感染症info

デング熱

デング熱とは

デング熱とは蚊によって媒介される、デングウイルスによる急性の熱性感染症で、発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹などが主な症状です1,2)。患者が多くみられるのは熱帯・亜熱帯地域ですが、アフリカ・オーストラリア・中国・台湾においても発生しています1-4)。全世界では年間約1億人がデング熱を発症すると推定されています1,4,5)。日本においては、海外渡航で感染し国内で発症する例(輸入症例)が増加しつつあり、2014年の夏季には輸入症例により持ち込まれたと考えられるウイルスにより国内流行が発生しました1)。この年に感染症法に基づく発生動向調査へ報告されたデング熱症例は計341例で、うち国内感染例162例、国外感染例179例でした5)。国内感染例の大部分は都立代々木公園周辺への訪問歴があり、同公園周辺の蚊に刺咬されたことが原因と推定されています。
デングウイルスは、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスです1,2,5,6)。デングウイルスを媒介する蚊は、日本のほとんどの地域(本州以南)でみられるヒトスジシマカと、日本には常在していないネッタイシマカです1-5,7)。デングウイルスは4つの血清型(1、2、3、4型)に分類されます1,2,5,7)。ある血清型に感染したヒトでは、その型に対する終生免疫は得られますが、他の血清型に対する交叉防御免疫は数ヶ月で消失します1,7 )。そのため、1度デングウイルスに感染したヒトであっても、他の型のデングウイルスが体内に入った場合には、再度デングウイルスに感染し発症します。デングウイルスは、2回目の感染で重症化することが多いとされています1,3,4,7)
デング熱は4類感染症に指定されており、医師が患者を診断した場合は、最寄りの保健所に直ちに届出が必要です1-3,5)

臨床症状

デングウイルスに感染した場合でも、約50 ~80%は不顕性感染であるとされています1,6)。症状を示す患者の大多数は「デング熱」と呼ばれる一過性熱性疾患の症状を呈します1)。2~14日(多くは3~7日)の潜伏期間の後、突然の発熱で始まり、頭痛、眼窩(か)痛、顔面紅潮、結膜充血、全身の筋肉痛、関節痛、全身倦怠感などの症状を呈します1-7)。発症から3~4日後(多くは解熱時期)、胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面に広がります1-3)。症状は1週間程度で回復します1,2,4-7)。関節などの痛みが激しいため、英語ではBreak bonefeverとも呼ばれています3)。しかし、ごく一部の患者において、解熱する時期に重度な出血傾向、血漿漏出傾向、臓器不全傾向を示す場合があり1,2)、こうしたケースは「重症型デング」と呼ばれています5 )。このうち、顕著な血小板減少及び血管透過性亢進(血漿漏出)を伴うものを「デング出血熱」と呼び、特にショック症状を伴うものを「デングショック症候群」と呼びます。重症型デングを放置すれば致命率(致死率)は10~20%に達しますが、適切な治療を行うことで致命率を1%未満に減少させることが可能です。

感染経路2-4)

ウイルスに感染した患者を蚊が吸血すると、蚊の体内でウイルスが増殖し、その蚊が他者を吸血することでウイルスが感染します(蚊媒介性)。ヒトからヒトへ直接感染することはありません。

治療方法2)

デング熱に特異的な治療方法はなく、対症療法が基本となります。痛みや発熱に対しアスピリンを投与することは、出血傾向増悪やライ症候群発症の可能性があるため禁忌となります。血漿漏出などの症状が出現した場合は、血漿漏出による循環血液量の減少を輸液により補うことが治療の中心になります。また、ヒトからヒトへの直接的な感染はありませんが、蚊を介してヒトからヒトへ感染するため、発熱中の患者が蚊に刺されることがないように指導しましょう。

感染対策

ヒトスジシマカやネッタイシマカは日中に活動し、ヤブや木陰などでよく刺されます。その時間帯に屋外で活動する場合は、蚊に刺されない工夫が必要です。具体的には、長袖・長ズボンの着用や、昆虫忌避剤の使用などです1,2,4)。また、ヒトスジシマカの発生を抑えることも重要です。ヒトスジシマカは水中に産卵しますが、沼や池のような広い場所よりも、狭い水たまりのような場所を好みます4)。そのため、屋外に置かれた植木鉢の受け皿や空き缶、ペットボトルなどに溜まった水に産卵します2,4)。野積みされた古タイヤに溜まった水などにも好んで産卵し、孵化した幼虫はそこで成長します。このような生態から、不要な水たまりをなくすことが、ヒトスジシマカの発生を抑え、デング熱の発生を防ぐことにつながります4)。また、針刺し事故などにより患者の血液に曝露することで感染する可能性があるため充分に注意します5)。患者が出血を伴う場合には不透過性のガウン及び手袋を着用し、体液や血液による眼の汚染のリスクがある場合にはゴーグルやフェイスシールドなどで眼を保護します。デングウイルスはエンベロープを持つため、消毒薬抵抗性は低く、80℃10分の熱水消毒や過酢酸・フタラール・グルタラールなどの高水準消毒薬、次亜塩素酸ナトリウムやアルコールなどの中水準消毒薬が有効です6)

参考文献

1)国立感染症研究所ウイルス第一部. デング熱とは. 2014年10月14日改訂.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/238-dengue-info.html. 2020年3月31日現在.
2)厚生労働省. デング熱に関するQ&A. 第3版 平成26年9月8日作成.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever_qa.html.  2020年3月31日現在.
3)厚生労働省検疫所(FORTH). デング熱. 2016年8月更新.
https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name33.html.2020年3月31日現在.
4)政府広報オンライン. 「デング熱」にご注意を!. 2016年11月16日更新.
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201509/1.html#anc03.  2020年3月31日現在.
5)国立感染症研究所. 蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第5版). 2019年2月7日作成.
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/dengue/Mosquito_Mediated_190207-5.pdf.  2020年3月31日現在.
6)大久保 憲, 尾家重治, 金光敬二 編集. 2020年版 消毒と滅菌のガイドライン. へるす出版. 2020.
7)吉田眞一, 柳雄介, 吉開泰信 編集. 戸田新細菌学 改訂34版. 南山堂.2015.

作成日:2020年3月31日

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