麻疹
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麻疹(はしか)とは
麻疹(はしか)は麻疹ウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)によって引き起こされる感染症で、空気感染、飛沫感染、接触感染と様々な感染経路を通じて人に感染します1)。また、麻疹ウイルスは感染力がきわめて強く、麻疹の免疫がない集団で1人が発症すると、12~18人に感染が広がるとされています(インフルエンザでは1~2人)2)。
ヒトの体内に入った麻疹ウイルスは、免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、一過性に強い免疫機能抑制状態をもたらすため、麻疹ウイルスそのものによるものだけでなく、合併した別の細菌やウイルス等による感染症が重症化する可能性もあります1)。
日本は、2015年3月27日に世界保健機関西太平洋地域事務局より、麻疹が排除状態にあることが認定が認定されています。しかし、2023年以降、国外における麻疹流行に伴い、国内でも海外で感染した人が持ち込む輸入症例が増加している一方で、海外渡航歴のない麻疹症例も報告されています3,4)。
臨床症状
典型的な臨床経過としては、感染後、10~12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2~4日間)、発疹期(3~5日間)、回復期へと至ります1)。
<カタル期(前駆期)>
38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感があり、小児では不機嫌となり、上気道炎症状(咳やくしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血など)が現れ、次第に増強します。発疹出現前のカタル期に、最も感染力が強くなります2)。
<発疹期>
タル期での発熱が1℃程度下降した後、半日くらいのうちに再び高熱(多くは39℃以上)が出るとともに、特有の発疹が耳後部、頚部、前額部より出現し、翌日には顔面、体幹部、上腕におよび、2日後には四肢末端にまでおよびます1)。発疹ははじめ鮮紅色扁平ですが、まもなく皮膚面より隆起し、融合して不整形斑状(斑丘疹)となります。指圧によって退色し、一部には健常皮膚面を残します。発疹は次いで暗赤色となり、出現順序に従って退色していきます。発疹期にはカタル症状は一層強くなり、特有の麻疹様顔貌を呈します。
<回復期>
発疹出現後3~4日間続いた発熱も回復期に入ると解熱し、全身状態、活力が改善します。発疹は退色し色素沈着がしばらく残り、僅かな粃糠様落屑があります。カタル症状も次第に軽快します。
なお、麻疹では、感染者の30%に肺炎や中耳炎などの合併症がしばしばみられ、1,000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています3)。感染者は、先進国であっても1,000人に1人が死に至ります3)。
感染経路2)
麻疹ウイルスを含む飛沫核を吸い込むことで伝播する空気感染のほか、飛沫感染や接触感染など様々な経路があります。麻疹において、不顕性感染(感染はしても発症しない/症状がでない)はほとんどなく、感染した90%以上の人が発症します。発症した人は、症状が出現する1日前(発疹出現の4日前)から発疹出現後4日目くらいまでの間、周囲に感染させる可能性があります。
治療方法1)
麻疹は、発症すると特異的な治療法はなく対症療法が中心となります。そのため、予防として、麻疹含有ワクチンを接種し、麻疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことが大切です。また、麻疹患者に接触した場合、72時間以内に麻疹含有ワクチンの接種を受けることで発症を予防できる可能性があります。
感染対策
麻疹は、空気感染するため、手洗いやマスク着用のみでは予防ができません1,3)。
唯一の予防方法は麻疹含有ワクチンの接種であり、1歳以上で2回受けることにより、麻疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことが大切です5)。1回のみワクチン接種をした人のうち、5%未満は、免疫を獲得できていないことや、重ねて接種することで免疫を強固なものにすることができるため、2回接種が求められています3,5)。
医療機関では、すべてのスタッフの麻疹罹患歴と麻疹含有ワクチン接種歴を母子健康手帳などの記録に基づいて確実に把握しておく必要があります6)。ワクチン未接種の者及び1回しか接種していない者に対しては、麻疹の予防接種を受けるよう働きかけます7)。
麻疹患者発生時には、標準予防策に加えて、空気予防策を徹底します8)。空気予防策は、発疹が発症してから4日後まで行います9)。免疫不全患者の場合には、ウイルス排出期間が長引くため、回復まで空気予防策を続けます。
麻疹感染が発覚した場合(疑いがある場合を含む)、患者をただちに、空気感染隔離室(AIIR)に個室隔離します。AIIRが用意できない場合、AIIRへの隔離が可能な施設に患者を移送することを検討します。
患者移送は必要不可欠な場合に限り、移送の際には患者にサージカルマスクを着用させ、なるべく人と接触しない導線で移送します9)。
なお、麻疹患者の対応にあたるスタッフは、麻疹抗体価検査によりすでに抗体陽性が確認されているか、麻疹に罹患したことがあることが確実な人、麻疹含有ワクチン接種歴が2回記録で確認されている人に限定します6,10)。やむを得ず、麻疹ウイルスに対する抗体陽性や麻疹含有ワクチン接種記録が確認されていないスタッフが患者対応する場合は、本人の防護のためにN95マスクを着用します。麻疹に免疫があるスタッフにおいても、他の疾患に感染する可能性もあるためサージカルマスクの着用が推奨されています6)。
麻疹ウイルスは、エンベロープをもつウイルスで消毒薬に対する抵抗性は低く、80℃10分の熱水や次亜塩素酸ナトリウム、アルコールなどの中水準消毒薬による消毒が有効です11)。
参考文献
1)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 麻しん(詳細版). 2024 年8月23日改訂.https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/measles/detail/index.html. 2026年7月7日現在.
2)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 麻しんQ&A〔麻しん(ましん、はしか)について〕. 2026年4月30日更新.https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/faq/overview/index.html. 2026年7月7日現在.
3)厚生労働省. 麻しん(はしか).https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html. 2026年7月7日現在.
4)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 麻しんQ&A(麻しんのサーベイランスシステムと今年の流行について). 2026年4月30日更新.https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/faq/features/index.html. 2026年7月7日現在.
5)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 麻しんQ&A(麻しんワクチンについて). 2026年4月30日更新.https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/faq/vaccine/index.html. 2026年7月7日現在.
6)国立感染症研究所 感染症疫学センター. 医療機関での麻疹対応ガイドライン第七版. 平成30年5月.https://id-info.jihs.go.jp/manuals/guidelines/measles/medical_201805.pdf.2026年7月7日現在.
7)厚生労働省. 麻しんに関する特定感染症予防指針. 令和8年3月27日一部改正・令和8年4月1日適用.https://www.mhlw.go.jp/content/000503060.pdf. 2026年7月7日現在.
8)CDC. 2007 Guideline for Isolation Precautions: PreventingTransmission of InfectiousAgents in Healthcare Settings. 2024年9月最終更新.https://www.cdc.gov/infection-control/media/pdfs/Guideline-Isolation-H.pdf.2026年7月7日現在.
9)CDC. Interim Infection Prevention and Control Recommendations for Measles in Healthcare Settings. 2019年7月更新.https://www.cdc.gov/infection-control/media/pdfs/Guideline-Measles-Interim-IC-Recs-H.pdf.2026年7月7日現在.
10)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト. 麻しんQ&A(医療機関での麻しんの対応について). 2026年4月30日更新.https://id-info.jihs.go.jp/relevant-information/measles/faq/medical-institution/index.html. 2026年7月7日現在.
11)大久保憲, 尾家重治, 金光敬二 編集. 2025年版 消毒と滅菌のガイドライン.へるす出版. 2025.
作成日:2020年2月6日
改訂日:2026年7月7日

