創傷バイオフィルムに着目する視点が、バイオフィルム検出ツールによって培われた
倉敷医療生活協同組合 総合病院水島協同病院
住所 | 〒712-8567 |
病床数 | 282床(一般病棟:222床、障害者施設等:60床) |
全職員数 | 常勤:423人、非常勤:129人(2021年6月時点) |
病院ホームページ |
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導入製品

バイオフィルム検出ツール
CCステップス
目次
WOCN主導の創傷管理
- 施設における創傷管理面の特徴は?
当院は形成外科の医師が不在ですので、褥瘡や下肢潰瘍といった慢性的な創傷をどの科の医師が診るのか、はっきりと決まっていません。例えば「抗生剤治療を行います、でも褥瘡もあります」といった場合や、「これは褥瘡なのか?」「外科に診てもらうのがよいか?それとも皮膚科?」といった場合など、皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)に創傷関連の相談や介入依頼が来ます。私自身は創傷管理関連の特定行為研修を修了しているので、特定行為の実施も含めて対応するという状況です。
- WOCN主導の創傷管理を行っていらっしゃるんですね。
褥瘡回診も医師が不在だった時代もあるくらい、慢性的な医師不足というのが背景にあります。木曜日の回診で、感染兆候がある創傷のデブリードマン処置をお願いしたら、次週の火曜日に処置、ということもありました。そういった中で私が特定行為研修を修了し、「特定行為研修を修了している看護師がいる」というのが病院にとって一つの売りになるということが、最近の活動を通じて認知されてきたように思います。
製品導入の背景
- ご使用いただいている「CCステップス バイオフィルム検出ツール(以下“検出ツール”)」を知ったきっかけは何でしたか?
2年ほど前の学会展示ブースで製品を見かけて、サンプル依頼をしたのが始まりです。その後、私が日本看護協会の特定行為研修に参加した際に授業でも検出ツールが取り上げられました。“創傷バイオフィルム”という概念が出てきたのは割と最近のことと私は認識していまして、創傷の治癒が進まない・肉眼的に捉えてその理由が分からない症例をいくつか経験してきた中、何となくクリティカルコロナイゼーション=バイオフィルムの存在が疑われるのかな、と捉えることはありました。一方「こういった可視化ツールを使わなくてもバイオフィルムの有無はわかる」という声も聞きますが、正直に申し上げて、私はバイオフィルムの有無が肉眼的に判断できません。ですので、検出ツールの登場は私にとって非常にイノベーティヴであると感じています。
- 検出ツールを使用してみた感想はいかがですか?
「肉芽の状態がいいと判断したけど、検出の結果バイオフィルムが認められた」という症例を経験しまして、創傷の見方に変化が生じました。「創傷のどこにバイオフィルムがいるか」という視点が、検出ツールを使って培われてきたと感じています。具体的に言いますと、創傷を平面に見ていましたが、凹凸とか肉芽の増殖が乏しくて崖のように見える部分を見るようになりました。そうした経験を通じて、創傷が治癒していくのと、バイオフィルムの有無との相関性を感じています。そしてバイオフィルムを減らすために陰圧閉鎖療法やドレッシング材・外用剤など、どういった治療方法や医療材料を選択するか考えるようになりました。
症例:難治性創傷に陰圧閉鎖療法を試みた例
70歳代女性
既往歴:脳梗塞、パーキンソン病
寝たきり、四肢拘縮
施設入所中
左腸骨部褥瘡悪化で入院
図3~5.28day 創傷の改善が見られたものの、バイオフィルムの存在が疑われたため、バイオフィルム検出ツールを用いた結果、バイオフィルムの検出が認められた。
【処置】持続潅流併用局所陰圧閉鎖療法を継続。
【考察】
陰圧閉鎖療法中は肉芽が良性に見えやすい
良性肉芽に見えるからバイオフィルムが検出されない、という訳ではない。
【今後の展望】
特定行為での陰圧閉鎖療法期間中は、バイオフィルム検出ツールを使用して創傷を評価→手順書に追加することを検討中。
検出ツールがもたらした“変化”とは
- 検出ツールが創傷管理の方法に影響を与えた具体例について教えてください。
