感染症info

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、A群溶血性レンサ球菌によって引き起こされる上気道感染症です1)。学童期の小児に最も多く発症しますが、いずれの年齢でも起こり得る疾患です2)。患者報告数は冬季と、春から初夏にかけて2回のピークが認められます2)
本疾患の原因菌であるA 群溶血性レンサ球菌は、グラム陽性球菌です。細胞壁の多糖体の抗原性による群抗原(Lancefield抗原)のA群に属し、ヒツジ赤血球加血液寒天培地上でβ溶血(完全溶血)を起こすため、A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)と呼ばれています2,3)。菌種名は、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)です。A群溶血性レンサ球菌のほとんどは、細胞表層に蛋白抗原としてM蛋白およびT蛋白を有し、それらによって型別されます2)。M蛋白は100以上、T蛋白は約50の型が知られています。A群溶血性レンサ球菌は、溶血毒素、発赤毒素、核酸分解酵素、ストレプトキナーゼなどの活性蛋白物質を産生し、種々の症状を引き起こすと考えられています2)
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、感染症法において、定点把握対象となる5類感染症で、全国約3,000ヶ所の小児科定点医療機関は、週単位での届け出が必要となります4,5)

臨床症状

潜伏期間は2~5日で、潜伏期間の感染性については不明とされています2)。突然の発熱と咽頭発赤、苺舌などの症状が現れます1,2)。乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎が現れ、菌が産生する発赤毒素に免疫のない人は、猩紅熱といわれる全身症状を呈します4,6)
猩紅熱は、発熱12~24時間後に点状紅斑様、日焼け様の皮疹が出現します2)。針頭大の皮疹により皮膚に紙やすり様の手触り(sandpaperrash)を与えることがあり、腋窩や鼠径部など皮膚のしわの部分に多発します。額と頬は紅潮し、口の周りのみ蒼白にみえる口囲蒼白が見られます2)。また、発症初期には白苔に覆われた舌(white strawberry tongue)がみられ、白苔の剥離後に苺舌(red strawberry tongue)になります。1週目の終わり頃から顔面より皮膚の膜様落屑が始まり、3週目までに全身に広がります。
合併症は、化膿性疾患である肺炎、髄膜炎、敗血症および非化膿性疾患であるリウマチ熱、急性糸球体腎炎どがあります2,6)

感染経路

感染経路は、感染者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれるA群溶血性レンサ球菌を吸い込むことによる飛沫感染、あるいはA群溶血性レンサ球菌に付着した手で口や鼻に触れることによる接触感染です1)。ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団感染も多い感染症です2)

治療・予防方法

ペニシリン系薬剤などの抗菌薬による治療を行います1,2,6)。合併症予防のために症状が改善した場合でも主治医に指示された期間は、薬を飲むことが大切です1)。対症療法としては、喉の痛みがひどい場合は柔らかく薄味の食事をとるように工夫し、水分補給を行います1)

感染対策

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎患者には、標準予防策に加えて飛沫予防策7)、および接触予防策を行います。一般的な予防対策としては、感染者との濃厚接触を避け、うがい、手洗い、咳エチケットを行います1,2)。咽頭痛がある場合は、早期に医療機関等を受診し、検査を受けます1)
A群溶血性レンサ球菌は一般細菌であり、熱や消毒薬に対する抵抗性は比較的低い細菌です3)。一般細菌の消毒には、低水準消毒薬以上が有効です8)。低水準消毒薬である第四級アンモニウム塩や両性界面活性剤、あるいは中水準消毒薬のアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどを用いて消毒します。

参考文献

1)東京都感染症情報センター : A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 :
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/group-a/ :2020年10月22日現在
2)国立感染症研究所感染症情報センター : A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは(IDWR 2003年第37号掲載) :
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/340-group-a-streptococcus-intro.html : 2020年10月22日現在
3)中山浩次, レンサ球菌:吉田眞一, 柳雄介, 吉開泰信編集, 戸田新細菌学 改訂34版, 南山堂, 東京, 2015.p245-256
4)厚生労働省 : A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 :
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-17.html : 2020年10月22日現在
5)国立感染症研究所感染症情報センター : IDWR 2020年第35週(8月24日~8月30日):通巻第22巻第35号 :
https://www.niid.go.jp/niid/images/idwr/pdf/latest.pdf : 2020年10月10日現在
6)岩崎恵美子, A群溶血性レンサ球菌咽頭炎:感染症の診断・治療ガイドライン編集委員会 編集, 感染症の診断・治療ガイドライン2004, 日本医師会, 東京, 2005. p.230-231
7)Siegel JD, Rhinehart E, Jackson M, Chiarello L;Health Care Infection Control Practices Advisory Committee. 2007 Guideline for isolation precautions:preventing transmission of infectious agents inhealth care settings. CDC 2007.
https://www.cdc.gov/infectioncontrol/pdf/guidelines/isolation-guidelines-H.pdf. accessed Dicember17, 2020.
8)大久保 憲, 尾家重治, 金光敬二 編集, 2020年版 消毒と滅菌のガイドライン, へるす出版, 東京, 2020.

作成日:2021年2月15日

id-info_a-rensa.pdf