痘ワクチン1回の接種により重症の水痘をほぼ100%予防でき、2回の接種により軽症の水痘も含めて発症を予防できると考えられています3)。
水痘の免疫がないまま水痘患者に接触した場合でも、3日以内に水痘ワクチンを接種すれば80~90%発症を予防することができ、発症した場合でも症状の軽減化が期待できるとされています2,6,9)。免疫不全患者に対しては、重症水痘の発症予防を目的として①曝露後96時間以内に免疫グロブリンの静脈内注射、②曝露後7~10日目から抗ウイルス薬の7日間内服が考慮されます6)。
なお、水痘帯状疱疹ウイルスはエンベロープを有しており、消毒薬に対する抵抗性は低く、アルコールや次亜塩素酸ナトリウムによる不活化が期待できます12)。
予防接種法に基づく定期予防接種スケジュール3)
水痘ワクチンの定期接種は、生後12~36か月(1歳の誕生日の前日~3歳の誕生日の前日)の間に2回の接種を行うこととしています。
1回目の接種は標準的には生後12~15か月の間に行います。
2回目の接種は1回目の接種から3か月以上経過後、標準的には1回目接種後6~12か月経過した時期に行うこととなっています。
帯状疱疹
帯状疱疹では、皮膚に分布している神経に沿って水疱が帯状に出現します。通常2~4週間で皮膚症状が正常に戻りますが、治った後も長い間痛みが残る帯状疱疹後神経痛(PHN)になる可能性があります8)。感染経路は主に接触感染、気道や口腔内にまで水疱がある場合には空気・飛沫感染し、水痘に罹患したことがない人に水痘を感染させる可能性があります10)。帯状疱疹の発症予防、重症化予防にはワクチンが有効とされており、50歳以上の接種が勧められています10)。
参考文献
1) 国立感染症研究所感染症疫学センター.水痘とは.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html. 2024年1月22日現在2) 東京都感染症情報センター. 水痘.
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/chickenpox/.2024年1月22日現在3) 厚生労働省. 水痘Q&A.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/varicella/index.html.2024年1月22日現在4) 厚生労働省. 感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について. 水痘.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-19.html. 2024年1月22日現在5) WHO. Varicella.
https://www.who.int/teams/health-product-policy-and-standards/standards-and-specifications/vaccine-standardization/varicella.2024年1月22日現在6) 日本感染症学会. 水痘.
https://www.kansensho.or.jp/ref/d31.html. 2024年1月22日現在7) 国立感染症研究所. 水痘ワクチン定期接種化後の水痘発生動向の変化~感染症発生動向調査より・2021年第26週時点~.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/varicella-m/varicella-idwrs/10892-varicella-20220113.html. 2024年1月22日現在8) CDC. Chickenpox (Varicella).
https://www.cdc.gov/chickenpox/about/index.html. 2024年1月22日現在9) 厚生労働省検疫所. 水痘.
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/name59.html.2024年1月22日現在10)東京都保健医療局. 帯状疱疹と帯状疱疹ワクチンについて.
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansen/taijouhoushin.html.2024年1月22日現在11)国立感染症研究所. 免疫不全宿主の重症水痘―原因不明の激しい腹痛・腰背部痛には要注意.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2256-related-articles/relatedarticles-404/4008-dj4042.html. 2024年1月22日現在12)山口県感染症情報センター.
https://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/page5-7/page5-7-10.html. 2024年1月22日現在
作成日:2024年4月19日