例えば他病院からの紹介例で「とりあえずポピドンヨード・シュガーを使っていました」という症例について、「創感染が怖いから」というのが薬剤選択の理由の一つと思われ、肉芽形成を促す軟膏に切り替えるタイミングに苦慮するというパターンがあります。そのような時に検出結果を見て「バイオフィルムが無い」と分かれば、薬剤を切り替えても感染リスクは非常に低いことが分かります。また、創傷の状態に明らかな変化があった時、何が原因なのかを探索する際に検出ツールを使うという使用方法も有効だと感じました。
- バイオフィルムの検出によるメリット・デメリットは何でしょうか。
創傷のどこにどれくらいバイオフィルムがあるか分かるのが一番のメリットだと感じています。例えばバイオフィルムの存在を認めた際に創面を擦過する処置を行いますが、処置する際に最も苦痛を伴うのは患者様になります。その処置を行う意義を理解してもらい、「ここにいるから、ここだけやります」という、創傷ケアの必要最低限な処置量で、最大のリターンを得ることができます。
一方、デメリットとしては金銭面及び作業面における“コスト”の問題です。初めて検出作業を行った際、製品チラシなどでは「約2分でできる」と謳われていましたが、私は30分以上時間を要しました。個人的には検体採取から染色作業まで一連の手順に熟練が必要だと感じていて、ある程度こなせるようになるための使用回数を臨床で稼げるか?というのが現実的な課題のように思います。
また、褥瘡回診など複数のコメディカルがいる場面で、検出に必要な時間をどうマネージメントするか?についても思案のしどころです。この解決方法としては、WOCNが自分でやるのではなく、病棟ナースに代わりにやっておいてもらう、というのが一つの選択肢になると思います。採血や痰の吸引と同じ感覚で検出しておいてもらう、というレベルで一般化できれば、需要が増えて金銭面のコストも下がってくる…というのが一つの理想ではないでしょうか。
今後の課題や目標
- 今後の創傷管理において検出ツールの更なる活用イメージはありますか?
バイオフィルムを意識しだしてから、ウンドハイジーン(創傷衛生)にも注目するようになりました。褥瘡状態評価スケール“DESIGN-R®”が2020年に改定されましたが、新たに「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と「臨界的定着(クリティカルコロナイゼーション)疑い」が項目として加わりました。創傷衛生上、クリティカルコロナイゼーションであれば洗浄方法が大きく変わってくることになります。以前私たちは「創傷を化学物質で洗ってはいけない、泡は傷に付けない」という風に習ってきましたが、今では「水や生理食塩水のみで洗ってもバイオフィルム対策として効果が低い」とされ、界面活性剤入り洗浄剤の使用を推奨する文献を多く目にします。このようにクリティカルコロナイゼーションの原因の一つであるバイオフィルムへの対策が求められる中、その評価や処置選択に有用な製品として、検出ツールは存在感を発揮してくるのではないでしょうか。
また、私個人としては、今後医師から創傷管理を任される場面が増えていくことが想定されます。そこで創傷が悪化していく兆候を早急に把握したいのですが、なかなか気付きづらくもあります。そういった際の判断基準=自らの視点を正確に戻してくれるツールとして機能することを期待しています。具体的には、これはWOCN仲間の中でも意見としてよく上がりますが、特定行為研修修了者として陰圧閉鎖療法に携わる際、陰圧閉鎖療法の中止判断に迷うことがあります。そういった際に、中止する、もしくは設定モードを変える、その判断について検出ツールの結果をもとに医師に説明できる、といった活用方法がイメージできます。このように悪化の早期発見・予防といった観点や、患者の創傷の状態を把握する上で共通の見解を持つといった観点が得られるのではないでしょうか。
創傷のスペシャリストが直接使うというよりは、汎用的な検査結果の一つとして共有し、「今まで行ってきた処置を継続するか、変更するか」そうした判断基準として活用していきたいと考えます。

今回インタビューさせていただいた方
平良亮介様 倉敷医療生活協同組合 総合病院水島協同病院 看護師長(皮膚・排泄ケア特定認定看護師)
編集後記
施設における創傷管理の最前線で判断を求められる機会も多い平良様の実体験に基づくお話から、患者様の創傷治癒を第一に考えた温かな人間味と、より質の高い医療を追求する姿勢を感じることができました。特定行為研修修了者としての視点やご意見は非常に多くの示唆に富んでおり、平良様のような医療従事者様を支えることができる製品やサービスの提供に向け、思いを新たにいたしました。
取材日:2021年6月






