風疹
目次
風疹とは
風疹は風疹ウイルス(Rubella Virus)に感染することによって発熱、発疹、リンパ節腫脹などの症状を引き起こす急性の発疹性感染症で、通常春先から初夏にかけて流行します1,2)。
風疹ウイルスはトガウイルス科ルビウイルス属に属する直径60~70nmの1本鎖RNAウイルスで、エンベロープを有します1)。自然界ではヒトのみで流行が見られます3)。
風疹の症状は不顕性感染から、脳炎などの重篤な合併症併発まで幅広く、臨床症状のみで診断するのは困難です1)。風疹に感受性のある妊娠20週頃までの妊婦が罹患すると、胎児が先天性心疾患や難聴、白内障などを引き起こす先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)を発症する可能性があります1,2)。
風疹および先天性風疹症候群は、感染症法の5類感染症に分類され、医師は風疹と診断した場合は直ちに、先天性風疹症候群と診断した場合は7日以内に、最寄りの保健所へ届け出る必要があります1)。
学校保健安全法では第2種の学校感染症に定められており、発疹が消失するまで出席停止とされています。ただし、病状によって、感染の恐れがないと医師が判断した場合、この限りではありません1)。
臨床症状
風疹ウイルスに感染すると、2~3週間(平均16~18日)の潜伏期間の後、主な症状として発疹、発熱、リンパ節の腫れが現れます1)。風疹の症状は、小児では比較的軽度である一方で、脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症により、入院が必要になる場合もあります2)。成人が発症した場合は、高熱や発疹が長期間に及ぶ・関節痛を認める、など重症化しやすいため軽視できない疾患です2)。ただし、風疹ウイルスに感染しても明らかな症状がない不顕性感染が15~30%程度みられます1)。
先天性風疹症候群は妊娠初期の女性が風疹に罹患することにより、風疹ウイルスが胎児に感染し、出生児に先天性心疾患、難聴、白内障などの先天異常を含む様々な症状を呈する症候群です1)。風疹が流行する年度と先天性風疹症候群発生の多い年度は一致しています4)。母親が顕性感染した妊娠月別の先天性風疹症候群発生頻度は、妊娠1ヶ月で50%以上、2ヶ月で35%、3ヶ月で18%、4ヶ月で8%程度と、妊娠初期の発生頻度が高くなっています。母親が無症状(不顕性感染)であっても胎児への感染は起こり得ます。先天性心疾患および白内障は妊娠初期3ヶ月以内の母親が感染することで発症します。難聴は妊娠6ヶ月までの感染でも出現し、その多くは高度難聴となります。
感染経路
風疹罹患者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる飛沫感染が主な感染経路ですが、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることよる接触感染も起こります5)。
風疹ウイルスの排泄期間は発疹出現の前後1週間とされていますが、解熱すると排泄されるウイルス量は激減し、急速に感染力が消失します1)。
先天性風疹症候群は、妊婦がウイルス感染し、胎盤を通じて胎児に感染する、経胎盤感染によって起こります。
治療方法
先天性風疹症候群を含め、風疹には特異的な治療法はなく、症状を和らげる対症療法のみになります。そのため、予防として男女ともワクチンを接種し、風疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことが重要です。
感染対策
先天性風疹症候群リスク回避のためにも、ワクチン接種によって風疹に対する免疫をあらかじめ獲得し予防することが大切です1)。ワクチン接種による免疫獲得率は、1回接種で約95%、2回接種で約99%と考えられています2)。日本国内のワクチン接種状況は世代によってばらつきがあるため、厚生労働省は、特に抗体保有率が低い、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日の間に生まれた男性に対し、抗体検査の受診及び無料の定期接種を実施するなど、対策を講じています6)。厚生労働省は対象世代男性の抗体保有率を、2020年7月までに85%、2021年度末までに90%へ引き上げることを目標としています。また、医療機関の職員・実習生は風疹罹患歴やワクチン接種歴を確認・保管しておくことが大切です7)。罹患歴がなく、推奨される2回接種を記録で確認できない者や、罹患歴はあるが抗体を保有していない者(罹患は記憶違いの可能性)には、ワクチンの接種が推奨されています。なお、院内で風疹患者の対応にあたる職員・実習生は、風疹含有ワクチン2回接種が記録として確認されている者に限定されます。感染対策としては、標準予防策に加え、飛沫予防策と接触予防策を実施します。飛沫予防策としては、マスクを着用することや、咳・くしゃみの際にティッシュで鼻と口を覆い、そのティッシュはすぐに捨てることなど、咳エチケットが有効です8)。医療施設内で咳エチケットに関するポスターを掲示するなどして、患者やスタッフの意識を高め、日頃から咳エチケットを実践することが重要です。また、接触感染予防のために、手洗いやアルコール手指消毒剤の使用を励行します。
風疹ウイルスはエンベロープを持つため、消毒薬感受性は比較的高いといわれています9)。80 ℃、10分間の熱水消毒や、グルタラール・過酢酸などの高水準消毒薬、消毒用エタノールや次亜塩素酸ナトリウムなどの中水準消毒薬が有効です。
参考
1) 国立感染症研究所感染症疫学センター. 風疹とは. 2013年5月7日改訂.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html2) 国立感染症研究所感染症疫学センター. 風疹Q&A. 2018年1月30日改訂.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubellaqa.html3) 吉田眞一, 柳雄介, 吉開泰信 編集. 戸田新細菌学 改訂34版. 南山堂.2013.
4) 国立感染症研究所感染症疫学センター. 先天性風疹症候群とは. 2013年5月改訂.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html5) 東京都感染症情報センター. 風疹. 2019年4月5日更新.
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/rubella/6) 厚生労働省. 風しんの追加的対策について.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index_00001.html7) 国立感染症研究所感染症疫学センター.医療機関における風しん対策ガイドライン. 平成 26年4月3日.
https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/rubella/kannrenn/iryoukikann-taisaku.pdf8) 矢野邦夫, 向野賢治 和訳・編集. 医療現場における隔離予防策のためのCDCガイドライン. MCメディカ出版. 2007.
9) 小林寛伊 編集. 消毒と滅菌のガイドライン 新版増補版. へるす出版. 1999.
10) 国立感染症研究所感染症疫学センター. IASR. 風疹・先天性風疹症候群.2019年5月現在.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubella-m-111/rubella-top/702-idsc/iasr-topic/9034-474t.html
作成日:2019年12月26日

