感染症info

疥癬

疥癬とは

疥癬とはヒゼンダニ(疥癬虫、Sarcoptes scabiei var,hominis)が皮膚の最外層である角質層に寄生することによって起こる感染症で、ヒゼンダニの虫体や糞、脱皮殻などに対するアレルギー反応による皮膚病変と瘙痒を主症状とします1-4)。ヒゼンダニはヒトからヒトへ感染1-4)、医療機関や福祉施設などでの集団感染事例が報告されています2,4)。疥癬は症状やヒゼンダニの寄生数などから通常疥癬角化型疥癬の2つに大別されます1-4)(表)。

表 病型分類2-4)

通常疥癬

寄生数

寄生数

数十匹(1,000匹以下)

100万~200万匹

患者の免疫力

正常

低下

感染力

弱い

強い

主な症状

赤いブツブツ(丘疹・結節)
疥癬トンネル

厚い垢が増えた状態
(角質増殖)

瘙痒の強さ

強い

不定

症状が出る部位

全身(顔や頭は除く)

全身

ヒゼンダニとは?

ヒゼンダニは雌成虫で約0.4mm、雄は雌の約60%の大きさで、肉眼ではほとんど見えません1,2)。雌は角質層内にトンネルを掘り進みながら、1日2~4個ずつ産卵し、卵は3~5日で孵化します1-3)。ヒゼンダニは乾燥に弱く、ヒトの体温より低い温度では動きが鈍く、16℃以下でほとんど動かなくなり、ヒトの皮膚から離れると数時間で死滅します1-4)

感染経路

感染者の角質層に寄生するヒゼンダニが、被感染者の皮膚に移ることによって感染しますが、通常疥癬と角化型疥癬では感染力や感染拡大様式は異なります。
潜伏期間でのヒト-ヒト感染の報告はなく、またこの期間はヒゼンダニの数は少ないため、他人に感染させる可能性は低いとされています1)

▶ 通常疥癬

通常疥癬は感染力が弱いため、感染経路は長時間の直接的な接触(同衾や患者が使用した寝具を利用する、長時間手をつなぐ等)に限られ、短時間の接触による感染はほとんどありません1-4)。潜伏期間は1~2か月(高齢者では数か月の場合あり)です。

▶ 角化型疥癬

角化型疥癬は感染力が強いため、短時間の接触や衣類・寝具などを介した間接的な接触、例えば落屑(剥がれた角質層で、多数のヒゼンダニが含まれる)の飛散・付着でも感染し、集団感染を引き起こす可能性があります1-4)。角化型疥癬では、一度に多数のヒゼンダニが被感染者に移るため、潜伏期間は4~5日に短縮することがあります。

臨床症状

▶ 通常疥癬

主な症状は皮疹で3種類に大別されます1,3)

①疥癬トンネル
疥癬に特有な皮疹で、手首や手のひら、指の間、指の側面などに好発します。疥癬トンネルは雌のヒゼンダニが角質層内を産卵しながら掘り進んでいる道筋で、長さ5mm程度の白っぽい線状の皮疹です。

②紅斑性丘疹
お腹や胸、わきの下、太ももの内側などに散発し、瘙痒を伴います。瘙痒は夜間が特に強く、不眠となることもあります。

③小豆大・赤褐色のしこり(結節)
頻度は低いですが、主に男性の外陰部に生じ、瘙痒が非常に強いです。
通常疥癬は、湿疹やアトピー性皮膚炎、皮膚そう痒症、虫刺されに似ています。また、高齢者は皮膚が乾燥しやすいため、老人性乾皮症や皮脂欠乏性湿疹などに似ている場合があります3)

図 通常疥癬で皮疹が出やすい部位

▶ 角化型疥癬

免疫力の低下(全身衰弱、重篤な基礎疾患、ステロイド薬や免疫抑制剤の投与、高齢など)に伴い発症し1)、症状は灰色~黄白色でざらざらと厚く、蛎殻(かきがら)のように重積した角質増殖が、手や足、おしり、肘、膝などの摩擦を受けやすい部位や、頭や首、耳など通常疥癬では症状が出ない部位を含む全身に現れます1,3)。爪にも角質増殖(爪疥癬)を伴うことがあり、爪白癬と似た症状を呈することがあります。瘙痒は人によって異なり、瘙痒がない場合もあります。角化型疥癬は、他の原因による紅皮症や悪性リンパ腫、乾癬の皮膚症状と似ています3)

治療方法

ヒゼンダニを殺すことを目的とした内服薬や外用薬を使用します。内服薬のイベルメクチンは保険適用で、外用薬ではフェノトリン、イオウ剤が保険適用、クロタミンは保険適用外ですが、保険審査上は認められています1-3)。安息香酸ベンジルは有効性及び安全性について検討されていないため、患者へのインフォームドコンセントが必要です。イベルメクチンやフェノトリンを含むほとんどの抗疥癬薬は殺卵作用がないため、卵が孵化する頃合いをみて薬剤の再投与を行います1)。また瘙痒に対しては、抗ヒスタミン薬を内服します1-3)

感染対策

手指衛生は石けんと流水による手洗いで物理的にヒゼンダニを除去します1,5)(アルコール手指消毒剤の有効性は証明されていません5))。
通常疥癬は標準予防策を遵守し、角化型疥癬は感染力が強いため、標準予防策に加えて接触予防策を実施します4)

参考

1) 日本皮膚科学会. 疥癬診療ガイドライン(第3版). 日本皮膚科学会雑誌.125(11). 2015.
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/kaisenguideline.pdf. 2024年5月31日現在.

2) 国立感染症研究所. 疥癬とは. 2015年2月12日改訂.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/380-itch-intro.html. 2024年5月31日現在.

3) 日本皮膚科学会. 皮膚科Q&A 疥癬.
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa6/index.html. 2024年5月31日現在.

4) 日本環境感染学会. 疥癬.
http://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/3-3_38.pdf. 2024年5月31日現在.

5) Bellissimo-Rodrigues F, et al. Alcohol-based hand rub and nosoc omial scabies. Infect Control Hosp Epidemiol 2008; 29(8): 782-783.

作成日:2024年8月1日

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